コスパ最強のアイソレート型パワーサプライ Vital Audio POWER CARRIER VA-05 MkII レビュー

[記事公開日]2023/7/24 [最終更新日]2024/3/8
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

Vital Audio VA-05 MkII

Vital Audio(バイタル・オーディオ)の「Power Carrier(パワー・キャリアー)」シリーズは、スマートなデザインと頼れる機能が支持されるパワーサプライです。優れたコストパフォーマンスもポイントで、フラッグシップモデル「VA-08 MkII」はこの分野での定番機種になっています。そんな中、小型モデル「VA-05 ADJ」がパワーアップした「VA-05 MkII」がリリースされました。今回はこのVA-05 MkIIを、定番モデルVA-08 MkIIとの比較を交えてチェックしていきましょう。

「Vital Audio」って、どんなブランド?

Vital Audio 現在も生産が続いているギター用シールド「VA II」

Vital Audioは1991年、国産ギター用シールドのブランドとして発足しました。当時はギターに最適化したケーブルがなく、ギター専用ケーブル「VAⅡ」シリーズはこの分野の先駆けとなりました。その後、レコーディングスタジオのニーズに応えるなど製品開発を進め、現在では国産プロ用ケーブルの老舗ブランドとして知られています。

Vital Audio Power Carrier 記念すべき「Power Carrier」シリーズ第一号「Power Carrier VA-06+(生産完了品)」。

そんなVital Audioが「Power Carrier」シリーズをリリースしたのは2016年です。第一号「VA-06+」は充電式かつUSBに給電できるという野心的なモデルでした。同年リリースされた「VA-08」が翌年「VA-08 MkII」へリニューアルし、定番パワーサプライの地位を獲得しています。2019年には5ポート仕様の「VA-05 ADJ」がリリースされますが、これの基本性能を強化したのが、今回注目する「VA-05 MkII」です。

パワーサプライ「VA-05 MkII」の特徴

POWER CARRIER VA-05 MkII

最強のコストパフォーマンスを誇るアイソレート型パワーサプライ

「VA-05 MkII」最大の特徴は、「小型化と低価格化を達成したアイソレート型」というところです。アイソレート型のパワーサプライは、デジタル・エフェクターとアナログ・エフェクターを混ぜて使用するのに不可欠な存在だと考えられています。現在では一見してデジタルと分からないエフェクターも多く流通していますから、コレはデジタルなのか?そうでないのか?など心配するくらいなら初めからデジタルもアナログも一緒に使えるパワーサプライを持ってしまった方が安心です。

このアイソレート型パワーサプライの分野で、「VA-05 MkII」は大幅な小型化と、発売時点で最強のコストパフォーマンスを達成しました。定番機「VA-08 MkII」と同程度の電気的性能も達成していますから、性能と価格の両面にメリットがあり、初心者からプロフェッショナルまでお勧めです。

そもそも「アイソレート型」とは?

デジタル・エフェクターは、電源にデジタルノイズを流してしまう事があります。そして、電源を共有するアナログ・エフェクターがこのノイズを拾うばかりか、増幅してしまう事があるのです。これを回避するために考案されたのが、ノイズの流れる経路を遮断して各ポートを独立させる「独立型(アイソレート型)パワーサプライ」です。アイソレート型パワーサプライを使用すれば、電源に由来するノイズの心配を大幅に軽減できます。

ただし、アイソレート型は各ポートを独立させるため、ポート間で共有できる部品が少なくなることで、全体の部品点数が増えてしまうのが課題です。部品が多くなるので小型化も低価格化も困難ですが、Vital Audioは電気回路の専門家による設計や国外生産などの企業努力により、大幅な小型化と価格圧縮を達成したわけです。

ゆとりのある電流量と、2基の可変出力ポート

可変出力ポートは、それぞれに電圧を設定できる。

「VA-05 MkII」には、3基の9V(最大300mA)出力ポートに加え、 2基の可変出力ポートを搭載しています。可変出力は本体背面のスイッチにより、9V(最大500mA)、12V(最大375mA)、18V(最大250mA)の3段階に切り替えられます。 可変出力により、18Vや12Vに昇圧して使用できるドライブペダルの性能をフルに発揮できます。

また2000mAという総電流容量は、全部の出力ポートで最大の電流量を使ってもまだゆとりがあります。各ポートの最大電流量もじゅうぶんあり、消費電流量の多いデジタルエフェクターであっても、コンパクトタイプならほとんどのモデルに対応できます。

