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《紅のジェット》Gretsch G6131 Jet Firebird

Gretsch G6131 Jet:ボディ G6131T Players Edition Jet

グレッチの「G6131 ジェット・ファイアーバード」は、「G6129シルバージェット」に次いで発表された、「赤いジェット」です。ブラックを基本色とする「G6128デュオジェット」のボディトップを赤く塗ったことでモデル名が変わる当たり、ギターのルックスにとことんこだわるグレッチらしいアプローチですね。今回は、このG6131ファイアーバードに注目していきましょう。


AC/DC – Thunderstruck (Official Video)
最も有名な愛用者といえば、ロックバンドAC/DC所属、マルコム・ヤング氏(1953-2017)に他なりません。AC/DCといえば、弟アンガス・ヤング氏の豪快なライブパフォーマンスとギタープレイに注目が集まりがちです。しかし「強靭」とも表現されるマルコム氏のバッキングぶりは世界的に名高く、「ロック史上最高のバッキングギタリスト」だと伝えられています。とはいえ氏は70年代のうちに、赤い塗装をすっかり剥がしてしまっています。
人類の宝ともいうべき数々のリフを繰り出してきたマルコム氏のファイアーバード(1963年製)が、米国グレッチ・カスタムショップで復刻されました。もともとファイアーバードなんだからと言っても今の姿が赤くないので、復刻されたギターは「マルコム・ヤング・サルート(敬礼)ジェット」と呼ばれています。「日本では僅か1本」という超レアアイテムです。

G6131ファイアーバードの特徴

G6128デュオジェットとの比較

上:G6128T Players Edition Jet FT with Bigsby(デュオジェット)
下:G6131T Players Edition Jet FT with Bigsby(ファイアーバード)

「プレイヤーズ・エディション」からリリースされている両機の仕様を見比べてみます。モデル名の「FT」は「フィルタートロン搭載機」の意味です。さてどこに違いがあるでしょうか。

G6128デュオジェット G6131ファイアーバード
価格 ¥355,000 ¥355,000
ボディ仕様 メイプル合板トップ、チャンバード(空洞を空けた)マホガニーバック 同左
ネック仕様 マホガニーネック+ローズウッド指板、弦長24.6インチ、指板R12インチ、ミディアムジャンボフレット 同左
電気系 フィルタートロン2基、トーンポット回路 同左
金属パーツ ゴトー製ロック式ペグ、ボディに直付けのアジャストマチック・ブリッジ、ビグスビーB7CPテールピース、G-アローノブ 同左
ピックガード アクリル製、銀色のベースに黒いロゴ アクリル製、黒いベースに白いロゴ
ボディトップのカラー ブラック ファイアーバード・レッド

表:デュオジェットとファイアーバードの仕様比較(2018年8月時点)

「トーンポット回路」は、トーンのつまみをひねって高音域を調節する回路で、3点スイッチで音色を切り替える「トーンスイッチ回路」と区別されます。

二つのギターを見比べると、何と「ピックガードとボディトップのカラーリングが違うだけ」という結果が得られました。ピックガードについては他の色が採用されることもあれ、「G6131」を名乗るギターの色は、必ず「ファイアーバード・レッド」です。G6131ファイアーバードの特徴、それはすなわち「赤い」こと、コレに尽きるわけです。裏面は、デュオジェットと同じブラックになっています。

カラーリングの秘密

グレッチはもともとドラムのメーカーで、これらジェットシリーズのボディトップにはドラムのシェル(胴)に貼りつけるプラスチックシートが貼られました。デュオジェットでは黒い、シルバージェットではシルバースパークルの、そしてファイアーバードには赤いシートが貼りつけられたわけです。この仕様には一定のメリットがあり、ヴィンテージ市場で見られるジェットシリーズのボディトップは強靭で、色調の経年変化や使ったキズこそあれ、ラッカー塗装特有のクラック(ひび割れ)のない、美しい状態を維持しています。

とはいえ「薄い塗装こそ至高」という考えが現代の常識です。トップのプラスチックシートは、楽器本体の「鳴り」を抑制してしまうと考えられます。冒頭の動画で紹介したマルコム・ヤング氏が塗装を剥がしてしまったのも、納得がいきますね。

G6131ファイアーバードの歩み

G6131ファイアーバードの誕生は、デュオジェットとシルバージェットに次ぐ1956年と伝えられます。G6131ファイアーバードは、時代と共にほかのグレッチギター同様の変身を遂げていきました。デビュー当時

  • ディアルモンド社製「ダイナソニック」ピックアップ2基
  • 大きなブロックインレイ

という仕様でしたが、50年代のうちにピックアップはフィルタートロンに、指板はサムネイル・インレイに変更されます。1962年にはダブルカッタウェイ化し、ゴールドパーツが採用されます。ダブルカッタウェイ仕様は1971年までで、この年から本来のシングルカッタウェイに回帰します。

会社的にいろいろあって日本で生産するようになった1990年代には、G6120ナッシュビルのヘッドを持つ特別なファイアーバードが生産されました。

G3131ファイアーバードのラインナップ

ではここから、G6131ファイアーバードのラインナップを見ていきましょう。メイドインUSAのカスタムショップ製は本数が非常に少なく大変高額なのでここではさておき、日本で作られる標準機を見ていきます。

