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荒々しいハイゲインディストーションのサウンドで知られるDiezel。最近では日本でもかなり目にすることが多くなってきたアンプブランドですが、アンプのみならずフロアタイプのプリアンプペダルが数種類上陸しています。Diezelの魅力がたっぷりつまったペダルは高いクオリティを誇り、小さな筐体ながらメインのプリアンプとしてサウンドの中枢を担うことができる完成度の高さを持っています。
今回「VH4-2 PEDAL」「Herbert PEDAL」の2台をレビューしてみました。二機種の比較や、接続方法についても細かく解説しています。昨今、世を席巻するデジタル制御のギタープロセッサーにも劣らない、存在感あるDiezelのサウンドを一度体感してみませんか。
日本でも昨今高い知名度を誇るようになってきたアンプブランドDiezel。このDiezelについて少し紹介しておきましょう。
Diezelはドイツ発のアンプメーカー。1992年、自分たちが演奏するための理想的なアンプを求めて、ピーター・ディーゼル(Peter Diezel)とピーター・スタファ(Peter Stapfer)の二人により設立されました。1994年、クリーントーンからウルトラハイゲインまでをカバーする100Wの「VH-4」を製造し、これがメタリカのジェームス・ヘッドフィールド氏に使用されたことで一躍世界に名を広げることになります。
ドナウ川ほど近くにある田舎町の工場で、現在でも従業員4人によるハンドメイド製作が続けられており、その品質の高さで世界中のギタリストより信頼を寄せられています。
Diezel VH4 and Diezel Amp Basics: In-Depth with Peter Diezel & Peter Stapfer
Diezelアンプの特徴としてはまずその音色の幅の広さが挙げられますが、中でもハイゲイン時の乾いたアグレッシブなサウンドに特に定評があり、使用者はここに魅力を感じているギタリストが多いようです。そのため、ハイゲインが必要とされるメタル系や、国内ではアグレッシブで芯のしっかりしたサウンドを求めるパンク系バンドのギタリストからも支持を集めています。前述したメタリカやスリップノット、KORNなどはメタル系を代表する使用者であり、国内では横山健氏などが有名です。
Diezel VH-4
「VH-4」はDiezelの記念すべき初号機。独立4チャンネル仕様で、曇りのないスーパークリーンから轟音のハイゲインまであらゆるサウンドがこれ一台で賄えます。各チャンネルごとに独立したエフェクトループ、全チャンネル一括してのマスターループを装備し、作り上げたシステムをMIDIスイッチで全て切り替えて使うことができます。メタリカの使用からも分かるように、第一号機にありながらすでに凄まじい完成度を誇り、現在でもDiezelのフラッグシップモデルとしての地位を保っています。
Diezel VH4 – Supernice!ギターアンプ
Diezel HERBERT
「HERBERT」は完全独立3チャンネル仕様、180W出力の大出力アンプで、こちらも作れる音色の幅はVH-4と同等。クリーンとウルトラハイゲインの間に挟まれたチャンネル2の音色幅は特に広くなっており、ブルージーなクランチから強力なオーバードライブまで、複数のジャンルにまたがるほどの幅広い音色を作ることができます。
VH-4にない部分としてMID CUTコントロールを持ち、これで中域の量を制御することによって、また各チャンネルごとに違った表情を見せるようになります。MIDIや専用フットスイッチを使っての操作性もVH-4譲りで、柔軟なコントロールが可能。2018年現在は第2バージョンとなる「MKII」が店頭に並んでいます。
Diezel HERBERT Mk2 – Supernice!ギターアンプ
左:VH4-2 PEDAL、右:Herbert PEDAL
屈指の完成度を誇るDiezelの二機種を、名前もそのままにペダルにした「VH4-2 PEDAL」と「Herbert PEDAL」。12V以上の電圧で動かすことで大きなヘッドルームを確保し、コントロール部に至るまでアンプに近いサウンドと操作性を実現した、どちらも完成度の高い一品です。
通常のエフェクターとしての利用でも相当なクオリティを感じますが、プリアンプとして利用することで、音色の大部分を担う力を存分に発揮できます。まさに「片手で持てるDiezelアンプ」のような立ち位置にあります。
