コーラス・エフェクターについて
コーラスは原音に約0.01秒遅れた音を混ぜることで音に揺らぎを与えるエフェクターです。独特の透明感が得られるため、クリーントーンに掛けて透明感や広がりを演出するといった用途が一般的ですが、その他にも音に厚みを出したいとき、揺らぎを強く掛けてトリップ感を演出したいときなど、様々な用途に使えるため、一台持っておくと何かと頼りになるエフェクターです。
コーラスにはデジタル回路で設計された「デジタルコーラス」、アナログ回路を持つ「アナログコーラス」の2種類があります。デジタルコーラスはICチップを心臓部に使用しているのに対して、アナログコーラスは主にBBD素子というパーツを使用します。それぞれ
- デジタルコーラス:透明感のあるクリアな音質
- アナログコーラス:温かくナチュラルな音質
という特徴を持っています。
コーラスの使い方
音を爽やかに彩る効果からクリーントーンでのアルペジオやカッティングなどに利用されたり、アコースティックギターやベースでも使用することがあります。またディストーション・ギターで「壁のような厚み」のあるリフにしたい時に使われる事もあります。
音作りのキホン
基本的には「Depth(デプス)」、「Rate(レート)」、「Level(レベル)」といった3つのツマミを操作して音作りをしていきます。各ツマミの動作ですが、およそ0.01秒後に出力されるサウンドを「エフェクト音」とした場合、以下のようになっています。
- Depth:エフェクト音のかかり具合を決めるツマミ
- Rate:エフェクト音が揺らぐ速さを決めるツマミ
- Level:原音とエフェクト音を混ぜる量を決めるツマミ
コーラスペダルの中には、ステレオ出力できるモデルもある
Arionの「SCH-Z」やBOSSの「CH-1」、「CE-5」、Maxonの「CS550」などはステレオ出力を備えています。2台のアンプまたはスピーカーを用意し、コーラス本体からそれぞれ接続します。コーラスのステレオ出力はJC-120のコーラスと同じ原理で、原音とエフェクト音を各スピーカーから独立して出力します。接続を間違えるとスイッチオンにしても原音しか出ないので注意しましょう。ちなみに上で紹介したCE-1もステレオ出力を前提とした製品でした。コーラスは生み出されたときからすでにステレオ出力が当たり前のエフェクターだったのですね。
コーラスが標準装備された定番アンプ「JC-120」と「Roland CE-1」
元祖コーラス・エフェクター
BOSS CE-1
コーラスは全国のライブハウス、スタジオに必ずと言っていいほど設置されている「Roland JC-120(ジャズコーラス)」に標準で搭載されています。それどころか、もともとこのJC-120に搭載されたコーラスユニットこそがコーラスエフェクターの元となっており、好評を博したJC-120のコーラスだけを足下に置いて使用するために、ローランドは抜き出して単体で開発することを思いつきます。こうして生み出されたのが世界初のコーラスエフェクター「CE-1」です。JC-120はステレオのスピーカーの片方を原音、片方をエフェクト音とすることで、広がりのある美しいコーラスを得ることに成功していましたが、CE-1は単体でそれに準ずる美しい音質を実現し、高い人気を誇りました。CE-1は製造が終了して久しい現在でもプレミアム価格で取引され、その人気は健在です。
ロータリースピーカーって何?
