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ストラトキャスターを代表するさまざまなエレキギターのブリッジやその後ろ(テールピース)から生えている金属の棒。これが「アーム」です。アームの他に「トレモロ」や「ヴィブラート」と呼ばれることもあり、アームを使うことができるブリッジ&テールピースまでひっくるめて「アーム」と言うこともあります。また、アームを使ったプレイを「アーミング」と言います。
今回はこの「アーム」に注目し、ギターそれぞれのアームの違い、また使い方について追跡してみましょう。
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1: アームって、何をするもの? 1.1: 色々なアーミングのやり方 2: アームの種類は、ざっくり分けて3種類 2.1: ビグスビー・トゥルー・ビブラート 2.2: フェンダー・シンクロナイズド・トレモロ 2.3: フロイドローズ・トレモロシステム 3: さまざまなアームの特徴と見分け方 3.1: ビグスビー・タイプ 3.2: シンクロナイズド・トレモロタイプ 3.3: フロイドローズ・トレモロシステム 3.4: その他のアーム 4: トッププレイヤーに見るアームの使い方 5: アームがついていないギターにアームをつけるには?
アームは
以上の三つが基本的な使い方です。「右手の操作で音程を滑らかに上下させる」というシンプルな機能ながら、プレイヤーのアイディア次第で情緒あるプレイやトリッキーな効果を生み出すことができる「飛び道具」です。
ギター博士がサドウスキーのストラトとアイバニーズ RGで、アーミングを披露しています。ピッチを下げる、上げる、揺らす、というだけでも、発想しだいで表現の幅が大きく広がるのが分かりますね。ちなみに博士のRGは、ドロップDチューニングになっています。
クリーン/クランチ・サウンドはアンプの歪みを使って、ディストーション・サウンドは Suhr Riot で音作りしています。
Gretsch Electromaticシリーズを、ギター博士が弾いてみた!
こちらの動画では、ビグスビーのアーミングの雰囲気が伝わるかと思います。
歴史上さまざまなタイプのアームが発明されてきましたが、現在メジャーになっているものは、
以上の3機種に絞られます。代表的なプレイヤーの動画と共に、アームが進化していった歴史を見てみましょう。
アームの歴史は意外と古く、フェンダーが台頭してギターの歴史を変える遥か前、1940年代にはすでに存在していました。現在もスタンダードなアームとして知られている「ビグスビー」は、この時代のトレモロユニットの悩みであったチューニングの不安定さを解消した画期的なシステムとして考案され、またたく間に普及しました。特にグレッチやギブソンのギターに多く取り付けられ、トレモロユニットの定番機種となっています。
Brian Setzer – Sleepwalk (Live)
グレッチの愛用者として最も名高いのが、このブライアン・セッツアー氏です。セッツアー氏の滑らかでやさしく歌うようなヴィブラートは、ビグスビーあってのものです。
「シンクロナイズド・トレモロ」は、1954年にデビューしたフェンダー・ストラトキャスターのアームとして開発されました。シンプルな構造で大幅な音程変化を生み出すことができる革新的な設計でしたが、当時の音楽シーンではそこまでの大幅な音程変化が必要ありせんでした。ところが1960年代にジミ・ヘンドリックス氏が台頭してその狂暴な表現力が発揮されると、新たな表現のツールとして一気に注目を集めることになります。
The Jimi Hendrix Experience – Foxey Lady (Miami Pop 1968)
終盤で魅せる「太ももアーミング」は、ヘンドリックス氏の得意技の一つです。安定しているとはいえどもチューニングの狂いがゼロにはならない「シンクロナイズド・トレモロ」ですが、ヘンドリックス氏は「どれだけアームを動かしたらどこがどれだけ狂うか」また「ペグをどれだけ回せば直せるか」を把握していたと伝えられています。
1977年に発明された「フロイドローズ・トレモロシステム(FRT)」は、シンクロナイズドトレモロが抱える「チューニングの狂い」という問題をほぼ解消し、さらに大幅な可変域を持たせた「究極のアーム」です。この時代のハードロックシーンにマッチしたこともあり、ハードロック御用達のシステムとなりました。
Night Ranger – Sister Christian
ナイトレンジャーのブラッド・ギルズ氏は、FRTの大きな特徴である「大幅なアームアップ」を一般化させたという功績により、「フロイフドローズの第一人者」と称されます。ハイゲインなディストーションとFRTは、相性が抜群です。
