ギターとアンプの相性を考える

[記事公開日]2013/9/7 [最終更新日]2021/4/28
[編集者]神崎聡

エレクトリックギターは、音を作り出す部分(ギター)とそれを発音する部分(アンプ)が二つに分かれている電子楽器の一つです。オーディオマニアがスピーカーにこだわるのを見ても分かるとおり、発音の出口でもあるアンプは、ギター本体と同等以上に重要な位置を占めます。

そして、レスポール、ストラトを筆頭として、ギター本体に様々なものが存在するのと同様、アンプも様々なメーカーがしのぎを削って個性的なサウンドを実現しています。ここではどんなギターにどんなアンプが合うのか、少し考察してみましょう。

どんなギターでも対応できる、万能アンプ

Mesa Boogie MARKシリーズ

mesa-boogie-mark Mesa Boogie Mark V 25 Head

歪むアンプであれば、マーシャル系はどんなギターでもカッコいい音が出ます。ただ、歪みが非常に粗いので、フュージョン系に見られるようなきめの細かいクリーミーなトーンは望めません。クリーントーンではフェンダーのアンプも万能ですが、歪ませるには別途エフェクターが必要です。その他、メサブギーのMarkシリーズなどもギターの種類を問わず人気がありますし、Roland Blues Cubeなども、真空管搭載アンプに引けを取らない暖かい音色で人気があります。

Mesa Boogie MARKシリーズ – Supernice!ギターアンプ

モデリングアンプ


Yamaha THR100H Dual/THR100H the amp you’ve been waiting for.
…ギター博士?

モデリング系はある意味で万能です。BOSSの「KATANA」、ヤマハの「THR」シリーズなどは複数のサウンドキャラクターを独自にチューンナップして内包しています。お金に糸目を付けないのであれば、「KEMPER」などのハイエンド・モデリングアンプを搭載したアンプヘッドを使うのも良いでしょう。この辺りは下記のマルチエフェクターの項目を併せてご参照ください。

BOSS KATANA – Supernice!ギターアンプ
YAMAHA THRシリーズ – Supernice!ギターアンプ

アンプに依存しない…エフェクターでの音作り

定番のクリーントーンアンプ+歪みエフェクター

アンプとの相性は考慮せず、「JC-120」など、どこのスタジオやライブハウスにもあるアンプに合わせて自分のエフェクターを常に使うのも一つの音作りの方法です。


オーバードライブとディストーションを比べてみた【ギター博士】
基本的なクリーントーンはアンプ「Roland Blues Cube」で音作りしている。

歪みエフェクターを選ぶ際は、シングルコイル、ハムバッカーのそれぞれの長所を消さず、短所を補うようなものを選ぶのがポイントになります。シングルコイルの場合は高域がきれいに聞こえ、中低域が貧弱にならないもの。シングルコイル自体あまり歪まないので、ハイゲインに特化したエフェクターは合いにくいです。ハムバッカーの場合はハイが削られすぎるとこもって聞こえるので、高域にある程度伸びがあるものを選ぶと良いでしょう。

ちなみに、スティーヴィー・レイ・ヴォーンが使ったIbanez TS-9は中域に独特のコシがあり、それが太い弦を張ったストラトとマッチしてあのような絶品のサウンドになっています。

とはいえ、昨今の歪みエフェクターは優秀。シングルコイル、ハムバッカー問わず、どんなギターでも素晴らしい音が出せるものが多数あります。どのようなものが良いか迷ったら、「マーシャル系」や「TS系」、「トランスペアレント系」など、歪みエフェクターのカテゴリで絞り込んでいくのも一つの手です。

歪みエフェクター探しの旅を終わらせる総まとめ – Supernice!エフェクター

エフェクターを使ってのサウンドの調整


はじめてのコンプレッサー・エフェクター【ギター博士】

音作りは歪みだけではありません。グラフィックイコライザーやコンプレッサーなどを使って、音色を柔軟に補正する手もあります。たとえば「ストラトだがクリーントーンだけ少し音を太くしたい」などというピンポイント的なニーズの時、それに合わせてうまく利用すると効果的です。
イコライザー
コンプレッサー

マルチエフェクターの使用

マルチエフェクターは内部にアンプシミュレーター、モデリングアンプを搭載しているものがほとんどなので、普通のアンプと似たような運用ができます。BOSSの「GT」シリーズ、ZOOMの「G」シリーズや、モデリングの最高峰として名高い「Fractal」などもこのカテゴリに入れて構わないでしょう。通常のエフェクターのようにギターとアンプの間にインサートしても構わないのですが、本来の音色を生かしたいのであれば、エフェクター内部でサウンドを作り込み、アンプに対してはリターン端子、あるいは直接ミキサーに送り込みます。

自分のアンプを持つよりも手軽に運用できますし、サウンドの作り込みがより緻密にできますが、生のアンプに特徴的な、空気を震わせるような迫力は望めません。それが駄目だというギタリストは数多いものの、試してみる価値があるでしょう。
マルチエフェクター

シングルコイル・ギターと相性のいいアンプ

シングルコイルはやはりジャキっとした線の細い枯れた音が魅力。その長所をより強く出してくれるものは相性が良いと言えます。多数ある歪むアンプの中でも、とくにマーシャル系の粗い歪みと気持ちの良い高域との相性は群を抜いていると言っていいでしょう。また、似た傾向のブリティッシュ系アンプとして、ORANGEなども暗めのトーンと粗い歪みがシングルコイルと好相性です。

また、フェンダー系アンプは美しくツヤのあるクリーントーンが魅力。ツイン・リバーブやデラックス・リバーブなどは、同じ社のストラト、テレキャスとの相性も抜群。この組み合わせでカッティングを繰り返すと、極上のリズム・トーンが得られます。

おすすめのMarshallアンプ – Supernice!ギターアンプ
おすすめのFenderアンプ – Supernice!ギターアンプ

ストラト・タイプと相性がいいのは?

