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誕生から半世紀以上経た今なお「エレキギターの王道」として君臨し続けている、フェンダー・ストラトキャスターとギブソン・レスポール。両機の名演は数えきれないほどで、世界中の楽器店で扱われるほど普及しており、他メーカーによるコピーモデルやアレンジモデルも数多くリリースされています。ギターを始めたい人はどちらを、またはどちらっぽいものを最初に買おうか迷っている人もいることでしょう。そんなわけで今回は、この二つの違いを探してみましょう。
1951年にフェンダーは世界初のソリッド(ボディが箱ではなく板)・スパニッシュ(横に構えて弾く)ギター「テレキャスター」を発表し、ギター開発史に革命を起こしました。伝統的なギター製作にこだわっていたギブソンは、始めこそ冷ややかに傍観していたものの、その商業的な成功を見せつけられ、1952年にギブソン初のソリッドギター「レスポール・モデル」を発表します。
いっぽうフェンダーはテレキャスターを大幅にアレンジした「ストラトキャスター」を1954年に発表、新設計がいろいろ好評を博したストラトは大いに売れてレスポールのシェアを圧迫、1960年、ついにレスポールは生産終了の憂き目にあい、ストラトに対抗した「SG」が開発されました。
数年後、エリック・クラプトン氏を始めとする名手によりレスポールは再評価されて復活、現在の地位を築きます。この半世紀というもの、ストラトもレスポールもシェアを競いながらいろいろなマイナーチェンジを受けてきましたが、基本的な構造はそのまま残され、今なお多くのギタリストに愛されています。
ストラトキャスター・タイプのギター特集
レスポール・タイプのギター特集
ではさっそく、二つのギターの違いを比べてみましょう。長らくライバル関係にある二つのギターには、具体的にどんな違いがあるのでしょうか。
左:Fender Made in Japan Hybrid 60s Stratocaster
右:Gibson Les Paul Traditaional 2012
両機で一般的に使われる木材とネックジョイントを比較してみましょう。
フェンダー・ストラトキャスター | ギブソン・レスポール | |
ボディ材 | アルダー、アッシュその他 | メイプルトップ、マホガニーバック |
ネック材 | メイプル | マホガニー |
指板材 | ローズウッド、メイプル | ローズウッド(カスタムではエボニー) |
表:ストラトキャスターVSレスポール、木材の違い
ストラトキャスターのボディでは、アルダーやアッシュの一枚板を使用します。「粘りのアルダー、アタックのアッシュ」と一般に言われますが、クセのないバスウッドなど他の木材が使われることもあります。レスポールのボディは硬質なメイプルとやや柔らかいマホガニーを貼り合わせた二層構造になっており、二つの木材の音響特性を旨い具合にブレンドした力強い音を作っています。
ストラトではメイプルのネックにローズウッドの指板を貼るか、メイプルのネックがそのまま指板にもなっているか(ワンピース・ネック)、この二つが主流です。メイプルは頑丈な木材の代表選手で、仕入れやすいことも含めて「最良のネック材」と言われます。対するレスポールは、マホガニー製のネックにローズウッド指板を貼るのが普通で、「マホガニーネックのサウンドこそ至高」とする人が多くいます。レスポールではボディ材とネック材で同じ木材が使われている、というのも興味深いポイントです。
上:ストラトキャスターのネック
下:レスポールのネック
弦長、指板R、ヘッド角といった要素の違いは、弦振動や演奏性の違いとなって現れます。弦に関わる違いを見てみましょう。
フェンダー・ストラトキャスター | ギブソン・レスポール | |
弦長 | 25.5″(約648mm) | 24.75″(約628mm) |
指板R | 7.25″(約184mm)、9.5″(約241mm) | 12″(約305mm) |
ヘッド角 | なし | あり(モデル、年代により各種) |
ネック仕込み角 | なし | あり |
表:ストラトキャスターVSレスポール、弦の触り心地に違いが出るポイント
