メイドインジャパンのフェンダー・テレキャスター徹底分析!
神田商会がフェンダーの許可のもとでライセンス生産していた公式コピーモデル「フェンダー・ジャパン」は、高いクオリティとそれに反する低価格で評判でしたが、2015年に惜しまれながらも終了しました。後継となる「ジャパン・エクスクルーシブ(=JE)」シリーズは、このフェンダー・ジャパンの仕様を引き継ぎながら、フェンダー社のプロデュースで日本メーカーがOEM生産する、という「正規品」の地位を得ました。2年後となる2017年そして2018年、この国産フェンダーに
- メイドイン・ジャパン・トラディショナル(=MJT)
- メイドイン・ジャパン・ハイブリッド(=MJH)
- メイドイン・ジャパン・リミテッド・コレクション(=MJLtd)
という長い名前の新シリーズが加わりました。従来の「JE」もまだ辛うじて残されていますが、現在ではこの2シリーズがJEに取って代わったような形です。シリーズ名に「日本国内限定」という意味を持っていたJEからの移行は、日本製のフェンダーをいよいよ世界各地へ流通させる狙いがうかがえます。世界中のギタリストが日本製のフェンダーを弾く、そんな未来がもうすぐそこにあるかもしれませんね。今回は「低価格&高品質」で人気を集める、日本製テレキャスターに迫っていきましょう。
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1: 日本製テレキャスターの特徴 1.1: 日本製テレキャスターの仕様概観 2: 他シリーズとの比較検証 2.1: 1)価格の近いものとの比較 2.2: 2)仕様が近いモデルとの比較 3: ギター博士がフェンダー・ジャパン・テレキャスターを弾いてみた! 4: 日本製テレキャスターのラインナップ 4.1: メイド・イン・ジャパン・トラディショナル・シリーズ(MJT) 4.1.1: 50年代モデル 4.1.2: 60年代モデル 4.1.3: 70年代モデル 4.2: メイド・イン・ジャパン・ハイブリッド・シリーズ(MJH) 4.2.1: Made in Japan Hybrid 50s Telecaster 4.2.2: Made in Japan Hybrid 60s Telecaster 4.3: メイド・イン・ジャパン・リミテッド・コレクション(MJLtd) 4.4: Japan Exclusiveテレキャスターのラインナップ 4.4.1: 1950年代式 4.4.2: 1960年代式 4.4.3: 1970年代式 4.5: アーティストモデル
THEE MICHELLE GUN ELEPHANT – ブラッディー・パンキー・ビキニ
THEE MICHELLE GUN ELEPHANT(ミッシェル・ガン・エレファント)に所属していたアベフトシ氏はエフェクターに頼らず、ギターとアンプの音だけで勝負していました。いわゆる「テレキャスター使い」には、このような武骨なプレイヤーが多くいます。
日本製テレキャスターの特徴
MJTおよびMJHの特徴については「メイドインジャパンのフェンダー・ストラトキャスター徹底分析!」でも紹介しています。MJTは指板のRやフレットのサイズなどでフェンダーの伝統的(トラディショナル)な仕様を採用したもの、MJHは伝統的なスタイルに現代的なアレンジを加えた、新旧のハイブリッドです。両シリーズの開発では、フェンダー・カスタムショップのマスタービルダー、クリス・フレミング氏が日本の「フェンダーミュージック株式会社」に赴任し、製品にブラッシュアップを加えました。その甲斐あって、新シリーズでは従来と比べ、機能性と楽器としてのフィーリングの両方が向上したといわれています。では具体的にどのようになっているのか、ふたつの仕様をチェックしてみましょう。
日本製テレキャスターの仕様概観
MJTおよびMJHは豊富なバリエーションを持っていますが、まずはそれぞれに共通する仕様をチェックして、各シリーズがだいたいどういうものなのかを見ていきましょう。
メイド・イン・ジャパン・トラディショナル(MJT) | メイド・イン・ジャパン・ハイブリッド(MJH) | |
主たるボディ材 | バスウッド、アルダー、アッシュなど | アルダー、アッシュ |
ボディ/ネック塗装 | ポリエステル/ポリエステル | ポリエステル/サテン・ポリウレタン |
ネック仕様 | 弦長25.5インチ(648mm) 「U」シェイプグリップ ナット幅42mm(一部41mm) ボーン(骨)ナット |
弦長25.5インチ(648mm) 「U」シェイプグリップ ナット幅42.5mm ボーン(骨)ナット |
トラスロッド開口部 | 50s~60sはエンド側
70sはヘッド側 |
エンド側 |
指板仕様 | 指板R7.25インチ(181.4mm)
ヴィンテージスタイルフレット フレット数21 |
指板R250mm
ミディアムジャンボフレット フレット数21 |
