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PRS(ポール・リード・スミス)の「カスタム22」は、「美しいフィギュアドメイプルでドレスアップした、22フレット仕様のギター」で、カンタンに言うと、代表機種「カスタム22(PRS Custom 24)」よりもフレット数が少ないギターです。でもたったそれだけというはずはなく、さまざまな側面でキャラクターが立っており、カスタム24とはニュアンスの異なったギターに仕上がっています。
創業当時のレギュラーモデルはすべて24フレット仕様だったPRSでしたが、ヴィンテージギターが大好きな創業者、ポール・リード・スミス氏にとっては22フレット仕様のほうが好みに合っていること、若き頃の夢をかなえた「ドラゴンI(Dragon I)」など特別なギターで22フレット機を作っていたことなどから1993年、「カスタム22(Custom 22)」が発表されます。レギュラーモデルとしては初の22フレット仕様機となったカスタム22は、「PRS McCarty」シリーズなど、後に続くモデルの手本となりました。
今回は、このPRSカスタム22をチェックしていきましょう。
PRS Custom 22 Electric Guitar
PRSの一番人気はやはりカスタム24ですが、音や感触の違いでカスタム22を好むギタリストも少なくありません。誰もがカスタム24と22のサウンドを聞き分けられるわけではありませんが、わずかなフィーリングの違いは弾き手にとってたいへん重要なのです。
では「カスタム22」とはどのようなギターなのでしょうか。コアモデルから代表機種「Custom 22」をピックアップして、その特徴をチェックしていきましょう。
これはカスタム22に限った事ではありませんが、PRSのギターはとにかく美しい、圧倒的な美しさで知られています。二つの側面からその美を鑑賞していきましょう。
初めてPRSのギターを見たとき、あなたはどう感じたでしょうか?ボディの整った曲面やカラーリングに、「美」を感じた人は大変多いことでしょう。全体に均整の取れたデザイン、各パーツの機能美に加え、木材の美しさにも定評があります。加えて「カスタム」シリーズはボディトップのフィギュアドメイプルが織りなす複雑な模様により、美しさに拍車がかかります。
さらにオプションの「10トップ」仕様では「全面にハッキリと木目が表れていて、しかも木目の中に点状のスポットが一切ない」という大変グレードの高い美しいトップ材が使用されます(10トップは、ヘッド裏に「10」と手書きされます)。
指板に並ぶ「バードインレイ」も、ルックス上の大きなポイントです。PRSは毎年のように製品のアップグレードを繰り返していますが、バードインレイにもそれは見受けられます。ポジションごとに異なる鳥のシルエットが埋められるデザインに変更はありませんが、現在のモデルでは輪郭と内側で異なる素材を使用した、2層のインレイが標準です。
PRSがデビューした1985年の音楽シーンでは、伝統的な22フレットより高い音を出せる「24フレット仕様」のギターが市民権を獲得していました。「24フレット」は80年代を象徴する仕様の一つだと言って良いでしょう。エレキギターは歴史にもまれる中で、時代と共にフレット数や音域を拡大させてきたのです。当時のPRSが24フレット仕様を標準としていたのには、こうした時代背景がありました。
一方で、カスタム22は先輩機種カスタム24からフレット数を縮小し、わざわざ音域を狭めています。なぜこんなことをしたのでしょうか。それはギブソンなど伝統的な22フレットのギターが持つ「ヴィンテージ・トーン」への敬意の表れです。フレット数によるトーン(音色)の違いは、特にフロントピックアップに現れます。24フレットと22フレットではフロントピックアップの位置が違うのです。22フレットではよりブリッジから遠くに配置されますから、音色は太く甘くなります。この音色こそが、22フレット最大の個性です。
またカスタム22ではこのフレット数に合わせてギター全体を見直し、また伝統にならって肉厚なネックシェイプを採用しています。カスタム22は、モダンなスタイルのギターにトラッドなニュアンスを付加しているわけです。
といった特徴から、カスタム22は美しいばかりでなく「音楽のための道具」としても大変優秀です。重量バランスや演奏性は、プレイヤーにストレスをかけず、演奏に集中させてくれます。25インチの弦長は、いわゆるフェンダースケール(25.5インチ)、いわゆるギブソンスケール(24.75インチ)の間にあり、どちらからの持ち替えもスムーズです。また近年では25インチだからこその音の太さ、といったこの弦長の個性も注目されています。
コアモデルのカスタム22は、ハムバッカー2基を5WAYセレクタースイッチで操作します。これにより「フロント、リアそれぞれのハムバッカー単体」、「両ハムバッカーのミックス」という通常のサウンドバリエーションに加え、「リアハムバッカーとフロントタップ(シングルコイル)のミックス」、「両タップ(シングルコイル)のミックス」が得られます。ハムバッカーの太く力強い音だけじゃなく、シングルコイルの細く繊細な音も得られるわけです。
これはカスタム22全グレード共通ですが、ボリュームポットには「ハイパスフィルター」が仕込まれます。通常の回路では、ボリュームを絞っていくと高音域が削れた甘い音になっていきます。それはそれで味のある音ですが、バンドの中では音抜けしにくいサウンドです。ハイパスフィルターがあると、ボリュームを絞っても高音域は残され、音抜けを維持したまま音量を落とすことができます。
たとえばこの機能は、ドライブサウンドにおいて非常に有用です。しっかり歪んだソロ用の音色でボリュームを絞ると、程よく歪みが抑えられてバッキングに使いやすいサウンドが得られるのです。
コの字型にブロックサドルを囲む強固なブリッジは、効率の良い振動伝達を促進するとともに、サドルのガタ付きを抑えてチューニングの保持に貢献します。ロック式ペグはトップ側のネジで弦を固定する独自構造で、弦交換に要する時間を短縮でき、チューニングの保持に威力を発揮します。