2つともパッケージは同じ感じ
本体の大きさやコントロール数も同じ。色違いなだけのように見える。
「VH4-2 PEDAL」「Herbert PEDAL」ともに写真で比較するとよくわかりますが、ほぼ同じような外観をしています。ツマミの上のコントロール名付近のデザインが若干違いますが、これはモデル元となっているアンプのコントロール部を踏襲しているせいでしょう。
その他では色の白黒が大きな違いとして挙げられます。どちらも元となったアンプのパネル部分は白いのですが、ペダルではHerbertが黒、VH4-2が白となっています。限定版で黒いパネルのHerbertが発売された過去もあり、白と黒に分かれた二機種はペダル自体のキャラクターをよく表現しています。
背面
接続端子も同じものを搭載している
色以外にはほとんど違いが見られず、上面、背面ともにほぼ同じような雰囲気を持っており、接続端子は全く同じ機能を持つ4種類となっています。
「VH4 PEDAL」という単一チャンネルのペダルも存在しますが、今回のレビューはバージョン2となる「VH4-2 PEDAL」です。再現元となったアンプ”VH4”は4チャンネル仕様であり、「VH4-2 PEDAL」はVH4アンプからチャンネル3、4を抜き出したものとなっています。
「VH4-2」のスイッチ切り替え時の様子
左側フットスイッチのON/OFFによりチャンネルを切り替えることができ、二種類の音を使い分けることができます。
さすがにDiezelのペダルだけあって、非常に気持ちの良いハイゲインサウンドが飛び出してきます。ザクザクと刻むリフのみならず、高音弦でソロを取っても細くならない、芯をしっかり残したハイゲインであり、一口に「かっこいい音」と言うことができる音色です。ゲインはただ高いだけでなく、相応に絞ることでクランチサウンド程度までカバーできるほどの幅を持ち、幅広いゲイン幅を要求される複雑な楽曲を演奏する際も、チャンネル切替もうまく使うことでカバーしきれるのではないでしょうか。
チャンネル2は1に比べると中域がやや強め、ゲインが少しだけ強めにチューニングされており、ソロを弾くためには2を使うのが常套と感じられますが、チャンネル1と2はそもそもサウンドの差自体がそこまで劇的ではありません。ここにも、同一アンプのペダルへの移植という設計思想が見え隠れします。チャンネルごとの音色が似通っているため、演奏者側で自由な使い方をしても面白いでしょう。
ゲイン幅の広さが故に、Gainつまみは劇的に効きます。真ん中ぐらいでも十二分に歪んだ音が得られますが、そこからさらに芯を失わずに歪みが増していく感覚はまさにアンプライクなもの。EQはトレブル、ベースはよく効き、ミドルはあまり強めに効く感じはありません。いわゆるドンシャリサウンドを得るにはミドルはかなり下げることになるでしょう。
中でも特に使いやすさを感じたのはDeepコントロール。中低域を中心に音の厚みをコントロールするような役割があり、ミュートを掛けて刻んだときの聞こえ具合がこれで自在にコントロールできます。ズンズンと重たくするのか、音が飽和しないように抑えておくのか。ギタリストとしてはちょうど欲しい部分であり、この部分がつまみでコントロールできるのは、音色をスムーズに作り込むために大きな助けとなりそうです。このDeepと隣にあるPresenceを調整することで、全体的な音の明るさもコントロールでき、狙った音像を作るために、最小限でありながら、十分なコントロールが配置されている印象です。
VH4-2 PEDALを…
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Herbertのチャンネル3がモデルとなったものがこのペダル型「Herbert PEDAL」です。2チャンネル式ではなく、左側のスイッチはミッドカットをオンにするかどうかを担っています。ミッドカットセクションにはマスターボリュームも併設されているため、擬似的に2チャンネル式のように使うことも可能です。
「Herbert」のスイッチ切り替え時の様子
サウンド的にはVH4と方向性は近いものの、異なる部分も多く見られます。「VH4-2 PEDAL」に比べると少しではありますがゲインがわずかん低い印象があり、より様々な音楽に合わせやすい感覚があります。ゲインが低いとは言え、あくまでVH4-2 PEDALと比べてという話であり、通常のメタル程度であれば容易くこなせるハイゲインサウンドはやはり魅力的です。
