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「フレット磨き」やったことある?プロの磨きを体験してみた!

フレット磨き

突然ですが、フレットを磨いたことはありますか?いつもやってるよ!という人もいるでしょう。いつも弾いているギターなら、弦との接点はいつもピカピカだし、一度もやったことがないという人もいるでしょう。久しぶりに出してきたギターのフレットがくすんでいて、なんだか感触が悪くなったという経験はないでしょうか。くすんできたり汚れが目立ってきたりしたフレットは、弦や指との摩擦が増えて、知らず知らず弾きにくくなっています。これを磨いてやることでフレットは輝き、弾きやすさを取り戻すことができるのです。

そんなわけで今回は、「フレット磨き」に着目してみましょう。岐阜県岐阜市のリペア工房「ツリートップス」を訪問し、代表の金子さんにプロの技をじっくり見せて頂きました。またいろいろな手法を試してもらって、所感とアドバイスを頂きました。

金子梢

金子梢(かねこ・こずえ)リペア工房ツリートップス代表
岐阜県出身。中部楽器技術専門学校ギタークラフトコース卒業。地元のリペアショップにてハイエンドモデルやヴィンテージギターのリペアを多く担当し、経験とテクニックを蓄積。のち、木工から塗装まですべての作業ができる工房を構え、2017年にリペアマンとして独立、オーダーメイドや各種リペアを一人で行なっている。

ギター修理工房「ツリートップス」

──宜しくお願い致します。公式サイトも公開されたんですね。

金子:宜しくお願いします。まだ検索されてもあまりヒットしません(笑。いまのところお客さまのほとんどが口コミや紹介です。

フレットの磨き方は、いくつもある。

今回は、「プロの仕事は、こうです」、「自分でやるなら、こういうやり方もあるよ」という2つのことを紹介するため、3種類のフレット磨きを実演してもらいました。

  • その1.マスキング&研磨剤で鏡面仕上げ
  • その2.フレットボードガード&スポンジヤスリで半ツヤ仕上げ
  • その3.「フレットバター」で指板もフレットも気軽にキレイ

「その1.」は、金子さんが業務としてフレットを磨く時の方法です。時間も手間も道具も必要ですが、最もキレイに仕上がります。よぉーし気合い入れてピッカピカにしてやる、という人は、ぜひチャレンジしてみてください。

「その2.」は、必要な道具が少なくて済みます。「その3.」は、鏡面とまではいきませんが、恐らく地球上で最も手軽な方法です。ふたつともプロのリペアマンが業務として選ぶ方法ではありませんが、ちょっと自力でやってみようかな、という人にはお勧めです。

その1.マスキング&研磨剤で鏡面仕上げ

最初にお願いしたのは、「マスキングを施したうえで、研磨剤でピカピカに仕上げる」という方法です。プロの仕事ぶり、じっくり拝見しましょう。

1971年製レスポール・デラックス この作業を依頼したギターは、1971年製レスポール・デラックス。あまりポピュラーなギターではないが、ミニハムバッカー、パンケーキ構造の重たいボディ、ネックボリュート、3Pマホガニーネック、デカいヘッドなど、なかなかにキャラの立ったモデル。

レスポール・デラックスのフレット 錆びているわけではない。しかし10年近く磨かれることがなかったため、しっかりくすんでいる状態。

作業に必要なアイテム

さっそく作業準備に入ります。リペア工房ツリートップスでは、このようなアイテムが使用されます。

ミニルーター 愛用のミニルーター。フレットを磨く時は、いつもこれ。

フェルトバフ 真っ白い「フェルトバフ」。これは消耗品。

KIKU-MOL 研磨剤「KIKU-MOL(キクモール)」は、ねっとりとした感触。しっかり磨ける上、ワックスが含まれているので輝きを維持できる。

スポンジヤスリ 3M(スリーエム)社製スポンジヤスリは、錆びや汚れがひどい時に使用。

スティックドライバー パナソニック社製「スティックドライバー」にワインダービットを取り付け、軽快に弦を外していく。ペン型電動ドライバーの通称「ペンドラ」は、マキタ社の「ペンドライバー」が由来。ペグ回しに大活躍するほか、穴開けやネジ締めなど多用途。

