エレキギターの総合情報サイト

フェンダー・ジャズマスターの種類や特徴

フェンダー・ジャズマスター

Fender Jazzmaster(フェンダー・ジャズマスター)は、その名の通り「ジャズ専用機」として開発されました。デビュー当初こそジャズで使用されましたが、パワフルなサウンドはベンチャーズを代表とするサーフミュージック、70年代のガレージロック、80年代のニューウェーヴ、90年代のオルタナティブ・ロックやグランジ、近年のシューゲイザーのプレイヤーなど各年代のロック系ミュージシャンに多く愛用されてきました。

開発当初のターゲットからは大きく外れましたが、現在ではストラトキャスターテレキャスターに次ぐフェンダーギターの代表機になっています。

MENU

1: ジャズマスターの歴史 2: ジャズマスターの特徴 2.1: 開発コンセプト 2.2: ボディ&ネック 2.3: 高性能な「フローティング・トレモロ」 2.4: 電気系統 2.5: ジャズマスターのサウンド 3: ジャズマスターを使用する主なギタリスト 3.1: ジョー・パス 3.2: サーストン・ムーア 4: ジャズマスターのラインナップ 4.1: Fender Custom Shop 4.2: USAコロナ工場で作られるジャズマスター 4.3: メキシコ・エンセナダ工場で作られる 4.4: 日本で作られるジャズマスター 4.5: Squier by Fender 4.6: 限定モデル 5: 限定モデル、生産完了モデル

ジャズマスターの歴史

ジャズマスター:ヘッド

ジャズマスターのデビューは1958年のNAMMショウで、高級機、またジャズ専用機として発表されました。この年はギブソンのES-335、フライングV、エクスプローラーがデビューした年でもあり、エレキギターの当たり年でした。
1966年にはポジションマークをブロックインレイに、またネックバインディングを入れ、高級機としての風格をアップさせたモデルが作られます。
1980年代のハードロック全盛期には不人気機種となり一旦生産が中止されますが、ファンの声が厚く1986年にジャパンから復刻、1999年からはUSAでも復刻されています。

ジャズマスターの特徴

開発コンセプト

ジャズマスターのボディ&ネック

1950年代当時、フェンダーのギターはジャズプレイヤーにアピールできず、この分野ではES-175を代表とするギブソンの一人勝ちでした。このジャズの市場に食い込みシェアを拡大すべく、ジャズシーンで受け入れられるメロウなトーンを持ったギターの開発が始められました。「ジャズマスター」という名称はジャズへのチャレンジだったわけです。

デビューしてからしばらくはジョー・パスが使用するなどジャズでの使用例がありましたが、結局はこの分野の楽器的な保守性を打破するに至る事ができませんでした。そのかわりこの時代に流行したサーフミュージックのプレイヤー達にヒットし、広く受け入れられるようになりました。

フェンダーの本社はカリフォルニア南部に位置していましたが、ジャズマスターとジャガーの開発に際して社長レオ・フェンダー自らが現地のミュージシャンから積極的に意見を集めたのだとか。シカゴやニューオリンズのミュージシャンの意見を集めたら、歴史はかわっていたかもしれませんね。

ボディ&ネック

ジャズマスターのボディ

左右非対称で大きめのボディシェイプは「オフセットウェスト」と呼ばれ、立っても座っても安定できるバランスを狙っています。マテリアルにはアッシュ、アルダー、バスウッドなどが選ばれました。またこのボディ形状は、1960年デビューのジャズベースのヒントにもなっています。

ローズ指板が採用されたのはフェンダー史上初で、この後ストラトやテレキャスの指板に使用されていきます。フェンダーのスタンダードである25.5インチ(324mm)の21フレットネックで、ポジションマークは若干大きめのものが採用されています。アールのきつい丸い指板はコードを弾くのにうってつけなのですが、ジャズプレイヤーにはここが不評だったようです。

高性能な「フローティング・トレモロ」

ジャズマスターのフローティング・トレモロ

ストラトキャスターのシンクロナイズド・トレモロはシステム全体が動きますが、ジャズマスターとジャガー向けに新たに開発されたフローティング・トレモロはテイルピースを動かすシステムで、ビグスビーと同じコンセプトでした。
ブリッジは敢えて固定されず、アームの動きに応じて若干動くようになっています。これによりチューニングの狂いを少なくし、滑らかなビブラートができるようになりました。またユニットが動かなくなるようにする「オン・オフボタン」が付くなど性能がアップしたのですが、音程の上下幅はシンクロナイズド・トレモロには及んでいません。

ジャズマスター開発当時はジミ・ヘンドリックスがデビューする前でしたので、トレモロユニットはビブラートをかけるだけのものだと思われていました。その意味で、可変域を犠牲にしながらも音程変化が滑らかになったことは、トレモロユニットの性能が向上したことを意味しています。

サドル

ジャズマスターのサドル

ジャズマスターにあらかじめ搭載されるネジを切っただけのサドルは、激しいプレイで弦が外れてしまう「弦落ち」が起こることがあります。この「弦落ち」を未然に防ぐためのパーツがあるほか、フェンダーからは「弦落ち」対策を講じたジャズマスターがリリースされています。

《宿命への挑戦》Jaguar/Jazzmaster「弦落ち」対策

電気系統

ジャズマスターのピックアップ

外観はギブソンのP-90に近い、大きなサイズのシングルコイル・ピックアップが2基マウントされています。ジャズマスターのピックアップではポールピース自体が磁石になっているのに対し、P-90はコイルの下に磁石を配置する構造になっており、この設計の違いがサウンドの違いに現れています。

