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メタル・ミュージック志向のギター特集

メタル志向のエレキギター

当サイトでは常々「好きなギターを弾けば良い」「どんなギターでどんなジャンルにも挑戦しても良い」と訴えてきました。しかしそれはあくまでも、プレイヤー目線での話です。いっぽうギター自体はというと、開発コンセプトに従い

  • オールジャンル対応か特定のジャンルで活きるか
  • リードギター向き、あるいはサイドギター向き
  • クリーン/クランチ向き、あるいはがっつり歪ませる前提

などのように方向付けされているものが多く見られます。その中で今回は「メタル・ミュージック志向」のギターに注目、特徴やラインナップをチェックしていきます。

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1: メタル・ミュージックにおけるギタープレイの特徴とは? 1.1: 低音弦をきしませるヘヴィ・リフ 1.2: 華麗かつ流麗なリード 1.3: ムードを演出するクリーントーン 2: 「現代メタル用ギター」の特徴を探してみよう 2.1: 木材構成や構造 2.2: 指板の仕様 2.3: 弦の張力(弦長やヘッド角) 2.4: ピックアップなど電機系 2.5: ブリッジなど金属部品 2.6: まとめ:メタル用ギターってどんなの? 3: 代表的アーティストに見る、メタル用ギターラインナップ 3.1: 往年のHM/HR 3.2: ネオクラシカル 3.3: スラッシュメタル/メタルコア/デス 3.4: Djent(ジェント) 3.5: プログレッシブ 3.6: まだまだあるぞ!なみいるメタル向けギターたち

メタル・ミュージックにおけるギタープレイの特徴とは?

「メタル・ミュージックとは何か?」なんてなかなか哲学的な問いかけであり、あのバンドはメタル、このバンドはメタルじゃないけどこの時期はあながちそうでもない、ハードロックとヘヴィ・メタルの違いとは何か、なーんて細かく分析していくとキリがありません。ここでは「どこからどう見てもコレはメタルだ」と分類される演奏におけるだいたいおおまかな傾向を見て、この分野で特徴的な演奏方法や求められるサウンドがおおむねどんなものなのか、どんなギターが求められるのかを考えていきましょう。

1) 低音弦をきしませるヘヴィ・リフ

「ザクザク」あるいは「ズムズム」「ゴリゴリ」と表現されるへヴィなリフは、特にスラッシュ/メタルコア/ジェントといったサウンドで必須です。低い音の帯びる「重さ」にディストーションの「エッジ」を効かせたら、その時点ですでにメタル・ミュージックが成立していると言っても過言ではありません。よりへヴィなサウンドを得るため、太い弦に交換したりダウンチューニングを採用したり、果ては低音弦を追加した「多弦ギター」に持ち替えたりと、さまざまな工夫が凝らされます。そのなかで極端にハイテンポなミュートプレイが行われることもしばしばあり、歪ませた低音をクッキリと聴かせる、引き締まった鳴りを持ったギターが好まれます。

また、へヴィなサウンドの中にピッキング・ハーモニクスの超高音が差し込まれることも多くあります。中域を抑え、高域と低域を強調したいわゆる「ドンシャリ」サウンドでは特にこのハーモニクス音が引き立ちます。


Sepultura – Arise [OFFICIAL VIDEO]
サンバとコーヒー、そしてサッカーの国ブラジルから世界へ、殺戮と破壊を放り込んだバンド「セパルトゥラ」。ギターボーカルのマックス・カヴァレラ氏はヘヴィ・リフの演奏に専念するため、1弦と2弦を物理的に外しています。

2) 華麗かつ流麗なリード

ときに「ピロピロ」と表現されるテクニカルなギターソロが披露されることもしばしば見受けられますが、二人のギタリストがハモる「ツイン・リード」を見どころとしているバンドも、メタルでは特に多く見られます。

メタルのリードプレイでは、「撥弦楽器(はつげんがっき。ギターのように弦をハジく楽器)」特有の「心地よい減衰音」より、あたかもオルガンのような「豊かに伸びるサスティン」が重宝されます。そのため弦の振動エネルギーが少しでも損なわれないような硬質なネック/指板、ごつい金属パーツを搭載したギターが好まれます。演奏の激しさも手伝い、メタルで使用されるトレモロユニットは「FRT(フロイドローズ・トレモロシステム)」が圧倒的な多数派です。


