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《むしろ定番》ほとばしる個性を放つ「変形ギター」の世界

2016gakki-fair 2016楽器フェア:ESPブース

変形ギターとは
エレクトリック・ギターならびにベースのうち、ボディ形状が伝統的な弦楽器(ヴァイオリン属やアコースティック・ギターなどの撥弦楽器)に根ざしていないものを指す。-Wikipediaより

普通とは違うボディ形状をしているギターを「変形ギター」と言います。板を組み合わせて「箱」を作るアコギやセミアコフルアコなどと違い、ソリッドギターのボディは板を切削して作るので、開発者のアイディア次第で自由な形に仕上げることができるのです。

では、普通と少しでも違っていたら「変形ギター」なのか、そもそも「普通」とは何か、改めて問う「変形ギターとは何か?」。なかなか気持ちよくスパッと答えられない問題かもしれませんね。そこで当サイトでは、変形ギターを「ボディ形状にロック的な主張のあるギター」と定義します。現在一般的に「変形ギター」と呼ばれているものは、ロックで使われることを想定しているものがほとんどであり、一部のジャンルでは変形ギターが定番化してすらいるからです。

これまでさまざまな変形ギターが生まれてきましたが、変わった形をしていても不思議と弾きやすいもの、弾きやすさをかなぐり捨ててまで個性的な姿をしているものなど、ギターとしての性能もさまざまです。今回はこの変形ギターに注目し、そのトンガったボディ形状の魅力を追っていきましょう。

代表的な変形ギター

変形ギターにも種類があり、定番になった形状や、そこから派生したデザインのものなど、ある程度のカテゴリーにまとめることができます。ここでは変形ギターのパイオニア「ギブソン(Gibson)」と「BCリッチ(B.C.Rich)」に注目して、代表的な変形ギターをチェックしていきましょう。

ギブソン発祥の「二大変形ギター」

レスポールやSGなど多くのスタンダードモデルを開発したギブソンですが、変形ギターの歴史はギブソンから始まりました。変形ギターの先駆者である「フライングV」と「エクスプローラー」からは、さまざまな派生モデルが誕生しています。

Vタイプ

VシェイプGibson Flying V 120

「Vタイプ」は1958年にデビューした「ギブソン・フライングV」をベースとしたギターで、「座って演奏できない」という最大の弱点を抱えながらも、ロック的なカッコよさから多くのギタリストの心をとらえて離さない「変形ギターの代表選手」です。


Ozzy Osbourne – “Mr. Crowley” Live 1981
卓越した演奏技術と甘いマスク。ランディ・ローズ氏は「天が二物を与えた」ギタリストです。動画で氏が演奏しているのは後に名を残した「ランディV」に次いで名高い「ポルカドット(水玉)V」です。非対称のランディVも舞台袖にスタンバっていますね。

KING V Jackson KING V

JS32 Rhoads(Randy V) Jackson JS32(Randy V)

両足の先端が丸い「フライングV」タイプをベースに、派生モデルとして先端を鋭利にした「キングV」タイプ、非対称にした「ランディV」タイプがあります。このような尖ったVシェイプのギターは非常に人気があり、ヘヴィ・ミュージックにおいてはすでにスタンダードな存在になっています。

Vタイプのギターを取り扱うブランドとそのラインナップ

Vシェイプのエレキギター特集

エクスプローラータイプ

ギブソン・エクスプローラー Gibson Explorer 120

「ギブソン・エクスプローラー」は、上記フライングVと共に1958年にデビューした代表的な変形ギターです。ボディが大きく存在感がある上にバランスが良く、座って弾くこともたやすいことから多くのギタリストに愛用されています。

エドワード・ヴァン・ヘイレン氏が演奏する「シャーク」と呼ばれたこのギター、アイバニーズ(Ibanes)製エクスプローラー・タイプのボディを大胆にカットしたものです。ボディをカットした結果音が変わってしまい後悔したと伝えられていますが、エクスプローラーのボディエンドをカットするというアレンジは、後に続くいろいろなギターのヒントになっています。

これらエクスプローラー派生モデルはVタイプほど種類がなく比較的珍しい存在ですが、それだけになおさらロック的な存在感を発揮しています。
ギブソン・エクスプローラー(Gibson Explorer)
エクスプローラー・タイプのギター特集


Van Halen – “You Really Got Me” (Official Music Video)


以上、ギブソンの二大変形ギターでした。ギブソンからは他にも「モダーン」や「ファイアーバード」、「RD」などの変形ギターがリリースされています。

BCリッチ発祥「刺さりそうな変形ギター」

「変形ギター専門」と言っても過言ではないBCリッチのギターは、サウンドやクオリティだけでなく「ボディのどこかが必ず尖っている」ことでも知られています。その刺さりそうなルックスから、ダークなイメージのあるヘヴィ系アーティストに愛用されています。ここでは、特に代表的な2タイプを紹介します。

