真空管を搭載せずチューブサウンドを実現:Roland Blues Cubeとは?

[記事公開日]2016/7/18 [最終更新日]2021/7/3
[編集者]神崎聡

Roland Blues Cube Stage ギター博士が使用する Roland Blues Cube Stage

2015年、そのトランジスタ離れした音色で人気を博した銘アンプ、Roland「Blues Cube」が、リニューアルして再登場を果たしました。ローランドが時間を掛けて磨き上げた、新たなTube Logic Technologyをひっさげて登場した新Blues Cube。従来の物とくらべてどのように違うのか、また、どのような特徴があるのでしょうか。

Blues Cubeってどんなアンプ?

オリジナルは90年代

真空管の働きを模したソリッドステートアンプとして、90年代に登場したBC-60、BC-30。これがBlues Cubeの初代に当たるモデルです。真空管にありがちな手間やメンテナンスを免れていながら、真空管アンプに比肩するような暖かみを得られるアンプとして、高い評価を得ました。

中でも、パワーアンプを増幅させたときに得られるクランチのトーンを模したサウンドは特筆すべきもので、このモデルの人気に一役買った部分です。ギターのボリュームやピッキングの強弱によく追従し、ブルースを中心として幅広く使える間口の広いサウンドは、幅広い支持を得ました。初期のフェンダーアンプを彷彿させるツイード調のルックスもまたギタリストにとっては嬉しい仕様です。

チャンネルはクリーン~クランチまでをカバーする「NORMAL」と、PRE、POSTの二つのボリュームでゲインを制御できる「LEAD」の二つ。BC-60はフットスイッチやエフェクト・センドも内蔵し、そのままライブで使用できるアンプとして登場しました。

新Blues Cubeの特徴


Roland Blues CUBE Amplifier Demo w/ Fender Blues Deluxe AB Comparison
クリーン/ドライブそれぞれのチャンネル、ブーストスイッチON、デュアルトーン、出力切替の演奏比較。ストラトキャスターとの相性も良好

新型は、ヴィンテージのチューブアンプの音色を追求した粘りと艶のあるトーンというものを命題に置き、ローランドの最新技術を用いたTube Logicでデザインし直されています。以前のモデルにはなかったデュアルチャンネルをブレンドしての音作りが可能になり、音量によって音質が変わりすぎないように、出力をコントロールするためのパワーコントロールスイッチも搭載。ハコの大小など、周囲の環境に左右されない、安定した音色の実現を目指していることが分かります。また、USBによるダイレクトアウトを装備するなど、幅広い音作りと共に、現代のニーズにマッチさせた機能も増設。

以上のように、従来のモデルの良さやそのルックスをそのまま引き継いだ上で、機能面、音質面においてさらなるブラッシュアップを図った、正統進化形として登場しています。

新Blues Cubeのここがスゴイ!

では実際新しいBlues Cubeはどんな音がするのでしょうか。ギター博士が「Blues Cube Stage」を使って演奏している動画を見ながらサウンドチェックしてみましょう。

ソリッドステートなのに真空管アンプのような暖かみ


はじめてのフェイザー・エフェクター【ギター博士】
全てBlues Cube Stageを使って演奏。ストラト・タイプのギターとの相性は抜群だ


Gretsch Electromaticシリーズを、ギター博士が弾いてみた!
1:10〜以降はBlues Cube Stageを使って演奏している。グレッチとの相性も良好だ

新しいBlues Cubeでは、ギターから信号が送り込まれてからのチューブアンプ各部の動きを緻密に計算しデジタルで再現しています。内蔵されたアナログのディスクリート回路の動きを、そのDSP回路でコントロールして最終的な出音に繋げるわけです。初代Blues Cubeの頃からさらに進化したこのローランド独自技術「Tube Logic Technology」は、ソリッドステートのアンプをフルチューブアンプに肉薄させるために大きな働きをしています。さらに、アンプ部に合わせてスピーカーは専用設計、キャビネットにも音抜けを考慮したポプラ材が採用されています。