作業①マスキングテープを貼りつける

いよいよマスキング作業に入ります。「マスキング」は、処理したくない部分を覆う(マスクする)作業です。指板をマスキングテープで覆ってしまうことで、削ったり汚したりしたくない指板を保護します。

マスキングテープ マスキングテープは物によって糊が移ることがあるそうで、リペアマンの定番はこの3M(スリーエム)社製。さきほどのスポンジヤスリも3Mだったが、入手性もよく信頼の厚いブランドらしい。マスキングテープは手でもちぎれるが、ハサミを使った方が、はみ出し部分の寸法を操作しやすい。ネック塗装へのダメージを警戒して、いったん服や机に貼りつけるなどして粘着力を弱らせることもある。

マスキングテープ貼り付け しっかり引き伸ばして、フレットのキワに合わせて貼りつける。はみ出し部分をネック裏に貼りつけないのは、一つのこだわり。指板全体を覆ってしまうのも、その後の作業性を左右するポイント。

マスキングテープ貼り付け ハイポジションでは間隔が狭くなっていくため、中央にシワを作ったり細いテープに切り替えたりする。20フレットあたりからは、テープをタテに細く切って使用。ハサミは、テープがまとわりつかないようフッ素コーティングされているもの。

マスキング完了 マスキング完了。

作業②フレットの研磨

ここからが「フレット磨き」の本番です。今回はミニルーターを使用していますが、手で研磨しても同様の結果が得られます。

回転するフェルトバフに、研磨剤を塗り込む。フェルトバフは、まだ白い。

研磨開始 回転するフェルトバフをフレットに当て、研磨開始。

ルーターをちょっと当てただけで、山ほど汚れが出て、フェルトバフは真っ黒に。フレットは思ってたより汚れていたらしい。

ヤスリがけ 極細のスポンジヤスリに切り替え、全体的にヤスリがけを行う。マスキングがしっかり施されていると、弦と平行にヤスリがけできて効率が良い。指板の全面をマスキングしたのは、これをやる可能性があったからなのか。職人の手は速い。カメラで追いきれない。

ヤスリがけ完了。まだ粗削りなので、輝きは鈍い。こうした荒っぽい作業に、マスキングテープがしっかり耐えているところも興味深い。

改めてのミニルーター登場。充電式を使わないのは、一つのこだわり。待たずにすぐ使えるし、安定的に高出力で使用できる。上面から当てているだけのように見えるが、フェルトバフがフレットを包み込んでくれるので、全面を研磨できる。バフで塗装がチップしてしまうことがあるので、指板のエッジ部分を研磨する時には慎重を要する。

ウェスで汚れを拭き取る。

フレットが、輝きを取り戻した。

作業③マスキングテープを外して、仕上げ

磨き終わっても、プロは油断しません。キチンと仕上げて、弦を張るまでがフレット磨きです。

古いギターでは、塗装がテープの接着力に負けることがある。よって、ネック塗装が移ってしまうことを警戒し、ゆっくりめに剥がしていく。ぺりぺり。

レモンオイル クリーニングと保湿のため、2種類のレモンオイルを塗る。汚れの除去に特化したフェルナンデス(左)でクリーニングし、保湿に特化したRedland(レッドランド)で仕上げ。もしマスキングテープの糊が残っていたとしても、この作業で除去できる。青い「ペーパーウェス」は丈夫で、こうした塗りつけ作業でもほぐれたり破れたりすることがない。

作業開始から弦を張って作業完了まで、だいたい30分。

作業完了後のフレット 弦だけでなく天井の照明器具が映り込むほど、ピカピカになったフレット。弦や指との摩擦が大幅に軽減されて、チョーキングやビブラートがラクになったのが実感できる。また、音程差の大きなスライドをしたとき、欲しいところの寸前でいつも止められてしまうのが、今では狙ったところにピタリと着地できる。また「フレットや指板の汚れを落とすと、音がクリアになる」と言う人もいるが、確かにパーンというハジけかたが、気持ち良くなった気がする。