音の分離感はハイゲインながらも非常に優秀で、少々高めのゲインでもオープンコードがしっかり綺麗に響くほど。その割に高音のシャリシャリした成分は抑えられ、聴きやすい音色に仕上がっている辺り、相当絶妙にチューニングされていると感じます。
他に類を見ないミッドカットセクションが最大のポイント。カットする中域の量とマスターボリュームで音量を調整し、フットスイッチで切り替えるようにして使います。このミッドカット部分を掛けると、リフを刻むのにうってつけな非常に気持ちの良い歪みとなり、その完成度には驚くばかりです。一般的な使い方としては、リフを刻む際にミッドカットを入れてドンシャリサウンドをつくり、ソロ時に解除という使い方が考えられます。
マスターボリュームはノーマル時よりも大きくもでき、Midcut Intensityは最大まで回すとミッドカットが掛かっていない時と同じ音質になるので、単純な音量のアップでこちらをソロに使うことも可能。このミッドカット部分についてはリフとソロだけでなく、使うギタリスト次第で様々な運用が考えられそうです。EQや最下部のコントロールはVH4-2と同じで、回したときの印象もほぼ同じです。
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Diezel VH4-2 PEDAL vs Diezel Herbert PEDAL【ギター博士】
凄まじいゲイン幅を誇りますが、クランチ程度の歪みでもかっちりした音色を出せるところがまた魅力であり、パキッとしたクランチやオーバードライブの音が好きなギタリストであれば、ジャンル問わず活躍させられるでしょう。もちろんハイゲインが最大の魅力であるところは間違いなく、どちらのモデルもゲインを上げても芯がしっかり残り、厚みのあるハイゲインが出せるところが共通しています。
必要最小限にまとめられたコントロールはよく効き、欲しい部分をしっかりカバーしてくるので、直感的に音を調整していけるのも強みで、ステージ上やリハーサルスタジオなどでもそう迷わず音色を追い込んでいけるでしょう。激しく歪むものの歪み方は下品ではなく、ギターのボリュームにもしっかり追従します。エッジの効いたディストーションでソロを取ることが多いハードフュージョン系のプレイに合わせるのも面白そうです。
元となったDiezelアンプと同じく、攻撃的な音色であるため、サウンドそのものに柔らかさや滑らかさはあまり感じられず、メロウなディストーションなどは苦手です。後述しますが、アンプのリターンに挿すことでプリアンプとして使用できるので、Roland JC-120など、どこにでもあるアンプを利用して、常に自分の欲しい音を得られるのも魅力です。
「VH4-2 PEDAL」「Herbert PEDAL」共に2つのOUTPUT端子を装備しています。
これにより使用する場面を問わずベストなパフォーマンスを可能にしています。
みなさんご存知、通常のエフェクターとしての使い方
ギターとアンプの間に挟み、通常のエフェクターと同じように運用する方法。この場合、右から二つ目にある「TO CLEAN GUITAR AMP IN」と書かれた所からアンプに接続します。この運用の場合、アンプの個性が大きく関わってくるため、使用アンプに応じて音色の傾向がかなり変化します。
上の動画でギター博士は「Roland JC-40」に繋いで演奏していますが、フェンダー系に代表されるチューブアンプ、あるいはトランジスタであってもチューブを模した暖かい音を出せるアンプとは、極めて良い相性であると感じました。このカテゴリのアンプでは、クリーントーンは中低域がしっかりして音色に温かみを感じる、というところが特徴になりますが、ここにDiezelペダルの要素が加わると、ジューシーでバランスの取れたハイゲインサウンドへと変化します。特定の帯域がやたらと出過ぎたり、あるいは出足りなかったりということがなく、全帯域で轟くようなサウンドが得られ、そのままライブでも使えるような印象です。
JC-40での試奏では、アンプ本来の透明感のある伸びた高域がチリチリとした成分に変わり、ジャズコーラスらしく硬さを感じる音になり、ハイゲインサウンドとしてはやや耳に痛いものになってしまいます。特にVH4-2 PEDALはこの状態だとあまり良い結果が得られず。ジャズコーラス系のように、硬い音が特徴のトランジスタアンプで接続する際には、下で紹介するリターン挿しを推奨したいところです。
アンプにエフェクトループ(SEND/RETURN端子)を装備している場合は、プリアンプとして使用できる
