轟音のマストアイテム「7弦ギター」の選び方とおすすめモデル

[記事公開日]2024/9/20 [最終更新日]2025/5/2
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

轟音のマストアイテム「7弦ギター」特集

「7弦ギター」は通常のギターに低音弦を追加し、低音側に音域を拡張したギターです。かつては一部のプレイヤーが使用するだけでしたが、スティーヴ・ヴァイ氏やKORNの活躍により、特にヘヴィ・ロックのシーンでは当たり前とまで言えるほどに普及しています。ここではその7弦ギターに注目し、歴史や代表的プレイヤー、おすすめの7弦ギターなどを紹介していきます。

小林健悟

ライター
ギター教室「The Guitar Road」 主宰
小林 健悟

名古屋大学法学部政治学科卒業、YAMAHAポピュラーミュージックスクール「PROコース」修了。平成9年からギター講師を始め、現在では7会場に展開、在籍生は百名を超える。エレキギターとアコースティックギターを赤川力(BANANA、冬野ユミ)に、クラシックギターを山口莉奈に師事。児童文学作家、浅川かよ子の孫。

エレキギター博士

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コンテンツ制作チーム

webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、プレイヤーのための情報提供を念頭に日々コンテンツを制作中。


  1. 7弦ギターの歴史
  2. 7弦ギターの特徴
  3. 7弦ギターを選ぶ、4つのチェックポイント
  4. 7弦ギターおすすめモデル

7弦ギターの歴史

「ヴァイ以前」の7弦ギター

人類史における7弦ギターの歴史は以外に古く、南米ではショーロやサンバの伴奏楽器として100年以上も前から使用されていました。このジャンルで使用されるのはクラシックギターですが、1930年代にナイロンが発明される以前には「ガット(羊の腸を加工した弦)」が使用されていました。第7弦のチューニングは半音高い「C」が一般的です。

ジャズで初めて7弦ギターを使用したのは、レジェンドと称されるジョージ・ヴァン・エプス氏(George Van Eps、1913-1998)でした。1938年にエピフォンとの共同開発で製作されていますが、主にソロギターの演奏において、高いポジションでのプレイで低音を得ることを目的としていたようです。エプス氏に感化されて7弦ギターを持つギタリストも何人か現れますが、残念ながらジャズというジャンルでの7弦ギターはスタンダードな楽器にまではなり得ていません。


George Van Eps and Howard Alden – Night and Day

初の量産7弦「ユニヴァース」爆誕

ロックで7弦ギターの先駆者といえば、スティーヴ・ヴァイ(Steve Vai、1960-)氏にほかなりません。ヴァイ氏は自身のシグネイチャーモデル「JEM」を7弦にした「Universe(ユニヴァース)」をアイバニーズと共同開発していますが、ソリッドギターの7弦モデルには前例がなく、ピックアップはもちろんのことナットやブリッジなどのパーツ(しかもいきなりフロイドローズタイプ)を新規に開発しなければならず、ユニヴァース完成にはかなりの苦労があったようです。

ホワイトスネイクのアルバム「Slip of the Tang(スリップオブ・ザ・タング。1989年)」、ソロ第2作「Passion and Warfare(パッション・アンド・ワーフェア。1990年)」でヴァイ氏の7弦ギターはデビュー。ヴァイ氏があまりにも長身であり手の大きさも尋常でないためか、極端に幅の広いネックを持つ7弦ギターに違和感がほとんどありません。


Steve Vai – “Star Spangled Banner”

「Slip of the Tang」、「Passion and Warfare」ともにロック史における重要な名盤であり、7弦ギターの魅力が世界中に知れ渡ることとなりました。しかしあまりにヴァイ氏のイメージが強かったためか、ホワイトスネイクで共演したウリ・ジョン・ロート氏(Uli John Roth、1954-)の使用例があるのみで、しばらく目立った使われ方をすることがありませんでした。ユニヴァースの販売台数は伸び悩んでいましたが、ヴァイ氏自身は自分の影響でユニヴァースを買った若い人たちが成長し、いずれ音楽シーンを変えていくということを予見していました。