さまざまなメーカーがそれぞれに特徴あるアームを開発していますが、それぞれどんなタイプのアームなのか、目が慣れてくればほぼ一発で見分けられるようになります。ここではさまざまなアームを並べて、その特徴をチェックしてみましょう。
開発者ポール・アルバート・ビグスビー氏の名を冠する「ビグスビー」はレトロ感あふれるルックスが最大の特徴で、逆にレトロ感のあるギターに搭載するアームの大定番となっています。グレッチ、フェンダー、ギブソンなどのギターに搭載されますが、ほとんどのものに大きく「Bigzby」のロゴが刻まれているので一発で見分けることができます(ビグスビーはビグスビー社が生産していますが、モズライトやハグストロムなどでは近いルックスながらオリジナルのアームが搭載されています)。取り付けにボディの加工がほぼいらないことも大きな特徴で、特にアームのないレスポールタイプのギターにアームを取り付けたい時などに、多いに採用されます。
テールピースの両端にボールベアリングが仕込まれており、アームの上下に連動して滑らかに回転するようになっています。弦はこのテールピースに巻きつけるようにして固定されており、アームダウンでは送りだされ、アームアップでは巻きとられて、ピッチを変化させます。
「あくまでもビブラートを行うためのユニット」だということもあって、ピッチの可変域はがんばっても上下1音(2フレット分)くらいです。しかしこの可変域だからこそ、味のある音楽的なビブラートかかけられます。むしろ古典的な設計でありながら、
この両方を使い分けることができるため、ビブラートユニットとしてすでに完成されている、極めて優秀なユニットであると言えるでしょう。
左から:
(1) Epiphone 2015 Joe Bonamassa Les Paul
(2) G6120SSL Brian Setzer Nashville
(3) Fender Custom Shop JOHN 5 BIGSBY SIGNATURE TELECASTER
ビグスビーには、ボディエンドにネジ留めするもの(1と2)、ボディトップにネジ止めするもの(3)があります。ギブソンやフェンダーには「テンションバー」の下に弦をくぐらせるタイプのものが採用されますが(1と3)、ボディトップにもネジを刺さなければならないため、ハコモノに搭載されるビグスビーにはテンションバーが付きません(2)。テンションバーを使用すると弦の張力が上がり、張りの強い音になるとともにチューニングの安定度が上がります。
レオ・フェンダー氏が開発した「シンクロナイズド・トレモロ」はコンパクトでスッキリとした外観と高い機能性により、現在最も普及しているタイプのアームです。このスッキリとした外観が、シンクロタイプの特徴です。これをヒントにPRS(ポール・リード・スミス)やミュージックマン、またパーツメーカーのゴトーなどが各社各様のアームを開発しています。
「シンクロ」には、「同期、一致」といった意味があります。従来のトレモロユニットは弦を固定するテールピースが可動部分で、チューニングの要となるブリッジは動きませんでした。これに対してシンクロナイズド・トレモロは、このテールピースとブリッジを一体化さて両方を同時に動かすことで、大きな可変域を実現しています。
シンクロタイプには
の二つがあります。
左から:
(1) Fender American Vintage Stratocaster
(2) Fender American Elite Stratocaster
(3) ERNIE BALL MUSIC MAN ARTISAN MAJESTY 7 String
(4) Providence Desperado® sD-102RVS
「ヴィンテージ・スタイル(1)」は6本のネジでボディに留められており(6点留め)、サドルは鉄板を曲げた「ベンドサドル」になっています。「モダン・スタイル(2,3,4)」は多様化しているように見えますが、「2点留め」であることとサドルがブロック状(ブロックサドル)であることが共通しており、ヴィンテージ・スタイルから操作性を向上させ、本体を堅牢にしています。(2)は極力ルックスを維持していますが、(3)では金属のカバーが付き、(4)ではサドルの設置法が変更されるなど、さまざまなアレンジがあります。
セッティングには、
の2種類があります。ストラトキャスターはどちらかのセッティングを選択できますが、初めからフローティングを前提に作られているギターではベタ付けにできないのがほとんどです。ベタ付けはアームアップができないセッティングですが、ブリッジプレートが大面積でボディに接するため、弦振動をボディに伝える効率でフローティングよりも優れています。また演奏中に弦が切れてしまっても、残った弦のチューニングはある程度保持されます。フローティングにすると自然なビブラートがしやすくなりますが、アームアップの上げ幅はそれほど期待できません。
