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Gretsch G6128 Duo Jet

グレッチ 6128 デュオジェット

「グレッチ・デュオジェット」は、1953年にグレッチ初の「ソリッドボディ」として発表され、ロックのアイコンとして愛されています。しかし当時の社長であるフレッド・グレッチJr.氏は、ホロウボディに深いこだわりを持っており、フェンダーの台頭を受けても「ソリッドボディなんて誰でも作れる」と、否定的に見ていたほどです。テレキャスターの前身「ブロードキャスター」のネーミングに難癖をつけたのは有名な話ですが、これも嫌がらせの意図があったという説があります。

しかし、友人であるテッド・マッカーティー氏が社長を務めるギブソンが、レスポール開発によりソリッドボディ市場に参入してフェンダーに対抗する姿勢に感化され、方針を転換したたと言われています。新製品は2基のダイナソニック・ピックアップを搭載、そして当時最先端のテクノロジーであった航空機にあやかり「デュオ・ジェット」と名付けられました。レスポールに近いルックスを持ったデュオジェットは「ソリッドボディ」として、フェンダーが開拓したソリッドギター市場に参入して成功しています。今回は、このグレッチ・デュオジェットに注目していきましょう。


Tiger Army – Incorporeal
カントリー/ロカビリーというイメージの強いグレッチですが、その延長にあるパンク系のサウンドにもフィットします。特にデュオジェットはイカつくてかっこいい、本体もサウンドも軽やか、ギブソンとちょっと違う、というところがポイントです。

デュオ・ジェットシリーズの特徴

グレッチ全モデル共通の、突き抜ける格好良さ

Gretsch G6128:ボディ G6128T Players Edition Jet

全体に漂うレトロ感からパーツの細部に込められたちょっとした意匠まで、グレッチのギターはとにかくイイ面構えをしています。グレッチのユーザーは、まずそのルックスに心を奪われます。レスポールにかなり近いルックスを持ったデュオジェットですが、それでも全身にグレッチらしさがにじみ出ており、シンプルながら強烈な存在感があります。

レスポールとの共通点/相違点

ボディ形状と設計

lespaul-duojet ギブソン・レスポールと6128デュオジェットの比較

デュオジェットのボディはマホガニーのバック材にアーチを描くように曲げたメイプルを貼っており、レスポールのメイプルトップ/マホガニーバックとかなり近い仕様です。しかし発表当時「ソリッドボディ」とされたデュオジェトのボディは、実際には内部をくり抜いた「セミホロウ構造」です(グレッチのホロウボディに対する頑固なこだわりを感じさせますが、現代ならば偽装を責められる案件です)。デビューしたデュオジェットは軽量でよく鳴り、当時の音楽にマッチしたことから、大いに売れました。この経緯から2000年代頃までは「ソリッドボディ・シリーズ」としてカタログでも紹介されていましたが、あまりにも紛らわしいので現在では「ジェットシリーズ」として紹介されています。
レスポールでもバックのマホガニーに穴を穿つことがありますが、これは重量調整のためであり、結果として影響があったにしてもサウンドのためではありません。

ネックの設計

6120ナッシュビルなどグレッチの代表機種のネックはメイプルで作られ、また弦長は同じモデルでも年代によって変わる事がありましたが、デュオジェットに関してのみ一貫して625mm(=ミディアムスケール)マホガニーネックというレスポール同様の仕様で作られます。ただし、年代によってはゼロフレットが加えられることがあります。

ブリッジ形状

g6128-bridge

木製の足場に立たせたネジにブリッジを合わせ、弦の押さえ込む力で位置を安定させるという伝統的なブリッジは、ボディに固定されていません。そのためチョーキングの力で位置がズレてしまいチューニングが大幅に狂うという不具合が多く起きました。グレッチの伝統的なルックスを改編することなくこの問題を解消するために、小さなピンをボディトップに立ててブリッジを安定させる方法が考案され、いくつかのモデルで採用されています。また、新しいモデルではレスポールのTOMブリッジのように、ボディに直接ブリッジをマウントする方式が採用されるものもあります。