カスタム22とカスタム24では、パーツ類は共通しています。ピックアップも同じものが搭載されているのですが、フレット数の違いによってフロントピックアップのサウンドが異なります。ではそれ以外に、どんなところが違うのでしょうか。両機を並べて比較してみましょう。ボディ形状を同じくする両機に、どんな違いがみられるでしょうか。
上半分:2013 Custom 22、下半分:2014 Custom 24
ネック接続では、カスタム22では20フレット地点、カスタム24では22フレット地点でボディに接続されます。裏を返せばカスタム22はボディから20フレット分のネックが伸び、カスタム24ではボディから22フレット分のネックが伸びています。カスタム22はネックが短く、またネックシェイプも若干太くなっていますから、比較的ネック剛性が高くなっています。ネック剛性の違いは弦振動に直接関与しますから、この時点ですでに「カスタム 22」と「カスタム24」は根本的に違うギターだと言えるでしょう。
もうひとつ大きな違いが「ネックヒール」にあります。カスタム22のネックヒールは、ずいぶんしっかりと出っ張っていますね。演奏性を考えれば削ってしまいたくなるところなんですが、ヒール部の体積はサウンドのコシや低音域の迫力を左右するポイントです。こういうところからも、カスタム22のアイデンティティは作られているわけです。
12フレット&ブリッジ基準では、カスタム22はボディがややネック方向へ前進しています。そのためボディのくびれ位置に違いが出て、座って弾く時にはナット位置が近くなります。いろいろなところに違いがみられる中、「操作系の配置に違いがない」のは面白いポイントです。操作系はボディに対してではなく、弦やブリッジに対して配置されていたわけです。
ボディを基準として比較すると、今度はフロントピックアップの位置が同じだということが分かります。カスタム24では、リアピックアップが前進しているように見えますね。PRSでは、ボディに対してどこにフロントピックアップが埋められるのかが決まっていて、ここを基準にしてネックやブリッジが配置されるわけです。
The PRS Custom 24 vs Custom 22 | PRS Guitars
リアピックアップのサウンドを聞き分けるのは、なかなか難しいかもしれません。いっぽうフロントピックアップがからむサウンドでは、カスタム24はやや引き締まり、カスタム22はやや太く力強いのがわかります。
例えばフェンダーのヴィンテージ・スタイルは21フレット仕様でしたが、現代的な設計では指板を延長して22フレット仕様にしたり、またスーパーストラトなどではネックごと延長して24フレットまたはそれ以上にしたりします。じゃあPRSも指板の長さを変えりゃイイじゃないか、と単純にはいきません。
PRSは最初から24フレット仕様でした。これを22フレットに仕様変更しようとして指板だけ短くすると、フロントピックアップを収める穴がジョイント部分ぎりぎりに空いてしまうことになります。これではネックが弦の張力を受け止めきれないわけです。そんなわけで、PRSでは指板を短くしたネックを短くした分だけボディに深く差し込んで、各パーツの位置を変更して仕上げているわけです。
では、カスタム22のラインナップをチェックしていきましょう。PRSは高級ブランドであり、上位機種は驚くほど高額です。ここでは標準機コア(CORE)シリーズを頂点とするレギュラーモデルを見ていきます。
「コアモデル(PRS Core Models)」はPRSの中核をなすスタンダードモデルです。ブランド内の「標準機」という立ち位置ですが、PRSはもともと高級ブランドなのでなかなか高額です。
コアモデルのカスタム22は、
といったところに特徴があります。トップ面の描く美しい曲面は見ていても撫でていてもうっとりします。トップの杢がきわめて美しい「10トップ」はさらに、大自然が生み出した芸術の美しさを味わうことができます。
5WAYセレクタースイッチひとつの操作で、通常の2ハムバッカーの組み合わせに加え、「フロントタップとリアハムバッカーのミックス」、「両タップのミックス」を使用できます。
ピエゾピックアップを搭載した「カスタム22ピエゾ」はアコースティックギターのサウンドまで出すことができます。ミニスイッチの操作で「エレキのみ」「エレキとアコギのミックス」「アコギのみ」を選択でき、ミックス時はブレンド具合を調節できます。
コアモデルと同じUSA工場での生産ながら、企業努力で低価格化に成功した「PRS S2シリーズ」からは、ボディ構造の異なる2タイプのカスタム22がリリースされています。
S2シリーズのカスタム22は、
といった仕様が特徴的です。トップ面の加工はコアモデルより控えめながら、ギターの美しさを強力に演出します。価格を抑えた機種ではありますが、コイルタップ時のサウンドに力強さが加わるよう、回路に一工夫されていたり、コアモデルにはないセミホロウ仕様がラインナップされていたりと、決して侮ることのできないモデルです。トーンポットのスイッチによって、2ハムバッカーの組み合わせと2シングルコイルの組み合わせを使用することができます。
セミホロウモデルは軽量で、中音域が豊かな太いサウンドを持っています。
「入門機として最良の選択」と呼び声の高い「PRS SEシリーズ」は、生産をアジアの提携工場に委託することで大幅な手価格化を達成しています。こちらもS2同様、ボディ構造に違いのある2タイプがラインナップされています。
SE版のカスタム22は、
といったシンプルな仕様でまとめられています。トップ面の加工はほんのりとしたところですが、美しさの演出にじゅうぶん寄与しています。S2シリーズ同様にセミホロウモデルは軽量で、中音域が立つ太いサウンドを持っています。
SE Custom 24 vs. SE Custom 22
旧モデルでの比較動画ですが、SEでも「22」と「24」の違いが良く分かりますね。
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