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エドワード・ヴァン・ヘイレンの使用機材やギタープレイの特徴

エドワード・ヴァン・ヘイレン

エドワード・ヴァン・ヘイレン氏(Edward Van Halen、1955-、愛称:エディ)は、78年自身のバンド「VAN HALEN(ヴァン・ヘイレン)」でのデビュー以降、ロックギターの演奏技術に大革命を起こしたスーパーギタリストです。

影響力はかのジミ・ヘンドリックス氏に次ぐと言われ、「現在のハードロックギターのイメージは、エディが築いたものだ」と言っても過言ではありません。本人のコメントはありませんが、先輩のスーパーギタリストであるジェフ・ベック氏は、エディが登場して以降、アーミングを行なう頻度が格段に上がったと言われています。また同じく先輩のスーパーギタリスト、リッチー・ブラックモア氏は雑誌のインタビューで、「どんどん出てくる新しいギタリストは、どれも同じに聞こえる。さらに加速したエディ・ヴァン・ヘイレンみたいだ」とコメントしています。

その影響力に関わらず、英国ローリング・ストーン誌のランキング「歴史上最も偉大な100人のギタリスト」において2003年に70位という不名誉な位置でしたが、このときエディは癌の治療のため活動を休止していました。その後完治して活動を再開させてから改訂された2011年のランキングでは、8位に着いています。

Biography

1955年にオランダで生まれ、12歳の時にカリフォルニアへ移住します。父親がクラリネット奏者だった影響で、幼ない頃からヴァイオリンやピアノに触れていたといいますが、ビートルズの影響を受けてエディはドラムを、兄のアレックスがギターをはじめます。しかしアレックスの方がドラム演奏技術が上達が速く、お互いの楽器を交換しました。ギターに転向したエディはクリーム時代のエリック・クラプトン氏、リッチー・ブラックモア氏、アラン・ホールズワース氏の影響を受けて開花し、「VAN HALEN」結成に至ります。ちなみに若き日のエディは、クリームの演奏をコピーしようとしても「速くて指が追いつかなかった」と回想しています。

ドラムからギターに転向した時の心情を、後にエディは語っています。「しょうがないから、俺はギターでもやろうって思った」というひねくれたコメントですが、これにはアラン・ホールズワース氏の影響が反映されていると考えられています。ホールズワース氏はかねてより「私はサックス奏者になりたかったのに、ギターしか持っていなかった。仕方なくやっているだけだ」「オーバードライブなんて汚い音は本来使いたくない。サスティンを確保するために仕方なく使っているだけだ」といったひねくれたコメントを残しています。

78年(当時23歳)のアルバム「炎の導火線(VAN HALEN)」で鮮烈なデビューを果たし、一躍スターバンドとなります。83年にはアルバム「1984」をリリースし、全米チャート2位を記録、シングル「JUMP」は5週連続1位を記録します。


Van Halen – Jump

「跳んだりはねたりできないからピアノは嫌だ」と言うエディですが、作曲にはピアノを使うそうで、ピアノ/キーボードプレイヤーとしてのセンスも高く評価されています。シングル「Jump」の人気から、この時代以降のキーボードは「Jumpのイントロのサウンドが出ること」が必須のスペックになっています。

45歳で発覚した癌や腰痛のため長期的なリハビリを余儀なくされ、またメンバー間の不仲によってバンドも解散状態に陥りますが、初代ボーカリストのデイヴィッド・リー・ロス氏、ベーシストに息子のウルフギャング・ヴァン・ヘイレン氏を迎えた新たな体制で2007年に「VAN HALEN」としての活動を再開します。2015年で還暦を迎えましたが、今なお活動は注目され、多くのフォロアーを生み出しています。

ギタープレイの特徴

高度かつ独創的な演奏技術

ジミ・ヘンドリックス氏、エリック・クラプトン氏、ジェフ・ベック氏など名ギタリストに影響を受けたブルージーなスタイルをルーツとしていながら、斬新な発想による柔軟なフレーズ展開と、それを支える高度かつ独創的な演奏技術がエディのプレイの特徴です。

  • エディの代名詞とも云われる「ライトハンド奏法(タッピング)」の、数々のバリエーション
  • ハミングバード奏法(=鳥のさえずりのような、高速オルタネイトピッキング)
  • ハーモニクスをからめたアーミング

などなどエディが伝播したテクニックには細かなバリエーションも多く、枚挙にいとまがありません。

ライトハンド奏法について

右手でフレットを鍵盤のように叩く「ライトハンド奏法」を「発明」したのは誰か。これについては諸説ありますが、「エディが世に広めた」ことは誰しもが認める所です。デビュー前のエディは他のギタリストに盗まれないようにと、ライトハンドで演奏する時のみ観客に背を向けていたという逸話もあるほど、当時としては全く斬新で、とてもギターのプレイだとは思えないサウンドでした。VAN HALENデビュー以降も、サウンドから「VAN HALENには凄いキーボーディストがいる」と信じていたリスナーが多かったと言われています。