DragonForce – Midnight Madness
超高速のツインギターがたっぷり味わえるメロディック・スピードメタルの雄「ドラゴンフォース」。メンバーが多国籍であることでも知られています。ドラムのジー・アンザローネ氏が大変素敵な笑顔でエグい演奏をしていますが、こうしたジャンルでは「極端に速いビートを涼しい顔で演奏する」というのが一つの美学となっています。

3) ムードを演出するクリーントーン

「一切クリーントーンを使用しない」というバンドもメタルには珍しくありませんが、クリーントーンが使われる場合、ロングトーンのアルペジオのようなコードの響きを演出するプレイが中心です。コードストロークや細かいアルペジオが必要な時にはいっそのことアコギに持ち替えてしまいます。そのためエレキギターにはアタック感よりも豊かなサスティンが求められます。メタルではしっかり歪ませるためにパワフルな高出力ピックアップが搭載されますが、「リアピックアップのみ高出力、フロントはクリーントーンのために低出力のものをセレクトする」というコンセプトで設計されたギターも存在します。


BABYMETAL – KARATE (OFFICIAL)
「アイドルとメタルの融合」でメタル界に革命を起こした「ベイビーメタル」。中間部でギター2本とピアノによる、澄みわたったアルペジオが堪能できます。このような透明感のあるサウンドは、鋼鉄のサウンドをドラマティックに演出するために極めて効果的です。なお、ライブにおいてはこの場面で観客も同じようにぶっ倒れ、何人かで助け起こすのが恒例となっています。

「現代メタル用ギター」の特徴を探してみよう

これまで見てきたように、メタル・ミュージックにおいては特にクッキリとした伸びのあるサウンドが求められます。またリードプレイでタッピングスゥィープなどさまざまな超絶技巧が惜しげもなく採用され、またヘヴィ・リフではミュートで超高速連打するなど、技術レベルの高い演奏が主体となります。そのため、ギターにはあらゆるプレイを支える高い演奏性も求められます。ネックがいかに握りやすいかはもちろん、ハイポジションがいかに弾きやすいか、操作系が操作しやすいか/邪魔にならないか、本体が重すぎたりバランスが悪かったりしないかなど、さまざまなポイントで工夫が凝らされます。

ここからは、メタル・ミュージックを特に意識していると考えられるギターを6本ピックアップし、それぞれの仕様を見比べていくことで、現在流通している「メタル志向のギター」がだいたいどういうものなのかを考えていきましょう。

  • FRT搭載スーパーストラト:E-II HORIZON FR-7
  • レスポールタイプ:E-II EC BB
  • 固定ブリッジ/スーパーロングスケール:SCHECTER APOCALYPSE C7(AD-C7-APOC)
  • マルチスケール:Ormsby HYPE GTR6 MSMP MG
  • 尖った変形:Jackson Pro Series RR
  • テレキャスタータイプ:Ibanez FRIX6FDQM

木材構成や構造


FR-7

EC BB

AD-C7-APOC

HYPE6

RR

FRIX6FDQM
ボディ アルダー ハードメイプルトップ/マホガニーバック スワンプアッシュ マホガニー マホガニー キルテッドメイプルトップ/マホガニーボディ
ネック ハードメイプル3P ハードメイプル3P メープル/パドーク5P(カーボンファイバーの補強入り) ハードメイプル3P メイプル1P(グラファイトの補強入り) メイプル/パープルハート3P
ネックボリュート あり あり あり あり なし なし
ネックジョイント スルーネック セットネック セットネック セットネック スルーネック ボルトオンジョイント

表:メタル代表5機種、木材構成と構造の比較

黒いギターが多数派な印象ですが、メタルを意識したギターのほとんどがマッチングヘッド(ヘッドとボディが同色)になっています。ボディには、おおむねエレキギターの伝統に根ざした木材が使われています。マホガニーに人気が集中している感がありますが、これは時代の流行にけっこう左右されます。総じてソリッドボディ構造であり、内部に空洞を持つホロウ構造のギターがメタルで使用されるのは割とレアなケースです。近年、レスポールタイプに見られる「トップ/バック」という表記に加え、「トップ/ボディ」という表記も散見します。これは

  • トップ/バック表記:ある程度の厚さを持つ木材を貼り合わせて一つのボディを作る(二つの木材で音を作る)
  • トップ/ボディ表記:ボディのトップに化粧板を貼ってドレスアップする(ボディの木材で音を作る)

という意味です。

鋼鉄サウンドの秘密は頑丈なネックに?

