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グレッチ・エレキギターについて

グレッチ・エレキギター

Gretsch(グレッチ)はギターやドラムで知られるアメリカの代表的な楽器メーカーです。軽やかできらびやかなサウンドから、カントリーミュージックの定番機として長らく愛用されているほか、またレトロでゴージャスなルックスも相まって「ハーレーダビッドソン」、「リーゼント」、「革ジャン」に並ぶ「ロックンロールの象徴」にもなっています。今回は、このグレッチに注目してみましょう。

グレッチの歴史

グレッチは1883年、ドイツの移民であるフレデリック・グレッチ氏によって、バンジョー・、タンブリン・、ドラムなどのメーカーとしてニューヨークで創業されました。エレキギターの生産は1940年からと言われていますが、レス・ポ-ル氏と契約したギブソン社に対抗して、達人チェット・アトキンス氏と契約し、「6120」や「ホワイトファルコン」などのヒット作品を開発します。アトキンス氏にならって多くのカントリー・ロカビリー・プレイヤーがグレッチのギターを手にし、グレッチはギター業界においてギブソンフェンダーリッケンバッカー等と並ぶ地位を獲得します。ロックンロールのアーティスト、エディ・コクラン氏も「6120」を愛用したことで、グレッチはロックンロールにおいても重要なギターになりました。1960年代にはビートルズのジョージ・ハリスン氏もカントリージェントルマンを携えてエド・サリヴァン・ショウのステージに立ち、グレッチの知名度を上げました。

一世を風靡したかに思えたグレッチも、フェンダーやとギブソンの人気に押されて一時は衰退します。その後1980年代にブライアン・セッツアー氏がストレイ・キャッツで活躍したことから再評価され復活、安定的な人気を得るようになりました。現在のグレッチに対するロックンロールのイメージは、ブライアン・セッツアー氏の功績だといわれています。
1989年からは新たに、

  • Nashville(チェット・アトキンスホロウボディ・ナッシュビル)
  • Tennessean(テネシアン)
  • Anniversary (アニバーサリー)
  • Duo Jet (デュオジェット)
  • Country Club (カントリークラブ)

などのリイシュー・モデルを開始します。1995年頃からは Electromatic (エレクトロマチック)という廉価版ブランドを発足させます。おかげでこれまで「高根の花」だったグレッチも、近年では身近な存在になってきました。
2010年代には日本の横山健氏が積極的にグレッチを使用し、アーティストモデルをリリースします。これまでイメージの薄かった「パンクロック」というフィールドへ、グレッチは波及しつつあります。

グレッチ・ギターの音や特徴

ルックスの魅力とちょうどいい不器用さ

ホワイトファルコン

「世界一美しいギター」として知られるフラッグシップモデル「ホワイトファルコン」で金字塔を打ち立てたグレッチのギターデザインは、芸術的な曲線を描くfホールや独特のカラーリングといったデザインの美しさが特徴。レトロでありゴージャスであり、そしてエレガントです。グレッチをメインに選ぶプレイヤーは、第一にそのルックスに惹かれます。

またサウンドバリエーションがあるとはいえ、おいしいサウンドはクリーン/クランチまでと現代の感覚では狭く、またノイズやハウリングに弱いことからシンプルな機材で演奏することが求められます。結果カントリー、ロカビリー、ロックンロールなどでは最高のマッチングを見せるサウンドでありながら、他のジャンルでは使いにくい不器用な楽器でもあります。しかしそこがまた、「エリートだけど、字が下手」、「美人で歌は巧いけど料理が下手」のような不完全さがもたらす何とも言えない人間的な魅力でもあります。
グレッチはその不器用さから「扱いが難しく、弾き手の力量に大きく左右される」とも言われています。だからこそ弾き手によっていろいろな表情を見ることができる、バンドやアーティストの魅力を何倍にも増幅させてくれるギターなのです。

特徴的なピックアップとホロウボディの織りなす、軽やかなエアー感

TV JonesTV Jones ピックアップ

グレッチの代表的ピックアップ「フィルタートロン」、上位モデルに使用される「TVジョーンズ」ともにハムバッカーですが、内部に二つ並ぶシングルコイルは「並列つなぎ」となっているため、程よく低出力で低音も押し付けがましくない、軽やかさときらびやかさのあるサウンドが特徴です。これにホロウボディによって作られるエアー感(=空気感)が加わる事で、太さと温かみが付加されるグレッチのサウンドが出来上がります。この音は特に、ロックボーカリストの情熱的かつセクシーな歌声を支えるのにうってつけだと考えられています。
グレッチのサウンドは「骨太で荒削り」と表現されることもありますが、これはプレイヤーがロケンローなスピリットでガツン!!と弾いた時に見せる表情です。グレッチが最も「良い仕事」をするのは真空管アンプに直接つないだ時だと言われますが、そのときは「甘美」という表現が相応しい、艶っぽいクリーン/クランチがプレイヤーを包んでくれます。