「ヴァイで育った世代」の台頭

ヴァイ氏は6弦のJEMと7弦のユニヴァースを使い分けるというスタイルでしたが、やがて7弦ギターをメインに使用するアーティストが現れます。1994年にデビューした「KORN(コーン)」は、アイバニーズ7弦ギターの使い手が二人もいる強烈にヘヴィなサウンドと陰鬱な世界観を武器に、「OASIS(オアシス)」や「BUR(ブラー)」を代表とする英国の「ブリットポップ」、カート・コバーン(Kurt kobain、1967-1994)氏率いる「NIRVANA(ニルヴァーナ)」が牽引した米国の「グランジ」が席巻していたロックシーンに深く切り込みます。KORNのマンキー(Munky)氏は熱烈なヴァイ氏のファンで、「Passion and Warfare」のコピーに明け暮れていたといいます。


Korn – Got The Life

7弦ギターはこの時まで「テクニカル系のギタリストが使うもの」というイメージが定着していました。しかしヘヴィなツインギターを特徴とするKORNの台頭により、ラップやヒップホップとヘヴィなグルーヴ、そして7弦ギターという組み合わせがいかに魅力的かが証明されました。KORNの成功により、7弦ギターのヘヴィなサウンドを持ち味とするバンドが続々とデビューしていきます。

ロックシーンがグランジからニューメタルへ

4年後となる1998年は、KORN自身のレーベルが立ち上げられ多くのヘヴィ・ロックバンドが輩出し、またKORNの3作目「Follow the Leader」が全米一位を記録しました。またこの分野の代表格でありKORNを上回るヒットを記録したリンプ・ビスキット(Limp Biskit)がデビューし、ラップとヘヴィ・ロックが融合した「ニューメタル」というジャンルが完成した記念すべき年でした。グランジを牽引していたカート・コバーン氏が亡くなったのもこの年で、ロックシーンがグランジからニューメタルへの転換を遂げる象徴的な年でもありました。


Limp Bizkit – Re-Arranged

現代ではヘヴィ指向のエレキギターのラインナップには必ずと言っていいほど7弦があり、8弦/9弦と音域を拡大させたモデルも発表されていきます。7弦以上の多弦ギターを専門とするブランドまで台頭しており、7弦を代表とする多弦ギターはロックシーンに欠かせないアイテムとなっています。

7弦ギターの特徴

Ibanez QX527PB
全フレットが同じ角度にナナメになっている「スラントフレット」は、Ibanezだけの独自設計。人間の骨格を考慮した設計で、実はとっても弾きやすい。

Ibanez「QX527PB」は、高級機がしのぎを削るヘッドレス7弦市場に10万円台という捨て身のコスパで深々と斬り込んだ意欲作です。Ibanezらしいプレイアビリティとサウンドバリエーションはもちろん、Qシリーズのために新たに開発した部品が多くあり、Ibanezの本気度が伺えます。ギター博士の弾いた「QX527PB」をじろじろとチェックしながら、7弦ギターの特徴やメリット/デメリットを見ていきましょう。

弦1本ぶん、ネックの幅が広い

7弦ギターは弦を追加したぶんだけネックの幅が拡張されます。QX527PBのナット幅「47mm」は7弦ギター界隈でこそ細身ですが、それでもコード弾きやチョーキングなどで親指を出してネックを握るのは軽く困難です。

一方、親指をネックの真裏に添える、いわゆるクラシカルスタイルで演奏することの多いパワーコードを主体としたヘヴィ・リフ、あるいはさまざまなテクニックを駆使したリードプレイに対しては「音域が拡張した」というメリットしかないため、ヘヴィ・ロックでこそ使いやすいと言えます。そのため7弦ギターは総じて平たい指板と大きめのフレットを採用し、またハイポジションへのアクセスに深くこだわった設計を採用する傾向にあります

重量感のあるサウンドと楽器本体

Ibanez UV70P
Ibanez UV70P
7弦の先駆者Universeの末裔、Ibanez「UV70P」。弦だけでなくペグも追加されるため、ヘッドが大型化する。そのため全長が伸び、汎用ギグバッグでは収まらない場合がある。

7弦ギターは基本的に、音も本体も重いものだと思って良いでしょう。第7弦のサウンドはヘヴィで、弦の追加のためにネックは太くなり、ペグが1個増え、これを設置するためにヘッドも大型化します。アップした体積と重量はギター本体の音響性能に影響し、鳴りがタイトでサスティンが伸びる、現代的な感触が得られます。

一方でヘッド側が重くなりやすいため、メーカーは重量バランスに腐心します。この重量バランスの問題を一挙に解決するソリューションが、ヘッドレス化です。特にヘッドレスの多弦ギターは、優秀な重量バランスを達成する傾向にあります。

