「7弦ギター」は通常のギターに低音弦を追加し、低音側に音域を拡張したギターです。かつては一部のプレイヤーが使用するだけでしたが、スティーヴ・ヴァイ氏やKORNの活躍により、特にヘヴィ・ロックのシーンでは当たり前とまで言えるほどに普及しています。ここではその7弦ギターに注目し、歴史や代表的プレイヤー、有名ブランドの製品などを紹介していきます。
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1: 7弦ギターの歴史 1.1: 「ヴァイ以前」の7弦ギター 1.2: 初の量産7弦「ユニヴァース」爆誕 1.3: 「ヴァイで育った世代」の台頭 2: 先駆者「ユニヴァース」に見る7弦ギターの特徴 2.1: ワイドなネック 2.2: 重量感のあるサウンドと楽器本体 2.3: 持ち替えても違和感がない? 2.4: ベーシストとの関係は? 3: 7弦ギター入門機におすすめモデル 3.1: Ibanez「QX527PB」 3.2: Ibanez「RG7421PB」 3.3: GrassRoots G-HR-60FX7 Black Satin 3.4: Jackson JS Series「DINKY ARCH TOP JS32-7 DKA HT」 4: その他、各ブランドの7弦ギターラインナップ 4.1: 【定番系】10万円~20万円近辺 4.2: 【高級機】独自設計で魅せる高機能モデル 5: 多弦へのアンチテーゼ
人類史における7弦ギターの歴史は以外に古く、南米ではショーロやサンバの伴奏楽器として100年以上も前から使用されていました。このジャンルで使用されるのはクラシックギターですが、1930年代にナイロンが発明される以前には「ガット(羊の腸を加工した弦)」が使用されていました。第7弦のチューニングは半音高い「C」が一般的です。
ジャズで初めて7弦ギターを使用したのは、レジェンドと称されるジョージ・ヴァン・エプス氏(George Van Eps、1913-1998)でした。1938年にエピフォンとの共同開発で製作されていますが、主にソロギターの演奏において、高いポジションでのプレイで低音を得ることを目的としていたようです。エプス氏に感化されて7弦ギターを持つギタリストも何人か現れますが、残念ながらジャズというジャンルでの7弦ギターはスタンダードな楽器にまではなり得ていません。
George Van Eps and Howard Alden – Night and Day
ロックで7弦ギターの先駆者といえば、スティーヴ・ヴァイ(Steve Vai、1960-)氏にほかなりません。ヴァイ氏は自身のシグネイチャーモデル「JEM」を7弦にした「Universe(ユニヴァース)」をアイバニーズと共同開発していますが、ソリッドギターの7弦モデルには前例がなく、ピックアップはもちろんのことナットやブリッジなどのパーツ(しかもいきなりフロイドローズタイプ)を新規に開発しなければならず、ユニヴァース完成にはかなりの苦労があったようです。
ホワイトスネイクのアルバム「Slip of the Tang(スリップオブ・ザ・タング。1989年)」、ソロ第2作「Passion and Warfare(パッション・アンド・ワーフェア。1990年)」でヴァイ氏の7弦ギターはデビュー。ヴァイ氏があまりにも長身であり手の大きさも尋常でないためか、極端に幅の広いネックを持つ7弦ギターに違和感がほとんどありません。
Steve Vai – “Star Spangled Banner”
「Slip of the Tang」、「Passion and Warfare」ともにロック史における重要な名盤であり、7弦ギターの魅力が世界中に知れ渡ることとなりました。しかしあまりにヴァイ氏のイメージが強かったためか、ホワイトスネイクで共演したウリ・ジョン・ロート氏(Uli John Roth、1954-)の使用例があるのみで、しばらく目立った使われ方をすることがありませんでした。ユニヴァースの販売台数は伸び悩んでいましたが、ヴァイ氏自身は自分の影響でユニヴァースを買った若い人たちが成長し、いずれ音楽シーンを変えていくということを予見していました。
