Roland JC-40は、JC-120の弟分と片付けられない深さを持っていた

[記事公開日]2018/10/31 [最終更新日]2022/4/5
[編集者]神崎聡

Roland JC-40

ローランドが誇るトランジスタアンプの銘機「Roland JC-120」は数十年も世界中のギタリストから愛される定番アンプです。今回取り上げるJC-40はそんなJC-120の小型機として2015年に登場しました。現在に至るまでJCシリーズの小型機はそれなりにリリースされてきていますが、そんな中でもJC-40は単なる小型にとどまらず、JC-120以上に工夫されているところも見受けられ、単体で弟分と片付けられない深さを持っています。そんなJC-40を試奏レビューを交えて詳しく紹介しましょう。

JC-40の特徴

Roland JC-40:外観 「JC-120」を一回り小さくしたような見た目。小型のコンボアンプとしてはまあまあ大きいほう

JC-40の特徴ですが、基本的な部分はJC-120を踏襲しています。JC-120で聴かれるキラキラとした美しいクリーントーンは、小型となったJC-40でも同様で、出力による差などもほぼ感じることはありません。アルペジオなどに使うとずっと弾いていたくなるほど、珠のような美しさがあり、JCシリーズの特徴でもある、”トランジスタっぽい”と形容される硬い質感もそのままです。革張りにモノトーンが特徴の質実剛健なルックスも受け継ぎ、出力のわりにすこぶる大音量が得られるのも兄譲りです。

Roland JC-40:リアパネル スピーカーは2基搭載。JC-120と同様ステレオ感のあるエフェクトが楽しめる。

ステレオスピーカー仕様とコーラスエフェクト、リバーブの内蔵はいずれもJC-120同様ですが、コーラスエフェクトについてはJC-120のものよりも繊細な掛け方ができ(後述)、非常に使い勝手の良いものへ変貌しました。

Roland JC-40:接続端子 接続端子もJC-120と遜色がない

JC-40のここが楽しい

さて、ここからは実際に弾いてみての所感を紹介していきます。JC-120との違いが新鮮であったため、そこを中心に記しています。特にエフェクト関係はずいぶんと様変わりしています。

効きの良いEQ

小出力がゆえなのか、EQの効きが非常に良いです。トレブルなど少し下げるだけでモコモコになるまで下がっていき、ベースも低音がスカスカの音からズンズン響く音まで自在に作り上げられます。個体差こそありますが、JC-120はEQを思いっきり回してもそこまでの変化が感じられないことが多く、実際にスタジオなどで作りたい音にうまく持って行けないこともしばしば。このあたりはJC-40の効きの幅広さが新鮮でした。

Manualモードでのコーラスの制御

JC-120の内蔵コーラスは、ステレオスピーカーを活かした非常に美しいもの。JC-40はその音質をそのまま受け継ぎ、さらに特徴として、あらかじめ効きの深さや揺れが決められた「Fixed」と、効きを自分で変えられる「Manual」という、二種類のモードが存在します。

Fixedモードでは通常のJC-120と似たような掛かり方ですが、Manualモードにすると、浅くから深くまで自由にパラメータで制御でき、アナログコーラスのペダルを繋いでいる時と同じような柔軟なセッティングが可能。JC-120ではしばしば「効き過ぎる」と感じることもあった内蔵コーラスが、さらに使いやすくなって搭載され、音質は上位譲りの美しさ。これは使わないわけにはいきません。

強力なディストーション

JC-120ではバキバキとしたドライブ要素が少し混ざるだけだったDistortionつまみが、JC-40ではミドルクラスのオーバードライブ程度まで歪みます。この辺りは、「JC = クリーン」という先入観で試奏に臨み、大きく裏切られた部分。トランジスタっぽい硬さは残りますが、ブルースロック程度であれば、アンプだけで完結するのではないかと思わせるほどの歪みが得られます。

ステレオ出力の空間系エフェクトが威力を発揮

JC-40:ステレオ入力対応 ステレオ出力に対応したエフェクターは、その威力を発揮できる

ギターアンプとしては相当に珍しいステレオ入力にステレオ出力。インプットの時点でL-Rの二つの入力部が存在するアンプは滅多になく、ディレイなどのステレオ出力のエフェクターをそのままステレオで出力すると、そのポテンシャルを発揮できます。歪みを併用する場合は、バックに搭載するエフェクトループを活用することになりますが、このリターン部についても勿論ステレオ入力です。