モッキンバード

bc-rich-mockingbird B.C.Rich Mockingbird ST

「モッキンバード(Mockibgbird)」は、日本では故hide氏が愛用したことで知られる、あまりにも有名な変形ギターです。その曲線が複雑に交差するボディラインは、美しさと攻撃性の両方を感じさせます。一見独特なデザインは機能性もしっかり考えられており、抱えた時のボディバランスは良好で、座って弾く時にも弾きやすい場所にちゃんと収まるようにできています。また前かがみになるとボディが胸に刺さるので、ギタリストを正しい姿勢に矯正してくれます。

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fernandes-mg-100x Fernandes MG-100X

BCリッチ製以外のモッキンバードはフェルナンデス/バーニーのhideモデルがリリースされているだけで、他のブランドからは出ていないようです。フラット(平ら)なボディの外周を斜めに削るのがモッキンバードの基本スタイル(左&右)ですが、ボディトップ全体がなめらかな曲線を描くように加工した「カーブドトップ」仕様も存在します。


X Japan Rusty Nail from “The Last Live” HD
日本国内においては「モッキンバード=hide」と断言しても過言ではないほど、今なお強大な影響力を持つhide氏。ジョー・ペリー氏、スラッシュ氏、リック・デリンジャー氏など著名な愛用者は多くいましたが、常にモッキンバードを愛用していたギタリストとしてはhide氏を差し置いて右に出る者はいないでしょう。

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ワーロックタイプ

B.C. Rich Warlock B.C. Rich Warlock

キュっと引き締まった「X」のカタチをした「ワーロック(Warlock)」は、BCリッチを代表する「変形ギターの草分け」です。血も涙もない凶悪なルックスですが、座って演奏するときに脚や右手が触れるところ、立って演奏するときに右手が触れるところは滑らかなカーブを描いています。演奏するギタリスト本人に対してのみ、優しさを持って接してくれるギターです。

このワーロックをアレンジして、さらに凶悪さをアップさせたのが「ビースト(Beast)」で、このビーストの上半身とワーロックの下半身を合体させたのが「ワービースト(Warbeast)」です。ビーストのホーンは逆にも尖っているため、座って演奏するときには太ももや胸に刺さります。


The Berzerker – All About You
インダストリアル・デスメタルと分類される「ザ・バーザーカー」ではいろいろなギターが使用されますが、このような音楽にワーロックは絵になりますね。

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その他のタイプ

BC Rich Bich BC Rich Bich

B.C.リッチからはイーグルやビッチといった変形ギターがリリースされている他、

the-dean-from-hell DEAN Guitars ML

他のブランドからも、ダイムバッグ・ダレル氏が愛用したディーン・ギターズ(Dean Guitars)の「ML」、BUCK-TICKの今井寿氏が愛用したフェルナンデスの「スタビライザー」、THE ALFEEの高見沢敏彦氏が愛用するESPの「フライングA」や「エンジェル・ギター」など、特にアーティスト主導で数多くの変形ギターが生まれています。

変形ギターのメリット&デメリット

ここで、これまで紹介した変形ギターのメリットとデメリットを考えてみましょう。一般的な外観を手放したことで、どんなことが起こるのでしょうか。

変形ギターのメリット

Dean Guitars Michael Amott Signature Model Dean Guitars Michael Amott Signature Model

変形ギターのメリットは、「とにかくカッコいい!」の一点に尽きます。音ではボディ形状は分かりません。しかし特にライブ会場や動画においては、その個性的なルックスが音楽的な世界観の演出や弾き手の存在感に大きく寄与します。

変形ギターのデメリット

変形ギターには、いくつかデメリットと考えられるポイントがあります。しかしそんなことは、変形ギターのカッコよさと比べれば些細な問題です。一般的なギターと比べれば我慢させられることがありますが、弾き手の愛情でじゅうぶん克服できる問題です。

1)似合わない音楽があるかもしれない

あまり極悪なルックスのギターでは、たとえばトラッドなロックやブルースは似合わないかもしれません。そういったジャンルのライブやセッションに極端なルックスの変形ギターを持参するのには、相当の胆力を必要とします。どんな現場でも変形ギターで切り抜けるには、「自分はこのギターが大好きなんだ!」という深い愛着が必要です。

2)ケースを選ぶ

一般的なギグバッグに収めることを想定していない変形ギターは意外と多く、汎用のケースに入らない場合がほとんどです。非常に種類の多い「Vタイプ」でもブランドごとにボディサイズはさまざまなので、Vタイプ専用のギグバッグでもブランドが違うと収まりきらないことがあります。買った時のケースを大事に使用し、そのケースに何かがあって買い替えなければならなくなったらショップに相談しましょう。