電気系 | フェンジャパ時代からの由緒ある「Vintage Style Single-coil Tele」ピックアップやフェンダー「ワイドレンジ」ハムバッカー。操作系は標準的なもの | フェンダー・アメリカン・ヴィンテージ’58ピックアップ、4Wayセレクタスイッチを採用した特殊配線 |
ペグ | クルーソンタイプやロトマチックタイプ | ヴィンテージスタイルのロッキングチューナー |
ペグ | 各年式に準じた仕様 | ブラス製3連サドル |
表:日本製テレキャスターの仕様比較
ネックシェイプが「スリムC」→「U」に
両シリーズとも「U」シェイプのネックが採用されている点が、今の日本製フェンダーの共通点であり、またこれまでの日本製フェンダーとの大きな違いでもあります。かつてはその名の通り細身の「スリムC」グリップが標準でしたが、近年ではある程度存在感があるネックの方が握りやすく疲れないという考え方から、いろいろなブランドでやや厚みを増したグリップが採用されています。このUシェイプは70年代における標準的なグリップでもあり、今回デビューした新シリーズが「70年代仕様に妙に入れ込んでいる」と言われるひとつの所以となっています。また、これまで人工骨を使用していたナットがすべて天然の骨となっており、JEに比べてちょっとグレードが上がりました。
ハイブリッドシリーズ:指板は現代的な仕様に
弾き心地で最も違いが分かるポイントは指板で、いずれもクラシカルな21フレット仕様ですが、MJTは丸い指板に細く小さめのフレットというまさにトラディショナルな仕様、MJHは扁平な指板にやや大きめのフレットが打ち込まれるという現代的な仕様が採用されています。またネック塗装に違いが出ましたが、MJHで使用される「サテン」仕上げとはいわゆるサラサラ仕上げのことで、メキシコ製やアメリカ製のギターのほとんどで取り入れられています。
ハイブリッドシリーズ:サウンドバリエーションが増える「4Wayセレクタスイッチ」
MJHに採用されている「4Wayセレクタスイッチ」は、近年のモダンスタイルにおいて存在感を発揮している仕様です。各ピックアップ単体、両ピックアップのミックス(並列)という標準的なセッティングに加え、両ピックアップのミックス(直列)が選択できます。「直列」はいわゆるハムバッカーと同じ原理で、出力を倍化することができます。
テレキャスターはブリッジのサドルにも年式の違いが表れ、好きな人にとっては大いにこだわるポイントになっています。MJTでは各年式に従った仕様となっていますが、昨今の流行ではブラス製の三連サドルが好まれることから、MJHでは年式を問わずブラス製三連サドルが採用されています。
備考:Fender公式サイトではほとんどのJEテレキャスターのペグが、ロトマチック(グローバータイプ)を意味する「Cast/Sealed」と表示されていますが、実際にはクルーソンタイプ(ヴィンテージ・スタイル)のものも多く含まれています。ペグにこだわりを持ちたい人は、確認を取っておくといいでしょう。
他シリーズとの比較検証
では、日本製テレキャスターはフェンダー系ラインナップの中でどのような立ち位置にあるのでしょうか。他のシリーズのテレキャスターと比べてみましょう。
1)価格の近いものとの比較
まずは、MJTのテレキャスターをメキシコ製フェンダー・テレキャスター「スタンダード・テレキャスター」と比較してみましょう。価格はかなり接近していますが、どのようなところが同じで、またどんなところに違いが出るのでしょうか。
【上】Made in Japan Traditional 50s Telecaster (¥81,000)
【下】Standard Telecaaster(¥79,200)
※価格は2017年12月時点
モデル名 | Made in Japan Traditional (MJT) 50s Telecaster | Standard Telecaster |
生産地 | 日本 | メキシコ |
ボディ仕様 | バスウッドボディ、カラーは4色 | アルダーボディ、カラーは6色 |
ネック仕様 | 「U」シェイプグリップ ポリエステル塗装 7.25インチ指板R ヴィンテージ・スタイルフレット ナット幅42mm |
モダン”C”グリップ サテン・ウレタン塗装 9.5インチ指板R ミディアムジャンボフレット ナット幅42mm |
トラスロッド | ネックエンド側から調節 | ヘッド側から調節 |
ピックアップ | Vintage-Style Single-Coil Tele フロントピックアップの高さはピックガードを外して調整 |
Standard Single-Coil Tele フロントピックアップの高さはピックガードを外さずに調整できる |
ブリッジ | ブラス製バレルサドル ヴィンテージスタイルのブリッジプレート |
6連ブロックサドル モダンスタイルのブリッジプレート |
ペグ | ヴィンテージ・スタイル | ロトマチックタイプ |