ステレオディレイ、あるいはピンポンディレイなどを繋ぎ、内蔵のコーラスやヴィブラート、そしてリバーブを掛けると、とろけるような美しいクリーントーンが得られます。特に内蔵ステレオスピーカーの音の広がりはスピーカー二台どころか、モノラルの4倍ぐらいの感覚があり、アンプの前に立って聞くとまさに圧巻の存在感。一度体感してみる価値があります。

JC-40をどう使うか

ライブにも練習にも

ライブ会場にも持ち込んで、練習もライブもこれ一台というパターンです。エフェクターとの相性も抜群に良いJCシリーズなので、家でお気に入りの歪みと一緒に作り込んだ上で、システムごと持ち込むという選択は当然、ファンクやブルースロックなどであれば相当に歪む内蔵のディストーションを活かし、アンプとフットスイッチだけという装備でも可。また、昨今増えているギタープロセッサー系の機器を本機のリターンに繋ぎ、キャビネット兼スピーカーとして運用するというのも面白いでしょう。車移動がメインで持ち運びが可能であれば、マイアンプの運搬は最良の選択となります。

練習兼音作り用として

家でセッティングしたものを、スタジオやライブハウスのJC-120でそのまま使うという使い方です。どこのスタジオにもライブハウスにもあるJC-120と音色の傾向が全く同じため、家で作り込んだ音が外でもほぼ同じ環境で実現できるのが強みです。実際には出力の差や個体差があり、完全にはなり得ませんが、本番でまったく違うアンプを使い、家での音色とまるで違うなどといったリスクは減らせるでしょう。こちらもギタープロセッサー系などを使うと、プリアンプ部分が省略されるため、より誤差の少ない運用が出来ると考えられます。この使い方であればさらに下位機種であるJC-22(後述)を視野に入れても良いでしょう。

JC-40の弟分「JC-22」

Roland JC-22

JC-40にはそのさらに弟分である30W仕様のJC-22が存在します。JC-22はさらに家庭練習用に特化したサイズでありながら、ステレオ入出力にエフェクトループを備えた本格仕様。JC-40に比べるとコーラスエフェクトのManualモード、ヴィブラートエフェクト、ディストーションが無くなっていますが、より小さな出力は練習用に最適です。40Wの迫力や広がるようなステレオ感は得られませんが、ライブやリハーサルで使う予定がないのであればこちらも選択の候補に入りそうです。

Roland JC-22 – Supernice!ギターアンプ


JC-22

JC-40

JC-120
出力 30W 40W 120W
コントロール Vol, Tre, Mid, Bass, Reverb,
Speed, Depth, Vib-Chorus切替, Brightスイッチ
Vol, Tre, Mid, Bass, Dist, Reverb,
Speed, Depth, Vib-Chorus切替, Brightスイッチ
(CH1)Vol, Tre, Mid, Bass, Brightスイッチ
(CH2)Vol, Tre, Mid, Bass, Dist, Reverb,
Speed, Depth, Vib-Chorus切替, Brightスイッチ
エフェクト コーラス、リバーブ コーラス、ヴィブラート、リバーブ、ディストーション コーラス、ヴィブラート、リバーブ、ディストーション
スピーカー 16cm x 2 25cm x 2 30cm x 2
寸法
[W x D x H]
461 x 239 x 338 mm 592 x 251 x 436 mm 760 x 280 x 622 mm
重量 12kg 15.8kg 28kg
用途 家庭練習用、ライブ、リハーサル(小規模) 家庭練習用、ライブ、リハーサル ライブ、リハーサル
価格 39,000円 59,800円 100,000円

表:JAZZ CHORUS3機種比較(価格は2018/11時点)


音質やルックスを受け継いでいるものの、微細に渡ってモダンな要素を追加しているというローランドのうたい文句。その要素はコーラスやディストーションのエフェクト、EQの可変幅などに現れているようです。出力は小さいものの、小さいだけに軽くもなり、家に置いて使うのにぎりぎり可能なサイズが実現出来ています。40Wにしては音量も得られるため、実際にライブで使うとしても余程でなければ不足はしないだろうと考えられ、運用の幅は思うよりも広そうに感じます。

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