ストラトの弦長はレスポールより約2センチ長いですが、これは約3%の差に相当し、各フレットの間隔も約3%長くなることを意味します。両機は同じチューニングなので、弦長の長いストラトの方が弦の張りが強く、逆に弦長の短いレスポールは張りがゆるくなります。レスポールではその代わりにヘッド角を設け、またブリッジ側でもしっかりと角度を付け、弦張力を稼いでいます。
指板Rは数値が低いと丸みの強い指板、数値が大きいとその分だけ平らな指板で、ストラトの方がレスポールより丸みの強い指板です。この丸み/平らさはコードを押さえたりリード(メロディ)を弾いたりする上で弾きやすさを左右すると言われますが、台無しなようですが慣れてしまえばあまり問題になりません。レスポールには「ネックの仕込み角」が付いていますが、これには独特の音響効果のほかに、演奏時にローポジションが演奏者にちょっと近くなる、というメリットもあります。
ハイポジションに手が届きやすいようにボディを切削した部分を「カッタウェイ(Cut Away)」、残されたツノ部分を「ホーン」と言います。ストラトは高音側も低音側も切削した「ダブルカッタウェイ」、レスポールは高音側のみ切削した「シングルカッタウェイ」が基本です。これは第一にルックス的な大きな違いとなっていますが、一般的に「ダブルカッタウェイの方がハイポジションは弾きやすい」と言われます。その一方で、シングルカッタウェイでネックの根元をぎゅっと握りこんで弾くのが好き、と感じるギタリストも多くいます。
ストラトキャスターのネックは、ボディに「ボルトオン(ネジ留め)・ジョイント」されます。ネジを緩めればネックを外すことができることから、「デタッチャブル(取り外し可能)ネック」と呼ばれることもあります。金属板(ジョイントプレート)を介してネジを締めることもあって、ネックヒール(ネックの付け根の出っ張り部分)は四角く角ばっています。サウンドのためにこの部分の体積は重要なのですが、これを邪魔だと思う人もいるかもしれません。
レスポールでは伝統的な工法を守り、ボディ側のミゾにネックをセットイン(はめ込み)して接着する「セットネック」が基本です。接続部分の強度を増すためネックヒールは大きめですが、緩やかなカーブを描きます。
なお、「アメリカン・エリート」など最新版のストラトや「ハイパフォーマンス2019」など最新版のレスポールでは、ネックヒールをカットした「ヒールカット」が採用され、ハイポジションでの演奏性を大幅に向上させています。
ピックアップについても違いは明白で、
が基本です。シングル/ハムバッカーのサウンドは聞きわけやすく、両者を分かつ大きなポイントとなっています。
現在ではリアのみハムバッカーにした「SSH配列のストラト」や、フロントもハムバッカーにした「HSH」、P-90のように異なる形式のピックアップを備えたストラトも一般化しています。またレスポールでもコイルタップなど特殊配線を備え、サウンドバリエーションを拡大させているモデルが多くリリースされています。
ピックアップ切り替えや音量操作などを行う操作系については、開発当時に想定された使い方による違いが見られます。ピックアップ配列と操作系をまとめた言い方として
と表現できますが、もう一息詳しく見ていきましょう。
ストラトは、高音弦側に5Wayレバースイッチが付き、ピックアップ単体、隣同士(ハーフトーン)の5種類の組み合わせができます。そのすぐそばにコントロールポットが一列に並び、一つはマスターボリューム(全体音量)、後の二つはフロント/センターピックアップそれぞれのトーンで、リアピックアップにトーンは付きません(センターのトーンがリアにも効くモデルは多数あり)。全ての操作系が演奏中にコントロールできるような配置です。
一方レスポールは、低音弦側に3Wayトグルスイッチがあり、ピックアップ単体とミックスの3種類が選択できます。コントロールポットは演奏の邪魔にならない場所に四角く配置され、ピックアップそれぞれのボリューム、トーンを操作します。コントロールポットでピックアップそれぞれの音をあらかじめ設定(プリセット)しておいて、トグルスイッチで切り替えて使うことを想定しています。
なお、ストラトはボリュームポットを操作しながら演奏する「ボリューム奏法(バイオリン奏法)」ができ、レスポールは片方のピックアップの音量をゼロにしてトグルスイッチを素早く往復させる「スイッチング奏法」ができます。これらはそれぞれのギターでしかできない、それぞれのギター専門の特殊奏法です。
ブリッジについても同様で、
それぞれ名前は長いんですが、まったく違う設計になっています。
