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Magneto GuitarsのP-90″タイプ”のピックアップ
ギブソンのエンジニアウォルター・フラー氏が開発した「P-90」は、1940年代から同社のフルアコに搭載され、またレスポールの歴史をその登場から支えてきた歴史あるピックアップです。加えて他社製品でも「P-90タイプ」というように、製品名が一般化している珍しいピックアップでもあります。スタンダードなシングルコイルやハムバッカーとは異なるサウンドで近年再評価されており、現在復刻版だけでなく色々なギターにセレクトされています。
P-90とはどんなピックアップなのか、じっくり見てみましょう。
上;ドッグイヤー型
下:ソープバー型
P-90は一般的なものよりコイルのターン数が多くとられた、大型でハイパワーなシングルコイルピックアップです。
クリーム色のピックアップ本体にマウント用のネジを通すタイプの「ソープバー」と呼ばれるタイプと、左右にマウント用の「耳」が出ている「ドッグイヤー」と呼ばれるタイプの2種類があり、ギターのモデルごとに使い分けられています。
二つの違いはマウント方法のみで、サウンドに違いがある訳ではありません。
左から:ストラト・シングルコイル、ジャズマスター・ピックアップ、レスポール・ハムバッカー、そしてP-90
P-90を語る上でよく語られるのが、「フェンダーのシングルコイルとはどこが違うか」です。
P-90は一見してジャズマスターに搭載されているラージサイズのシングルコイルと同じもののように思えますが、両者は設計が違っており、サウンドのキャラクターにも違いが反映されています。
フェンダーのピックアップは各弦を狙うポールピース自体が磁石となっており、磁力が強い反面、磁界はやや狭くなっています。それに対してギブソンのピックアップは磁石の土台に鉄製のポールピースを立てており、そのぶん磁力が弱まりますが磁界は広くなっています。
磁界が狭いとサウンドは鋭く、反対に広いと太くなる傾向にあることから、P-90はシングルコイルながら太いサウンドが得られるということがわかります。
P-90は、シングルコイル特有の「明瞭で、歯切れよくハッキリとした抜ける音」、またコイルサイズや磁界などの設計に由来する「太くて丸い音」のバランスが絶妙に取れている優秀なピックアップであるとして、一般的なシングルコイル、そしてハムバッカーに次ぐ第三の代表的ピックアップと見られています。
奥田民生氏は、「中音域がおいしい」として、それゆえ分厚いバンドサウンドを作ってもハムバッカーほど「こもらない」ところが魅力だと、また楽器のボリューム操作や右手のタッチなどでサウンドのキャラクターを操作しやすいため、歪みやダイナミクスの切り替えをエフェクターに頼らなくても済むことがメリットだとも述べています。
佐藤タイジ氏(THEATRE BROOK)は、自身のシグネイチャーモデルとしてP-90とビグスビーを搭載したYAMAHAのSGを使用しています。氏はP-90を搭載した自身のモデルに対して「音がザクッとしてクランチサウンドがすごく気持ちいい」、「歪んだ時にジャラっとした感じが出る」というコメントを残しています。
MAGNETO Guitars T-WAVEをギター博士が弾いてみた! 0:31〜3:00
P-90タイプをフロントに搭載したギターのサウンド。シングルコイルが持つタッチニュアンスを持ちながら、歪ませたドライブサウンドではジューシーで迫力があり、かき鳴らした時のジャランとした感触は独特だ。リードトーンもシングルコイルよりふくよかで存在感がある。
ソリッドギターで搭載されるP-90は、レスポールが最初です。1957年にハムバッカーがセレクトされるまでは、レスポールといえばP-90でした。
レス・ポール氏による1951年の演奏。年代からプロトタイプを使用しているものと思われます(レスポール発売は1952年)が、クリアでありながら太く、張りがあってよく通るサウンドだということが動画から判ります。
レスポールがハムバッカーに置き換わってからは、P-90はレスポールJr、スペシャルなど「ステューデントモデル(=学生でも買える価格帯の初心者用)」を象徴するピックアップとして扱われていきます。愛用者としてはマウンテンのレズリー・ウェスト氏が有名で、ハーモニクスの混じった強烈なサウンドが特徴的です。
https://youtu.be/VCEmAgak9V8
またP-90はハムバッカーに比べてハウリング(=フィードバック)しやすいことが弱点とされていますが、それを逆手に取って音楽に利用してしまうという試みも行われてきました。
