エクスプローラー・タイプのギター特集

[記事公開日]2017/3/1 [最終更新日]2021/5/28
[編集者]神崎聡

エクスプローラー・タイプ

1958年にギブソンから発表された「エクスプローラー(Explorer:探検家)」は、現在では同時にデビューした「ギブソン・フライングV」と並んで双璧をなす「変形ギターの代表選手」の地位を確立しています。しかし当時としては時代を先取りしすぎており、ビジネス的に大失敗を喫しました。それでも1970年代にはヘイマーなど他ブランドでコピーモデルが作られて多くのアーティストに愛用されたことなどから、徐々に支持を集めていきました。

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1: エクスプローラーの特徴 1.1: 「変形」なのに、座っても弾きやすい 1.2: 「2ハムバッカー、TOMブリッジ」が基本 1.3: でかい反面、薄型で意外と軽い 1.4: セレクター・スイッチが邪魔になりにくい 1.5: ハイポジションでの演奏性が良好 1.6: あまり高額ではない 1.7: 使用上の注意も少々 2: 価格帯別エクスプローラーのラインナップ 2.1: 実売価格¥30,000以内 2.2: 実売価格¥30,000~¥50,000 2.3: 実売価格¥50,000~¥100,000 2.4: 実売価格¥100,000~200,000 2.5: 実売価格¥200,000~ 3: エクスプローラーの派生モデル 3.1: ケリー 3.2: ランダムスター(ESP/ナビゲーター) 3.3: 各社アーティストモデル


10-FEET – ヒトリセカイ
テレビ東京ドラマ24「バイプレイヤーズ 〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」のオープニング曲。ギターヴォーカルのTAKUMA氏はエクスプローラーを低く構え、ネック上でストロークするのが基本スタイルです。エクスプローラーはボディの平面部分が多いので、ステッカーの貼り甲斐がありますね。ここまで低く構えるとピックアップセレクターに手が届かないのでは、と心配になります。しかしこの編成でこのような音楽性の場合、ライブでフロントピックアップを必要とすることも少ないので、心配することはないでしょう。

意外やエリック・クラプトン氏が1974年の来日公演で使用するなど、さまざまなジャンルのギタリストに愛用されましたが、現在ではジャズ/ブルース系で使用されることが極端に少なく、もっぱらロック系のアーティストに愛用されています。「The Rock Icon(ロックの象徴)」とはギブソンSGのキャッチコピーですが、エクスプローラーもロック・ミュージックを象徴するギターだと言えるでしょう。今回はこのエクスプローラー・タイプのギターに着目し、特徴やラインナップをチェックしてみましょう。

備考:「エクスプローラー」の名称はギブソン製品の登録商標なので、ギブソンとエピフォンでしか使用することができません。それゆえ他のブランドからリリースされているものは「エクスプローラー・タイプ」や「エクスプローラーのコピーモデル」と呼ばなければなりませんが、それではあまりに不便なので、ここでは便宜上すべてをひっくるめて「エクスプローラー」と呼んでいます。

エクスプローラーの特徴

特徴的なルックスがクローズアップされやすいのは変形ギターの宿命ですが、ここでエクスプローラーが帯びる、ルックス以外の特徴を見ていきましょう。


U2 – Beautiful Day
1980年のデビューから現在に至るまで解散はおろか人事異動もなく、作品は世界中のファンから支持を受けており、22作品でグラミー賞を受賞(ロックバンドでは最多)するという経歴から、U2は「奇跡のロックンロールバンド」と言われてます。所属ギタリストのエッジ氏がトレードマークの一つにしている1976年製エクスプローラーは、18歳の時に初めて買ったギターだとのことです。初めて買ったギターをプロになっても愛用しているのって、素敵ですね。

「変形」なのに、座っても弾きやすい

右利きの人がギターを右足に置いて、水平に構えるのを「スパニッシュ・スタイル(いわゆる「普通の構え方」)」と言いますが、エクスプローラーはこのスパニッシュスタイルで普通に座って演奏できるボディシェイプとなっています。これは右利きの人がギターを左足に置いて、立てて構える「クラシカル・スタイル」が必須となるVシェイプのギターとの大きな違いです。ただしエクスプローラーはボディエンド部分が大きく張り出しているので、逆にクラシカル・スタイルでは構えにくくなっています。

逆に、ストラップを使用し立って演奏する場合にはヘッドが下がっていく「ヘッド落ち」が起きやすく、その場合には左手でネックを持ち上げながら演奏する必要があります。これはSGやフライングVでも起こることですが、エクスプローラーの場合にはネック側のストラップピンをネックヒールに移動させることでボディバランスが変化し、このヘッド落ちを解消できるようです。そのため多くのブランドでは初めからストラップピンをネックヒール部に配置しているほか、本家ギブソンのエクスプローラーもボディサイドからネックヒールへと配置変更しています。