金子:ヤスリがけではスチールウールも使われますが、ゴミが出にくいのでスポンジヤスリがお勧めです。

ミニルーターでのフレット磨きは、軽く当てる力加減が重要です。削りすぎてしまうことはありませんが、摩擦で熱くなりすぎると、フレット浮きなどトラブルの原因になることがあります。手磨きなら、スポンジヤスリでも研磨剤でも強めにこすって大丈夫です。

フレット磨きは、バフがけで済ますわけにはいかない?

両頭バッファー アメリカから輸入したマシン。「両頭バッファー」と言うらしい。

──プロのフレット磨きは、こういうマシンで一気にやってしまうものだとばかり思っていました。こちらのマシンをフレット磨きに使うことはないのでしょうか?

金子:一気に磨けてすごく楽なのですが、ギターによって向き不向きがあるので、使い分けています。

バフがけの場合、ミニルーターや手磨きと比べると磨き時にネック全体に熱を持ちやすく、古いギターなどではバインディング剥がれやフレット浮きが起こることがまれにあります。それらを回避するために、なるべく私はリペアでは使わないようにしています。

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その2.フレットボードガード&スポンジヤスリで半ツヤ仕上げ

続いてお願いしたのは、「フレットボードガード」と「スポンジヤスリ」を使ったフレット磨きです。この二つだけ持っていれば実践できるので、DIYしてみたい人にも挑戦しやすい方法です。

フレットボードガード マスキングテープの代わりに指板をガードしてくれる「フレットボードガード」。これをフレットに当ててから磨く。マスキングの手間を省いてくれるという便利アイテム。

1995年製シェクターUSAのストラトタイプ この作業を依頼したギターは、1995年製シェクターUSAのストラトタイプ。軽量なアッシュボディ、ほんのりバーズアイの入ったメイプルネック、という木材構成。

作業①ネックを外す

ボルトオンジョイントのギターは、ネックを外すことで作業性が跳ねあがります。自分でやるには勇気が出ないという人も多かろう作業ですが、プロには何の躊躇(ちゅうちょ)もありません。

プロは弦を外してから、ネックも外す。作業しやすいし、ボディまで研磨してしまう危険が回避できる。しかし、自分で外すのが心配な人は、ネックを外さず研磨に入っても構わない。

永らく磨かれることのなかったフレット。ところどころが赤く錆びている。

作業②スポンジヤスリで研磨する

マスキング不要で、すぐに研磨に入ります。フレット22本の両サイド、すなわち44回ものマスキング作業から解放されるのは、かなりのメリットではないでしょうか。

研磨剤も使用できるらしいが、磨いているうちにフレットボードガードの幅から研磨剤がはみ出してしまうと、黒いのが指板に付いてしまう。拭きとればいいのだが、それがイヤならマスキングが必要。それではフレットボードガードの意味がないではないか。そんなわけで、このギターの研磨では研磨剤を使わず、スポンジヤスリでお願いした。

左手でフレットボードガードを持ちつつネックを安定させ、右手でスポンジヤスリを持ち、研磨する。自分でスムーズにやるには、ちょっと慣れが必要かもしれない。

フレットに対して平行に、ごしごしごしごし。

作業③細部を竹串で仕上げる

細部のクリーニングに、竹串を使用します。これはフレット磨きに限らず、いろいろな方面に応用できそうです。

竹串 フレットボードガードの厚みのぶんだけ研磨できないところは、竹串でこする。へし折った先の硬い繊維が、ブラシのように働く。

指板のエッジ部分も、竹串でクリーニングする。

極細のスポンジヤスリで磨き上げた「半ツヤ」の状態。

弦は映っているが、天井は映らないくらいの仕上がり。この個体はボディもネックもマット仕上げだし、フレットだけピカーと輝くよりアリかも。ザラザラ感はなく、やはり摩擦が軽減された実感が得られた。滑りの良さは、さきほどのツヤツヤと代わらないくらいかもしれない。自分でやるなら、これくらいでじゅうぶん満足できる。