ピックアップ

レスポールもデュオジェットも、同じタイプのピックアップを2基備えています。しかし両者の目指すサウンドには大きな違いがあります。

  • レスポールP-90(シングルコイル)やP.A.F(ハムバッカー)
  • デュオジェット:ダイナソニック(シングルコイル)やフィルタートロン(ハムバッカー)

レスポールのピックアップは高出力で太く甘いサウンドを狙っていますが、グレッチのピックアップは低出力で澄んだサウンドを狙っています。グレッチのサウンドは、当時流行していたカントリーやロックンロールとの相性が抜群でした。レスポールは「重くて音量がありすぎて制御しにくい」と不評で、1960年にいったん生産が終了してしまいますが、対して「軽量で音量が控え目」なデュオジェットの生産は止まりませんでした。

デュオ・ジェットの愛用者とサウンド

グレッチはアンプのみの潔いセッティングでこそ最も輝く不器用な楽器と考えられ、「だが、そこがいい。」と感じるプレイヤーに支えられてきました。さまざまなエフェクターが開発されるようになって以来、グレッチは合わせる機材を選び(=エフェクタのノリが悪い)、セッティングを選ぶ(=ハウリングしやすい)、「使いにくい楽器」だと言われてきたのです。とはいえ現代ではハウリング対策が進んで使いやすくなり、「グレッチのあの音」はズムズムに歪ませても健在です。

デュオジェットは、

  • マホガニーネック&ボディのパンチ力と暖かい粘り
  • ボディの空洞に由来する軽やかさと柔らかさ
  • ピックアップによる澄んだ響き

があり、カントリー/ロカビリーからR&R、ロック、ポップスまで幅広いジャンルで使用できます。


Gretsch Duo Jet Red Sparkle Limited Edition | Guitar Demo
チェンバードボディとダイナソニック・ピックアップによる「軽やかで柔らかいサウンド」は、クリーン/クランチ形のセッティングで特に良好で、レスポールとは全く異なる印象です。この動画のようにスパークル(ラメ)がまぶしいギラッギラのデュオジェットも盛んに作られています。シルバーのものは特別に「G6129 シルバージェット」と呼ばれて型番でも区別されますが、それ以外のカラーリングでは型番に変更はなく、「G6128 スパークルジェット」などと呼ばれます。

ジョージ・ハリソン(George Harrison、1943-2001)

アマチュア時代、お金に困ったタクシー運転手から90ポンドで購入した1957年製デュオジェットは、ライブから録音まで、初期のビートルズを支えた故ハリスン氏のトレードマークでした。
ジョージ・ハリスン

ビリー・ズーン(Billy Zoom、1948-)

ロサンゼルスのパンクバンド「X」所属、ビリー・ズーン氏はシルバージェットをトレードマークにして長らく活躍、カスタムショップからシグネイチャーモデルがリリースされました。パンクバンド「X」は、映画「メジャーリーグ」のテーマ曲「Wild Thing」で名高く、またこのバンドがあったために日本のヘヴィメタルバンド「X」が海外進出で「X Japan」に改名することになった、ということでも有名です。


Billy Zoom Tribute Silver Jet
還暦を過ぎてもこのギラギラしたギターが似合う。イイ感じに年がいのない、こんなロックなジイさんには憧れを感じさせられます。

ジェフ・ベック(Jeff Beck、1944-)

ギブソンやフェンダーの使い手として知られるジェフ・ベック氏ですが、1993年のアルバム「クレイジー・レッグス」では、氏に多大な影響を与えたカントリーミュージックへのリスペクトとしてデュオジェットがメインで使用され、ジャケ写にも使用されました。

Crazy Legs / Jeff Beck and the Big Town Playboys Crazy Legs / Jeff Beck and the Big Town Playboys

デュオ・ジェットのラインナップ

デュオジェットのラインナップは現代版や復刻版をメインに、日本限定版やアーティストモデルなど多くのバリエーションで構成されています。これ以外にもシルバースパークルのボディがまぶしい「G6129シルバージェット」、鮮やかな赤いボディカラーが印象的な「G6131ジェト・ファイアーバード」など、多くの派生モデルがあります。

Gretsch G6129 Silver Jet
Gretsch G6131 Jet Firebird