ネックはメイプルが主体で、レスポールタイプですらマホガニーが使われていません。また積層構造や補強材などを積極的に取り入れており、「ネックをいかに強固に設計するか」にかなりのこだわりが込められているのが分かります。ヴィンテージ・スタイルのギターでは、ネックはネック自体も鳴りを作るいわゆる「ネック鳴り」を重視してメイプルでも板目材が使われますし、マホガニーネックにも人気があり、「1Pネックこそ至高」という風潮もあります。いっぽうメタル用ほかモダン・スタイルのギターでは、「硬質なネックは音の伝達が速い」というところに注目していて、一瞬でも速くボディに振動を伝えることを目指しています。

「ネックボリュート」はヘッド/ネックの境界にある盛り上がり部分のことで、この部分をガッチリと補強して鳴りを引き締める効果があります。FRIX6FDQMほか代表機種RGなど、アイバニーズではネックボリュートを使わないモデルが目立ちますが、ダウンチューニング専用機RGDでは採り入れています。これを採用するかしないかは、ギターの開発コンセプトに依存するようです。

ネックジョイントで作るギターの個性

ネックジョイントにおいてはバリエーションが見られます。スルーネックは「ネックのジョイント法の中で、最もサスティンに優れる」と考えられており、またハイポジションの演奏性が極めて高い、もはやメタルのためにあると言っても過言ではない構造です。メタル志向ギターにおけるセットネックは、スルーネック並みの演奏性を持たせる設計になることが多いようです。いっぽうボルトオンジョイントはアタック感に優れ、メンテナンス性がかなり高いのが大きなメリットです。アイバニーズはこの構造に並々ならぬこだわりがあり、ソリッドギターの大多数がボルトオンです。

指板の仕様


FR-7

EC BB

AD-C7-APOC

HYPE6

RR

FRIX6FDQM
指板材 エボニー エボニー エボニー ロックメイプル エボニー エボニー
指板R 305mm(約12インチ) 305mm(約12インチ) 公式表示なし(かなり平滑) 16” 12”~16”(コニカル・フィンガーボード) 400mm(約16インチ)
フレット エクストラ・ジャンボ(24F) エクストラ・ジャンボ(22F) スレンレス製エクストラジャンボ(24F) スレンレス製ジャンボ(24F) ジャンボ(24F) ジャンボ(24F)

表:メタル代表5機種、指板仕様の比較

指板については、かなり明確な傾向が見られます。指板材には極めて硬質な木材が選ばれ、指板Rはかなり平滑、フレットはでかく、たいがい24フレット仕様、というのがメタルでは普通です。ポジションによってRが変化する指板は「コンパウンド・ラジアス」と一般に言われますが、この分野での第一人者であるジャクソンでは「コニカル・フィンガーボード(円錐指板)」と呼んでいます。トム・アンダーソンサーなど万能志向のハイエンドギターで採用されているステンレス製フレットが、メタルでは比較的低価格なモデルでも積極的に取り入れられています。

弦の張力(弦長やヘッド角)


FR-7

EC BB

AD-C7-APOC

HYPE6

RR

FRIX6FDQM
弦長 648mm(約25.5”) 628mm(約24.75”) 26.5″ 25.5″-27.5″ 25.5” 25.5″
ヘッド角 あり あり あり あり あり あり
その他の工夫 テンションバー追加 TOMブリッジ マルチスケール

表:メタル代表5機種、弦張力を稼ぐ工夫

エレキギターの伝統に基づいた弦長が依然として主流である一方、ダウンチューニングでの使用を想定して弦長を延長し、張力を稼ぐギターも目立ってきています。今回の6本全て、ヘッドとネックが平行にできているものはなく、ヘッド角がついているのも面白いところです。ヘッドに角度が付けられると、ペグから伸びる弦はナットにしっかりと押しつけられ、またナットからペグまでの角度が揃いやすいことからテンションバランスが良好になります。