3)ギタースタンドを選ぶ

変形ギターを使用する場合、下からボディを受け止めるタイプの一般的なギタースタンドではきちんと立てられないことがあります。ボディエンドが左右非対称の場合、壁に立てかけることすら危うくなります。変形ギターに使用するギタースタンドは、ヘッドに引っかけてぶら下げるタイプのものがお勧めです。
ギタースタンドの選び方とオススメの製品

4)演奏性が若干犠牲になる可能性がある

変形ギターは観客の前で「立って演奏する」ことを想定していますから、椅子に座って演奏することが難しい場合があります。Vタイプのギターはその草分けですが、太ももに刺さるビーストやGretsch G6138 Bo Diddleyの長方形ボディなどで座って演奏するには、ストラップを利用した「ひと工夫」が必要です。

「普通」とは何なのか -スタンダードなボディシェイプ-

変形ギターばかり見ていると、あたかもこれら変形ギターが普通であるかのように錯覚してしまいそうです。ですからここで一旦、「一般的なギター」のボディ形状についても確認していきましょう。

いわゆる「一般的なエレキギター」のボディシェイプは、弦楽器の伝統に根ざした形状をしています。アコースティックギターを例に挙げると、どのギターも「ひょうたん型」をしていますね。これは「ネックを受け止める円と、ブリッジを受け止める円」が組み合わさることから発展している形状です。くびれ(ウェスト)があり、左右対称になっています。

シングルカッタウェイ

シングルカッタウェイ

アコギの形状に最も近いのが「レスポールタイプ」です。左右対称のひょうたん型から、ハイポジションが弾きやすくなるように「カッタウェイ」を設けています。「テレキャスタータイプ」はカッタウェイが無ければ左右対称と言えなくもない形状です。これら高音弦側にカッタウェイを設けているボディ形状は「シングルカッタウェイ」と言われますが、名前で形状が容易に想像できるレスポールやテレキャスターにいちいちシングルカッタウェイと言うことはあまりありません。ボディ形状を「シングルカッタウェイ」というのは、両モデルと違った形状のギターに対しする場合がほとんどです。

ダブルカッタウェイ

ダブルカッタウェイ

「ストラトキャスタータイプ」は低音弦側にもカッタウェイを持つ「ダブルカッタウェイ」ですが、やはり「ストラト」という名前で容易に形状が想像できるので、わざわざダブルカッタウェイという機会は少ないでしょう。「ダブルカッタウェイ」という言葉は、PRS(ポール・リード・スミス)の「PRS CUSTOM24」を代表とするストラト的ではないボディ形状に対して使われます。こうしたダブルカッタウェイのギターは左右非対称になることが多いようですが、SGを代表する左右対称型のギターも多く輩出しています。

カッタウェイとホーンの違い

誤解の多いところですが、「カッタウェイ」はボディの一部を「切除(Cut Away)」した箇所のことで、残されたツノ状の部分は「ホーン(Horn)」と呼ばれます。 cutaway-horn

オフセット・ウェスト

ボディのくびれ位置が左右で異なるボディ形状を、「オフセット・ウェスト」と言います。この形状は座って弾く際に「プレイヤーの身体にフィットする」ことを狙っており、ジャガー/ジャズマスタームスタングなとフェンダーのものが定番化しています。

漂うレトロ感 〜ビザール〜

Aria DM-01 Aria RETRO CLASSICS DM-01

「ビザール」は、1960年代に最盛を極めたさまざまな形状のギターに対して使われる呼び方です。当時はいろんなメーカーがエレキギターブームに乗っかり、それぞれに個性的なデザインのギターをリリースしていました。この時代のエレキギターで、

1)面白みのあるボディ形状を採用していること
2)全体的なデザインに「1960年代っぽさ」を強く感じさせること
という共通点があるものをひっくるめて、現在では「ビザール」と称しています。

ビザールには個性的な形状のものが多く、通販サイトなどでも変形ギターとして扱われることが多いようです。しかしそのほとんどがスタンダードな形状を出発点としていること、またフライングVやエクスプローラーなどとは使用される音楽のジャンルがちがうことなどから、ビザールを「変形ギター」のカテゴリーに加えるかどうかについては意見が分かれています。

ビザールギターを…
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以上、「変形ギター」をキーワードにして、さまざまなボディ形状をチェックしていきました。ボディ形状には表や裏が平らなのか、丸く削ってあるのか、外周が削られているのかといった三次元的な要素も含まれるのですが、今回は「シルエット(輪郭)」のみに注目しています。エレキギターのボディ形状は音への影響が分かりにくいところですが、ライブ会場や動画であなたが抱えているギターがどんな形をしているのかは、観客や視聴者に強く訴えるポイントのひとつです。変形ギターに魅力を感じたら、ぜひ手にとってみてくださいね。