アンプのエフェクトセンド・リターン端子のリターンに直接挿す方法。この場合、本機の右端に位置する「TO POWER ANP IN」というところから接続します。リターンから入力することで、アンプ本体のプリアンプ部分を省略し、パワーアンプ、キャビネット部分だけを利用することができます。
この方法でJC-40に接続したところ、ペダルの持つ本来の力強さと、バランスの取れたハイゲインサウンドが得られ、非常に好印象でした。アンプ側のプリアンプを通さないため、ゲインはやや落ちますが、元々がハイゲインなモデルだけに、それでも十分なゲイン量が確保できます。アンプ側の色づけはパワーアンプとスピーカーのみとなるので、インプット端子から接続するのに比べるとほぼ無いと言って良いぐらいになり、ペダル本来のサウンドが余すところなく発揮できる接続です。様々な環境で常に近い音を求めたい場合、最もブレが少ないこの接続法をおすすめします。
この接続には、パワーアンプとスピーカーに変に色が付いていないほうが都合が良く、アンプには全帯域を綺麗に再生するスピーカーのような役割が期待されます。トランジスタが有利ですが、やはり特にジャズコーラス系がもっともいい役割を果たしてくれるでしょう。
PCのオーディオインターフェースに接続してレコーディングに使えるかどうか実験してみました。「TO POWER ANP IN」からオーディオインターフェースに接続します。この時点ではキャビネットを通していないため、ノイズのような音しか出ません。
しかし、PC側で「Amplitube」などのアンプシミュレータソフトを使い、キャビネットシミュレータだけを有効にすると、まさにDiezelアンプそのものの音色が飛び出してきます。キャビネットシミュレータはPC上でのソフトウェアだけではなく、マルチエフェクターやギタープロセッサーのものを使っても問題ありません。本来の使い方からは外れたものですが、Diezelの音をアナログで作ってラインレコーディング出来るのは大きな魅力です。
「VH4-2 PEDAL」「Herbert PEDAL」両方とも12V以上の電圧で動かすことが共通しているため、アダプター(付属)は専用品を持ち歩く必要があります。9V電圧だと満足に動作しないので、注意が必要です。
どちらも攻撃的な音であることに変わりはありませんが、2チャンネル式で自在な運用がしやすい「VH4-2 PEDAL」と、優秀なミッドカットが付いている「Herbert PEDAL」で使用法が少し異なるため、自分の音楽の方向性や、使用する際のシミュレートが重要となります。乱暴に言ってしまえば、
などという使い方が考えられます。音質的には「VH4-2 PEDAL」はややゲインが高く高域も少しだけ尖っており、「Herbert PEDAL」はややゲインが低く高域が絞られているため、若干ですがスマートに感じます。この音質さを考えて決めるのもまた一つの手です。
VH4-2 PEDAL |
Herbert PEDAL |
|
チャンネル数 | 2 | 2 |
寸法 (W x D x H) | 115 x 170 x 67 mm | 同左 |
重量 | 670g | 700g |
コントロール | Bass, Mid, Treble, Deep, Presence, Master1, Gain1, Master2, Gain2 | Bass, Mid, Treble, Deep, Presence, Master, Gain, Midcut Intensity, Midcut Master |
入出力 | INPUT, REMOTE, TO CLEAN GUITAR AMP IN, TO POWER AMP IN | 同左 |
駆動電圧 | 12~18V(専用アダプター付属) | 同左 |
さすがにドイツが誇る人気アンプブランドのペダルだけあり、完全ハンドメイドの名に恥じることのないクオリティを備えています。いずれも二つのフットスイッチでサウンドの幅を十分に生かせる、使いやすいペダルとなっており、ハイゲイン系のギタリストだけではなく、さまざまなスタイルにも合わせることができそうです。利便性こそデジタルに劣りますが、アナログの存在感はやはり格別であることを再確認できます。プリアンプとしてボードに組み込んで、足下だけでDiezelのサウンドを実現するのも魅力的です。
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