エレキギターの総合情報サイト

Gretsch G6138 Bo Diddley

Gretsch G6138

グレッチ「G6138 ボ・ディドリー」は、チャック・ベリー氏やリトル・リチャード氏らに並ぶロックンロールの創始者、ボ・ディドリー氏(Bo Diddley、1928-2008)のトレードマークというべきギターです。長方形のボディは小さなお子さんでも描けるシンプルなシルエットながら、他の追随を許さない強烈なインパクトを持って私たちに迫ります。絶対に弾きにくいはずなのに、なぜこのような形になったのでしょうか。今回は、1999年に生産が始まったというこの四角いギター「G6138 ボ・ディドリー」、またそのシグネイチャー主、ボ・ディドリー氏に注目していきましょう。

アーティスト、ボ・ディドリーの歩み

ボ・ディドリー氏は「ノリ」を前面に押し出すスタイルで個性を発揮し、一時代を築きました。後進のアーティストへの影響も大きく、特に

などのロックバンドに強く影響したと言われています。氏が世に知らしめた「ボ・ディドリー・ビート(ジャングル・ビート)」は今やアレンジの手法として定着しており、ロック/ポップスを中心に盛んに取り入れられています。そんな偉大なアーティスト、ボ・ディドリーとはどんな人だったのでしょうか。


Bo Diddley – Bo Diddley (1955)
ボ・ディドリー氏の代表曲「ボ・ディドリー」。この曲が爆発的にヒットしたことで、アーティスト名を「ボ・ディドリー」にしたのだとか。氏のバンドにはマラカス専門のメンバーがいた、というのも面白いポイントです。

ギターにハマる少年

ボ・ディドリー氏(本名:エラス・O・B・マクダニエル)は、1928年、アメリカ南部、ミシシッピ州にうまれます。幼少期のディドリー氏は、教会の楽団でヴァイオリンとトロンボーンを弾いていました。12歳の時には姉からギターをプレゼントされ、ギターも練習していきます。そしてジョン・リー・フッカー氏のギタープレイに多いに感銘を受けて以来、ギターに専念します。10代でストリートでの演奏を始め、成人すると、昼は大工やメカニックとして就労し、夜はシカゴのクラブで演奏するという生活が続きます。

John Lee Hooker, 1917~2001

ブルース・シンガーだったジョン・リー・フッカー氏は、ギターを歌の伴奏楽器として使用していました。その独特のリズム感から「キングオブ・ブギ」と呼ばれています。ヴァイオリンやトロンボーンといったメロディ楽器の経験がありながら、ディドリー氏のプレイが伴奏とボーカルに特化しているのは、このジョン・リー・フッカー氏の影響と考えられます。

デビューでいきなりのヒット

1955年にリリースされたデビューシングル「Bo Diddley」がR&Bチャート1位のヒットとなり、黒人アーティストとして初めて「エド・サリヴァン・ショー」の出演を果たします。ところがディドリー氏はサリヴァン氏のリクエストを無視して自分の曲を演奏したため怒りを買い、「出禁」を食らいます。

The Ed Sullivan Show

「エド・サリヴァン・ショー(The Ed Sullivan Show)」は、1948年から1971年まで放送されていたバラエティ番組です。人気司会者エド・サリヴァン氏がホスト役を務め、各界の著名人をゲストに迎えていました。

音楽界からの出演者は、エルヴィス・プレスリー氏、ジャニス・ジョプリン氏、ビーチ・ボーイズ、スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン、マイケル・ジャクソン氏、ザ・ビートルズ、アニマルズ、ローリング・ストーンズなど大物ぞろいです。日本からも、坂本九氏、ザ・ピーナッツ、ジャッキー吉川とブルーコメッツなど多くの一流アーティストが出演しました。

息の長い活動、そして

デビュー曲以上のヒットは出なかったものの、ディドリー氏は精力的な活動を続け、ヒット曲を何曲も生み出します。1987年にはロックの殿堂入りを果たし、翌1998年には映画「ブルース・ブラザーズ2000」に、バンドコンテストで主人公と優勝を争うバンドのメンバーとして出演します。また、1998年、1992年、1997年、2001年の4回にわたって来日公演を行っています。


Blues Brothers 2000 – Awfully Good Movies
「ブルース・ブラザーズ2000」は、映画「ブルース・ブラザーズ(1980年)」の続編です。前作同様NBCの人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」の出演者とバンドを中心に、いかにもアメリカンなハチャメチャな物語が展開します。大物ミュージシャンが多数出演していることでも有名で、ジェームス・ブラウン氏、アレサ・フランクリン氏、BB.キング氏、エリック・クラプトン氏ら、どうやって招集したのか分からない豪華さです。

80歳を目前に控えつつもステージに立ち続けてきたディドリー氏でしたが、ついに2007年、演奏中に脳卒中で倒れます。リハビリを続けながらも、翌2008年、自宅にて心不全で亡くなりました。79歳でした。最後となったコンサートで使用したギターはオークションにかけられ、80,000ドルの値が付けられました。

ボ・ディドリー氏のプレイスタイル

ボ・ディドリー氏の演奏はリズムプレイが中心で、十八番の「ボ・ディドリー・ビート」を前面に打ち出します。コードや歌メロは非常にシンプルかつストレートであり、リズムこそがディドリー氏の音楽だと言いきってもいいくらいです。「ボ・ディドリー・ビート」はバディ・ホリー氏の「Not Fade Away」などのように多くのアーティストが採り入れました。ディドリー氏は今なお、後に続くロックの歴史に大きな影響を及ぼしているのです。