グレッチのギターが使われてきた音楽シーン

グレッチの魅力は主張のあるルックスと美しいサウンド、そしてちょうどいい不器用さが帯びる、人間的な魅力だと言えるでしょう。この、一本筋の通った不器用さが、夢や信念に一途なロックアーティストに好かれる要因となっています。「キング・オブ・ロックンロール」と称されるエルヴィス・プレスリー氏を筆頭に、ロカビリーからジャズまでグレッチのポテンシャルを最大限に引き出したブライアン・セッツァー氏、日本でも浅井健一氏やチバユウスケ氏など、洋邦のロックミュージシャンたちに愛されてきました。
ここではロック系以外のジャンルでの使用例を、代表的なプレイヤーと共に見ていきましょう。

カントリー:チェット・アスキンス(Chet Askins、1924-2001)


3人のチェット・アトキンス氏による夢のようなアンサンブル。左のアトキンス氏が演奏しているギターはグレッチの「Super Axe(スーパーアックス)」という珍しいギターで、コンプレッサーとフェイザーを内蔵しています。

「ミスター・ギター」の異名を取るカントリー・ミュージックの偉人で、サムピックを用いた3フィンガースタルのプレイを得意としています。本来はフォークギターの演奏スタイルですが、現代で言うエレアコのような使い方です。

ロック/ポップス:ジョージ・ハリスン(George Harrison、1943-2001)

The Beatles on the Ed Sullivan show

ビートルズのメンバーとしてエド・サリバン・ショーに出演する時に、ダブルカッタウェイのカントリージェントルマンをよく使用していました。バンドの中で映える軽快なコード弾きは、グレッチの得意とするところです。

ロカビリー:ブライアン・セッツァー(Brian Setzer、1959-)

Brian Setzer - Sleepwalk (Live)

ブライアン・セッツァー氏は、現在最も代表的なグレッチのプレイヤーです。ストレイ・キャッツの成功からブライアン・セッツァー・オーケストラで結実した氏の幅広い音楽性は、ロカビリーに留まらずジャズやブルースにおいてもグレッチをフルに活用しています。

グレッチ・エレキギター 一覧

グレッチの生産地には大きく3つあって、それぞれに価格帯が分けられています。これがグレッチのグレード分けとなっていますが、カスタムショップに限っては日本国内の流通がきわめて少ないため、「日本製とアジア製の二つ」が実質的なグレード分けだと考えていいでしょう(価格帯は2017年10月時点)。

  • メイド・イン・USA:グレッチ・カスタムショップ。ごく少数の熟練工による特別製。アーティスト使用ギターの完全再現など、マニアックな1点ものを作っている。100万円オーバーは当たり前で何百万円もする個体もあるが、流通は極めて少ない。
  • 日本製:「プロフェッショナル・コレクション」など。レギュラーモデルは日本で生産され、アーティストが実際に使用するギターもここに属する。価格帯は30万円~60万円。
  • アジア工場製:「エレクトロマチック・コレクション」など。廉価版はアジア諸国の工場で生産されるが、アーティストモデルもある。価格帯は6.5万円~25万円。

グレッチ各グレードにおけるシリーズ分け

かつてグレッチのラインナップは、日本製の「プロフェッショナル・コレクション」とアジア製の「エレクトロマチック・コレクション」に分類されていました。現在ではそこから派生したコンセプトモデルなどが出ており、若干複雑なシリーズ分けになっています。

日本製グレッチのシリーズ分け

シリーズ名 価格帯 特徴
Professional Collection 31~60万円 レギュラーモデル、アーティストモデルなどで、左用もある。ここに含まれる「FSR(Factory Special Run)」は、日本国内限定仕様のスペシャルモデル。
Vintage Select Edition 38~58万円 「トレッスル・ブレイシング」や「パラレル・トーンバー」などヴィンテージ・スペックを取り入れ、また年代ごとの特徴を再現したヴィンテージモデル。
Players Edition 35~55万円 鳴りを向上させる「MLブレーシング」など、現代的なアプローチで新しい設計を積極的に取り入れ、かつてない機能性と耐久性を実現させたモデル。
 表:日本製グレッチのシリーズ分け(価格は2017年10月時点)

日本製のグレッチは、以上の3シリーズで数多くのバリエーションモデルが作られています。だいたい同じような価格帯に収まっていますから、この三つはコンセプトによって分けられており、グレードに差はないと考えていいでしょう。
たとえば代表機種「6120」では

  • Professional Collection:G6120-1959LQ SP FSR Chet Atkins Hollow Body
  • Vintage Select Edition:G6120T-59 VS Vintage Select Edition '59 Chet Atkins
  • Players Edition:G6120TFM Players Edition Nashville

というように、コンセプトの違いによって、各シリーズからさまざまなバリエーションが生まれています。

アジア工場製グレッチのシリーズ分け

シリーズ名 価格帯 特徴
Electromatic Collection 6.5~25万円 グレッチ代表機種の特徴を再現しつつ価格を抑え、手に入りやすくしたモデル。
Streamlier Collection 9.7~11万円 グレッチらしさを大切にしながら、現代的な演奏にマッチするアレンジを加えたモデル。
 表:アジア製グレッチのシリーズ分け(価格は2017年10月時点)

さまざまなタイプをカバーする「エレクトロマチック・コレクション」に対して、設定したコンセプトに従ってポイントを絞った「ストリームライナー・コレクション」という区別になっています。