エディのライトハンドは、人差し指を低音弦方向に屈曲させて行います。これによって弦をヒットする時に微かなベンド(チョーキング)が入り、独特のうねりのあるサウンドになります。そのためエディはピックを口にくわえたり、親指と中指で挟んだりすることが多くあります。ポール・ギルバート氏のライトハンドに見られるような、親指と人差し指でピックを挟んだまま、中指を高音弦方向に伸ばすスタイルの場合にはベンドは入らず、シンプルかつストレートなサウンドになります。
タッピングについて

現代では、「ピアノを演奏するように弦を叩く」奏法は「タッピング」と言われます。エディの広めた「ライトハンド奏法」は、「右手によるタッピングと左手によるハンマリング/プリングの会わせ技」と定義されています。

また、エディは「両手タッピング」も積極的に行ないます。「ギターのボディバックに支えを取付けて両手タッピングをやりやすくする構造」に特許を取得したこともあります(US4656917 “Musical Instrument Support”)。

高度な基礎技術

エディのリズム感には賛否ありますが、譜割りに縛られない自由なソロは高度に音楽的で、完全にコピーするのは至難の業です。「バッキングのリズムはイマイチだ」と非難されることもありますが、ファーストアルバム収録の「You really got me」ではリフをためて弾くことで、独特のグルーヴを出しています。

フィンガリングには無駄が無く、ピッキングは完全に弦の芯を捉えており、しかもライブではそんなことを全く気に留めていないかのような余裕の表情を見せます。VAN HALENで「キャッチーであり、ポップであること」を重視していることもあり、演奏中は笑顔を絶やしません。エディは「笑顔のギタリスト」とも云われ、ハードロックに「明るさ」を持ち込んだ功労者でもあります。


Van Halen – “Dance The Night Away” (Official Music Video)

エディは片時もギターを離さず、自分の生活の一部と公言していました。時間も忘れて弾きまくっていたそうで、とてつもない練習量だったようです。結成初期のインタビューでも、ショーが終わってリラックスしてギターを弾ける時が一番幸せだと語っています。

エディの「ブラウン・サウンド」を生み出す機材

エディは自身の求める「ビッグでウォームなサウンド」を、「ブラウン」と表現しています。理想のギターのトーンはギブソン「ES-335」だったそうですが、演奏性とハウリング対策のため、ストラトタイプのソリッドギターを中心に様々な仕様を試して模索を重ねていきます。前例のないハイゲインサウンドを求めて、エディはギター以外でも数々の試行錯誤を繰り返していますが、マーシャルアンプの電圧を上げて故障させてしまったり、ヴィンテージハムバッカーのコイルを巻き直そうとしていくつも壊してしまったりという伝説が幾つも残っています。しかしこれは安易な模倣を防ぐためのガセネタだったという説もあります。

エディのプレイを直に受ける伝説的なギター

フランケンシュタイン

EVH 5150
EVH 5150

デビュー以来エディのプレイを支えた改造ストラトは「フランケンシュタイン」と言われます。ロサンゼルスでまだ小さなギターショップを営んでいたウェイン・シャーベル氏からボディとネックを200ドルで手に入れて自作したギターで、指板Rは自分で削り直し、ボディ塗装はバイク用の白い塗料が使われています。エディは「機材にカネをかけなきゃ良い音が出ないなんて、ナンセンスだ」とコメントしていますが、この200ドルのボディ&ネックから数々の名演が生まれました。
ピックアップはES-335のPAFを巻き直ししたもので、ハウリング防止のためにコイルをロウで固めた上、ボディに直接マウントしています。斜めになっているのは、ポールピースを弦に合わせるためです。ホワイトの塗装はその後赤く塗られ、フロイド・ローズを搭載し、パーツをあれこれ交換するなど、数々の改造を受けます。何十年もの使用でボロボロになってしまっているため後任にバトンタッチしましたが、ロックの歴史に大きな功績を残したギターとして、精巧なレプリカがスミソニアン博物館に収蔵されています。
今やハードロック指向のギターとして定番となっている「ハムバッカーとフロイドローズで武装したストラト」は、このフランケンシュタインがあったからこそ誕生したと言えます。また豊かなトレブルを得るためのトーンカット、ボディに直接ネジ留めするハムバッカーというエディ独自のスタイルも、今やロックギターの定番スペックになっています。
フロイドローズ搭載のエレキギターについて


Van Halen – Panama

このフランケンシュタインを筆頭に、アイバニーズのデストロイヤーを大胆にカットして、後に高崎晃氏のトレードマークになるランダムスターの原型と言われた「シャーク・ギター」、伝説的なクラフトマンによって組まれた黒いフランケンシュタイン「バンブルビー」、クレイマーのバレッタをカスタマイズした「5150」、同じく「5150」が記されたスタインバーガー「GL-2T(通称「弁当箱」)」が使用されました。