「2ハムバッカー、TOMブリッジ」が基本

Tokai Explorer Type Tokai Explorer Typeのレフティ

ピックアップ配列は「2ハムバッカー」を基本としており、P-90や普通のシングルコイルを搭載したエクスプローラーは古今東西ほぼありません。このことから「エクスプローラーは2ハム」というのが一つの常識となっており、「太く甘いパワフルなサウンドで、ロックに最適」というイメージが出来上がっています。

また、TOM(チューン・オー・マチック)ブリッジを搭載するのが普通で、ブリッジプレートをボディにネジ留めするいわゆる「ハードテイル」などはほぼ使われません。またボディが薄型なのでシンクロナイズト・トレモロやFRT(フロイドローズ・トレモロシステム)のユニットを埋め込むだけの深さを得られず、アームを取り付けようと思ったらビグスビーやケーラー、またはフロイドローズ社の「FRX」といった、ボディに埋め込まない形式のユニットを選択する必要があります。

でかい反面、薄型で意外と軽い

Tokai Explorer Typeのボディ側面 ボディ側面

エクスプローラーのボディは、数あるエレキギターのなかでも最大の面積を持っています。このことはサスティン(音の伸び)が増強されるという音響的なメリットとして現れますが、その面積を活かしてステッカーを貼ったり絵を描いたりと、デザイン的に遊び甲斐があるのも大きなメリットです。

その面積から重そうな印象を受けるかもしれませんが薄型なので、軽量とまではいかないまでもそこまで重すぎもしない、という重量感になっています。変形ギターはステージでこそ輝くギターですが、エクスプローラーは意外と軽いため飛んだり跳ねたりといったパフォーマンスも苦ではありません。

セレクター・スイッチが邪魔になりにくい

Tokai Explorer Type ピッキングする手の位置からセレクタースイッチが届きにくい構造になっている

一般的なエクスプローラーでは、ピックアップ・セレクターが1弦側ホーンの先端部分に取り付けられています。「あまり低く構えると手が届かない」と言われますが、コードストロークなど右手を大きく動かす演奏では、誤って触れてしまうことが極めて少ないというメリットにもなります。

ハイポジションでの演奏性が良好

Tokai Explorer Type:ネックジョイント ネックジョイント部分:ハイポジションも握り込みやすい

エクスプローラーのボディは、だいたい20フレット近辺でネックと接続されています。これは6弦側で14フレット接続のレスポール、17フレット接続のストラトキャスターと比べて圧倒的で、ハイポジションの演奏性において特に親指を邪魔するものが何もありません。ジョイント部で厚みが増しこそすれ、最終フレットまで余裕で手が届きます。

あまり高額ではない

超高額なモデルも生産されてはいますが、一般的なエクスプローラーはボディトップに銘木をあしらうことはなく装飾も簡素で、そのぶん価格が抑えられています。本家ギブソンのエクスプローラーでも新品で10万円ほどで手に入れることができる、比較的リーズナブルなギターだと言えるでしょう。そのかわりギター全体で考えるとオーソドックスなモデルではないため、格安なモデルの選択肢はあまり豊かではありません。

使用上の注意も少々

エクスプローラーとギタースタンド ギターを支える部分が斜めになる。この他、壁掛けタイプのギタースタンドもOKだ

  • ボディエンドが斜めに張り出しているため、壁に立てかけにくい
  • 「意外と大丈夫」と言われるが、ギタースタンドを選ぶ
  • 汎用のソフトケースには収まらず、専用ハードケースはでかい
  • 張り出したボディエンドが、バンドメンバーの脇腹を直撃するかもしれない
  • ジャズやポップスではなく、ロック系やメタル系のギタリストに見られる(逆手にとって裏をかく、という技も使える)

これらはギターの「デメリット」と呼ぶほど大げさなことではなく、変形ギターのいわば宿命のようなものです。細かいことは考えず、サウンドとカッコよさに注目してギターを選ぶ人にこそ、変形ギターは相応しいと言えるでしょう。


Motörhead – Live at Hellfest 2015
イギリスのロックバンド「モーターヘッド」はビューから40年間一貫して、大音量かつハイスピードの爆走型ロックンロールを身上としていましたが、スラッシュメタル、ハードコア・パンクなど、そのサウンドは多くのジャンルに及んでいます。ジャンル分けが難しいバンドの代表として知られていましたが、本人たちはロックンロールバンドを自称しています。所属ギタリストのフィル・キャンベル氏は、フランスのLAG社製シグネイチャー・エクスプローラー・タイプをトレードマークにしていました。


次のページではいよいよエクスプローラー・タイプのギターのラインナップについてみていきましょう。

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