フェンダー・ジャズマスターの種類や特徴

[記事公開日]2019/11/17 [最終更新日]2026/1/23
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

フェンダー・ジャズマスター

Fender Jazzmaster(フェンダー・ジャズマスター)は、その名の通り「ジャズ専用機」として開発されました。
デビュー当初こそジャズで使用されましたが、パワフルなサウンドはベンチャーズを代表とするサーフミュージック、70年代のガレージロック、80年代のニューウェーヴ、90年代のオルタナティブ・ロックやグランジ、近年のシューゲイザーのプレイヤーなど各年代のロック系ミュージシャンに多く愛用されてきました。
開発当初のターゲットからは大きく外れましたが、現在ではストラトキャスターやテレキャスターに次ぐフェンダーギターの代表機になっています。


  1. ジャズマスターの歴史
  2. ジャズマスターの特徴
  3. ジャズマスターを使用する主なギタリスト
  4. ジャズマスターのラインナップ

ジャズマスターの歴史

ジャズマスター:ヘッド

ジャズマスターのデビューは1958年のNAMMショウで、高級機、またジャズ専用機として発表されました。この年はギブソンのES-335、フライングV、エクスプローラーがデビューした年でもあり、エレキギターの当たり年でした。
1966年にはポジションマークをブロックインレイに、またネックバインディングを入れ、高級機としての風格をアップさせたモデルが作られます。
1980年代のハードロック全盛期には不人気機種となり一旦生産が中止されますが、ファンの声が厚く1986年にジャパンから復刻、1999年からはUSAでも復刻されています。

ジャズマスターの特徴

「ギブソン一強のジャズ市場を奪取」が開発コンセプト

ジャズマスターのボディ&ネック

1950年代当時、フェンダーのギターはジャズプレイヤーにアピールできず、この分野ではES-175を代表とするギブソンの一人勝ちでした。このジャズの市場に食い込みシェアを拡大すべく、ジャズシーンで受け入れられるメロウなトーンを持ったギターの開発が始められました。「ジャズマスター」という名称はジャズへのチャレンジだったわけです。

デビューしてからしばらくはジョー・パスが使用するなどジャズでの使用例がありましたが、結局はこの分野の楽器的な保守性を打破するに至る事ができませんでした。そのかわりこの時代に流行したサーフミュージックのプレイヤー達にヒットし、広く受け入れられるようになりました。

フェンダーの本社はカリフォルニア南部に位置していましたが、ジャズマスターとジャガーの開発に際して社長レオ・フェンダー自らが現地のミュージシャンから積極的に意見を集めたのだとか。シカゴやニューオリンズのミュージシャンの意見を集めたら、歴史はかわっていたかもしれませんね。

人類史上初のボディ形状&フェンダー初採用のネック仕様

ジャズマスターのボディ

左右非対称で大きめのボディシェイプは「オフセットウェスト」と呼ばれ、立っても座っても安定できるバランスを狙っています。マテリアルにはアッシュ、アルダー、バスウッドなどが選ばれました。このボディ形状を採用したのはジャズマスターが世界初で、1960年デビューのジャズベースのヒントにもなるほか、後に続く他社製品に大きな影響を及ぼしました。

ローズ指板が採用されたのはフェンダー史上初で、この後ストラトやテレキャスの指板に使用されていきます。フェンダーのスタンダードである25.5インチ(324mm)の21フレットネックで、ポジションマークは若干大きめのものが採用されています。アールのきつい丸い指板はコードを弾くのにうってつけなのですが、ジャズプレイヤーにはここが不評だったようです。

高性能な「フローティング・トレモロ」

ジャズマスターのフローティング・トレモロ

ストラトキャスターのシンクロナイズド・トレモロはシステム全体が動きますが、ジャズマスターとジャガー向けに新たに開発されたフローティング・トレモロはテイルピースを動かすシステムで、ビグスビーと同じコンセプトでした。
ブリッジは敢えて固定されず、アームの動きに応じて若干動くようになっています。これによりチューニングの狂いを少なくし、滑らかなビブラートができるようになりました。またユニットが動かなくなるようにする「オン・オフボタン」が付くなど性能がアップしたのですが、音程の上下幅はシンクロナイズド・トレモロには及んでいません。