開発者フロイド・ローズ氏の名を冠する「フロイドローズ・トレモロシステム(FRT)」は、先述のシンクロタイプの基本設計を出発点としていますが、チューニングの安定度とピッチの可変幅に大幅な進歩を果たし、また独特の音色になることから全く新しいユニットと見られています。
ナットとブリッジの2か所で弦を固定するので「ダブルロッキング・トレモロシステム(ロックタイプ)」とも呼ばれますが、現在ではナットをネジ留めするタイプの大半がFRTです。
Froyd Rose Originalのファインチューナー。
調整幅は狭く、あくまで微調整用です。
ナットの部分で弦を固定してしまうので、ブリッジ部分に「ファインチューナー」を備え、チューニングの微調整ができるようになっています。チューニングにおいては第一にヘッド側のペグで合わせ、ナットをロックし、ファインチューナーで整えます。
左から:
(1) FLOYD ROSE Original/KILLER KG-PRIME Original
(2) EVH-Branded Floyd Rose Locking Tremolo with EVH D-Tuna/EVH Wolfgang
(3) Schaller S-FRT II /Caparison HORUS M-3
(4) Lo-Pro Edge tremolo bridge /Ibanez S5520K
FRTは(1)のフロイドローズ・オリジナルが代表機種です。(3)のシャーラーなどライセンス生産されているモデルはこのオリジナルを踏襲した設計になっていますが、アイバニーズのFRTは基本設計を踏襲しながら独自のテイストを盛り込んでいます。
ボディがブリッジと接する部分を大きく削り取る「ザグり」を施して、大胆なアームアップができるようになっているのが近年の一般的な仕様です(1,3,4)。「アームアップでどれだけ上げられるか」はザグりの深さなどギターそれぞれの設計によってさまざまですが、3弦が1音半(3フレット分)上がれば充分だと言えるでしょう。しかしエドワード・ヴァン・ヘイレン氏のように「FRTベタ付け」セッティングに深いこだわりを持つプレイヤーも一定数いることから、ザグりを施さないギターもあります(2)。
シンクロタイプと同様に、フローティングのセッティングで弦が切れたらユニットの位置が動いてしまい、残った弦のチューニングが崩壊してしまいます。しかしベタ付けセッティングだとある程度チューニングを保持することができるほか、「D-チューナー(D-tuna)」を使用して6弦を1音下げるのにも問題がありません(2)。
左から:
(1) Floating Tremolo/Fender AMERICAN VINTAGE ’65 JAGUAR
(2) Dynamic Vibrato/Fender CLASSIC 60S MUSTANG
(3) Trans Trem-3/Steinberger ZT-3 Custom
(4) Kahler #2315/ESP JEFF HANNEMAN EC
ストラトキャスターの開発に伴い「シンクロナイズド・トレモロ」という画期的なユニットを発明したレオ・フェンダー氏は、それに飽き足らずに次々と新しい構造のアームを発明していきます。フェンダー・ジャズマスター(1958)とフェンダー・ジャガー(1962)に採用された「フローティング・トレモロ(1)」はトレモロユニットとブリッジが分離していますが、アームを操作するときにはブリッジも弦の動きに従って前後に動きます。アームを固定する機能まで付いていて便利ですが、操作は簡単ではありません。ボディのプレートからアームが生えているのが、ルックス上の特徴です。
フェンダー・ムスタング(1964)に搭載された「ダイナミック・ヴィブラート(2)」は、ユニット内でテールピースとブリッジがトレモロスプリングで繋がれているという大胆な構造で、大きな可変域を実現しています。ボディに埋め込む機構がコンパクトになったため、薄型のボディにも搭載できるようになっています。ブリッジとテールピースが同じプレートに載っているのと円柱状のテールピースがルックス上の特徴です。
次々とアームを開発していったフェンダーでしたが、どれもついにはシンクロタイプを超える評価を得られませんでした。現在ではフローティング・トレモロはジャガーとジャズマスターのみ、ダイナミック・ヴィブラートはムスタングのみで採用されています。
スタインバーガーの代表的なアーム「トランス・トレム(3)」は、全ての弦で同じ音程変化が得られるように設計されたユニットで、和音の響きを保ったままアームダウン&アップができる画期的な設計です。ブリッジの操作だけで全弦半音下げチューニングに変えられるなど、進化した現代版には便利な機能がたくさん込められています。「ヘッドレスデザイン」のギターなので、ブリッジにペグが付けられています。