近年珍しくなくなってきた「マルチスケール(ファンフレット)」は、高音弦の長さはそのままに低音弦の長さを増して張力を上げるもので、各弦の響き方が均一になり和音が美しく響きます。これがメタルにおいては、ソロで多用する高音弦の弾きやすさはそのままに、リフで多用する低音弦の張りを向上させる設計として扱われます。

ピックアップなど電機系


FR-7

EC BB

AD-C7-APOC

HYPE6

RR

FRIX6FDQM
ピックアップ (F&R) EMG 707 (F) EMG 60, (R) EMG 81 (F&R)Schecter USA Apocalypse-VII (F)De La Creme A2、
(R)Nunchucker A8
(F&R)SeymourDuncan SH-6(Distortion) (F&R)DiMarzio Fusion Edge
マウント法 ボディにダイレクト エスカッションマウント ボディにダイレクト ボディにダイレクト エスカッションマウント ボディにダイレクト
操作系 1V1T、トグルスイッチ 2V1T、トグルスイッチ 1V1T、3Wayセレクタ(トーンでコイルタップ) 1V1T、トグルスイッチ(トーンでコイルタップ) 1V1T、トグルスイッチ 1V、3Wayセレクタ、タップSW

表:メタル代表5機種、電気系の比較

ピックアップは総じてパワフルなものが搭載されていますが、このうちオームスビーのHYPE6では、フロントに比較的パワーの低いハムバッカーが採用されています。ハムバッカーをボディに直接取り付ける「ダイレクト・マウント」が多数派ですが、エスカッションマウントよりもタイトなサウンドになる傾向にあります。

操作系はシンプルなものが多く、特に今回の5本では5Wayセレクタスイッチが見当たりません。トーンポットを持たない「直結仕様」のギターもありますが、トーンという機能を自ら手放すことでしか得られない「音抜け」を狙っての設計です。幅広いジャンルでの使用を想定した多機能ギターなら必ず搭載されるコイルタップは、まあまあ少数派です。

ブリッジなど金属部品


FR-7

EC BB

AD-C7-APOC

HYPE6

RR

FRIX6FDQM
ペグ ロトマチック・タイプ ロトマチック・タイプ(ロック式) ロトマチック・タイプ(ロック式) ロトマチック・タイプ(ロック式) ロトマチック・タイプ ロトマチック・タイプ
ブリッジ フロイドローズ GOTOH製TOMブリッジ Hipshot製スルーボディ Hipshot製スルーボディ フロイドローズ ジブラルタル・スタンダードII

表:メタル代表5機種、金属部品の比較

ペグは総じて堅牢なロトマチック・タイプ、FRT以外はロック式ペグとなっています。ブリッジは重厚で強固なものが選ばれ、鉄板を曲げて作るようなトラッドなスタイルのものは稀有な存在です。

まとめ:メタル用ギターってどんなの?

今回の6本を見た限りではありますが、メタル・ミュージックでの使用を想定したエレキギターは、

  • ソリッドボディで、尖ったヤツもいる
  • カッチカチのネックと指板で、ハイポジが良好
  • でかいフレット、ごついペグとブリッジ
  • シンプル操作で出力がでかい

だいたいこういうものだと言えます。現代のエレキギターはどれも、伝統的なストラトやレスポールの影響から逃れることはできません。しかしその中でも「メタル用」として設計されたギターは年々進化していくメタル・ミュージックを見つめ、過去を振り返ることなく進化を重ねていきました。その結果、現在の姿があるのです。出発点となったトラッドなギターの遺伝子は残しつつも、もはや「種」の異なる存在であると言えるでしょう。

代表的アーティストに見る、メタル用ギターラインナップ

ではこんどは、メタル・ミュージックにおける代表的なアーティストをチェックしながら、いろいろなジャンルのメタルに合うギターを見ていきましょう。とは言ってもメタルのジャンルは60種類にもなります。とてもそのすべてに対していちいちチェックしきれないため、注目するジャンルはキュっと絞っています。