ヴァイ氏は6弦のJEMと7弦のユニヴァースを使い分けるというスタイルでしたが、やがて7弦ギターをメインに使用するアーティストが現れます。1994年にデビューした「KORN(コーン)」は、アイバニーズ7弦ギターの使い手が二人もいる強烈にヘヴィなサウンドと陰鬱な世界観を武器に、「OASIS(オアシス)」や「BUR(ブラー)」を代表とする英国の「ブリットポップ」、カート・コバーン(Kurt kobain、1967-1994)氏率いる「NIRVANA(ニルヴァーナ)」が牽引した米国の「グランジ」が席巻していたロックシーンに深く切り込みます。KORNのマンキー(Munky)氏は熱烈なヴァイ氏のファンで、「Passion and Warfare」のコピーに明け暮れていたといいます。
Korn – Got The Life
7弦ギターはこの時まで「テクニカル系のギタリストが使うもの」というイメージが定着していました。しかしヘヴィなツインギターを特徴とするKORNの台頭により、ラップやヒップホップとヘヴィなグルーヴ、そして7弦ギターという組み合わせがいかに魅力的かが証明されました。KORNの成功により、7弦ギターのヘヴィなサウンドを持ち味とするバンドが続々とデビューしていきます。
4年後となる1998年は、KORN自身のレーベルが立ち上げられ多くのヘヴィ・ロックバンドが輩出し、またKORNの3作目「Follow the Leader」が全米一位を記録しました。またこの分野の代表格でありKORNを上回るヒットを記録したリンプ・ビスキット(Limp Biskit)がデビューし、ラップとヘヴィ・ロックが融合した「ニューメタル」というジャンルが完成した記念すべき年でした。グランジを牽引していたカート・コバーン氏が亡くなったのもこの年で、ロックシーンがグランジからニューメタルへの転換を遂げる象徴的な年でもありました。
Limp Bizkit – Re-Arranged
現代ではヘヴィ指向のエレキギターのラインナップには必ずと言っていいほど7弦があり、8弦/9弦と音域を拡大させたモデルも発表されていきます。7弦以上の多弦ギターを専門とするブランドまで台頭しており、7弦を代表とする多弦ギターはロックシーンに欠かせないアイテムとなっています。
さて次に、7弦ギターの歴史を築いたユニヴァースの現行モデル「UV70P」をピックアップして、7弦ギターの特徴を見ていきましょう。
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7弦ギターは通常のギターに対して物理的に弦を追加している楽器なので、そのぶんだけネックの幅が拡張されます。UV70Pのナット幅48mmは、通常のエレキギターではほぼ見受けられないサイズです。愛用者からは「慣れれば問題なし」と言われますが、親指を出してネックを握るときに弾きにくさを感じるというギタリストは多くいるでしょう。
ちなみに幅が広く太いといっても一般的なクラシックギターのナット幅(50〜53mm)ほどではないので、「7弦にトライしたいけど、ネックの幅が心配」と考えている人は、身近なクラシックギターに触れてみるのをお勧めします。
7弦を鳴らした音には格別な重量感がありますが、通常のギターに比べてネックが広くなった分だけネックの体積が増し、そのぶん本体の重量が増します。厳密には追加されたペグやサドルなど、細かなパーツの分も重さが上乗せされます(ただしUV70Pの場合、重いのはベースとなっているJEMシリーズとの比較であり、他のタイプのギターより重いとは一概に言えません)。そしてネック本体の体積が増えたことにより、ネックの鳴りが豊かになり、弦振動にパンチが加わります。
また、UV70Pのペグは片側に並んでいるので、ヘッドの長さが弦一本分伸びます。「UV70P」には純正のギグケースが付属しているので心配ありませんが、非純正のケースには収まらない場合がありますので注意と確認が必要です。
ユニヴァースはJEMから持ち替えても違和感をなるべく感じないように作られています。ヘッドが大きくネックが太く、またペグが一個追加されているにもかかわらずボディバランスは良好で、「ヘッド落ち」の心配もありません。ピックアップ配列、コントロール系、トレモロシステムなど基本的な仕様は共通で、弦長もフェンダーサイズ(648mm)と共通しています。ただし、7弦ギターは常時不用弦のミュートを必要としますので、オープンコードをガシっと押さえてジャンっとストロークするといったアコギ由来のプレイ、またソウル/ファンク系のシャープなカッティングが極端に困難になります。
いっぽうパワーコードを主体としたプレイやタッピング/スウィープなどを駆使したテクニカルなプレイには何ら違和感が無く、その意味でもヘヴィ・ロックでこそ使いやすい楽器であると言えます。
