エレキギターの総合情報サイト
ギターは演奏することで、いろいろな箇所に弦の摩擦や振動を受けます。また弾かなくても、常に温度や湿度の変化にさらされています。こうしたことで、ギターの状態は少しずつ変化していきます。これを放置したままでいると弾きにくいギターで練習を続けることになったり、チューニングを合わせたはずなのにコードの響きがおかしくなったりし、果ては決定的な場面で音が出なくなってしまうことまでありえます。
こちらのページでは、日常的に施すデイリー・メンテナンスから定期的にやっておきたい本格的なメンテナンス、ちょっとしたカスタマイズまでを総合的に紹介しています。また、ギターの各部位についても紹介しています。メンテナンスってどんなことをするのか、どんなお手入れが必要なのか、ぜひチェックしていってください。
名古屋大学法学部政治学科卒業、YAMAHAポピュラーミュージックスクール「PROコース」修了。平成9年からギター講師を始め、現在では7会場に展開、在籍生は百名を超える。エレキギターとアコースティックギターを赤川力(BANANA、冬野ユミ)に、クラシックギターを山口莉奈に師事。児童文学作家、浅川かよ子の孫。
webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、"プレイヤーにとって役立つ情報提供"を念頭に日々コンテンツを制作中。
エレキギターは材料の多くが木材で出来ていて、木でできている他の楽器と同じように湿度に影響されるデリケートな楽器です。普段の保管方法によってコンディションが大きく変わることにもつながるので、どのように保管すればよいかを知っておくことは良いことですね。まずはギターを綺麗に保つための普段からの心がけ・デイリーメンテナンスの方法をいくつか紹介します。
弦も本体も金属部品も、きれいに拭いてあげよう。
キレイな音は、キレイなギターから。
弦やボディ、ネックには汗や皮脂が付着します。これらを乾いた布で拭き取ってあげましょう。第一に弦の寿命を伸ばすことができますが、この習慣はギター本体のコンディションを保つのにも効果的です。
残された汗や皮脂はホコリを吸着しやすいし、金属部品のサビを進行させてしまいます。そのままケースに収めるとケース内に水分を閉じ込めてしまいますから、ネックや指板のほか、ジャックやポットなど電気部品にも影響します。またラッカー塗装は皮脂や汗に反応して白濁したり軟化したりすることがあり、著しく美観を損ねたり、手触りが悪くなったりといったトラブルに発展することまであります。
ギターの拭き上げには、楽器専用のクリーニング・クロスが最適です。デリケートな塗装面にキズを付けにくく、効率よく汚れを除去できます。
ギターは人間が快適な環境で保管するのが良く、過度な湿気は避け、風通しの良い日陰に置くのがベストです。一般的にはリビングや書斎が最適と言われますが、窓際は避けましょう。窓際は湿度や温度の変化が大きく、日光を直接浴びることもあるからです。直射日光はギターの塗装面を日焼けさせてしまうことがあるほか、急激な乾燥で調整を崩してしまうことがあります。
転倒を防止することもできる
ネックに余計な力を与えないためにも、寝かせて置いておくのではなくギタースタンドにおいておくのが良いでしょう。
いつもレギュラーチューニングに合わせていたギターを、半音下げチューニングなど全弦別のテューニングに頻繁に変更するということは、あまりしないほうがいいでしょう。チューニングの変化によってネックに負荷がかかり、ネックの反りを生みやすい状態ができてしまいます。
屋外への持ち出しには、ギターケースは必須と言えるアイテムです。クッション性の高いソフトケースは、倒しても落としても中のギターを守ってくれます。ハードケースを使うなら、湿度調整材でケース内の湿度を一定に保つこともできます。軽くて背負えるのが良いか、頑丈なのが良いか、用途にあわせて用意しましょう。
ネックに負荷がかかりすぎると、ネックの反りが生じてしまいます。楽器店などでは弦を緩めた状態で吊るされていたりします。「1か月以上など長期間ギターを弾かない場合は少し緩めておいたほうがいい」という意見もある一方で、実際にギターを作る側の人からは
一概には言えないものの、毎日弾いているなら特に弦を緩める必要はない(弱いネックの場合はこまめに弦を緩めないと反ってしまう) - ラムトリックカンパニー竹田豊氏
組み込みの時にギターに命を与える:Sonicギター訪問インタビュー
