ギターメンテナンス

《自分でできる!》エレキギターのメンテナンス方法

[記事公開日]2024/01/24 04:59
[最終更新日]2024/01/24 04:59

大切なギター、お手入れしてますか?「メンテナンス」って言うと少し大げさかもしれませんが、日頃のちょっとしたお手入れも、メンテナンスにじゅうぶん含まれます。メンテナンスが行き届いているギターは弾きやすく、安心して演奏できます。音楽の道具として頼りになり、弾き手の上達を助けてくれます。

こちらのページでは、日常的に施すデイリー・メンテナンスから定期的にやっておきたい本格的なメンテナンス、ちょっとしたカスタマイズまでを総合的に紹介しています。また、いまさら聞けないギターの各部位についても紹介しています。メンテナンスってどんなことをするのか、どんなお手入れが必要なのか、ぜひチェックしていってください。

そもそも、「メンテナンス」とは?

「メンテナンス(Maintenance)」は「お手入れ」や「整備」に言い換えられる「良好な状態を維持するための作業全般」を意味し、「点検(Inspection)」、「調整(Adjustment)」、「修理(Repair)」が含まれます。修理の延長であっても、配線の変更やパーツのアップグレードのように仕様変更を含む作業は、「カスタマイズ(Customize)」や「モディファイ(Modify)」と表現して区別されます。

ギターって、どうしてもメンテナンスしなきゃ駄目?

ギターのお手入れ

ギターは演奏することで、いろいろな箇所に弦の摩擦や振動を受けます。また弾かなくても、常に温度や湿度の変化にさらされています。こうしたことで、ギターの状態は少しずつ変化していきます。これを放置したままでいると弾きにくいギターで練習を続けることになったり、チューニングを合わせたはずなのにコードの響きがおかしくなったりし、果ては決定的な場面で音が出なくなってしまうことまでありえます。

ギターの良好なコンディションを長持ちさせるためには、第一にこまめに弾いて、弦の感触や操作系の効き具合を確認し、状態の変化をいち早くキャッチすることです。このほか、日ごろからギターを大切に扱い、良い状態を少しでも長持ちさせられるように心がけましょう。そのためにまず、日常的に施すデイリー・メンテナンスを見ていきましょう。

《気軽にできる!》デイリー・メンテナンス

ではいよいよ、デイリー・メンテナンスの極意を紹介します。それは、

  • 弾いた後は、乾いた布で弦や本体を拭く
  • 風通しの良い日陰で保管する
  • ケースに入れ、安全に保管/運搬する

以上です!
ものすっごくカンタンなことのようですが、これを実践するだけでギターの良好なコンディションを維持することができます。それぞれについて見ていきましょう。

弾いた後は、乾いた布で弦や本体を拭く

ギタークロス弦も本体も金属部品も、きれいに拭いてあげよう。
キレイな音は、キレイなギターから。

弦やボディ、ネックには汗や皮脂が付着します。これらを乾いた布で拭き取ってあげましょう。第一に弦の寿命を伸ばすことができますが、この習慣はギター本体のコンディションを保つのにも効果的です。 残された汗や皮脂はホコリを吸着しやすいし、金属部品のサビを進行させてしまいます。そのままケースに収めるとケース内に水分を閉じ込めてしまいますから、ネックや指板のほか、ジャックやポットなど電気部品にも影響します。またラッカー塗装は皮脂や汗に反応して白濁したり軟化したりすることがあり、著しく美観を損ねたり、手触りが悪くなったりといったトラブルに発展することまであります。 ギターの拭き上げには、楽器専用のクリーニング・クロスが最適です。デリケートな塗装面にキズを付けにくく、効率よく汚れを除去できます。

ギタークロスの使い方とおすすめ製品

風通しの良い日陰で保管する

ギタースタンドギタースタンドを利用して転倒を防止しよう。

ギターは人間が快適な環境で保管するのが良く、過度な湿気は避け、風通しの良い日陰に置くのがベストです。一般的にはリビングや書斎が最適と言われますが、窓際は避けましょう。窓際は湿度や温度の変化が大きく、日光を直接浴びることもあるからです。直射日光はギターの塗装面を日焼けさせてしまうことがあるほか、急激な乾燥で調整を崩してしまうことがあります。


ギタースタンドの選び方とオススメの製品

ケースに入れ、安全に保管/運搬する

ギターケース軽くて背負えるのが良いか、頑丈なのが良いか。
それはあなた次第。

外への持ち出しや並べての保管など、ギターケースは必須と言えるアイテムです。クッション性の高いケースは、倒しても落としても中のギターを守ってくれます。ハードケースを使うなら、湿度調整材でケース内の湿度を一定に保つこともできます。