金子:このフレットボードガードはRがついていて柄もあって、使いやすいですね。スチールウールやスポンジヤスリで磨くだけなら、かなり手軽に作業できると思います。リペアマンの仕事としてはツヤツヤに磨きあげてお渡ししたいところですが、ご自分で作業するならここまでで満足できるかもしれません。

研磨剤で磨くときには、はみ出した研磨剤が指板に付着することがあります。それでも塗装された指板なら、簡単に拭き取れます。

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その3.「フレットバター」で指板もフレットも気軽にキレイ

最後にお願いしたのは、手軽な作業でフレットも指板もキレイにできるという「フレットバター」を使ったフレット磨きです。

フレットバター おどろくほどカンタンにフレットをキレイにできるという、噂の「フレットバター」。


もうこうなったら8弦ギター弾いてみた!!
最後に登場するのは、この動画で登場した8弦ギター。フィッシュマン社製ピックアップ搭載の現行モデルとは違う、EMGが載っている旧モデル。

くすんでいるとはいえ、「磨かれていない歴」数年という、今回持ち込んだギターの中ではまあまあ軽症のフレット。

作業は、塗ってから布でこするだけ!

作業は、1)塗る、2)布でこする、という2ステップです。本当にコレだけでキレイに磨けるのでしょうか。

指板もろとも塗りつける。面積が広いから、塗り甲斐がありそう。

これがフレットバターの本体。液体が染み込んでおり、甘い匂いがする。通常なら20回くらい使えるのだとか。塗るだけなら、フレットバター側に汚れが付くことはないらしい。なお、手はベタベタになる。

ばさばさばさっ。ウェスで拭き上げ。

ウェスはこのように真っ黒に。この汚れが移ってしまうことがあるため、メイプル指板での使用は推奨されない。

「当て木」をくるんだウェスでこするのが、プロの技。専門学校で最初に作ったものなのだとか。

これまでの手法と比べて、作業時間は3~4割ほど短くて済んだ。6本弦の普通のギターなら、もっと時短できたに違いない。研磨剤で磨いたほどではないにせよ、曇りが晴れた感じはスポンジヤスリよりかなりキレイで、むしろ天井まで映り込むピカピカ具合。指板もクリーニングできて一石二鳥。スベスベ具合もじゅうぶんで、「買ったときは確かにこんな感じだったかも」というノスタルジーが味わえた。

金子:これは簡単で便利ですね。作業時間もかなり短くできます。効果は控え目ですが、弦交換のたびにこれを使うことで、一定のキレイさを維持できると思います。

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キレイなフレットを維持するために

以上、ツリートップスの金子さんにフレット磨きを実演してもらいました。3種類のやり方を試しましたが、総じて押弦の感触が軽くなり、演奏性の向上というか回復を感じました。今回体験したフレット磨きについて以下にまとめますので、自分でやってみたいという人は、ぜひ参考にしてみてください。

  • フレットを磨くと、ギターは弾きやすくなる
  • 機械で磨くなら、摩擦熱に注意。手磨きなら、力いっぱいでも大丈夫
  • 安心のブランド「3M(スリーエム)」
  • 指板を傷めないために、マスキングテープやフィンガーボードガードを使おう
  • 便利アイテム「竹串」
  • スチールウールやスポンジヤスリで磨いた「半ツヤ」でも、演奏性の面で満足できる
  • メイプル指板でなければ、「フレットバター」はかなり有用
  • 弾き終わったら、弦だけじゃなくフレットも拭こう
金子さん

金子さん’s EYE

弾き終わったら弦を拭くのと同じように、フレットも拭いてあげてください。フェルナンデスから「サーフェイスプロテクター」というコーティング剤が出ていますから、こちらを試しても良いでしょう。ステンレス製のフレットなら、錆びたり曇ったりせず、きれいな状態が維持されます。

──随所でプロのテクニックを見せていただきました。ありがとうございました!