ジャズに対応できる高級機を目指しているので、他のモデルよりもノイズが遮断できるように徹底したノイズ対策がとられています。このため高い周波数の倍音なども道連れに遮断されてしまいますが、結果的によりメロウなトーンが出やすくなります。

回路の仕組み

プリセットON時の回路
プリセットON時:ボディ右側のマスターコントロール(ピックアップセレクター、マスタートーン、マスターボリューム)はキャンセルされ、強制的にフロントピックアップが選択される。プリセットスイッチ側のスライダー式ボリューム、トーンが有効になる。

プリセットOFF時の回路 プリセットOFF時:ボディ右側のマスターコントロールが有効になる。3wayピックアップスイッチでピックアップを切替、マスターボリューム、マスタートーンが有効になる。

最大の特徴は6弦側に付いている「プリセット・トーン/ボリューム回路」です。切り替えスイッチにより、本来のコントロール系の状態とプリセットの状態を行ったり来たりできます。プリセットで使えるのはフロントピックアップのみになりますが、ソロ/バッキングを行ったり来たりするのに便利な設計です。

ジャズマスターのサウンド


ジャガーとジャズマスターを比べてみた【ギター博士】

大きめのボディが弦の振動をしっかり受け止めることから、一音一音はっきり聞き取れる、分離のいい響きを持っています。ブリッジの仕様上サスティンはあまり期待できない代わりに、リズム演奏での「キレ」がアップしました。大型のシングルコイルピックアップは太くて甘いキャラクターを持っていますが、同時にフェンダーらしい澄んだ高音も兼ね備えています。フロントピックアップのサウンドはジャズミュージシャンの要求に耐えうるメロウな甘いトーン、リアピックアップではロックミュージシャンにアピールする荒々しいサウンドが得られます。

クリーンからクランチまでのセッティングでの演奏を好むプレイヤーが多く、バンドサウンドの中で存在感を発揮できます。極端に歪ませるとノズが発生したりハウリングが起こったりしますが、むしろそこに面白みを感じる、というプレイヤーも多くいます。独特のルックスと、繊細ながらワイルドなサウンドからか、女性のギタリストでジャズマスターを使用することが多いのも特徴です。

ジャズマスターを使用する主なギタリスト

ジャズに対応できるエレキギターとして開発されましたが、ジャズマスターをジャズで使用したギタリストはいませんでした。ジャズ・ギターの甘いトーンを出すにはジャズマスターは少々「わがまま」なサウンドとでも言うのでしょうか、金属的でワイルドな音がジャズにはフィットしないように感じます。しかしそのワイルドなサウンドを活かし、70年代サーフ系バンドのギタリストが使用していました。初期の「ベンチャーズ」の演奏で有名なテケテケサウンドは、ジャズマスターのサウンドです。

ジョー・パス(Joe Pass 1929-1994)

ギブソンES-175を愛用していたジョー・パス氏ですが、Pacific Jazzレーベルに在籍していた時代にジャズマスターを使用しています。我流でありながら、比類ないテクニックと表情豊かなプレイスタイルは今なおリスナーを魅了して止みません。
ジョー・パス氏がジャズマスターを演奏している動画はこちら

サーストン・ムーア(Thurston Moore、1958-、Sonic Youth)

ソニックユースは、後のグランジ、オルタナティヴ・ロックムーヴメントへ大きな影響を与えたノイズパンクの雄。ジャズマスターのセレクトは無名時代に安かったからという理由ですが、有名になってからも自身のトレードマークにしています。
サーストン・ムーア


この他、ポップなメロディと轟音ノイズギターが特徴の”シューゲイザー”(足元を見る人という意味)と呼ばれるジャンルの代表格である、アイルランドのバンド「マイ・ブラッディ・バレンタイン」のボーカル/ギタリストであるケヴィン・シールズ氏が、元「ナンバーガール」(現bloodthirsty butchers)の女性ギタリストである田淵ひさ子氏が使用していることでも知られています。また国内外問わずガレージロック、オルタナティブ・ロック系のギタリストにも愛用されています。


bloodthirsty butchers / デストロイヤー Music Video

ジャズマスターのラインナップ

ジャズマスターは

  • カスタムショップ:フェンダー最高級グレード
  • USA:カリフォルニア州コロナ工場で作られる王道のレギュラーライン
  • MEX:メキシコ・エンセナダ工場で作られるもの
  • JAPAN:日本の工場で作られるもの
  • Squier by Fender:廉価版を扱うフェンダーの子会社

といったように、フェンダーの全グレードからいくつかのモデルがリリースされています。

Squier by Fender Made in Japan MEX USA
基本ラインナップ Affinity他 Traditional /
Hybrid /
Modern
Player /
Vintera
American Performer /
American Professional /
American Original
価格 ¥ 30,000〜
¥ 63,000
¥ 99,000
¥ 112,500
¥ 153,000
¥ 69,300〜
¥ 117,000
¥ 143,100〜
¥ 249,800

表:各グレードのジャズマスター比較(価格は2019/11時点)

各グレードには上記の基本となるラインナップに加え、アーティストモデルや限定モデルが加わり豊富なバリエーションが用意されます。次のページで詳しく見ていきましょう。