G6131FSR Jet Firebird

G6131FSR Jet Firebird

「G6131 FSR ジェット・ファイアーバード」は、1990年代前半から2002年までに生産されていたジェット・ファイアーバードを再現しています。

最大の特徴は大型のヘッドと馬蹄形のヘッドインレイで、これはG6120ナッシュビルと同様の意匠です。ナッシュビルのヘッドというイメージからか、ネック材もナッシュビルと同じメイプルが選ばれていますが、ローズウッド指板にハンプブロック・インレイという仕様はこのモデル独特のものです。

金属パーツ、ピックアップ、ピックガードやベゼル(ピックアップの枠)など、パーツは全てゴールドで統一され、まばゆく輝きます。グレッチの「G」か切り抜かれた「Gカットアウト・テールピース」は、ジェットに標準装備されていた伝統的な意匠です。

シビアなオクターブ調整ができる「アジャストマチック・ブリッジ」はエボニー性の土台(ブリッジベース)に乗せられていますが、土台はボディにピン止めされているため、激しいプレイで位置が変わってしまう心配はありません。

G6131T Players Edition Jet FT with Bigsby

G6131T Players Edition Jet

グレッチの伝統を大切に守りながら、現代の演奏者に向けたアレンジを特徴とする「プレイヤーズ・エディション」のファイアーバードは、

  • ボディ:合板メイプルトップ+チェンバー加工したマホガニーバック
  • ネック:マホガニーセットネック、ローズウッド指板
  • フィルタートロン2基、トーンポット回路

という伝統的なギター本体に、

  • アジャストマチック・ブリッジをボディへ直接マウント:位置が移動しない。伝達効率が上がる。
  • ゴトー社製ロック式ペグと、「ストリングスルー」タイプのビグスビー搭載:弦交換がスムーズで、チューニングは安定しやすい。
  • 新開発「スクイーズボックス」コンデンサー採用:高音域が心地よく響く。
  • トレブル・ブリード・サーキット、ノーロード・トーン・ポット:電気回路の仕様から、「音抜け」を強化

というアレンジが施され、基本性能と使い勝手の良さが従来のものより強化されています。

G6131T Players Edition Jetを…
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G6131T-62 Vintage Select ’62 Jet Firebird

G6131T-62 Vintage Select Jet

その年代の特徴をしっかり再現する「ヴィンテージセレクト・エディション」からは、ダブルカッタウェイ仕様の1962年式がリリースされています。

  • ゼロフレット:ナット付近の演奏性とシビアなチューニングに貢献
  • スペースコントロール・ブリッジ:弦間ピッチを調節できる。ビグスビーと相性が良い。
  • 「トーンスイッチ」回路:ピックアップとは別に3音色を切り替えられる
  • グローヴァー社製オープンタイプのペグと、グレッチのロゴが刻まれたビグスビーB-3テールピース

というレトロな仕様を採用しつつ、

  • TVジョーンズ「TV Classic」とトレブルブリード回路により、サウンドクオリティと音抜けが向上
  • 新開発「スクイーズボックス」コンデンサーで、高音域が心地よく響く。
  • ベルデン社製の配線、CTS社製ポット、スイッチクラフト社製アウトプットジャックとスイッチ

といった高機能なパーツにより、現代のハイエンドモデルとして通用する性能を持っています。

お財布に優しい「紅のジェット」

本格的な作りを求めやすい価格で実現する「Gretsch electromatic」シリーズからも、ファイアーバード・レッドに染められたジェットがリリースされています。「赤いジェットはかっこいいけど、日本製モデルの価格を前に思いとどまっている」という人は、是非こちらを検討してください。

G5431G FSR Pro Jet

「G5431G FSR プロジェット」は、品番の下二桁が「31」となっていることからも、G6131ファイアーバードをしっかり意識したギターであることが分かります。公式サイトで「レギュラーモデルとの違いは、パーツとボディトップのカラーリング」だとハッキリ言いきっているところも本家のファイアーバードとコンセプトを同じくしており、「ルックスにやたらこだわるグレッチ」の矜持(プライド)をしっかり感じさせてくれます。

バック材はバスウッドながら、チェンバー加工はしっかり施してありますから、普及価格帯のモデルとはいえ「ジェット」の設計をしっかりと受け継いでいます。

G5441T Double Jet with Bigsby

G5441T Double Jet

ダブルカッタウェイ版のジェットは、「ダブルジェット」としてリリースされています。こちらもボディトップとパーツのカラーリング以外の仕様はレギュラーモデルのダブルジェットと共通で、ボディトップに直接ネジ止めする「ビグスビーB50」が備わっています。


以上、「赤い」ことにこそアイデンティティを持つギター、グレッチ「ファイアーバード」に注目しました。ステージに立つギタリストにとって、ギターのカラーリングは重要なポイントです。またアー写(アーティスト写真)やジャケ写(ジャケット写真)、動画撮影などの現場においては、欲しいイメージに合わせた色調のギターが必要になることもあります。

The Singles Collection – 40 Original Recordings

例えばオリジナリティあふれるギターを愛用していたボ・ディドリー氏(1928-2008)のこのジャケ写では、「ディドリー氏のギターが赤い」ということに必然性を感じさせられますね。「紅のジェット」、ぜひチェックしてみてください。