国内では愛用者として
らが知られています。このため現代ではロックやパンク、ハードコアなどのバンドで「ギターボーカルが持つもの」また「歌うギタリストが持つもの」というイメージが定着しています。歪ませずぎるとハウリングが抑えられなくなってしまいますから、メタルやハードロックといったジャンルではあまり使用されないようです。
後から発明されたハムバッカーに比べてハウリングがしやすくノイズが出やすいというところがデメリットとされ、P-90はハムバッカーに置き換えられる扱いでした。しかし太くて抜けるサウンドに魅了され、このデメリットを抑えたり逆に利用したりするユーザーに愛用されています。
P-90 はミニハムバッカーと同じサイズで、シングルコイルより幅があり、ハムバッカーより幅をとりません。ですから一般的なシングルコイルやハムバッカーをP-90に載せ替えようとすると、サイズを合わせるために楽器を加工する必要が出てきます。大掛かりな施工が必要になるケースが多いので、改造はショップに依頼するのがお勧めです。
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シングルコイルから載せ替える場合は、ピックアップキャビティを拡張する必要があります。ストラトやSGスペシャルなど、大きなピックガードで覆われているギターには通称「弁当箱」と呼ばれる、フロントからリアにまで達する大きな穴が空けられていることがあります。この場合はピックガードの加工のみで交換ができますが、近年のモデルでは各ピックアップのサイズに合わせたザグりにとどめているモデルが主流で、ピックアップキャビティ拡張は必須となっています。
X Japanの故HIDE氏は、ミニハムバッカーが搭載されていたレスポール・デラックスに普通のハムバッカーを載せようとして彫刻刀で格闘したという逸話がありますが、ギターのボディ材はなかなかに硬いので、自分で施工するにはかなりの根性が必要です。
エスカッションマウントのハムバッカーから載せ替える場合、シングルコイルとは逆でピックアップキャビティが余ってしまいます。美観を損ねないためには一旦穴を埋めて空け直して塗装して、という大工事が必要ですから、もう一本ギターを買った方が安く治まるほどの工賃になる可能性があり、お勧めできません。またSGスペシャルやフライングVなどピックガードマウントのハムバッカーから載せ替える場合、ピックアップキャビティはピックガードで覆ってしまうので問題ないのですが、今度はピックガードの穴が余ってしまい、美観を損ねます。気にしないならそのままで、気になるようならピックガードの交換が必要になります。
以上のことから、ハムバッカーからP-90へ載せ替えるのは手間がかかるのでお勧めできません。どうしてもやりたかったら、ハムバッカーからそのまま交換できる「ハムバッカーサイズのP-90」がいろいろなメーカーからリリースされているので、こちらをお勧めします。
ミニハムバッカー及びジャズマスターのシングルコイルとは同じサイズなので、ネジ穴の位置を変更する以外にさほど大きな改造は必要ありません。
P-90は様々なモデルに採用されていますが、ギブソン製でないものは「P-90タイプ」という通称で呼ばれています。
左から:Les Paul Jr、SG Junior ’60s、SG ’50s Tribute、SG Standard P-90、Les Paul Special Double
ステューデントモデルとして開発されながらも、シンプルな操作性と突き抜けるサウンドが魅力。現在ではロックバンド御用達ともいえるモデルになっています。SGスペシャルはハムバッカー仕様のものもリリースされており、SGスタンダードとの区別が難しくなっています。
レスポール・ジュニア
レスポール・スペシャル
SGジュニア
SGスペシャル
ファイヤーバードというとミニハムバッカー搭載のイメージが強いですが、ノンリバースのモデルではP-90搭載機が一般視されています。
ギブソン・ファイヤーバード
リッケンバッカー325と並びジョン・レノン氏が愛用していたイメージが強烈に残る、エピフォンの誇る歴史的な名機です。ギブソンのES-335を思わせるダブルカッタウェイの薄いボディは一見セミアコのように見えますが、内部が完全にくり抜かれており分類上フルアコになっています。
ビートルズへのリスペクトを込めて「エピフォン・カジノ」特集
