ギブソン・ファイヤーバード(Gibson Firebird)

[記事公開日]2016/1/1 [最終更新日]2022/4/5
[編集者]神崎聡

今でこそ人気のあるギブソン・フライングVギブソン・エクスプローラーですが、発売当初は人気が出ずに生産をストップしていた時期がありました。ライバル会社であるフェンダー社は数多くのラインナップの人気機種エレキギアーを発売しており、ギブソン社はこれに焦りを感じていました。そこで、ギブソンはフェンダーに対抗するための新型エレキギターの開発を開始します。こうして1963年、Firebird(ファイヤーバード)モデルが発売されました。

ファイヤーバードはカーデザイナーであるレイ・デートリッヒ氏がデザインを担当し、「火の鳥」という所以のとおり優美な流線型のボディライン、高域特性に優れたトーンを持つミニ・ハムバッキング・ピックアップ、そしてスルー・ネック・ボディ構造が大きな特徴となっています。ボディ強度とサウンド安定性を最大限まで高めるこのデザインは、ファイヤーバードVでは9プライ・ネックのスルー・ボディ構造が忠実に再現されています。機能とスタイリングが融合したデザインと言えます。

ファイヤーバードの特徴/サウンド

リバースモデルの多くには、ピックアップには前後共にミニ・ハムバッカーを搭載、これは他のギブソン製に多く用いられるハムバッカーよりもシャープな音質を持っています。 一方、ノンリバースモデルの多くにはギブソン社の代表的なピックアップP-90が採用され、高音域が特徴的なリバースモデルの音とは異なり、低音も効いた太い音が特徴となっており、フェンダーとギブソンの中間的な存在だと評されることもあります。
弾き心地もその流線型のボディからか、独特なクセのあるエレキギター。ピックアップが2つ以上装備されたモデルでは、コントロールはレスポールなどと同じ2ボリューム、2トーン、ピックアップセレクタースイッチとなっています。

リバースモデルとノンリバースモデル

Gibson Firebird ノンリバースモデル firebird・ノンリバースモデル

ファイヤーバードは1965年に、大幅なモデルチェンジが行われ、左右を反転させたようなデザインに全面的に切り替えられました。
これは「ノン・リバース」と呼ばれ、ネックの接合方法がスルーネックからセットネックに変更されたほか、ピックガードが大型化されて各モデル共通のボディとなったことで、コストダウンが図られたものですが、フェンダーの市場を崩すほどの売上は確保できず、ファイヤーバードは69年に製造中止となります。
しかしその後、オリジナルのリバースモデル復刻を望む市場の声に応えて何度か再製造され、結果としてギブソン社の代表的なモデルの一つとなりました。

リバースモデルは、ギブソン社としては初のスルーネックを採用したソリッドボディ・エレキギターで、それを主張するためかボディはセンターピースが一段厚くなっている独特の造形となっています。トレモロユニット使用時のチューニングの狂いを極力減らすため同社の他モデルよりヘッド角度が浅く、フェンダー社製のギターのヘッドに見られるような、「ストレート・プル・デザイン」を採用しています。

ちなみに、ファイヤーバードのエレクトリックベース版モデルとしてサンダーバードが存在します。

ギブソン サンダーバード・ベースについて

ファイヤーバードの主な使用ギタリスト

ジョニーウィンター ジョニーウィンター

firebirdは主にブルース系のギタリストに使用されました。ブルースギタリストであるジョニーウィンターがファイヤーバード再熱の火付け役になったと言われています。白人でありながら黒人音楽のブルースをプレイし続け、ブルースの巨人マディ・ウォーターズが「義理の息子」と呼ぶほど彼に気に入られました。彼のスライドギターはエリック・クラプトンにも影響を与えたといわれています。

また、ハードロックなどではエアロスミスのジョー・ペリーもfirebirdシリーズを使っています。ロックバンドでは、オアシスのゲムアーチャー・ノエルギャラガーが有名。日本での愛用者としては、クレイジーケンバンドの「のっさん」こと小野瀬雅生、「ザ・イエローモンキー」のemmaが有名です。

ノン・リバースは製造本数が少ないこともあり、使用しているミュージシャンは多くないですが、オアシスのノエルギャラガーが使用しています。

ファイヤーバードのラインナップ

現代のファイアーバードは、ギア比が1:1で正確なチューニングが困難だった従来のバンジョーペグから、スタインバーガー製のギア比40:1を誇る超高精度のギアレス・チューナーに変更されています。このギアレスチューナーにより、基本的なルックスを大きく変更する事無くシビアなチューニングができるようになりました。またこれによりヘッドの重量が軽くなり、ヘッド落ちが大きく改善されています。

Gibson Firebird 2014

Gibson Firebird 2014

マホガニーボディ、マホガニー+ウォルナット多層スルーネック、ギアレスチューナー、ミニハムバッカーという基本構造は2010年モデルを受け継ぎつつ、アウトプットジャックをボディサイドに移動させており、外観がすっきりとしています。カラーはサンバースト、ホワイト、レッドの3色。

Gibson Firebird 2015

Gibson Firebird 2015

2014年モデルをベースに、ギブソンの2015年モデルに共通するスペック、

  • ゼロフレット・アジャスタブル(=高さの調節ができる)ナット(特許申請中)
  • 軽量で剛性の高いチタンサドル
  • ナット幅約46mm。幅を広くしたネックグリップ
  • ジャックと配線のアップグレード