LEDで状態確認ができる

VA-05 MkII LED 煌々と光るLED。緑の輝きは「異常ナシ」のサイン。

「VA-05 MkII」は、出力ポートごとに通電の状態を一目で確認できるLEDを備えています。本体の電源が入っているときには左端のパワーライトがオレンジ色に輝き、各ポートのLEDが緑色に発光、回路に何らかの異常があれば赤色に発光します。これは万が一の不具合が起きた場合、原因を絞り込むのに便利な設計です。

定番機「VA-08 MkII」と比較してみる。

VA-05 MkII , VA-08 MkII VA-05 MkII(左)とVA-08 MkII(右)の、アルマイト処理による鮮やかな本体。アルマイト処理はこうした美しい発色が得られる上に、硬い酸化被膜によって表面の硬度が高まる。

VA-05 MkIIの外形寸法は幅111.5ミリ/奥行き60ミリ/高さ21.3ミリで、VA-08 Mk-Ⅱは幅140ミリ/奥行き70ミリ/高さ30ミリです。VA-05 MkIIはVA-08 Mk-Ⅱに比べ、占有面積で約32%、体積で約52%小型化しています。

VA-05 MkIIのポート数は5基

出力ポート数は、VA-05 MkII(左)で5基、VA-08 MkII(右)で8基。コンパクトなVA-05 MkIIのおかげで、かなりコンパクトなはずのVA-08 MkIIが大きく見えてしまう不思議。

ポート数については型番どおりで、VA-05 MkIIが5基搭載、VA-08 MkIIが8基搭載です。このうちそれぞれ2基が9V/12V/18Vの可変ポートになっています。VA-08 MkIIには2つのポートをつなげる「ボルテージ昇圧用 Yケーブル」と1基のポートを2手に分ける「分配用Yケーブル」が同梱されていますが、VA-05 MkIIでも同様のYケーブルを手に入れれば同じことができます。

各ポートの最大電流量には違いがある

エフェクトボードの裏側に配置 スノコ型のエフェクトボードの裏側に配置してみた。このボードではVA-08 MkIIもキチンと収まっているが、寸法がギリギリなのでこのまま電源ケーブルを抜き差しすることはできない。VA-05 MkIIの場合、本体の固定法を工夫すれば本体を設置したままケーブルを抜き差しできる。

両機とも本体の電源に使用するACアダプターは共通で、AC100V~240V、50/60Hzのスペックがあります。適合する変換プラグさえあれば、電圧の異なる外国でも同じように使用できるわけです。

両機とも本体の総電流容量は2000mAですが、各ポートの最大電流量には違いがあります。

VA-05 MkII 3基の9V(最大300mA) 2基の可変9V/12V/18V(最大500mA)
VA-08 MkII 6基の9V(最大500mA) 2基の可変9V/12V/18V(最大800mA)

VA-05 MkIIでは全ポートで最大電流量を使用しても1900mAとなり、総電流容量にはゆとりがあります。いっぽうVA-08 MkIIで全ポートで最大電流量を使用すると4600mAとなり、本体でカバーできる総電流容量を越えてしまうので注意が必要です。

定番機「VA-08 MkII」と同水準のアイソレーションと保護回路を達成

この小さなエフェクトボードならエフェクターはだいたい5つまでだし、VA-05 MkIIがベストだと言える。

VA-05 MkIIは各ポートにトランスを追加するなど独自の回路を設計することで、アイソレーションの強化、過負荷や発熱に対処する保護回路の強化、という二つのパワーアップを果たしています。これにより、この分野での品質がVA-08 MkIIと同じレベルに届いたと言われています。

VA-08 MkIIに近いモデル名でリリースされたのも、VA-05 MkIIはVA-08 MkIIと同水準の性能を達成した、という意味だったわけです。

小型のボードや追加電源に最適

スノコ型エフェクトボードからチラ見えするVA-05 MkII。シンプルなボードならば、VA-05 MkIIの1台で電源の心配がなくなる。

以上、Vital Audioの小型パワーサプライ「VA-05 MkII」を、定番機種VA-08 MkII との比較を交えてチェックしていきました。

VA-05 MkIIはVA-08 MkIIと比べるとアイソレーションと保護回路の性能が互角で、本体の寸法とポート数、そして各ポートの最大電流量という3点に違いがあります。このことからVA-05 MkIIは、エフェクター5台までの比較的小規模なエフェクトボードに給電するなら、アイソレート型としては最強のコストパフォーマンスを誇りながら、定番機種と同水準の電源供給ができる、強力なパワーサプライだと言えるでしょう。

また、VA-08 MkIIを性能で選んでいる人が電源を追加する場合、またVA-08 MkIIを買うか、同じ性能でコンパクトなVA-05 MkIIにするか、選ぶことができるわけです。最初の一台としても、増設のための一台としても、VA-05 MkIIは強烈にお勧めです。エフェクターが増えてきた人は、ぜひチェックしてみてください。

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