ロータリースピーカーを再現した
strymon Lex Rotary
コーラスなどのモジュレーションエフェクターの元となったのがロータリースピーカーです。低音用のスピーカーに繋いだホーンと高音用のスピーカーコーンを逆方向に回転させ、ドップラー効果を作り出し、音に揺らぎを与えるというもので、自然な効果の掛かり方や独特のサウンドで現在でも人気があります。主にハモンドオルガンに使われ、オルガンやキーボードにはシミュレータが標準搭載されるのが一般的です。ギターではエリック・クラプトン氏やビートルズの曲などで聴くことができ、ロータリースピーカーをシミュレートしたギター用エフェクターも多数販売されています。ロータリースピーカーはドン・レスリーという人物が開発したことから、レスリー・スピーカーとも呼ばれ、こちらの呼称も一般的によく使われます。
Smells like teen split – NIRVANA
コーラス・ペダルと言えば、ニルヴァーナのカート・コバーン氏が弾いたこの曲のAメロの「チャラーン」というフレーズ。たった2音にも関わらず圧倒的存在感を醸し出しているのは、コーラスの揺らぎによるところも大きいでしょう。「クリーン+コーラス」、「ディストーション+コーラス」という組み合わせで使用しています。カート・コバーンを始め、ロック系ギタリスト/スタジオ系ミュージシャン問わず、数多くのギタリストがコーラスを使っています。
デジタルコーラス
デジタルコーラスはアナログによくある高域の減衰がないため、非常に煌びやかで透明感のあるサウンドが得られます。爽やかでヌケが抜群によく、アルペジオなどに使用すると絶品の美しさが得られますが、その反面、バンドサウンドから浮いてしまったり、ナチュラルさがないところが好まれないケースも。サウンドの差でアナログと使い分けるギタリストもいます。
定番デジタルコーラス・ペダル
BOSS CH-1 Super Chorus
BOSS CH-1 Super Chorus
初期はアナログ回路を採用していたBOSSの定番コーラス、CH-1は「抜けの良い爽やかなサウンド」が人気を博しています。とてもシンプルな操作性で、Depthなどのツマミに加え、「EQ(イコライザー)」のツマミを搭載しています。
EQツマミを左に回せば低音が、右に回せば高音が強調されるようになっています。とても扱いやすく、初心者にオススメの一台です。
BOSS CH-1 Super Chorus – Supernice!エフェクター
BOSS CE-5
BOSS CE-5
CE-5もCH-1同様、初期はアナログ回路を採用していましたが、現行モデルはデジタル回路となっています。ちなみに、本体裏のシールが「ブルー」あるいは「ピンク」の製品がアナログ回路のCE-5です。
「Filter(フィルター)」という低音と高音をそれぞれ調整できるツマミを搭載しているので、音作りの幅は同社製品の CH-1 より広くなっています。
BOSS CE-5 – Supernice!エフェクター
おすすめデジタルコーラス・ペダル
TC Electronic Corona Chorus
TC Electronic Corona Chorus
Corona Chorusは3つのモードと4つのツマミを搭載した次世代エフェクターです。デジタルらしいクリアな音質はもちろん、「Tone Print」というスマートフォンを使って音色を変更することができる画期的な機能を備えています。これにより、世界のトップギタリスト達と同じサウンドを簡単に手にいれることができます。
Tone Print 機能によって色々なコーラスを入れ替えて使うことができるミニサイズの「Corona Mini Chorus」もラインナップしています。
TC Electronic Corona Chorus – Supernice!エフェクター
TC Electronic Corona Mini Chorus – Supernice!エフェクター
ハイエンド・デジタルコーラス
Strymon Mobius
空間系エフェクターに定評があるStrymonの「Mobius(メビウス)」は、コーラスをはじめ、12種類のモジュレーションサウンドを搭載したマルチエフェクターです。SHARK DSPというチップを搭載したことにより、デジタル回路ながら、限りなくアナログに近いサウンドになっています。
Strymon Mobius – Supernice!エフェクター
Free the Tone TA-1H
プロ・ギタリストのサウンドシステム構築/メンテナンスも担当する Free The Tone の多機能コーラス・エフェクター。3つのコーラスをミックスし、一般的なステレオコーラスよりも広がりと深みのあるサウンドを生み出します。自分の好みのセッティングは4つまでメモリ保存が可能、24bit AD/DAコンバーター内蔵による高解像度サウンドが魅力です。
Free the Tone TA-1H – Supernice!エフェクター