ジャズマスター開発当時はジミ・ヘンドリックスがデビューする前でしたので、トレモロユニットはビブラートをかけるだけのものだと思われていました。その意味で、可変域を犠牲にしながらも音程変化が滑らかになったことは、トレモロユニットの性能が向上したことを意味しています。

良くも悪くもジャズマスターの個性となるサドル

ジャズマスターのサドル

ジャズマスター本来のサドルはネジの浅いミゾを切っただけの設計で、現代標準のゲージ弦では激しいプレイで弦が外れてしまう「弦落ち」が起こることがあります。この「弦落ち」を未然に防ぐためのパーツがあるほか、フェンダーからは「弦落ち」対策を講じたジャズマスターがリリースされています。
とはいえこのブリッジで作られる弦振動は他のギターには無い個性があることも確かで、適度な減衰の得られるサスティンはキレの良いコード弾きに良好です。

個性的な電気系統

ジャズマスターのピックアップ

ジャズマスターの電気系は、「専用のピックアップ」と「プリセット回路」が大きな特徴です。ジャズマスターのピックアップは、薄くて幅の広いコイルに構造上の特徴があります。幅広のコイルによって広い面で弦振動をキャッチ、低次倍音の強調された、太く丸い、面で鳴る音が作られます。デビュー当時のジャズマスターはここに1MΩという抵抗値の高いボリュームポットを採用することで高域を増強、音抜けの良さと迫力の両立を狙いました。
また、デビュー当時は「静粛性も高級機の条件」という考えから、徹底したノイズ対策が施されました。ノイズ処理を施すと高域がやや丸められますが、これもジャズマスターの個性でした。

《P-90とはどう違うのか?》専用ピックアップ

Seymour Duncan Antiquity II™ Jazzmaster(左)とSeymour Duncan Antiquity™ P90(右)。Seymour Duncan 「Antiquity」は、ルックスやサウンドなど全てにおいてオリジナルに肉迫する人気シリーズ。二つのピックアップを見比べると、特に厚みに大きな違いがあるのが分かる。

ジャズマスター・ピックアップの基本構造はフェンダーの他のピックアップと同様に、磁石をポールピースに使用します。また8,000~8,500回という巻き数はストラトキャスター(7,600~8,000回)よりやや多めという程度なので、コイルは幅を広くした分だけ厚みが抑えられます。
対してP-90は底面に棒磁石を寝かせ、金属製ポールピースを立てるのが基本構造。コイルの幅はジャズマスター同様で面で弦振動をキャッチしますが、磁石の配置の違いが展開される磁界の違いを生み、サウンドの違いが生まれています。なお、P-90の巻き数はおおむね10,000回です。

《一発で切り替え!》プリセット回路の仕組み

プリセットON時の回路
プリセットON時:ボディ右側のマスターコントロール(ピックアップセレクター、マスタートーン、マスターボリューム)はキャンセルされ、強制的にフロントピックアップが選択される。プリセットスイッチ側のスライダー式ボリューム、トーンが有効になる。

プリセットOFF時の回路 プリセットOFF時:ボディ右側のマスターコントロールが有効になる。3wayピックアップスイッチでピックアップを切替、マスターボリューム、マスタートーンが有効になる。

「プリセット・トーン/ボリューム回路」は切り替えスイッチにより、本来のコントロール系の状態とプリセットの状態を行ったり来たりできます。プリセットで使えるのはフロントピックアップのみになりますが、ソロ/バッキングを行ったり来たりするのに便利な設計です。

ジャズマスターのサウンド


ジャガーとジャズマスターを比べてみた【ギター博士】

大きめのボディが弦の振動をしっかり受け止めることから、一音一音はっきり聞き取れる、分離のいい響きを持っています。ブリッジの仕様上サスティンはあまり期待できない代わりに、リズム演奏での「キレ」がアップしました。大型のシングルコイルピックアップは太くて甘いキャラクターを持っていますが、同時にフェンダーらしい澄んだ高音も兼ね備えています。フロントピックアップのサウンドはジャズミュージシャンの要求に耐えうるメロウな甘いトーン、リアピックアップではロックミュージシャンにアピールする荒々しいサウンドが得られます。

クリーンからクランチまでのセッティングでの演奏を好むプレイヤーが多く、バンドサウンドの中で存在感を発揮できます。極端に歪ませるとノズが発生したりハウリングが起こったりしますが、むしろそこに面白みを感じる、というプレイヤーも多くいます。独特のルックスと、繊細ながらワイルドなサウンドからか、女性のギタリストでジャズマスターを使用することが多いのも特徴です。