弦を張っている状態が、ギターの安定している状態 - VINCENT小川浩司氏
【カフェとギター】VINCENT訪問インタビュー
という意見もみられます。普段からしっかり弾いている人は弦を緩める必要はありません。
弦交換には、頑丈なニッパーが欠かせない。
本格的なメンテナンスを紹介する前に、揃えておくと良い道具類について見ていきましょう。弦交換のためのニッパー、各部調整のためのドライバーやレンチは絶対的に必要です。このほかいろいろな道具を使うことで、メンテナンス作業がスムーズかつ確実に進められます。
また、いろいろな作業に特化したグッズも考案されています。使わなくてもメンテナンスできますが、あると作業が爆速で進行します。
メンテナンスに必要な道具を揃えよう
《メンテナンスのお供に》なくてもいいけどあると便利なギターグッズ
先述の「デイリー・メンテナンス」は、ギターの状態変化を遅らせたりやわらげたりする、守りのためのメンテナンスです。これから見ていく本格的なメンテナンスは、ギターの状態を確認し、良くない状態を見つけたら修正/復旧する、改善までできるかもしれない、いわば攻めのメンテナンスです。ぜひ実践してみてください。
弦を交換したばかりのストラトキャスター。
余分な弦をカットするのには、専用のニッパーが必要。
本格的なメンテナンスには弦を外さないとできない作業もありますから、第一に「弦交換」ができるようになりましょう。交換したばかりの新しい弦は手触りや音が良いばかりでなく、振動のバラつきやムラが少ないので、ギターの状態を正確に把握しやすくなります。
弦の張り方は、モデルごとにいろいろです。まずは自分のギターの弦をどうやって交換するのか、この一点をしっかり押さえましょう。
プロは徹底的に研磨するが、
そこまでしなくてもかなりの効果がある。
「フレット磨き」も、弦交換のついでにできるメンテナンスです。磨きあげられた輝くフレットは弦との摩擦が抑えられ、滑らかで心地よい運指を可能にします。
一般に「弾き心地の良いギター」は力まずに演奏でき、コードが美しく響きます。あなたのギターはどうでしょうか?現状で自分のギターがどういう状態なのか、弾きやすいのか、美しい響きが得られるのかをチェックしてみましょう。ほとんどのものが、練習の合間などで日常的に確認できます。
これから紹介するのはギターの弾き心地を判定する8つのチェックポイントで、リンク先ではその原因や対処法を詳しく解説しています。一般的に良好と言われるのがどんな状態か、どうすればその状態に持っていけるのかを見ていきましょう。お気に入りのギターを、もっと弾きやすくできるかもしれません。
調整不良ではなく、弾き方が原因でビビることもある。
弦の「ビビり」とは、弾いた弦の音に「ビビビ・・・」と余計な音が混ざった状態を言います。これは振動する弦がフレットに当たったり、弦振動でどこかのパーツが共振したりして起こる現象です。普通のピッキングでどこを弾いてもビビらないのが、良好な状態です。
弦がよく切れるという人は、弦のどこが切れたかを覚えておきましょう。ペグ位置やナット、特定のフレットなどいつも決まった位置で弦が切れる場合、そこに原因が隠れているかもしれません。
明らかに反っている状態だと、かなり弾きにくい。
ギターの弾き心地を大きく左右するのが、ネックのコンディションです。ネックは「パッと見るだけでは分からないほど、ごくごく緩やかな順反り」が最も理想的な状態です。見るだけで判断するのは難しいですが、簡単にチェックすることができます。反りの判定法と、調整の方法を知っておきましょう。
低弦高が好まれる傾向にあるが、
プレイスタイルによっては高い方が良いことも。
「弦高(げんこう)」とは、「弦とフレットとの隙間の距離」のことです。弦高が高いと澄んだ音が得られる半面、弦張力が上がるので押弦に筋力が要求されます。逆に低いと弾きやすくなりますが、低すぎると「ビビり」が生じてしまいます。
ネック調整や弦高調整の後には、必ず確認しよう。
「オクターブチューニング(オクターブ調整)」は、押さえる弦が指板の方向へと僅かに引っ張られることで生じるチューニングのズレを補正する調整です。12フレットのナチュラル・ハーモニクスと12フレットを押さえた時の音高が同じだと正常です。オクターブチューニングが崩れていると、コードが美しく響かなくなります。
部品交換する時間のない土壇場でこそ威力を発揮する
