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《現代的ヴィンテージ・スタイル》Fender American Original Telecaster

フェンダー・アメリカンオリジナル・テレキャスター

2018年に発表された「アメリカンオリジナル」シリーズは、これまでフェンダーの人気シリーズだった「アメリカン・ヴィンテージ」に取って代わった新しいヴィンテージ・モデルです。ヴィンテージ市場で高人気なスタイルを継承しつつ、現代的な演奏性を持っているということで、「名演を支えたあのギターと同じ感じで、なおかつ弾きやすい」ギターとして話題となっています。今回はその中から、「アメリカン・オリジナル・テレキャスター」に注目していきましょう。


Jaleel Bunton Demos The ’50s Telecaster® | American Original Series | Fender
現代的な弾きやすさがありながら、古き良きフェンダーの音が得られる、50~60年代のギターサウンドを聴いて育った現在のギタリストにとって、とてもありがたいギターです。なお、この動画に出演しているJaleel Bunton氏、ストラップの取り付け方は「前後逆」になっていますが、これは「本来の付け方をすると、ストラップのブランドロゴが見えてしまう」というところに配慮したものと考えられます。

新シリーズ「アメリカンオリジナル」とは?

前身となるアメリカンヴィンテージ・シリーズは、1952年、1964年といった特定の「年式」のヴィンテージギターを、マニアが「ニヤっ」とするレベルで再現していました。これに対して、新たに発表されたアメリカンオリジナル・シリーズは、再現を1950年代、1960年代といったざっくりとした「年代」にとどめ、これに現代的な演奏性を付加しています。音楽の歴史を支えてきた由緒あるスタイルでありながら、現代的な感覚で弾きやすいと感じるギターとなっているわけです。

とはいえ、

  • アメリカンヴィンテージゆずりの高品位なパーツ群
  • 下地からニトロセルロースラッカー塗装

という仕様からは、アメリカンオリジナルが「高品位なヴィンテージ・モデル」であることに深いこだわりを持っていることがわかります。

最大の特徴は指板にある!

American Original 50s Telecasterの指板 American Original ’50s Telecasterの指板

アメリカンオリジナル・シリーズ最大の特徴は、指板仕様の変更です。

Vintage(旧) Original(新)
指板R R7.25インチ(184mm) 9.5インチ(241mm)
フレット ヴィンテージ・スタイル ヴィンテージ・トール

表:新旧ヴィンテージ・スタイルの指板仕様比較

「指板R7.25インチ」は、見るからに丸さが分かる、フェンダーの伝統的な設計です。いっぽう「指板R9.5インチ」はなかなかに平たいものの、真っ平らというほどではないくらいです。指板Rの値が大きいほど指板は平らになり、チョーキングがしやすくなったり低弦高なセッティングに追い込みやすくなっています。

ヴィンテージ・スタイルのフレットは「細く、低い」のが特徴ですが、この高さを上げたのが「ヴィンテージ・トール」フレットです。高いフレットは、押弦に必要な圧力を軽減でき、チョーキングなど左手技に有利になります。

アメリカン・ヴィンテージに比べ少し安くなった

価格も見直され、アメリカンヴィンテージでは30万円近辺だったのが、アメリカンオリジナルでは25万円近辺に抑えられています。この価格はアメリカン・エリート・テレキャスターとほぼ同じとなっており、グレードの高低ではなく性能やスタイル、サウンドで選べるようになっています。


Fender American Original ’50s Telecaster Review
リアでは乾いたパリパリ感、フロントでは太く甘い、誰もが納得しうる「いかにも」なサウンドですね。

アメリカンオリジナル・テレキャスターのラインナップ

ではさっそく、アメリカンオリジナル・シリーズのテレキャスターをチェックしていきましょう。現在リリースされているのは、1950年代をイメージした「’50s」、1960年代をイメージした「’60S」の2タイプとなっています。

AMERICAN ORIGINAL 50s TELECASTER:ヘッド AMERICAN ORIGINAL 50s TELECASTERのヘッド部分

AMERICAN ORIGINAL 60s TELECASTER:ヘッド AMERICAN ORIGINAL 60s TELECASTERのヘッド部分

AMERICAN ORIGINAL ’50S TELECASTER

AMERICAN ORIGINAL 50S TELECASTER


Fender American Original ’50s Telecaster Electric Guitar
シンプルな構造、その時代に流行していたカントリーミュージックにフィットするパリっとしたサウンド。多くの名手が弾き倒した「武骨なテレキャスター」が現代によみがえった感じです。