このような徹底的なこだわりによって、ヴィンテージチューブアンプを彷彿させるほどの暖かみと艶のある音を実現しています。音色そのものは言うまでもなく、ピッキング時の強弱やギター本体のボリューム、トーンなどに絶妙に追従してくれる感覚もまさに真空管アンプのもの。特にクランチトーンはBlues Cubeという名の通り、思わずブルースを弾きたくなるような、枯れていながらも艶を失わない絶妙な音に追い込まれている印象を受けます。

デュアル・トーンによる多彩な音作り

Blues Cube:デュアル・トーン

初代に搭載されていたリードチャンネルは姿を消し、クリーン、クランチの2チャンネル仕様になっていますが、そんな中でもデュアルスイッチの搭載が最も特徴的なポイントです。これをONにすることによって、クリーントーンとクランチトーンをミックスさせることができます。パンチの効いたクランチトーンの中にクリーントーンの芯を残したような音作りを積極的に狙うことができ、デュアルトーン状態でのクランチチャンネル側の歪みは、上下させてクリーンの周りにまとわりつく歪みの量を調整する感覚になります。同じローランドのJC-120のDistotionツマミを上げたときのような、独特のハリがあって立ち上がりの速いクランチ音も出力可能。デュアルトーンを歪みペダルでさらにプッシュしてやるのも面白いでしょう。惜しむらくは、最下位モデルのBlues Cube Hotは単一チャンネルになっているので、これが付いていません。

2つの音量調節によって、JC-120(ジャズコ)的な音づくりも可能

Blues Cube:コントロールパネル 2つの音量ツマミの調節によってトーンキャラクターが変わる

Blues Cube 全シリーズで、音量を操作するツマミは各チャンネルの VOLUME と MASTER の2つが用意されています。この2つのツマミはキャラクターが異なっており、これが Blue Cube での音づくりのミソの一因となっています。


BOSS BD-2 vs BD-2W WAZA Craft 【Supernice!エフェクター】
CLEANチャンネルのVOLUMEを下げてMASTERを上げ、EQでBASSを下げてHIGHを強調すれば、ストラトキャスターでJC-120を鳴らした時のような、煌びやかなクリーントーンも鳴らすことができる

CLEAN/CRUNCH に搭載される VOLUME を上げていくことで真空管アンプのようなウォームなサウンドが強調されます。一方 VOLUME を下げて MASTER を上げることでチューブライクな質感は薄まり、いかにもソリッドステートらしい「ジャキ」っとしたクリアで澄んだクリーントーンが得られ、これが JC-120 を彷彿させるトーンとなっています。
全国のライブハウスやスタジオ常設アンプはほとんどが JC-120 ですから、自宅でジャズコ対策を考えた音づくりが仮想できるというのは大きなアドバンテージです。


Ibanez RG(Prestige)シリーズのギターを弾いてみた – Youtube
スーパーストラト・タイプのギターとの組み合わせでも自然なサウンドで、エフェクターのりも良い。

4段階出力によって、最小0.5Wにまで下がる!

パワーアンプの出力を上げた際のドライブしたサウンドは、チューブアンプの持つひとつの重要な特性ですが、それを得るには、つねに音量を上げていなくてはなりません。Blues Cubeは複雑な回路構成でもってそれを再現していますが、パワーコントロールの搭載により、小音量時でもパワーアンプの良さを引き出せるようになっています。各モデルに合わせて、コントロールは4段階。小さな場所での演奏も可能で、どのモデルでも最小は0.5Wにまで下がるので、自宅練習も可能な音量です。

真空管トラブルの心配がいらない

Blues Cube Artist:リアパネル Blues Cube Stage のリアパネル

真空管らしい音を出しますが、実際に真空管が搭載されているわけではないので、その面倒な調整やメンテナンス、意図せぬトラブルに無縁です。起動の際、暖まるのを待つ必要もありませんし、移動にも気を使わなくて済みます。さらに60WのBlues Cube Stageでさえ、14kgの軽さ。トランジスタアンプならではのメリットを享受できます。