などのモデルチェンジを受け、現代的にアレンジされています。

Firebird V 2016

Firebird V 2016 HP Firebird V 2016 HP

2016年版のファイアーバードVは、

  • Firebird V 2016 HP
  • Firebird V 2016 T

の2タイプがリリースされました。このファイアーバードは2015年モデルの最大の特徴であった、マホガニー&ウォルナットを9層も重ねることで強化したネックをそのまま引き継ぎ、2016年モデルとしてのアレンジを受けています。

それではどんな所が変わったのか、2015年モデルと2016年モデルを比較してみましょう。

Firebird V 2015 Firebird V 2016 HP 変更点
価格 $2,099 $1,449 とてもお安くなりました
ボディ マホガニーの両翼。ボディ重量は 2.82ポンド(1.279Kg) マホガニーの両翼。ボディ重量は 2.69ポンド(1.220Kg) わずかに軽量化
ネック マホガニー&ウォルナット9層スルーネック。スリムテーパー・プロフィール マホガニー&ウォルナット9層スルーネック。ファイアーバード・プロフィール グリップ名は異なるが、ネック本体の厚みは同じでスリムな握り心地
ナット ブラス製ゼロフレット・ナット。ナット幅約45.9mm チタン製ゼロフレット・ナット。ナット幅約44.3mm 2015年に幅を広くしたが、2016年には元に戻った
ペグ スタインバーガー・ギアレスチューナー 自動チューニングシステム「G Force」 ギアレスチューナーはTモデルに採用
ジャック 2接点の高性能ジャック 金メッキを施してさらに高性能になったジャック 金メッキが使用され、伝導率が向上
ノブ Black top hat w/Silver Supreme grip speed knobs HPモデルのノブは新型に統一
ケース ハードシェルケース HPギグバッグ

表:年式の異なるファイアーバードVの比較

搭載されるパーツがアップグレードされているのがわかりますね。付属するケースがギグバッグとなりましたが、価格が大幅に落とされ、求めやすくなっています。

リードプレイに特化した幅広いネックは、かつてのギブソンらしい「スリムテーパー」ネックに戻されています。これまでファイアーバードVに対して「ヘッドからはみ出さないペグ」にこだわってきたギブソンですが、このたび自動チューニングシステムを搭載することで、ついにヘッドからペグのキー(つまみ)がはみ出ることになりました。このルックスはエピフォンなどからリリースされるファイアーバードではもうおなじみですが、とうとう本家ギブソンがこうなった、というのは歴史上の大きな転換と言えるでしょう。

このほか

  • カラーバリエーションはヴィンテージサンバーストの一色のみで、ハイグロス(つやつや)ラッカー仕上げ
  • セラミックマグネットを使用した、495R/495Tミニハムバッカーを搭載
  • 振動伝達に優れるザマック(亜鉛合金)製のブリッジ&テールピース、チタン製のサドル
  • 真珠貝を使用した指板インレイ

このような仕様がそのまま受け継がれています。

HPとTの違い

HPモデルは、Tモデルより350ドル高い上位機種という扱いです。場合楽器本体のグレードには違いがありませんが、搭載されるパーツや機能、付属するケースなどにグレードの差が設けられています。では、その相違点を見比べてみましょう。

モデル名 Firebird V 2016 HP Firebird V 2016 T
指板インレイ 真珠貝 アクリル
ナット チタン製「ゼロフレット・ナット」
ナット幅1.745インチ(44.3㎜)
テクトイド(摩擦係数を軽減したグラファイト)製ナット
ナット幅1.695インチ(43.0mm)
ペグ つまみがザマックになった、次世代型自動チューニングシステム「G Force™」 グローヴァー製クルーソンタイプ。伝統的な「グリーンキー(緑色のつまみ)」
電気回路 金メッキにより伝道効率を向上させた、高性能特殊ジャック 接点を増やして伝導率を向上させた高性能ジャック
コントロールノブ Supreme grip speed knobs Black Tophat Silver Inserts
ブリッジ ザマックTOM&チタンサドル ザマックTOM
ケース 大きなポケットを持つ「HPギグバッグ」 通常のギグバッグ

表:HPモデルとTモデルの違い
自動チューニングシステム「G Force」、ゼロフレットナットといった機能面だけでなく、インレイの素材やコントロールノブの種類にまで、グレードの違いが反映されています。HPはG Forceの搭載によりヘッド周りの外観が大きく変わりましたが、ヘッドからはみ出さないペグのスタイルはTモデルに継承されています。

Elliot Easton “Tikibird” Firebird

Elliot Easton Tikibird

「ザ・カーズ」のイタリスト、エリオット・イーストン仕様のファイアーバードは、ピックガードにハワイの神様「ティキ」が描かれ、’57ハムバッキングピックアップとビグスビーを搭載、また4つのスライドスイッチにより、フロント/リアそれぞれのコイルタップ、アウトオフ・フェイズ、回路を全部バイパスしたリアピックアップ全開、ができる高機能仕様になっています。

Firebird X

Firebird X

ノンリバースボディに3つのミニハムバッカー、自動チューニングを装備した、未来の超高機能ギターです。
3つのピックアップはそれぞれタップ/並列/直列をセレクトでき、ピエゾピックアップ、マルチエフェクターまで内蔵。ノイズ対策的に有利になるばかりでなく、演奏中に設定の変更ができます。またトーンコントロールをデジタル化し、より音楽的なバリエーションを実現しました。
同梱のフットペダルはBluetoothにより楽器のサウンドを無線で操作します。オーディオインターフェイスも同梱。単体でSDカードに録音できる機能までついています。

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