ストラトでは各弦のオクターブ調整、各弦の高さ調整ができるうえにアーミングができるという設計、レスポールでは各弦の高さ調整はできませんが全体の高さ調整、オクターブ調整をブリッジ側で、弦張力の調整をテールピース側で行い、ビグスビーを取り付ければアーミングも可能です。
普通に演奏する上では、「ボディからの高さ」に最も大きな違いが生まれます。ストラトはボディに貼りつくように弦が張られ、レスポールではボディからやや浮いた位置に弦が張られます。これはブリッジミュートを行う時に特に違いを実感でき、こだわるならば好みが分かれるポイントとなっています。
ここまで特に重要だと思われるいくつかのポイントについて「ストラトとレスポールの違い」を見てきました。しかし違いはこれだけではなく、他にも楽器自体の寸法、重量、電気的特徴、メンテナンス性などいろいろ違います。ここまで違うと、両者は全く別の物体のように見えてしまいますね。では、あるとすればいったいどこに共通点があるのでしょうか。
ギタリストが気にするべき共通点としては、そもそもギターなんだから「チューニングが同じ!」というこの一点だけです。しかしこれは重要なポイントで、ストラトで弾けるフレーズはたいがいレスポールでも弾けますし、その逆も成り立ちます。ですから「アーティストがストラトなんだから、この曲はストラトでなければ弾いてはならぬ!」なんてことにはなりません。レッドツェッペリンをストラトで弾いても、ディープパープルをレスポールで弾いてもいいんです。レスポールを持っているのなら全てをレスポールで、ストラトを持っているのなら全てをストラトで弾きましょう。両方持っている人は、自分なりのセレクトで弾きましょう。
フェンダー・ストラトキャスターの種類と選び方
ギブソン・レスポールの種類と選び方
フェンダーストラトキャスターとギブソンレスポールを比べてみた!
チューニング以外は全てが違う二本のギター、音の違いはどうなんでしょうか。博士の動画でチェックしていきましょう。より正確にサウンドを聴き比べるため、それぞれアンプやエフェクターの設定(KEMPER)は同じものを使用しています。博士はそれぞれのギターでほぼ同じフレーズを弾いていますから、音の違いを比べやすいのではないでしょうか。博士の演奏を観て、あなたはこの二つの違いをどう感じましたか?
動画をご覧になった皆様から、いろいろなコメントをいただきました。そのうちのいくつかを紹介させていただきながら、二つの違いを考えてみましょう。
「優秀なのは絶対ストラト。客観的にはストラトの方がよくできた楽器だと思う。でも断然レスポール派!音もルックスも死ぬほどかっこいい。!」
「ストラト弾きだけどレスポールの音のエロさたまらんな」
「見た目も音も完全にレスポール派だが重くてキツい……」
まずはレスポールを高く評価するコメント。ストラトを高く評価しつつも、ハムバッカーサウンドに支持が集まっているようですね。確かに、ストラトにハムバッカーを載せることはあってもレスポールにストラトのシングルコイルを載せる例は極めて稀です。レスポールの重さが気になる人は、重量調整を施したレスポールを試してみてください。しかしこの重さこそ魅力だ、というコメントもありました。
「ストラトは幅が広くて使いやすいから大好き エフェクターを引き立ててくれる」
「見た目も音も全てにおいてストラトが好きすぎる笑 レスポールもカッコイイけどね」
「ストラトには欠点がない!」
見た目や音でどちらが好き、と分かれる両者ですが、機能性や演奏性についてはストラトを高く評価する意見が多いようです。その一方で↓
「アコギから入ってしまうとどうしてもレスポールとかSGとかセミアコとかが弾きやすくて ストラトが違和感しかないって人いない?」
ギブソンはエレキの前からアコギを作っていたメーカーだということもあって、レスポールのネックはアコギに近い握り心地です。そのためアコギに慣れている人は「レスポールのネックが握りやすい」と感じるようです。「アコギで歌う人はテレキャスターに行く」みたいな風潮がややありますが、ぜひレスポールも検討してみてください。
「レスポールは彼女。ストラトは友達。」
「ストラトの音は三角、レスポールの音は四角
返信:個人的には、ストラト三角、テレキャス四角、レスポール丸 の方がしっくりくる。」
「圧倒的に歯切れのいいストラトと肉厚なサウンドで一音一音が甘いレスポール、つまりはどっちも欲しい。」