関連記事:
《ヘッドがない!》ヘッドレスギター特集

7弦ギターに関するFAQ

Q&A

7弦ギターを選ぶ、4つのチェックポイント

では、7弦ギターを検討する上で必要となるであろう4つのチェックポイント、「ブリッジ仕様」、「弦とチューニング」、「スケール」、「想定されるジャンル」それぞれについて見ていきましょう。

Point 1:ブリッジ仕様(固定式かトレモロ装備か)

特にこだわりが無ければ、7弦ギターではハードテイルやTOMなど固定式ブリッジを選び、アーミングをしたい曲では6弦ギターに持ち替えるのがおすすめです。7弦ギターの、特に第7弦をぶっ放してのアームダウンなどは大迫力の表現なんですが、引き換えに弦交換やチューニング、調整には6弦以上の手間がかかるからです。

Point 2:弦とチューニング(出荷時のセットアップ)

多くのブランドが、出荷時にどんなゲージの弦を張って、どんなチューニングにセットアップしているかを表示しています。自分が使いたい弦やチューニングに近いセットアップのギターは、買ってからそのまま実戦で使えますね。

逆に違った弦やチューニングで弾こうと思ったら、買ったばかりのギターに対してナットの溝やネックの反りなどを調整する覚悟が必要です。なお、大は小を兼ねるので、10からのゲージでセットアップしたギターに09からの弦を張るぶんには、ナット調整は必須ではありません。

Point 3:スケール(標準型か拡張型か)

7弦ギターの弦長(スケール)は、フェンダーが標準的に採用している「25.5インチ」が多数派です。これに対し、近年では特にダウンチューニング時の弦張力を確保するため、26.5インチや27インチに拡張したモデルが市民権を得ています。これを敢えてレギュラーチューニングで弾き、張りの強いブライトなサウンドを得るプレイヤーもいます。

ファンフレット(マルチスケール)を採用したギターでは、張りのある低音弦、指の届きやすい高音弦という絶妙なバランスが得られます。これら独特なスケールには特有の弾き心地がありますから、心配な人は実際に触れてみることを強烈におすすめします。

関連記事:
《特集》ファンフレットのギターって、どんな感じ?

Point 4:想定されるジャンル(多くの7弦ギターがヘヴィ志向だが)

7弦ギターはヘヴィミュージックで使われがちという現代の情勢から、ハイゲインサウンドの得られる出力の高いピックアップを搭載する傾向にあります。そんな中、PAFをイメージしたハムバッカーなど比較的オーソドックスなサウンドを目指したピックアップを備えるモデルもあります。ポップスやジャズなどいろいろなジャンルで7弦を使いたい人には、こうしたピックアップを備えるモデルがおすすめです。

7弦ギターおすすめモデル

入門機を探している人や7弦ギターを試しに買ってみたい人、ちょっと良い7弦やすっごく良い7弦を探している人、それぞれの人におすすめの7弦ギターをチェックしていきますが、その前にどんなポイントを見ると良いかを考えてみましょう。予算の範囲内でルックスのインスピレーションから決めてしまっても良いのですが、その7弦ギターで何をしたいのか。そういった目的に沿った選択ができると良いですね。