表:二つのテレキャスター比較
ネックとブリッジの仕様が全く異なっていますね。MJTは伝統的スタイルを標榜するだけある仕様、対するStandard Telecasterは現代的な仕様となっていますが、これは仕様上の違いであってグレードの差ではありません。ネック裏のサテンフィニッシュについては、サラサラの感触によりスムーズな弾き心地になるメリットがあります。グレードの差として表れているのはボディ材で、MJTはバスウッド、Standard Telecasterはアルダーを選択しています。バスウッドよりアルダーがグレードで勝ります。フェンダーでは「日本製」であることの信頼性が一つのブランド価値とみなされており、同程度の価格ならメキシコ製の方がわずかにグレードの高い仕様になる傾向にあります。
アルカラ – 水曜日のマネキンは笑う
アルカラのヴォーカリスト稲村太佑氏のトレードマークは首にかけたタンバリンと60年代スタイルのテレキャスターカスタムです。ボーカリストがテレキャスターを構えているだけで、「あ、このバンドは歯切れのよいサウンドを出そうとしているんだな」と感じてしまうのが不思議です。
2)仕様が近いモデルとの比較
では次に、MJHと「CLASSIC PLAYER BAJA ’60S TELECASTER」とを比較してみましょう。
【上】Made in Japan Hybrid 60s Telecaster(¥103,500)
【下】CLASSIC PLAYER BAJA ’60S TELECASTER(¥142,000)
※価格は2017年12月時点
「BAJA」はマスタービルダーであるクリス・フレミング氏が設計した、クラシカルなスタイルに現代的な機能を持たせた特別なテレキャスターです。フレミング氏はMJT/MJHの開発にも携わっていますから、両機は同じ親から生まれた、同じコンセプトのギターだということができます。
モデル名 | Made in Japan Hybrid 60s Telecaster | CLASSIC PLAYER BAJA ’60S TELECASTER |
生産地 | 日本 | フェンダー・エンセナダ工場 |
ボディ仕様 | アルダーボディ ポリエステル塗装 カラーは9タイプ |
アルダーボディ グロス・ポリエステル塗装 フェイデッド・ソニックブルー |
ネック仕様 | 「U」シェイプグリップ サテン・ポチウレタン塗装 ローズウッド指板 250mm指板R ミディアムジャンボフレット フレット数21 ナット幅42mm |
「’60s C」シェイプネックグリップ
グロス・ポリウレタン塗装 パーフェロー指板 241mm指板R ミディアムジャンボフレット フレット数21 ナット幅42mm |
ピックアップ | フロント、リア共に「American Vintage ’58」 | フロント「American Vintage ’52」 リア「American Vintage ’58」 |
操作系 | 4Way セレクタスイッチ、1V1T | 4Way セレクタスイッチ、1V1T(ボリュームポットのS-1スイッチで、フェイズサウンドが出せる) |
ブリッジ仕様 | アメリカン・ヴィンテージのブリッジに、ブラス製三連サドル。高さを調節するイモネジは、6角レンチで回す | アメリカン・ヴィンテージのブリッジに、ブラス製三連サドル。高さを調節するイモネジは、マイナスドライバーで回す |
ペグ | ヴィンテージスタイル・ロッキングチューナー | ヴィンテージスタイル |
表:同じ親から生まれたテレキャスター比較
価格に約1.5倍という大きな差がありながら、スペックリストを見比べる上ではそれほど差がないようにも見える比較ですね。カラーとネック寸法が違っていることからフィーリング的にどっちが好きかが分かれるかもしれませんが、グレード的にそれほど差があるようには見えません。両機とも4Wayセレクタスイッチを使用し、両ピックアップの直列/並列のサウンドを出すことができ、「BAJA」ではチャリチャリとした独特のフェイズサウンドも出すことができます。昨今のローズウッド規制に伴い、メキシコ製のギターでは指板にパーフェローが使用されるようになりました。ローズウッドが使いにくくなったことからの切り替えではありますが、パーフェロー材はローズウッド材よりも高価であり、グレード的には上がったと見ることができます。
両機はおおむね同種の木材と塗装で、ほぼ同じピックアップを備えています。これを弾き比べたら、日本製とMEXの違いを感じることができるかもしれませんが、同じ「フェンダー」ですから、反対に全く分からないかもしれません。「日本製は作りが良い」と言うけど実際のところ海外製品とどれくらい違うのか、お店で見かけたらぜひ弾き比べてみてください。メイドイン・ジャパンの名は伊達じゃないと思うかもしれませんが、メキシコ人の仕事も決して負けていないと感じるかもしれません。
ギター博士がフェンダー・ジャパン・テレキャスターを弾いてみた!