サウンドのキャラクターを大きく変更する事ができることから、ラインナップのバリエーションとしてP-90をセレクトするブランドが増えている傾向にあります。この場合他のパーツへの仕様変更が少なくなるソープバータイプが多く採用されます。
PRS SEシリーズは、手に入りやすい価格帯ながらクオリティに高評価の人気シリーズとしてお馴染みです。このシリーズからシングルカッタウェイのレスポールライクなボディにP-90を2基マウントしたモデルがリリースされています。
PRS SE 245 SOAPBARを…
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左3本:Bacchus DUKE MASTER、右3本:Bacchus DUKE T-MASTER
バッカスのレスポールタイプ「DUKE」に同社設計のP-90タイプをマウントした「DUKE MASTER」、テレキャスタータイプのフロントにP-90タイプをセレクトした「T-MASTER」がリリースされています。オイルフィニッシュのシックな輝きが渋い風貌です。
Bacchus DUKE MASTERを…
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ヤマハのストラト的なアプローチ「パシフィカ」の上位モデル「PACIFICA 600」シリーズ、中でもフレイムメイプルトップの美しいハードテイル(トレモロなし)モデルです。ピックアップはいずれもセイモア・ダンカン製で、フロントにP-90タイプ、リアにカバードのハムバッカーがマウントされています。
YAMAHAパシフィカのフラッグシップ「PACIFICA600」シリーズ特集
「E-THROBBER」は、EDWARDSの上位ブランドであるESPを出発点とした現代のスタンダードとなるギター。ESP版の構造と操作性をシンプルにまとめた廉価版という立ち位置ですが、アプローチの違う独立したモデルとして仕上がっています。フロントピックアップにヴィンテージP-90のレプリカである「セイモア・ダンカン SP90-1n」を搭載、トーンを絞ればジャジーな甘い音が、また低域を絞れば澄み切ったクリーントーンが得られます。
《シンプルにまとまった、現代のスタンダードモデル》EDWARDS「E-THROBBER」
国産ギターブランドCrews Maniac Soundのテレキャスター・タイプ「Vegas」は2基のP-90スタイル・ピックアップ「クルーズオリジナル・ヴェガス」を搭載。ローズウッド指板にメイプルネック、ボディー材はマホガニーという珍しいチョイス、ゴールドパーツを使うなどゴージャスな印象と独特のカッタウェイの形状で、テレキャスターをより洗練させたルックスが特徴です。
P-90タイプのサウンドで特に映える「ギターボーカルがストロークで掻き鳴らす」はもちろん、ジャズやブルースでのソロやハイゲイン・ドライブ・サウンドなど、幅広いギタリストに対応できるモデルとなっています。
Crews Maniac Soundについて
国産ギターブランドPsychederhythmの、リアにはシングルコイル/フロントにP-90スタイルのピックアップを搭載したテレキャスター・タイプ「Standard-T」。
ボディ材など基本スタイル以外のスペックは個体によって異なり、機種によってスウェーデン製「Lundgren P-90 Alnico V」、USA製「Vintage Vibe Guitars P-90A」、「Porter A-90」といったピックアップが搭載されます。
Psychederhythm Standard-Tを…
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フランスのギターブランド「MAGNETO Guitars(マグネート・ギターズ)」のラインナップの中には、フロントのみP-90ピックアップを搭載したテレキャスター・シェイプの T-WAVE というモデルが存在します。
リアはシングルコイル搭載(今回撮影したモデルはカスタムしてあるためシングルサイズ・ハムが搭載されています)、ピックガードにはスリットが入った独特のデザイン、オレンジのカラーもラインナップするなど、お洒落な印象のギターです。
ギター博士が実際に弾いてみた動画が次ページに紹介されています。P90 ピックアップについて気になる人はチェックしてみて下さい!!
MAGNETO Guitars T-WAVE をギター博士が弾いてみた!
P90ピックアップを…
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