Official Not Fade Away Movie Clip: Bo Diddley
2012年のドラマ映画「Not Fade Away」の一場面。これが「ボ・ディドリー・ビート」です。脚本通りとはいえ、ベーシストのヘタクソっぷりがほほえましいですね。動画で使われているグレッチは、カラーリングだけで「G6118 アニバーサリー」だと分かります。

オープンEチューニング」が基本で、各曲のキーにはカポタストで対応していました。使うコードはシンプルに徹しており、指1本でコードを押さえていたようです。

ブラウンフェース期のフェンダーアンプを愛用しており、内蔵されていたトレモロを使用することもありました。

新しいことを試したり物を作ったりすることを好む性格だったようで、時計や自動車の部品を使ってトレモロ・エフェクターを作ったこともあったそうです。エフェクターを組み込んだカスタム・ギターを作ったり、ギター・シンセを使用したりすることもありました。

「四角いギター」の起源とは

最初の「四角いギター」は、1958年に作られました。ギター職人”ジュリアーノ”なる人物が、ディドリー氏の依頼で3本制作したうちの一本です。ディドリー氏は「子供の時から、四角いギターが欲しかった」と語っており、10代のころには「シガーボックス・ギター」を自作したこともあったようです。

シガーボックス・ギターは葉巻の木箱をボディに使用した簡素なギターのことで、最古の記録は南北戦争(1861-1865)中のもの。同じコンセプトでバンジョーやフィドル(ヴァイオリン)も作られました。楽器を買う余裕の無い人が使うものでしたが、そのため多くの黒人がシガーボックス・ギターでブルースを演奏していました。

また、ディドリー氏が生まれた南部には、西アフリカ由来の楽器「ディドリー・ボウ」も伝わっていました。これもシガーボックス・ギター同様に木箱にネックを取り付け、弦を一本張って、スライド奏法で演奏するものでした。主に子供が二人がかりで演奏するものだった、と伝えられていますが、ディドリー氏もこのディドリー・ボウを何本か愛用していたようです。

シガーボックス・ギターとディドリー・ボウの存在から、ディドリー氏にとっては、ギターが四角いことはむしろナチュラルだったようです。デビュー曲のタイトルからアーティスト名になった「ボ・ディドリー」の由来も諸説ありますが、このディドリー・ボウとの関係は無視することができません。

Gretsch G6138 Bo Diddleyの特徴

G6138 Bo Diddley

では、「G6138 ボ・ディドリー」をチェックしていきましょう。この四角いギターに到達する前、ディドリー氏はグレッチ「G6131 ファイアーバード」を愛用していました。四角いギターにはファイアーバードの特徴が多く反映されていますが、ところどころでアレンジが加えられています。

G6131 ファイアーバードとの共通点

  • メイプルトップ、チェンバード(穴をあけた)マホガニーバックのボディ構造
  • マホガニーセットネック
  • ボディトップはファイアーバード・レッド、金属パーツはゴールド、というカラーリング
  • トーンポット回路(マスターボリューム、各個のピックアップボリューム、マスタートーン)
  • Gカットアウト・テールピース、アジャストマチック・ブリッジ

Fホールやサウンドホールを持たないさっぱりとしたボディトップですが、内部は大きくくり抜かれており、軽量で良く響きます。ディドリー氏はアームを使用することがなかったらしく、グレッチのギターで盛んに搭載されるビグスビーは非搭載です。アジャストマチック・ブリッジはギブソンのTOMブリッジと同様のコンセプトで設計されており、オクターブ調整をビシっと整えることができます。

G6131 ファイアーバードと異なる仕様

  • エボニー指板、ドットインレイ
  • 弦長5インチ(648mm)、指板R12インチ(305mm)
  • フィルタートロン・ピックアップを2基搭載

マホガニー製ネックはジェットシリーズの特徴でもありましたが、エボニー指板、弦長25.5インチ(フェンダースケール)という仕様は、ファイアーバードというよりG6122 カントリージェントルマンG6136 ホワイトファルコンと同じです。

ディドリー氏のファイアーバードには、ダイナソニック・ピックアップが搭載されていました。しかしグレッチのピックアップは1958年、オリジナルピックアップ「フィルタ-トロン」に切り替わり、ダイナソニックは使われなくなりました。

ハイポジションの演奏性

この形状のギターに対して「ハイポジションの弾きやすさ」を考察するのも不自然な印象ですが、この四角いギターのネックは「末端から16フレットまでがボディに挿しこまれ(16フレット接続)」ており、その意味ではG6128 デュオジェットと代わりません。

だからといってカッタウェイがないので、それほど弾きやすさを期待することもできません。仮に

  • 一般的なクラシックギター:12フレット接続
  • 一般的なフォークギター(アコギ):14フレット接続

といった楽器と比較するならば、高い音もまあまあ弾きやすいと言えるでしょう。

ディドリー氏のギターはリズム演奏が主体で、あまり高い音はいりませんでした。氏のようにリフの演奏やバッキングを中心に演奏するぶんには、またはそのカクカクなルックスのインパクトに比べれば、ハイポジションの弾きやすさなど大した問題ではないのです。


斉藤和義 – Stick to fun! Tonight! 【SHORT Ver.】
日本で有名な「四角いギター」と言えば、この「ポッキーギター」ではないでしょうか。ロック史に造詣の深い斉藤和義氏なればこそ、この赤くて四角いギターにボ・ディドリー氏への想いがきっとあったことでしょう。このギターは大変な反響を呼び、「ポッキーの日」の11月11日にこのギターの予約受付を開始したところ、専用ハードケース付き、エボニー指板で42,000円という破格もあって、注文が恐ろしく殺到したのだとか。