ギターケースの種類と選び方


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「弦は緩めて保管するべきか」問題

ギターを保管するの弦は、基本的には張りっぱなしで大丈夫です。
エレキギターの弦張力は、6本の合計でだいたい50kgくらいです。これほどの力がネックにずーっとかかっているのだから、良い状態を維持しようと思ったら弦を緩めて保管しなければならない、という考えが自然かもしれません。しかし、ギターはネックに弦張力がかかっている状態を前提に設計されており、弦を張ってチューニングが合っている状態がノーマルです。むしろ弦で一方向に引っ張られるので、ネックは左右に曲がったりねじれたりしにくくなります。
またストラトキャスターなどアーム付きのギターの場合、弦を緩めることでブリッジの位置が動いて、次に弾く時のチューニングに必要以上の時間がかかってしまうことがあります。フルアコには弦張力を利用してブリッジ位置を固定するものがあり、弦を緩めることでブリッジ位置がズレて正しいチューニングができなくなってしまうことがあります。

メンテナンスに必要な道具は?

ニッパー弦交換には、頑丈なニッパーが欠かせない。

本格的なメンテナンスを紹介する前に、揃えておくと良い道具類について見ていきましょう。弦交換のためのニッパー、各部調整のためのドライバーやレンチは絶対的に必要です。このほかいろいろな道具を使うことで、メンテナンス作業がスムーズかつ確実に進められます。
また、いろいろな作業に特化したグッズも考案されています。使わなくてもメンテナンスできますが、あると作業が爆速で進行します。


メンテナンスに必要な道具を揃えよう
《メンテナンスのお供に》なくてもいいけどあると便利なギターグッズ

《ここからが本番!》本格的なメンテナンスをしてみよう

先述の「デイリー・メンテナンス」は、ギターの状態変化を遅らせたりやわらげたりする、守りのためのメンテナンスです。これから見ていく本格的なメンテナンスは、ギターの状態を確認し、良くない状態を見つけたら修正/復旧する、改善までできるかもしれない、いわば攻めのメンテナンスです。ぜひ実践してみてください。

弦を交換してみよう

弦交換弦を交換したばかりのストラトキャスター。
余分な弦をカットするのには、専用のニッパーが必要。

本格的なメンテナンスには弦を外さないとできない作業もありますから、第一に「弦交換」ができるようになりましょう。交換したばかりの新しい弦は手触りや音が良いばかりでなく、振動のバラつきやムラが少ないので、ギターの状態を正確に把握しやすくなります。
弦の張り方は、モデルごとにいろいろです。まずは自分のギターの弦をどうやって交換するのか、この一点をしっかり押さえましょう。


《楽器ごとに紹介!》ギターの弦を交換する方法

指板を磨こう

指板クリーニング

弦交換に併せて、指板のクリーニングをしておきましょう。クリーナーで汚れを除去して、オイルやワックスを塗って完成です。塗装されているメイプル指板では美観を維持でき、塗装されていないローズウッド指板やエボニー指板などでは反りやひび割れの防止効果が期待できます。

《弦交換のついでにできる》ギターのお手入れ5つを紹介!

フレットも磨こう

フレット磨きプロは徹底的に研磨するが、
そこまでしなくてもかなりの効果がある。

「フレット磨き」も、弦交換のついでにできるメンテナンスです。磨きあげられた輝くフレットは弦との摩擦が抑えられ、滑らかで心地よい運指を可能にします。


「フレット磨き」やったことある?プロの磨きを体験してみた!


ギターの弾き心地をチェックしてみよう

一般に「弾き心地の良いギター」は力まずに演奏でき、コードが美しく響きます。あなたのギターはどうでしょうか?現状で自分のギターがどういう状態なのか、弾きやすいのか、美しい響きが得られるのかをチェックしてみましょう。ほとんどのものが、練習の合間などで日常的に確認できます。
これから紹介するのはギターの弾き心地を判定する8つのチェックポイントで、リンク先ではその原因や対処法を詳しく解説しています。一般的に良好と言われるのがどんな状態か、どうすればその状態に持っていけるのかを見ていきましょう。お気に入りのギターを、もっと弾きやすくできるかもしれません。

Check Point 1:弦の「ビビり」が出ていないか

フレット磨き調整不良ではなく、弾き方が原因でビビることもある。

弦の「ビビり」とは、弾いた弦の音に「ビビビ・・・」と余計な音が混ざった状態を言います。これは振動する弦がフレットに当たったり、弦振動でどこかのパーツが共振したりして起こる現象です。普通のピッキングでどこを弾いてもビビらないのが、良好な状態です。


弦がビビる、その原因を探ってみよう

Check Point 2:弦がいつも同じ切れ方をしていないか

弦がよく切れるという人は、弦のどこが切れたかを覚えておきましょう。ペグ位置やナット、特定のフレットなどいつも決まった位置で弦が切れる場合、そこに原因が隠れているかもしれません。