ピックアップ・セレクターやボリューム・ノブなど電気系を操作して、正しく機能しているかをチェックしてみましょう。電気系の部品は古くなると接点が劣化し、操作するとチリチリとかガリッとかいうノイズを発するようになることがあり、放置すると音が出なくなってしまうこともあります。劣化した電気部品は新品への交換が基本ですが、いざというときのために「接点復活剤」を用意しておきましょう。
弦とピックアップとの距離は、音量とサウンドを決定づける重要なポイントです。ピックアップはネジで固定されているので振動を受けて知らない間に回っていることがあるし、音楽に要求されるサウンドや自分の欲しいサウンドが変化することもあります。フェンダー系のシングルコイルでは本体を上下させて調節しますが、ハムバッカーやP-90では、弦ごとの音量も調節できます。
ストラップピンの緩みは重大な事故の原因になりえる
弦の振動を受け続けることで、締めたはずのネジが緩んでくることがあります。特にストラップピンとアウトプットジャックの6角ナットは緩みやすいポイントです。
どんなスパンでメンテナンスするかについての厳格な規定はありませんが、
というあたりが一般的です。ギターの置かれる環境や演奏する頻度により、それこそさまざまです。
ギターのセッティングによっても同様です。ギリッギリまで追い込んだセッティングのギターには、季節ごとのメンテナンスが要求されるかもしれません。しかし、ある程度ゆとりと持たせたセッティングのギターは、季節の変わり目で多少ネックが動いても許容範囲に収まります。
知っているつもりで意外と詳しく知らなかったかもしれない、エレキギターを構成する各パーツについても確認しておきましょう。リンク先ではそれぞれのメンテナンス法についても触れています。
エレキギター本体の総合案内。ココを読めばだいたいのことが分かります。
ヘッドはデザインだけじゃなくて、ちゃんと仕事もしています。
チューニングの精度や安定度、また弾きやすさやサウンドにまで影響する、小さいけど凄い奴。
ギターの音階を決定付けるパーツ。こう見えて、実は消耗品です
ギターの音階を決定付けるパーツ。こう見えて、実は消耗品です
ボディ材の種類や塗装、お手入れについて
ボディの木材だけでなく、ボディを保護する塗装についても知っておきましょう。
自分専用の個性的なエレキギターを作りやすいポイント。
エレキギターのサウンドを決定づける、最重要部品。
ギターパーツの中でもトラブルの多いジャックに関する豆知識
ブリッジ部分が果たす仕組み・役割について紹介
もう少し踏みこんだ内容のメンテナンスも見ていきましょう。これらは道具も時間も技術もそれなりに必要なので、プロのリペアマンに依頼しても良いでしょう。
主に部品交換を中心としたカスタマイズ法を包括的に紹介。
ロックピンを使えば、ストラップが外れにくくなり、また着脱もカンタンです。
トレモロスプリングはアームの使用感だけでなく、サウンドにも影響します。
楽器用ケーブル、いわゆる「シールド」も、エレキギターにとって非常に重要なアイテムです。良いシールドを使えば良いサウンドが得られ、また正しく扱えば長期的に使用できます。
それは、ギタリストの身だしなみ。正しく巻くことで快適に使える上、シールドの寿命を長らえさせることができます。
音が出なくなってしまったシールドを修理する方法について、工具・作業の流れを紹介。
エフェクターボードを組むのに最適。「ハンダ不要」が何よりありがたい。
以上、日ごろのお手入れから大規模な修理/カスタマイズまでを見てきました。エレキギターは木製楽器なので、時間と共に少しずつコンディションが変化していきます。また部品点数が多いので、長く使っている間にいろいろな部品が消耗したり故障したりします。そのつど手を入れて良好な状態を保つことにより、大事なギターを末永く愛用することができます。自分の目と手でメンテナンスすることで、ギターの理解や考えが深まり、愛機への愛情も深まっていきます。定期的にしっかりメンテナンスして、いつも良い状態のギターを弾きましょう。
いっぽうで部品が消耗したり故障したりしても、悲しむことはありません。アップグレードのチャンスが訪れたのです。もっと良い部品に交換していくことで、もともと不特定多数のギタリストに向けて出荷されたエレキギターは育ち、まさに自分のためだけの究極の一本へとカスタマイズされていくわけです。
メンテナンス用品の売れ筋を…
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