レギュラーチューニングにおける7弦ギターの最も低い音「ローB」は、4弦ベースの3弦2フレットと同じ高さです。この音は4弦ベースで出すことのできる最も低いBと同じですが、7弦ギターと4弦ベースとではBからEbまで、楽器で出せる低音が同じ高さになります。このままではギターとベースがオクターブユニゾンするという「ロックにおけるアンサンブルの基本」を成立させることができないポイントが生じてしまいます。
7弦ギターで気持ちのよいヘヴィ・サウンドを得るためには、5弦に持ち替えてもらうか太い弦を張ってローBに対処してもらうかするなど、ベーシストの協力が求められます。
これから7弦ギターをはじめてみたい/最初の一本を探しているという人に最適な、おすすめの7弦ギター入門モデルを紹介していきましょう。
全フレットが同じ角度にナナメになっている「スラントフレット」は、Ibanezだけの独自設計。人間の骨格を考慮した設計で、実はとっても弾きやすい。
Ibanez「QX527PB」は、高級機の多いヘッドレス7弦市場に10万円台という捨て身のコスパで深々と斬り込んだ意欲作です。Ibanezらしいプレイアビリティとサウンドバリエーションはもちろん、Qシリーズのために新たに開発した部品が多くあり、Ibanezの本気度が伺えます。本体が重く大きくなりがち、また特にヘッド側が重くなりがちな7弦ギターにおいて、「ヘッドレスギター」は大変有効なソリューションです。
Hakase Etude 12 – 7 Strings Melody
7弦ギターの低音は、時に甘くセクシーでもある。
この演奏の楽譜は「MUSIC BASE」で購入できます。
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アイバニーズはスティーヴ・ヴァイ氏と共に7弦ギターの歴史を永らく支えてきており、この分野では一日の長があります。7弦のムーブメントを牽引してきたヴァイ氏とKORNのシグネイチャーモデルを筆頭に、看板モデル「RG」をはじめ「RGA」「RGD」「S」またその他のアーティストモデルなど、多くの7弦ギターをラインナップさせています。
ハード/ヘヴィ・ロックの王道「Ibanez RG」徹底分析!
Ibanez「RG7421PB」は同じものが二つとない、ポプラバール製ボディトップの美しい7弦ギターです。3層のメイプル製ネックと超硬度のジャトバ製指板という頑丈なネックとジャンボフレット、そしてセラミック磁石を使用したハムバッカー2基という組み合わせは引き締まった音を高出力でアウトプットするため、ヘヴィ系のサウンドに特に良好です。5WAYセレクタースイッチにより、サウンドバリエーションも豊かです。
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ESP傘下のブランド「GrassRoots(グラスルーツ)」の「G-HR-60FX7」は、ESPの代表的機種「Horizon」の超ハイコストパフォーマンスモデルながら、648mmロングスケール/アルダーボディ/メイプルネック/ローズウッド指板24Fの王道スペックに、滑らかなボディラインとハイポジションの良好なアクセスまでを継承、ハムバッカー2基はマスターボリュームのノブを引き上げることでコイルスプリットが可能となっています。
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ヘヴィ系の老舗「ジャクソン」からは、ボディトップが緩やかなカーブを描く7弦のディンキーが出ています。メイプルネックは内部にグラファイト(特殊炭素)製の補強が仕込まれており、太いゲージの張力にもしっかり耐え抜きます。ダウンチューニングを想定し、弦長が26.5インチ(673mm)に延長されているのも大きなポイントです。なおカラーリングは、サレンブラックとスノーホワイトが選べます。
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現在では、ヘヴィ指向のギターを生産するほとんどのブランドが7弦ギターをリリースしています。その全てを紹介し尽くすことはできませんので、特にキャラが立っていると思われるモデルをブランドごとにピックアップしていきます。
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