BOSS MD-500
2017年7月に登場した「MD-500」は、BOSSの次世代デジタル・ディレイ「DD-500」と同様の設計思想を持ったモジュレーション・ペダル。高性能DSPによって32bit/96kHzの最高音質を実現しており、他の追従を許さないハイエンド・モデルとなっています。名機コーラスペダル「BOSS CE-1」や「Uni-Vibe」のサウンドを収録、コーラスだけでなくフランジャー/フェイザー/ビブラート/トレモロ/フィルター/リングモジュレーターなど12種類・28タイプのモジュレーション・サウンドを搭載、MIDIやUSBなど接続端子も豊富に用意され、徹底的に音作りを追い込むことができるようになっています。
BOSS MD-500 – Supernice!エフェクター
アナログコーラス
アナログコーラスはデジタルに比べると若干の高域の減衰があるために、自然で温かみのあるマイルドなサウンドが得られます。音ヌケや爽やかさでデジタルに一歩劣りますが、バンドサウンドへのなじみ方や音の太さではその上を行くことも多々あり、リードギターなどにはこちらの方が相性が良いかもしれません。内蔵パーツを交換するモディファイも頻繁に行われており、例えば下で紹介しているArionのものなど、モディファイ品が通常品並みに市民権を得ています。
定番アナログコーラス・ペダル
Arion SCH-Z
Arion SCH-Z
SCH-Zは3つのツマミを搭載しているシンプルなコーラスエフェクターで、価格からは想像もできない程素晴らしいサウンドを奏でます。前身の大ヒット製品、「SCH-1」はかの有名なギタリスト、マイケル・ランドゥ氏が愛用していることでも知られており、その遺伝子を受け継いた正統後継モデルです。
Arion SCH-Z – Supernice!エフェクター
Maxon CS550 Stereo Chorus
「弁当箱」の愛称で知られるMaxonのエフェクターシリーズですが、CS550は特に人気があるアナログコーラスです。この製品は日本を代表するギタリスト、Charが監修していることで有名になりました。外観からは想像もつかないほど「エグい」コーラスサウンドが特徴です。
Maxon CS550 Stereo Chorus – Supernice!エフェクター
Electoro Harmonix Small Clone
初期モデルのSmall Clone
Small Cloneは伝説的ロックバンド、「ニルヴァーナ」の「カート・コバーン」が愛用した事で知られています。Depth切り替えスイッチとRate搭載し、シンプルな操作性ながらも音がダブって聴こえる「繊細なコーラスサウンド」が特徴です。
ちなみに、Small Cloneには「Nano Clone」という別モデルも存在します。サウンドの特徴はそのままに、コンパクトなケースになっているので、ペダルボード内にスペースを取りません。
Electro Harmonix Nano Clone – Supernice!エフェクター
MXR M234 Analog Chorus
MXRの定番アナログコーラス。アナログらしい暖かみのある音色でありながら、デジタルで得られるような透明感も十分感じられる、美しい音色が持ち味。LOWとHIGHのコントロールは効きが非常に良く、うまく調整することで、高音が際立つ煌びやかなものから、中域に重きを置いた厚みのあるコーラスまで、自在に作ることができます。飛び道具的な使い方には向かないものの、クセのない音質を持ち、調整の可変幅が広く、使い勝手の良さではトップクラス。値段も求めやすく、全てのギタリストにおすすめできるモデルです。
MXR M234 Analog Chorus – Supernice!エフェクター
おすすめアナログコーラス・ペダル
Providence ANADIME CHORUS
ADC-4
Providence が誇る人気アナログコーラス「ANADIME CHORUS」シリーズ。アナログ出力ながらステレオのように広がりのあるコーラスサウンドは世界中のプロ・ギタリストに支持を受けています。
初代 ADC-1 の登場から ADC-4 までバージョンアップを繰り返しているモデルで、2014年7月にはベース用 ANADIME CHORUS「ABC-1」もリリースされることとなりました。
Providence ANADIME CHORUS ADC-4 – Supernice!エフェクター
BOSS CE-2W
コーラスが初めて登場したのは1976年、BOSS CE-1 Chorus Ensemble。Roland Jazz Chorus アンプのコーラス・ユニットを単体化させた名機アナログ・コーラスです。CE-1 の後継機種として登場し、こちらも名機として高い人気を誇ったCE-2。
CE-2W はこの CE-1、CE-2 両方のサウンドを再現する完全アナログのコーラス・エフェクター。ステレオ出力にも対応しています。