「ケーラー(4)」は「もうひとつのダブルロッキング・トレモロシステム」として有名ですが、FRTの人気に押されて地味な存在でした。しかしユニット全体を上下させるFRTに対して、ケーラーはサドルを動かさずテールピースのみを動かすというビグスビーに近い方式を取っていることから、近年爆発的に広がっている「ファンフレット」に適応することができており、今後の展開に期待されています。FRTではできない「弦ごとの弦高調整」ができたり弦交換が比較的簡単だったりするなどアドバンテージも多く、またベース用のアームも積極的に開発しており、FRTとは一味違う個性を発揮しています。
国産ギターブランド「Kz Guitar Works」でケーラー製アームが採用されています。
アームは右手でピッチを上下させるシンプルな道具ですが、これを音楽にどう活かすか、多くのプレイヤーがさまざまな表現技法を生み出しています。名手たちがどんなアーミングを生み出してきたのか、いろいろなアーティストのプレイを見てみましょう。
Jeff Beck – Led Boots (Jeff Beck: Performing This Week…Live at Ronnie Scott’s)
「ヤードバーズの3大ギタリスト」の二人目としても知られるジェフ・ベック氏は、いつの日からかピックを使わず指でピッキングするスタイルに落ち着きました。親指と人差し指をメインにピッキングしつつ、アームは常に手の中にあっていつでも操作できるようにしています。ベック氏はアームだけでなくボリュームやトーンも頻繁に操作するので、右手は常にフル稼働です。
Dinosaur Jr w/ Kevin Shields (My Bloody Valentine) play MBV’s “Thorn”
サンバーストのジャズマスターが、「Dinosaur Jr.」のJ.マスシス氏、白いジャズマスターがシューゲイザーの雄「My Bloody Valentine」のケヴィン・シールズ氏です。シールズ氏は冒頭のノイズ的なプレイ以降、徹頭徹尾アームを持ちっぱなしでコードストロークをしていますが、爆音のバンドの奥で始終エグいノイズを発しており、あまりのエグさに音量を下げられています。
Van Halen – “Jamie’s Cryin'” (Official Music Video)
エディ(エドワード・ヴァン・ヘイレン)のアームは、手を離すと勝手に垂れ下がるプラプラのセッティングです。そろそろアーミングをしようかな、という時には小指でアームを持ちながら演奏しますが、アームに遊びがあるため、このように多少触ったくらいではピッチが変わってしまうことがありません。エディはベタ付けセッティングですが、「2音チョーキング」までできる彼にとって、アームアップができないくらいのことはなんでもないのです。
https://youtu.be/6ux5MlbjEe0
ZAKK WYLDE VS DIMEBAG DARREL
ザック・ワイルド氏と故ダイムバッグ・ダレル氏のソロが交互に見られる動画です。特にダレル氏にとってFRTは欠かせないアイテムで、左手によるニュアンスにアームのトリッキーな効果を加えています。時にハーモニクスで悲鳴を上げる「ハーモニクス・スクイール」は氏の得意技のひとつです。ダレル氏のアームはエディ同様「プラプラセッティング」ですが、「使わない時のアームは、必ずそこにぶら下がっている」のが大きなアドバンテージです。
Limp Bizkit – Lightz
「リンプ・ビスキット」はメタルの方法論を貪欲に取り入れたバンドであり、ギターソロが無い曲も珍しくはありません。それゆえギターの仕事はソロよりもバッキングが重視されます。ギタリストのウェス・ボーランド氏のアーミングはリードプレイよりも伴奏中に放り込んでいく効果音を生み出すのに使われます。
Joe Satriani – The Extremist
ハードロックを基調としながらブルースからヒップホップまで幅広い音楽性を持つ、「師匠」と謳われるジョー・サトリアーニ氏。オーソドックスな演奏から変態的なプレイまで、表現の引き出しが多いことでも知られています。「ユニゾンチョーキング」にアームでヴィブラートをかけているのが確認できますね(50秒以降)。左手でアームを操作しながら右手でピッキングハーモニクスを出す技は「ハーモニクス・ホイッスル」と名付けられており、氏の代名詞とまでなっています。ハイゲインに頼らずキッチリと美しいハーモニクスを出すのは、至難の業です(動画では3分7秒から)。
G3: Live in Tokyo (Trailer)
3人のスーパーギタリストが魅せる夢の共演「G3」のダイジェスト。1番手は「ドリームシアター」のジョン・ペトルーシ氏、2番手がスティーヴ・ヴァイ氏、そして3番手がG3発起人のジョー・サトリアーニ師匠です。他の二人が曲調に合わせたオーソドックスな演奏をキめているのに対して、ヴァイ氏はキレッキレのプレイに及んでいます。