1950年代をイメージした「’50S」テレキャスターは、アメリカンヴィンテージにおける「’52テレキャスター」を継承したスタイルとなっています。カラーは「バタースコッチブロンド(イエロー)」一択ですが、お値段据え置きで左用もリリースされています。

この年代のテレキャスターは、一枚板のピックガードを5つのネジで留める、シンプルかつスッキリしたルックスが大きな特徴です。

1)50年代と言えばコレでしょ、という木材構成

AMERICAN ORIGINAL 50S TELECASTER:ボディ

「’50S」テレキャスターの木部は、

  • アッシュボディ
  • メイプル1Pネック(指板と一体)

というまさに定番の仕様です。ボディ/ネックともにニトロセルロースラッカー塗装が施され、オーナーと共に時間を過ごすことで変化を遂げていきます。アメリカンオリジナルやアメリカンエリートでは、やはりグレードの高い木材が振り分けられていると見られており、木部の振動を邪魔しにくい極薄のラッカーと相まって、豊かな生鳴りが得られます。

なお、採用されている「1952 “U”」ネックシェイプはアメリカンヴィンテージ’52テレキャスターで採用されていた「Uシェイプ」に類する、しっかりとした厚みを感じることのできるものです。

2)ヴィンテージそのまんまのパーツ群

AMERICAN ORIGINAL 50S TELECASTER:ペグ ペグももちろんビンテージ・スタイル

「アメリカンヴィンテージ」はギターのシリーズ名のほかに、パーツのシリーズ名としても使われていました。アメリカンオリジナル新設に伴い、ヴィンテージ系パーツのシリーズ名は「ピュア・ヴィンテージ」に改められました。

「’50S」テレキャスターに備わっている「ピュア・ヴィンテージ’52シングルコイル」は、アメリカンヴィンテージに備わっていた「アメリカンヴィンテージ’52シングルコイル」と同じものだと見られます。50年代の製造機器や工具を使い、同じ材料で作られる、まさにヴィンテージギターと同じピックアップです。

金属部品についてもピュア・ヴィンテージのものが採用されており、この年代特有の

  • ブラス製サドル
  • ドームノブ(上面が盛り上がっているコントロールノブ)

なども、しっかり採り入れられています。それに加え、部品をマウントするネジがどれも「マイナスネジ」になっています。マイナスネジは電動工具で締められず、手で回します。職人さんの悲鳴が聞こえてくるようですが、製造工程の合理性を損なってまで、ココは再現したかったわけです。「雰囲気の再現」とはいえ、譲れないポイントはしっかりと押さえておく、というフェンダーの気合いが伝わってくるようです。


Fender American Original ’50s Telecaster
パリパリ感がありながらも、中低域の存在感が十分あるサウンドになっています。

3)MEXテレキャスターと比べてみた

ここでひとつ、下位モデルとの比較を試みてみましょう。

  • USA:アメリカンオリジナル’50Sテレキャスター:¥ 244,800 (税抜)
  • MEX:クラシックシリーズ’50Sテレキャスター・ラッカー:¥ 140,000 (税抜)

AMERICAN ORIGINAL 50s Telecaster vs classic 50s Telecaster

「MEX」と表示した「クラシック’50s」は、メキシコにあるエンセナダ工場で作られる普及価格帯のギター(いわゆるフェンダー・メキシコ)の中でも、ハードケースまで同梱される上位グレードのモデルです。それでもアメリカンオリジナルと比べると10万円くらいの価格差ができていますが、この2モデルの仕様を見比べてみます。
メキシコ製フェンダー・テレキャスター徹底分析!