BOSS CE-2W – Supernice!エフェクター
格安アナログコーラス・ペダル
上記紹介した「Arion SCH-Z」「Electro Harmonix Nano Clone」以外にも格安のコーラス・ペダルが存在します。
TC Electronic Afterglow Chorus / 3RD DIMENSION CHORUS
TC Electronicの格安エフェクター「Smorgasbord of Tones」シリーズからリリースされた「Afterglow Chorus」は、BBD素子を採用した100%アナログ回路のコーラス・ペダル。6,000円前後のリーズナブルな価格帯ながら旧世代のペダルと違ってトゥルーバイパス化が施され、ペダルをONにした時の音痩せの心配はありません。シンプルな3ツマミ(RATE、DEPTH、MIX)のみですが、好みのコーラスサウンドを作り上げるには必要十分。暖かみのある爽やかな揺らぎからロータリースピーカーのようなサウンドまでが得られます。
同じくアナログコーラスである「3RD DIMENSION CHORUS」は Afterglow Chorus とは一味違い、揺らぎのない爽やかでクリアなコーラスサウンドが得られるモデル。すでに生産終了した「BOSS DC-2」を元に作られており、オリジナル同様コントロールツマミは搭載されず、4つのボタンのON/OFFで計16種類のサウンドが得られます。
TC Electronic Afterglow Chorus – Supernice!エフェクター
TC Electronic 3RD DIMENSION CHORUS – Supernice!エフェクター
Ibanez CSMINI
CSMINIは、著名ギタリストも愛用したアナログ・コーラス「Ibanez CS-9 Stereo Chorus」のクラシックなサウンドを継承したエフェクター。決して「格安」とは言えないまでも、信頼のアイバニーズによる100%アナログ回路の国産コーラス・ペダルであり、1万円を切る価格帯、トゥルーバイパスのため音質劣化は皆無、しかもミニサイズとなっているためエフェクターボード内にも組み込みやすいなど、魅力的なモデルです。
Ibanez CSMINI – Supernice!エフェクター
MOOER Ensemble King
MOOER Ensemble King
Ensemble Kingはリーズナブルな価格ながらも、完全フルアナログの太いコーラスサウンドが特徴です。手の平らに収まるコンパクトボディに3つのツマミを搭載し、幅広い音作りが可能となっています。強靭なメタルケース、音質の劣化しないトゥルーバイパス仕様など、至れり尽くせりの激安エフェクターです。
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ハイエンド・アナログコーラス
Visual Sound V3 H2O
Visual Sound V3 H2O
H2Oはコーラスとディレイを1つにまとめたハイエンドモデルで、「コーラスはフルアナログ」、「ディレイはアナログとデジタルのハイブリット」というユニークな特徴を持っている製品です。
コーラスとディレイをそれぞれ独立してOn/Offできるので、使い分けが可能です。H2Oならではの操作感と音色に魅了されたギタリストは大勢います。1000万回のスイッチ切り替えにも耐える、Forever FootSwitchを採用することにより、音質面ではもちろん、耐久面も優れている製品です。
Visual Sound V3 H2O – Supernice!エフェクター
コーラス・ペダルの接続順
モジュレーション系に属するコーラスは、「歪み系ペダルの後段かつ空間系ペダルの前段」に繋ぐようにしましょう。アンプにエフェクトループ(センドリターン機能)がある場合、ループ内に配置することで、よりキレイなエフェクト音がかかるようになります。
エフェクターのつなぎ方
コーラス・エフェクター一覧 – Supernice!エフェクター
コーラスと原理が同じエフェクター
コーラスに加え、フェイザーやフランジャーなどは「モジュレーション系」と呼ばれ、全てコーラスと同じように、原音を変化させたものを改めて原音に混ぜるという動作で効果を得ています。フランジャーはコーラスよりもさらに短めのディレイ音にフィードバックを掛け、それを原音と混ぜることで出力し、フェイザーは位相を変えた信号を原音と混ぜて干渉させることで出力します。そのため、1つのエフェクターでセットになっていたり、マルチエフェクターなどでは同カテゴリにまとめられているのです。
それぞれ異なる音質が得られ、違った用途で使われますが、コーラスが最も一般的によく使われるエフェクターです。いわばコーラスはモジュレーション系の代表選手なのです。
- カテゴリ: エフェクター ,
[記事公開]2018年8月25日 , [最終更新日]2018/08/25