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ラインナップ(各ラインナップ毎の違い)

Blues Cubeのラインナップ

小規模なギグから、ホールでのライヴにも使えるものまで、出力ごとにそれぞれ5種類(+キャビネット1種類)がラインナップされています。

パワーコントロールは全機搭載。Stage以上のモデルが2チャンネル仕様、Artist以上になると、エフェクトループや内蔵エフェクトとしてトレモロを搭載します。フラッグシップモデルのTourに至ってはエフェクトループ2系統、MIDI操作にも対応するなど、かなりの拡張性を誇ります。

Blues Cube Hot Blues Cube Stage Blues Cube Artist
定格出力 30W 60W 80W
EFFECT REVERB REVERB TREMOLO、REVERB
EFX LOOP × ×
PRESENCE
コントロール
× ×
FOOT SW × 1 系統
TIP=CH SELECT
RING=DUAL TONE
3 系統
GA-FC
TIP=TREMOLO
RING=EFX LOOP
TIP=CH SELECT
RING=DUAL TONE
消費電力 33W 58W 68W
外形寸法(mm)
W x D x H
433 x 239 x 413 513 x 244 x 465 592 x 260 x 485
質量(kg) 12.6 14 16
価格帯 ¥59,400 ¥75,600 ¥97,200

Hot / Stage / Artist スペック比較

Blues Cube Tone Capsule

Blues Cube Tone Capsule

Blues Cube Artist、Stageの各モデルには、あのエリック・ジョンソンが開発に全面協力したというTONE CAPSULEを適用することができます。これはアンプとは別売となる、真空管のような形を模したサウンド調整用回路モジュールで、アンプ本体に装着することでキャラクターを変更することができるというもの。極上のトーンで有名なエリックだけに、その品質は折り紙付き。画期的でユニークなパーツなので、エリック・ジョンソン以外のアーティストのものがもし今後発売されるのであれば、それもまた楽しみです。


Eric Johnson Blues Cube Tone Capsule

まとめ

ジャズコのようにも使えて、ブルースやジャズ的なトーンもイケる

Roland JC-120仮想 JC-120 ができるのは強み

クリーントーンは硬く煌びやかな音から、暖かみを感じる音まで、幅広く作れます。また、上には記していませんが、エフェクターとの相性も抜群なので、Roland JC-120のように、「便利で丈夫なクリーントーンアンプ」といった使い方が可能な上、持ち前のチューブ的な暖かい音色を活かした丸みのあるクリーントーンを使えば、ジャズギターにでも対応可能です。Artist以上のモデルになれば、スプリングリバーブとトレモロが使えますので、それを活かしたオールドなサーフミュージックのサウンドもいいでしょう。また、クランチチャンネルのブルース的な艶のある歪んだ音色はこのアンプの真骨頂です。デュアルトーンでは、クリーントーンのヌケの良さを活かして、大人数のバンドアンサンブルにも埋もれない強靱な音や、半分だけ歪んだ独特の音色も作ることが出来ます。

どのチャンネルを使っても、エフェクトは良く乗ります。軽くブーストさせると、フュージョン音楽などでも十分使えるのではないでしょうか。

自宅用ならBlues Cube Hot、ライブでも使うならBlues Cube Stage/Artist が適している

家での練習やバーなどでの軽いギグにはBlues Cube Hotで十分事足ります。ただし、Hotは単一チャンネルで、デュアルスイッチなどがありません。デュアルチャンネルを求める場合、前述のTONE CAPSULEを使いたい場合は、ひとつ上のBlues Cube Stage以上を選択することになります。普通のライヴハウスでライヴするためのケースを考えると、30Wでは心許ないので、StageかArtistを選択することになるでしょう。

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