画像 製品名 指板
フレット数
ピックアップ 特徴
Ibanez
RG7421PB
Jatoba(400R)
Jumbo 24
Quantum 7(パッシブHH配列) 実績ある演奏性と、使えるサウンドバリエーション
GrassRoots
G-HORIZON-FX7
Rosewood
24Frets
GH-1G-7(パッシブHH配列) 抱え心地良好&ハイポジ余裕
Jackson
JS Series DINKY ARCH TOP JS32-7 DKA HT
Amaranth(12″-16″ Compound Radius)
Jumbo 24
Jackson® High-Output 7-String Humbucking(HH配列) 弦長の拡張で、ローエンドのアーティキュレーションが向上
Ibanez
ICTB721 & XPTB720
Ebony(400mmR)
Jumbo frets 24
DiMarzio® D Activator 7™ (H) neck/bridge 1音下げチューニングでのセットアップ
Jackson
Pro Series Signature Jeff Loomis Soloist SL7
Ebony(12″-16″ Compound Radius)
Jumbo 24 Frets
Seymour Duncan Jeff Loomis Signature Blackouts FRT仕様&弦長26.5インチ
PRS(Paul Reed Smith)
SE MARK HOLCOMB SVN
Bound Ebony(20″R)
24Frets
Seymour Duncan Mark Holcomb “Scourge”&”Scarlet” PRSでは珍しい、ネック裏サラサラ
Ibanez
AZ24047
S-TECH WOOD Roasted Maple(305mmR)
24 Jumbo Stainless Steel frets(Prestige fret edge treatment)
Seymour Duncan® Hyperion™ 7 安心の日本製であり、メタル以外にも浸透できる高スペック機
Sterling by MUSIC MAN
RICHARDSON7
Rosewood 16″ (40cm)
24 Frets, Medium Jumbo Profile
Sterling by Music Man-Designed JR Pickups (HH) ブースター内蔵の、テクニカル志向モデル
Strictly 7 Guitars
Cobra JS7 OL
Macassar Ebony
24 Jumbo Stainless Frets
Seymour Duncan Sentient & Nazgul とにかくネックが長い
Jackson
Pro Plus Series DK Modern HT7 MS
Ebony(12″-16″ Compound Radius)
Jumbo Stainless 24F
Fishman® Fluence® Modern PRF-MH8(Neck & Bridge) マルチスケール&Fishmanピックアップ
SOLAR GUITARS
A2.7C
Ebony(400R)
Super Jumbo 24 F
Duncan Solar、Duncan Solar/Bridge 高級スペックだが良コスパ
E-II
HORIZON NT-7 ET
Ebony, w/White Binding(305R)
XJ 24frets
(Neck) EMG 85-7H Brushed Black
(Bridge) EMG 81-7H Brashed Black
EVERTUNEの恩恵が得られる。
E-II
ARROW 7
Ebony, w/White Binding(305R)
XJ 24frets
EMG 66-7H(Neck)
EMG 57-7H (Bridge)
ものすごく尖った本体
.strandberg*
Boden Original NX 7
Birdseye Maple 20″R
Jescar 51100 Stainless Steel Fretwire (57110 for zero fret) 24 Frets
Neck: Fishman Fluence Modern Alnico
Bridge: Fishman Fluence Modern Ceramic
オリジナル要素多数
FGN
EXPERT ELAN EEL-DE-7
Rosewood、24F Jumbo C.F.S. Seymour Duncan® Blackouts™ AHB-1n-7(Neck)
Blackouts™ AHB-1b-7(Bridge)
サークルフレッティングシステムと2WAYテールピース
Caparison
Dellinger7 Prominence MF/EF
Ebony or Maple(350mmR to 400mmR)
Jumbo, Jescar Stainless Steel 24F
Caparison PH7-nm/bm 時計の指板インレイがお洒落
ESP
SNAPPER-7-AL/R
Honduran Rosewood(305R)
JESCAR FW55090-NS, 22frets
Seymour Duncan SSL-5-7, (Neck & Middle)
Seymour Duncan SH-14-7(Bridge)
あらゆる音楽に浸透できる
Ernie Ball MUSIC MAN
Majesty 7
Ebony 17″ (43.2 cm)
24 – Medium Jumbo profile, Stainless Steel Frets
DiMarzio Rainmaker(neck)
DiMarzio Dreamcatcher(bridge)
Fishman Powerbridge piezo saddles
アコギの音も出せる
MAYONES
Hydra 7 Elite
Ebony(No binding)16″(406 mm)
24 extra jumbo, Ferd Wagner Stainless Steel Frets
H-H / Velvetrone® Ironside + Solium
Other Brands, Models and Configuration of pickups – on request
世にも硬いネック
Bacchus
T7-Custom/SE ’19W FT
Ebony(310R)
24
Mojotone / PW Hornet7 和材が美しい

入門機におすすめの7弦ギター3選

入門機としておすすめするモデルは、高すぎず安すぎず、構造や操作系がシンプルであることを重視して厳選しています。3モデルとも、いかついルックス通りのパワフルなピックアップを備えており、ヘヴィなサウンドが得られます。

2本目以降におすすめの中上級モデル

7弦ギターは各社が手掛けており、群雄割拠の状況を呈しています。その中から30万円台までの価格帯で、特にキャラクターが立っているものを見ていきましょう。

高級7弦ギター

こちらはスペシャルな木材や特別な設計を盛り込んだ、格の高い7弦ギターです。カスタムモデルでは1本しか作られないこともあり、極めて高い希少性もポイントです。

以上、7弦ギターをテーマに歴史や特徴、おすすめモデルなどをチェックしていきました。かつてマニアックな存在でしかなかった7弦ギターは、今やヘヴィミュージックのシーンにおいて不可欠な花形へと昇華しました。専用の設計もさまざま考案され、先祖の6弦ギターから遠く離れてしまったモデルも生まれています。ヘヴィな轟音に必須の7弦ギター、ぜひ実際にチェックしてみてください。

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