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使用機材
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六弦かなで「テレキャスターの音って、凄くロックだね!けど博士、冒頭の桃のくだりは何なの?」
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音作り
0:35〜1:02 コンプレッサー「TC Electronic HYPERGRAVITY COMPRESSOR」を使用、ルーパー「TC Electronic Ditto Looper」を使ってフレーズをループさせています。
1:03〜 歪みは「CMATMODS Butah」、ディレイは「TC Electronic Alter Ego 2」を使用。
2:05〜 歪みは「Electro Harmonix Crayon」、リバーブは「DigiTech Supernatural Ambient Verb」を使用
3:12〜 クリーントーンにリバーブ「DigiTech Supernatural Ambient Verb」、ディレイ「TC Electronic Alter Ego 2」を使用。
4:40〜 歪みは「Suhr Riot」、ディレイは「BOSS DD-500」を使用。
Fender Japan Exclusive Classic 60s Telecaster Custom
ギター博士が弾いたのは「Classic 60s Telecaster Custom」で、カラーリングはCandy Apple Red。
- ボディ材:アルダー
- ボディ塗装:ポリウレタン
- ネック材:メイプル
- ネックシェイプ:Slim C
- 指板:ローズウッド
- フレット数:21
- スケール長:25.5″ (648 mm)
- ピックアップ:Vintage-Style Single-Coil Tele x2基
- コントロール:Master Volume, Master Tone
- ブリッジ:3-Saddle Vintage-Style Strings-Through-Body Tele with Brass Barrel Saddles
- チューニング:Gotoh Cast/Sealed
- ハードウェア:クロム
- 弦:出荷時009-.042(ギター博士は010- .046のレギュラーに張り替えています)


ギター博士から一言
テレキャスターといえば、アッシュボディにメイプルワンピースネックをイメージする人も多いかもしれんが、ワシが演奏したこの「Classic 60s Telecaster Custom」は、アルダーボディにメイプルネック、ローズウッド指板の60年代customモデルを意識したスペックになっておる。テレキャスターならではの乾いたサウンドは持ちつつ、少し中域の色気がある音色だと感じたゾイ!
リアはガランとした弦鳴りを感じるサウンドにヂーンとノイジーな高域が個性的で、フロントはソリッドじゃが太く、適度な空気感もあり、幅広い音色に対応出来るとワシは感じておるんぢゃ!
ハードな歪みでは少しノイズが目立つかもしれんが、クランチや飽和感のあるクリーンでの弾けるようなプレイがワシは気に入っておるかのう!
ボディにバインディングもあるため、高級感のあるルックスになっておるゾイ!
Classic 60s Tele Customを…
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日本製テレキャスターのラインナップ
ではここから、MJT/MJH/JEのテレキャスターそれぞれをチェックしていきましょう。MJTはこれまでフェンダー・ジャパン/ジャパン・エクスクルーシブでリリースしていたモデルを引き継ぎながらもラインナップを整理し、またマイナーチェンジを施しています。MJHは現代的な要素を取り入れたニューモデルですが、価格的にMJTと大きな差はなく、グレードというよりはコンセプトの違いが表れているギターとなっています。

テレキャスターの売れ筋を…
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- カテゴリ: テレキャスター , タグ: ギター博士が弾いてみた, 特集記事
[記事公開]2017年12月1日 , [最終更新日]2018/04/04