EVHシグネイチャーモデル

axis-evh AXIS EVH

1991年にはミュージックマンと契約、シグネイチャーモデル「Musicman EVH(現在のAXIS)」を発表して話題になりました。独特のまるっこいボディシェイプ、ボディにダイレクトマウントされた2基のハムバッカー、バック材にクセのないバスウッドを採用など、これまでになかったスタイルのギターでした。フランケンシュタインから正確に採寸されたネックグリップは当時としては珍しい左右非対称で、使用頻度の高いポジションが僅かに薄くなっている所まで再現されています。パートナーをPeaveyに変更して発表した「Peavey EVH Wolfgang(現在は廃盤)」はMusicman EVHをマイナーチェンジさせ、カーブドトップや3S仕様などバリエーションを充実させた他、ワンタッチで6弦を1音下げさせる「D-Tuna(Dチューナー)」が標準装備されます。エディはこのDチューナーでも特許を取得しています(US7183475)。
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evh-wolfgang バリエーション豊富なEVH Wolfgang

現在のシグネイチャーモデルは、フェンダーUSAとのコラボレーションによる「EVH」ブランドで生産されています。300本限定で生産されたフランケンシュタインの精巧なレプリカを筆頭に、Peavey Wolfgangを引き継ぎ高級感を増した新しい「EVH Wolfgang」をリリースしています。
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evh-wolfgang-stealthWolfgang Stealth

現在最も使用頻度の高い「ステルス」と名付けられた黒いWolfgangは

  • グラファイトロッドを仕込んで強化させたクゥオーターソーン(柾目)メイプルネック
  • 「ステルスブラック」にペイントされたバスウッドボディ
  • エボニー指板とステンレスフレット
  • Dチューナーを搭載した、EVHブランドのフロイドローズトレモロユニット
  • EVH製ハムバッカーピックアップ2基
  • 1ボリューム、1トーン

といったスペックになっています。
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アンプ/エフェクター類

Peavey 6505 EVH 5150III左:Peavey 6505、右:EVH 5150III

エディのサウンドへの追求はアンプやエフェクターにも強く反映されています。アンプはマーシャルを愛用していましたが、後にPeaveyからシグネイチャーアンプ「5150(現在の6505)」を、現在はEVHブランドの「EVH5150III」を愛用しています。
シグネイチャーアンプ「EVH5150III」は

  • 独立した3チャンネルを持つ、100W出力のオールチューブアンプ
  • エフェクトループ搭載
  • 各チャンネル選択、エフェクトループを操作する4ボタンのフットスイット付属

というスペックで、エディのブラウンサウンドを実現させます。

Peavey 6505+ – Supernice!ギターアンプ
EVH 5150III – Supernice!ギターアンプ

MXR EVH SIGNATURE WAH MXR EVH PHASE 90 左から:MXR EVH SIGNATURE WAH、MXR EVH PHASE 90、MXR EVH-117 FLANGER

シグネイチャーのエフェクターについては

  • ジム・ダンロップ社のワウペダル「Eddie Van Halen Signature Wah」
  • MXR社フェイザー「EVH90 Van halen Phase 90」
  • MXR社フランジャー「Flanger EVH-117」

がリリースされています。
ボスのオクターバー「OC-3」、スーパーオーバードライブ「SD-1」も使用されていますが、謎の改造が施されている可能性があります。

MXR EVH SIGNATURE WAH – Supernice!ギターアンプ
MXR EVH PHASE 90 – Supernice!ギターアンプ
MXR EVH-117 FLANGER – Supernice!ギターアンプ

おすすめのアルバム

炎の導火線

「せーの!!」でほぼ一発録りで作られたという、衝撃のデビューアルバムです。今聴くと70年代後半という時代を感じずにいられませんが、驚くほどのパワーと音圧に満ちています。さらについ勝手に体が動き踊ってしまいそうなグルーブと、ハッピーなサウンド。エディーが楽しみながら弾いてるのが、こちらまで伝わってくるようです。
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A Different Kind of Truth

ボーカルにデイヴィッド・リー・ロス氏、ベーシストに息子のウルフギャング・ヴァン・ヘイレン氏を迎えた新体制で製作された意欲作。ウルフギャング氏は前任マイケル・アンソニー氏に負けない巧みなコーラスワークを持ち、エディとの高速親子ユニゾンも決めてしまう技巧派であり、「親の七光り」では断じてありません。
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このメンバーで2013年のヴァンヘイレン来日東京ドームにてライブが行われました。この日はファーストアルバムに収録されている全編ギターソロの楽曲Eruptionが演奏され、当時リアルタイムでこの革命を体感したであろうオーディエンスは大絶叫。大成功を納めました。

注)いつもは人名に「氏」を付けているエレキギター博士ですが(忘れる時もあります)、エドワード・ヴァン・ヘイレン氏の呼称については敬意を持って、あえて「エディ」とさせて頂いております。ご了承くださいませ。