ロック系の技巧で比類なき存在であるスティーヴ・ヴァイ氏のアーミングは、ライブでの見せ方まで見据えている考え抜かれたものです。アームに打撃を加えて細かいヴィブラートをかける「クリケット奏法」を単発で使わずタッピングを絡める(43秒以降)あたりが、世界的な変態さんの超絶プレイです。
ヴァイ氏のアームは、姿勢を保持できる程度の堅いセッティングになっています。使ったアームが邪魔にならないようにどかさなければならないのは面倒なポイントですが、アームに遊びがない分だけダイレクト感のあるプレイがしやすく、クリケット奏法など特殊な演奏に考えを向けやすくなります。
Eric Clapton – I Shot The Sheriff (Live from Crossroads 2010)
「時には全く使わないことが、正しいアームの使い方だ」とは、ジョー・サトリアーニ師匠の言葉です。そんなわけでエリック・クラプトン氏は、アームを全く使わないギタリストとしても有名です。しかし、アームを使わないからと気を利かせたフェンダーのスタッフがハードテイル仕様のストラトをプレゼントしたところ、「音が違う」といって返却されたと伝えられています。ブリッジ下にトレモロブロックがあり、ボディ裏に大きな穴とスプリングがあるという「トレモロユニットの音」がクラプトン氏には重要だったようです。
アームの取り付けにはある程度ギターの加工も必要になってくるのですが、専門家の力をもってすれば問題なく取りつけることができます。しかしながらトレモロユニットは安くても1万円以上するのが当たり前の比較的高額なパーツであり、取付工賃が加算されるとギター本体よりも高額になってしまう可能性があります。また仮に改造した結果が不本意なものだったとしても、元の状態に戻すのは難しい場合がほとんどです。大掛かりな改造にはお金と思い切りの良さが必要になりますが、ここでは「いろいろなアームのないギターにアームを取りつけるには」というテーマでいろいろな場合を考えてみましょう。
「TOM(ストップテールピース&チューン・O・マチック)」ブリッジのギターに搭載するアームの定番は何と言っても「ビグスビー」です。ブリッジはそのままで、テールピースをビグスビーに交換するだけで取り付け工事が完了します。ボディエンドにネジ留めするものが定番ですが、エクスプローラーなどではボディトップにネジ留めするタイプのものが使用されます。
ビグスビーの定番機種、ボディエンドで固定する「B3」と、ボディトップに固定する「B5」
ビグスビー「B3」「B5」を…
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ボディへの加工が大掛かりではないということから「ケーラー」も搭載しやすいパーツです。ケーラーからは、テールピースを載せていた跡をそのまま利用できる「スタッドマウント」がリリースされています。
フルアコに搭載するアームは、ボディエンドで固定するタイプの「ビグスビー一択」です。ボディエンド部には分厚いブロック状の木材が仕込まれているので、ここを巧く利用します。完全な空洞を作っている薄いボディトップにマウント用のネジ穴を空けるというのは、かなり危険なチャレンジとなるのでやめた方がいいでしょう。
Schecter BNSHEE ELITE 7。ブリッジはシンクロタイプに見えなくもないルックスですが、アームは使えません。
一見シンクロタイプに見える固定式ブリッジのことを「ハードテイル・ブリッジ」と言います。ストラトタイプのギターでもリフ弾きなどで求められる「音の立ち上がり」を重視して、ハードテイルを選択するギタリストが増えています。こういうタイプのギターにアームをつけるなら、ボディに大きな穴を空けてシンクロタイプかFRTをマウントするのが一般的です。ケーラーを選択すると、木工作業が比較的少なくて済みます。
テレキャスターにアームをつける場合、専用の「ビグスビー用テレキャスタープレート」を取りつけてビグスビーをマウントするのが一般的ですが、その他にも「STETSBAR」や「TREM KING」といった専用のトレモロユニットを搭載することもできます。
いかがでしたか?一言で「アーム」と言っても、本当にさまざまなユニットや使い方がありますね。同じスタイルのアームでも、楽器の設計によって可変域などできることに違いが出てくるかもしれません。ですから、アームを多用するアーティストのプレイをコピーしようと思ったら、そのアーティストが使っているギターと同じものを持っておくとはかどりますよ。シンプルだけど、ディープな世界。このアーミング、みなさんもぜひトライしてみてください。
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