それぞれのイメージをどのように表現するか、というコメントです。ギターを女性に例えるのは、ギター文化の伝統みたいなものです。図形で例えるのは斬新な印象ですが、なぜか伝わってくるものがあります。みなさんもぜひ、自分なりの表現を探してみてください。
「5:07 ンドウ⤴ (かすれ声)じゃ」
「6:08 ンドゥ⤴ じゃ ヴヴゥゥゥゥン(よっしゃうまく言えた)」
博士の決め台詞が、16分休符いっこ分の「タメ」から入ることを鋭く見破っているコメントです。この「タメ」を身につければ、みなさんも博士の決め台詞「どぅじゃ?」を完全コピーできるやもしれません。
ここまでの内容で、ストラトキャスターとレスポールの違いはだいたい大丈夫になってきました。「そこまでこだわらなくても、気軽に持ち替えて問題なく演奏できちゃうよ」という人も多いことでしょう。しかし「まさかここまで違うとは」と感嘆せざるを得ない細かいところにもあえて切り込んでみましょう。
隣同士の弦の間隔を「弦間ピッチ」と言い、ブリッジ位置では
が標準です。ストラトでは10.8mmのものもあるようです。ギタリストとしてこのような違いをあらかじめ心得ておくと、いざギターを持ち替えた時にスムーズに順応できます。弦間ピッチの違いについては「離れていると響きが美しい」、「近い方が弦移動に有利」と言われます。とはいえ、「だからレスポールはコード弾きに不利」とか「ストラトの方が速弾きに不利」ということにならないのは、多くの名手が演奏によって証明しています。
座って構えるときに、ギターの弦が演奏者のどこに位置するかを決めるのは、ウェスト(ボディのくびれ)部分です。そこで、両機の弦とウェスト部分との関係を採寸してみました。
1弦とウェスト部までの距離は、ストラトでは約88ミリ、レスポールは約65ミリです。
1弦サドルからウェスト位置までの距離は、ストラトでは約110ミリ、レスポールでは約95ミリでした。
「1弦とウェスト部までの距離」は、ギターを脚に乗せた時の、「太ももから1弦までの距離」に相当します。ストラトの方が約2センチ、太ももから離れることが分かりますね。コードストロークやカッティングを行う場合、この2センチの差は右手の振り幅に関わってくるため、好みが分かれるかもしれません。
いっぽう「1弦サドルからウェスト部までの距離」の差も興味深いところです。これは座って弾く時に「ネックが15mm前後する」「ブリッジが15mm前後する」という差に表れます。両者の弦長には約20mmの差がありますが、「座って構えた時のナット位置には5mmの差しかない」ということになります。また、ブリッジの位置の違いはブリッジミュートのやりやすさに影響を感じるかもしれません。
こうした細かな寸法は気にならないという人も多いですが、何となくどちらかの方が弾きやすいと感じる人は、こうした寸法の影響を感じ取っているのかもしれません。
ずばり、ボリュームポットの抵抗値は、サウンドに直接影響を及ぼします。抵抗値が高ければサウンドは硬くブライトに、低ければ甘くウォームになります。ストラトのシングルコイルはブライトなサウンドを持っているため、バランスを取る目的で250kΩのボリュームポットが主に使われます。いっぽうレスポールのハムバッカーはウォームなサウンドを持っているため、バランスを取るために500kΩのボリュームポットが主に使われます。
よって、例えばSSHストラトのハムバッカーは250kΩのボリュームポットを通るため、電気的にはレスポールよりも甘いサウンドになりますし、レスポールのコイルタップは500kΩのボリュームポットを通るため、ストラトより硬いサウンドになります。
以上、王道エレキギターの両雄として君臨するフェンダー・ストラトキャスターとギブソン・レスポールの違いについて、分かりやすいところとマニアックなところをチェックしていきました。あなたはどっちが気になりましたか?今回はこれでもざっくりとした比較でしたが、一言でストラトやレスポールと言っても、特定の年代や年式を意識した「ヴィンテージ・スタイル」、現代音楽のニーズに合わせた「モダン・スタイル」などなどなど、それはそれは様々なバリエーションがあります。ぜひいろいろなストラトやレスポールをチェックしてみてください。
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