ジャズマスターを使用する主なギタリスト

ジャズに対応できるエレキギターとして開発されましたが、ジャズマスターをトレードマークにしたジャズ・ギタリストはいませんでした。ジャズ・ギターの甘いトーンを出すにはジャズマスターは少々「わがまま」なサウンドとでも言うのでしょうか、金属的でワイルドな音がジャズにはフィットしないように感じられます。
しかしそのワイルドなサウンドを活かし、70年代サーフ系バンドのギタリストが使用していました。初期の「ベンチャーズ」の演奏で有名なテケテケサウンドは、ジャズマスターのサウンドです。

田渕ひさ子(1975-)


NUMBER GIRL – 透明少女(NUMBER GIRL 無常の日 2022.12.11@PIA ARENA MM)
1965年製ジャズマスターのボディが削れるほどの景気の良い弾きっぷりが持ち味の、ジャズマスター奏者日本代表。ナンバーガールでの活躍が名高いが、椎名林檎のプロジェクトに参加するなど幅広く活躍。なお、プリセット回路は誤作動回避のためスイッチに綿を詰めて固定している。

ジョー・パス(Joe Pass 1929-1994)

ギブソンES-175を愛用していたジョー・パス氏ですが、Pacific Jazzレーベルに在籍していた時代にジャズマスターを使用しています。我流でありながら、比類ないテクニックと表情豊かなプレイスタイルは今なおリスナーを魅了して止みません。
ジョー・パス氏がジャズマスターを演奏している動画はこちら

サーストン・ムーア(Thurston Moore、1958-、Sonic Youth)

ソニックユースは、後のグランジ、オルタナティヴ・ロックムーヴメントへ大きな影響を与えたノイズパンクの雄。ジャズマスターのセレクトは無名時代に安かったからという理由ですが、有名になってからも自身のトレードマークにしています。

サーストン・ムーア

J・マスシス(J Mascis、1965-、Dinosaur Jr.)


Dinosaur Jr. – Full Performance (Live on KEXP at Home)

J・マスシス氏は、オルタナティブ・ロックの代表格に名を連ねる「ダイナソーJr.」での活躍で名高いアーティスト。さまざまなギターに持ち替えることもありますが、キャリアを通してジャズマスターをトレードマークにしています。Squireからリリースされている氏のシグネイチャーモデルは、TOM型ブリッジとジャンボフレットの組み合わせで、特にロック系のサウンドでラフに弾きまくるスタイルに良好です。


この他、ポップなメロディと轟音ノイズギターが特徴の”シューゲイザー”(足元を見る人という意味)と呼ばれるジャンルの代表格である、アイルランドのバンド「マイ・ブラッディ・バレンタイン」のボーカル/ギタリストであるケヴィン・シールズ氏が使用していることでも知られています。また国内外問わずガレージロック、オルタナティブ・ロック系のギタリストにも愛用されています。


bloodthirsty butchers / デストロイヤー Music Video

ジャズマスターのラインナップ

現代のジャズマスターはフェンダー定番機の地位を獲得しており、最高グレードのフェンダー・カスタムショップから求めやすい価格帯のスクワイヤまで、各グレードでラインナップを展開しています。
各グレードには上記の基本となるラインナップに加え、アーティストモデルや限定モデルが加わり豊富なバリエーションが用意されます。次のページで詳しく見ていきましょう。

Fender Custom Shop

カスタムショップ製ジャズマスター 62 Jazzmaster Journeyman Relic/Olympic White Matching Head

まずはフェンダーの技術の結晶とも言えるカスタムショップ製のジャズマスターを紹介します。

USAコロナ工場で作られるジャズマスター

アメリカ合衆国カリフォルニア州コロナ工場で作られる、レギュラーラインナップとも言われるUSA製ジャズマスターです。

メキシコ・エンセナダ工場で作られるジャズマスター

国内ではフェンダー・メキシコ(Fender MEX)と呼ばれることの多いジャズマスターです。

日本の工場で作られるジャズマスター

Squier by Fender

フェンダー子会社であるスクワイヤーのラインナップでは廉価版ジャズマスターを楽しむことができます。

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