弦が切れにくくなる対応策を教えてほしい

Check Point 3:ネックの「反り」は適正か

ネックの「反り」明らかに反っている状態だと、かなり弾きにくい。

ギターの弾き心地を大きく左右するのが、ネックのコンディションです。ネックは「パッと見るだけでは分からないほど、ごくごく緩やかな順反り」が最も理想的な状態です。見るだけで判断するのは難しいですが、簡単にチェックすることができます。反りの判定法と、調整の方法を知っておきましょう。

ネックの反りを確認・調整する

Check Point 4:弦高は適正か

弦高調整低弦高が好まれる傾向にあるが、
プレイスタイルによっては高い方が良いことも。

「弦高(げんこう)」とは、「弦とフレットとの隙間の距離」のことです。弦高が高いと澄んだ音が得られる半面、弦張力が上がるので押弦に筋力が要求されます。逆に低いと弾きやすくなりますが、低すぎると「ビビり」が生じてしまいます。


弦高を調整する

Check Point 5:オクターブチューニングは合っているか

オクターブチューニングネック調整や弦高調整の後には、必ず確認しよう。

「オクターブチューニング(オクターブ調整)」は、押さえる弦が指板の方向へと僅かに引っ張られることで生じるチューニングのズレを補正する調整です。12フレットのナチュラル・ハーモニクスと12フレットを押さえた時の音高が同じだと正常です。オクターブチューニングが崩れていると、コードが美しく響かなくなります。


オクターブチューニングのあわせ方

Check Point 6:電気部品に不具合はないか

オクターブチューニング部品交換する時間のない土壇場でこそ威力を発揮する

ピックアップ・セレクターやボリューム・ノブなど電気系を操作して、正しく機能しているかをチェックしてみましょう。電気系の部品は古くなると接点が劣化し、操作するとチリチリとかガリッとかいうノイズを発するようになることがあり、放置すると音が出なくなってしまうこともあります。劣化した電気部品は新品への交換が基本ですが、いざというときのために「接点復活剤」を用意しておきましょう。


接触不良で音が出なくなったら?接点復活剤を使ってみよう!

Check Point 7:ピックアップの高さは適正か

オクターブチューニング

弦とピックアップとの距離は、音量とサウンドを決定づける重要なポイントです。ピックアップはネジで固定されているので振動を受けて知らない間に回っていることがあるし、音楽に要求されるサウンドや自分の欲しいサウンドが変化することもあります。フェンダー系のシングルコイルでは本体を上下させて調節しますが、ハムバッカーやP-90では、弦ごとの音量も調節できます。


ギターのピックアップで音は変わる?

Check Point 8:各部のネジは緩んでいないか

オクターブチューニングストラップピンの緩みは重大な事故の原因になりえる

弦の振動を受け続けることで、締めたはずのネジが緩んでくることがあります。特にストラップピンとアウトプットジャックの6角ナットは緩みやすいポイントです。


ストラップピンの緩み、どう修理する?


メンテナンスの頻度は?

どんなスパンでメンテナンスするかについての厳格な規定はありませんが、

  • 季節の変わり目ごとに
  • 弦交換のたびに
  • ツアーやレコーディングなど本番の前に
  • その他、気が向いたら

というあたりが一般的です。ギターの置かれる環境や演奏する頻度により、それこそさまざまです。
ギターのセッティングによっても同様です。ギリッギリまで追い込んだセッティングのギターには、季節ごとのメンテナンスが要求されるかもしれません。しかし、ある程度ゆとりと持たせたセッティングのギターは、季節の変わり目で多少ネックが動いても許容範囲に収まります。

ギターのパーツについて詳しく知ろう

知っているつもりで意外と詳しく知らなかったかもしれない、エレキギターを構成する各パーツについても確認しておきましょう。リンク先ではそれぞれのメンテナンス法についても触れています。


ちょっとしたカスタマイズにも挑戦してみよう

もう少し踏みこんだ内容のメンテナンスも見ていきましょう。これらは道具も時間も技術もそれなりに必要なので、プロのリペアマンに依頼しても良いでしょう。

シールドにも気を配ろう



以上、日ごろのお手入れから大規模な修理/カスタマイズまでを見てきました。エレキギターは木製楽器なので、時間と共に少しずつコンディションが変化していきます。また部品点数が多いので、長く使っている間にいろいろな部品が消耗したり故障したりします。そのつど手を入れて良好な状態を保つことにより、大事なギターを末永く愛用することができます。自分の目と手でメンテナンスすることで、ギターの理解や考えが深まり、愛機への愛情も深まっていきます。定期的にしっかりメンテナンスして、いつも良い状態のギターを弾きましょう。

いっぽうで部品が消耗したり故障したりしても、悲しむことはありません。アップグレードのチャンスが訪れたのです。もっと良い部品に交換していくことで、もともと不特定多数のギタリストに向けて出荷されたエレキギターは育ち、まさに自分のためだけの究極の一本へとカスタマイズされていくわけです。

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