「1959」に代表される初期マーシャルは、ジミ・ヘンドリクスやリッチー・ブラックモアを代表として、ストラト使用者の愛用でよく知られています。JCM800以降のモデルでも、イングヴェイなど、ストラトと合わせて使っているケースが多数見られます。

また、上で述べたとおり、スティーヴィー・レイ・ヴォーンがIbanez TS-9とフェンダーアンプの組み合わせで素晴らしいブルーストーンを出しているのも有名。ストラト自体万能ギターでもあるので、耳に痛くなりやすい高域に注意しつつセッティングすれば、合わないアンプは少ないと言えます。ただ、ハイゲインなメタル向きのアンプなどは、もともと線の細いストラトには合わないことが多いです。

テレキャス・タイプと相性がいいのは?

テレキャスのサウンドはストラトと系統的に近いものを持ちますので、同じ傾向のアンプが合わせやすいですが、ストラトより図太い音が出る個体が多いのも特徴。それだけによく歪むハイゲインタイプのアンプでも合うことがありますが、ゲインアップは音がつぶれない程度に。

クリーンにしたときも太くバリッとしたサウンドになりやすく、カントリー系には適役。同じフェンダー系のクリーントーンのアンプでも、ストラトほど線の細さを感じないことがあり、カントリーやサザンロックのような太くブライトなサウンドが得やすいです。それゆえ、JC-120を筆頭とするトランジスタ系の硬い音のアンプでも意外に使えたりします。下のハムバッカーの項目でも述べている、VOXのアンプも粘っこさが生きそうです。

おすすめのVOXアンプ – Supernice!ギターアンプ

ハムバッカーと相性のいいアンプ

ハムバッカーは太く暖かい音が魅力。高音の細さと枯れた感じは望めないので、チャキチャキとしたカッティング等には合いませんが、ウォームなリードギターのトーンや、ジャズっぽく太いクリーントーンなどはシングルコイルでは得がたい魅力です。

こちらもマーシャル系と組み合わせる人が大変多く、「1959」のようなクラシックな仕様のものならば、スラッシュのようなブルースロック的な歪みの音を狙えますし、ハイゲインアンプを使ってもザック・ワイルドのような王道ハードロックのサウンドが狙えます。また、フェンダー系の代表的アンプなら、ジャズにも使えるような暖かく太い音から、極上のアルペジオトーンまで、様々なシチュエーションで説得力のあるサウンドを出すことができます。同じクリーントーンであっても、ローランドJC-120のように硬い音のアンプで、セッティング次第によって硬くなりすぎないような音作りも可能です。

VOXのアンプなどはハムバッカーで鳴らすと、独特の粘っこさが生きてきます。VOX自体はストラト系でも十分に良さが発揮できるアンプですが、ハムバッカーでの粘っこさはこのアンプの一つの強烈な持ち味。独特のクランチサウンドはブルースにも合いやすいでしょう。

おすすめのRolandアンプ – Supernice!ギターアンプ

メタルギターに最適なアンプは?

Mesa Boogie Triple Rectifier メタルアンプの定番:Mesa Boogie Triple Rectifier

ハムバッカーといえば、ハイゲインが望めるところもシングルコイルにはない魅力。ハードロック、メタル系音楽にはやはりハムバッカーを搭載したギターが合います。高低域を上げて中域を下げる、いわゆるドンシャリはメタルの刻みリフに多いセッティングですが、ハムバッカーならばスカスカにならず、サウンドの芯をある程度保てます。

メサブギーのレクティファイヤーやエングルのアンプなどはドンシャリでも気持ち良く、メタル系音楽にはまさに最適。ヒュース&ケトナーなどもやや硬めの中域ながらハードロック的なチューンアップが施されています。マーシャルもJCM2000以降のモデルならモダンハイゲインが可能。JCM900は2000年代以降のメタルにこそ合わないものの、80~90年代の華やかなハードロック・トーンを再現できます。

100W以上、大出力のおすすめアンプヘッド
メタル・リフを演奏するのに最適なギターアンプ:Best12 – エレキギターニュース.com

ジャズギターに最適なアンプは?

セミアコ、フルアコなど、いわゆる箱物といわれるギターは、ジャズを演奏するのに最適です。アンプの選択の要はまず美しいクリーントーン。その上で、まろやかに伸びる高音、レガートで音を繋ぐような演奏が求められるので、ジャズ用にチューンされたアンプをつかった方が良い結果が出やすいです。こちらではジャズ系に特化したアンプを中心にクリーントーンの美しいものを集めています。
セミアコ、フルアコに最適なギターアンプ8選

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