《2022年限定生産》Fender JV Modified シリーズ

[記事公開日]2022/6/8 [最終更新日]2022/6/8
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

Fender JV Midified シリーズ Fender「JV Modified ’50s Stratocaster HSS」

フェンダー「JVモディファイド」シリーズは、かつてのフェンダー・ジャパンで生産されていたいわゆる「JVシリアル」のアイディアをベースに、クラシカルな本体に現代的な機能を追加したラインナップです。2022年の限定生産ですが日本限定ではなく、世界各国に流通しています。今回は、この「JVモディファイド」シリーズに注目していきましょう。


Exploring the JV Modified Series | Fender
クラシカルなルックスを守りながら、特殊配線とロック式ペグを装備するというアレンジです。

ところで「JVシリアル」って何?

古い日本製ギターに対し、「ジャパン・ヴィンテージ」という呼び方が定着しつつあります。ビザールやコピーモデルなどいろいろある中で特に高い評価を得ているのが、1982年から1984年まで作られていたフェンダー・ジャパンの「JVシリアル」です。

初代「日本製フェンダー」

1982年、フェンダー・ジャパン立ち上げ時に発表された「VINTAGE SERIES」が、のちに世界を驚かせる日本製フェンダーの第一号です。ラインナップはストラトキャスター6機種、テレキャスター2機種、ジャズベース2機種、プレシジョンベース4機種の全14モデルでした。シリアルナンバーが「JV00000」のような表記だったため、現代では「JVシリアル」と呼ばれています。

上位モデルはUSA製ピックアップを搭載し、ニトロセルロースラッカー塗装が施され、日本製のクオリティも相まって、本家フェンダーを超えるギターだったと評価されています。

JVシリアルは世界に飛び立つ

JVシリアルは、はじめ日本国内でのみ流通される予定でした。しかしこのとき、世界での需要が本家フェンダーの生産力を超えていました。そこでJVシリアルは日本国内向けにはフェンダーのブランド名で、輸出用には本家との区別のため「Squire(スクワイア)」のブランド名で生産され、イギリスをはじめとするヨーロッパで、次いで本国アメリカで流通されるようになります。海外の中古/ヴィンテージ市場では現在でもJVシリアルが登場しており、プレミアの付いた価格で取引されています。

「JV Modified」シリーズの特徴

「JVモディファイド」シリーズとしてリリースされたギターは4タイプです。それぞれをチェックする前に、共通仕様を確認しながらだいたいの全体像を見ていきましょう。

トラッドな本体に現代的なアレンジ

Fender JV MODIFIED:ボディ JV MODIFIED ’60S STRATOCASTER
6点留めブリッジプレート&スチール製ベントサドル、というまさにヴィンテージ・スタイルのシンクロナイズド・トレモロユニット。

木材構成は日本製フェンダーの伝統にのっとった、バスウッドボディ、メイプルネック、メイプルまたはローズ指板です。ペグはクルーソンタイプで、ブリッジはストラトキャスターなら6点留めシンクロナイズド・トレモロユニット、テレキャスターならブラス製3連サドルといった具合に、パーツ類はヴィンテージ・スタイルで統一されています。

ネックの主な仕様は全モデル共通で、「肉厚なV」というネックシェイプに古典的なスタイルが残されているものの、それ以外はしっかり現代仕様になっています。9.5″Rの指板にミディアムジャンボフレット、ネック裏サテン仕上げという仕様は、まさに現代の標準です。

なおこの「9.5″指板R+ミディアムジャンボフレット+Vシェイプネック」という組み合わせは、レギュラーモデルの現行ラインナップでは唯一の存在です。

マグナムロック式ロッキングチューナー標準装備

Fender JV MODIFIED:ペグ 裏から見ると、普通のクルーソンタイプにしか見えない。

標準装備のロック式ペグは、表側にロック機構を持つ「マグナムロック式」です。このためペグ自体は注意深く観察しなければ、普通のクルーソンタイプと見分けが付きません。素早く弦交換でき、チューニングが安定する、ロック式ペグのメリットを享受しながらトラッドなルックスもしっかりキープしているわけです。

サウンドバリエーションを拡充させる特殊配線

Fender JV MODIFIED:コントロール サウンドバリエーションを増強させながら、操作系はシンプルなルックスを保っていて、いかにも改造しているっぽくない。

ストラトキャスターはトーン2に、テレキャスターはセレクタースイッチとトーンポットに特殊配線が使用されており、素のストラトやテレキャスでは得られないサウンドを出すことができます。ただしストラトキャスターの場合、特殊配線を起動させるにはトーン2のハットノブを引き上げる必要があり、コレには若干のコツが必要です。

ハットノブは末広がりの形状をしているので、つまんで引き上げるには練習が必要。トラッドなルックスを損なってしまうのは覚悟の上で引き上げやすいノブに交換するか、いっそのことノブを外して軸を露出させるという荒業も。

「JV Modified」シリーズのラインナップ

では「JVモディファイド」シリーズのラインナップを見ていきましょう。リリースされているのはストラトキャスター、テレキャスターそれぞれ2モデルで、カラーバリエーションはありません。

JV Modified ’50s Stratocaster HSS

50年代式のストラトキャスターは、リアをハムバッカーに換装したHSS配列機です。トーン1はフロント/ミドル両方にかかり、トーン2はリアに効きます。トーン2はプッシュ/プル式のスイッチになっており、リアピックアップをコイルタップできます。

JV Modified ’60s Stratocaster

60年代式のストラトキャスターは、ラージヘッドのSSS配列機です。60年代の終盤にはこのような70年代を思わせる仕様のストラトが作られました。また、海外向けにスクワイアのブランド名で作られたJVシリアルのストラトがラージヘッド仕様でした。

トーン2はフロントピックアップを追加するスイッチになっており、通常のストラトキャスターでは不可能だった「フロント+リア」と「シングルコイルぜんぶ」という組み合わせを作ることができます。

JV Modified ’50s Telecaster

50年代式のテレキャスターは、5点留めのアノダイズド・アルミニウム製ピックガードと3弦ペグ付近に配置した丸型ストリングガイド、そしてそこに合わせて配置したブランドロゴが特徴です。4WAYセレクタースイッチにより、フロント/リアの単体に加え、通常の並列つなぎ(パラレル)と疑似的にハムバッカーサウンドを作る直列つなぎ(シリーズ)という二つのミックスポジションが選択できます。

またトーンポットには位相反転スイッチとなっており、ミックスポジションでフェイズサウンドを作ることができます。

JV Modified ’60s Custom Telecaster

60年代式のカスタム・テレキャスターは、ボディ表裏のバインディング、ローズ指板、5弦ペグ付近に配置したストリングガイドが特徴で、特殊配線は50年代式と同じです。ボディカラー、ピックガードの色調、指板の色調、という3点で50年代式テレキャスターと対称を成しているところがちょっとしたポイントです。


以上、2022年限定生産の「JV Modified」シリーズをチェックしていきました。トラッドなスタイルを守りながらも、現代的な演奏性を持たせ、サウンドバリエーションを拡充させた現代のギターです。特にネックの握り心地はフェンダーの他のモデルとちょっと違いますから、その違いを楽しむこともできます。見かけたらぜひチェックしてみてください。

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