【USA】アメリカンオリジナル’50S 【MEX】クラシック’50s
ボディ材 アッシュ 同左
カラーリング バタースコッチブロンドのみ 2カラーサンバーストのみ
ネック材 メイプル 同左
ネックシェイプ 1952″U” Cシェイプ
指板材 メイプル 同左
指板R 9.5″ (241 mm) 7.25″ (184.1 mm)
フレット ヴィンテージ・トール ヴィンテージ・スタイル
ボディ&ネック塗装 グロス・ニトロセルロースラッカー塗装 同左
ナット 牛骨 人工骨
ピックアップ ピュア・ヴィンテージ’52 ヴィンテージ・スタイル
ブリッジ/サドル ヴィンテージ・スタイル/ブラスサドル アメリカンヴィンテージ/クロームサドル

表:50年代テレキャスター、USAとMEX比較

これを見比べると、木材構成と塗装は同じで、MEXでは伝統的な丸い指板と小さめのフレットが採用されていることが分かります。ネックグリップにも違いがありますから、同じ年代を意識したものとはいえ弾き心地にはかなり目立った違いがあるようです。

ピックアップには大きな違いがあり、MEXの「ヴィンテージ・スタイル」もこの年代を意識したものですが、USAに採用の「ピュア・ヴィンテージ」は50年代当時のレシピ通りに作った、「理論上はヴィンテージギターと同一」のピックアップなので、それだけ価値が高いと考えられます。反面、ブリッジでは仕様に違いがありながらも、グレードは拮抗しているようです。

USA対MEXでは「USAの方が木材のグレードが高い」と言われていますから、10万円という価格差は、木材の材費とピックアップのグレード、さらにはメキシコの人件費といったところから出ているのだと考えられます。

MEXで採用されている「丸みのある指板Rと小さめフレット」という仕様は、USAでは見られなくなりました。古いスタイルの弾き心地が欲しいという人は、MEXの普及価格帯もしくはフェンダーの最上位「FCS(フェンダー・カスタムショップ)」製から検討する必要があります。

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AMERICAN ORIGINAL ’60S TELECASTER

AMERICAN ORIGINAL 60S TELECASTER


Fender American Original ’60s Telecaster Electric Guitar
60年代特有の木材構成とこの時代に合わせたピックアップにより、50年代よりいくぶんマイルドな、また粘りを感じさせるサウンドが得られます。バインディングによるエレガントな外観も大きな魅力ですね。

60年代をイメージした「’60S」テレキャスターは、ボディの表裏にバインディングを施した、いわゆる「60sテレキャスター・カスタム」を再現しており、ヘッドには「Custom Telecaster」と表示されます。経年変化で歪みを生じない3層ピックガードと相まって、キリっとした顔つきになっています。

1) 現代版に通じる定番の木材構成

AMERICAN ORIGINAL 60S TELECASTER:ネック

「’60S」テレキャスターの木部は、

  • バインディングを施したアルダーボディ
  • ローズウッドを「ラウンド貼り」したメイプルネック

という構成です。ネックの曲面に合わせた曲面の指板を貼る「ラウンド貼り」こそ、この時代の大きな特徴です。また、アルダーボディ、メイプルネック、ローズ指板という木材構成は、「現代的なテレキャスターの定番」として広く愛されています。ボディカラーは、3カラーサンバースト、フェスタレッド、レイクプラシッドブルーの3つから選べますが、左用はありません。

2)やはりアメリカンヴィンテージを踏襲したパーツ群

AMERICAN ORIGINAL 60S TELECASTER:ボディ

搭載されているピックアップ「ピュア・ヴィンテージ’64 グレイボトム・シングルコイル」は、やはり「アメリカンヴィンテージ’64テレキャスター」に採用されていたものを継承しています。この時代のピックアップは、ロックが盛り上がってきた流行に合わせ、高音域が豊かに響くクリアなサウンドになるように設計されていると伝えられます。

金属部品もこの時代を反映しており、

  • 鉄製のバレルサドル
  • フラットノブ(上面が平らなコントロールノブ)
  • ハットノブ(帽子のような形をしたセレクタースイッチのノブ)

といったところがしっかり再現されています。


Fender American Original ’60s Telecaster
60年代のテレキャスターは、マイルドな雰囲気がありながらも、高域が気持ちよく響くサウンドを目指しています。

3)アメリカンエリートと比べてみた

上:American Original ’60s Telecaster
下:American Elite Telecaster

60年代では、トラッドな雰囲気をしっかり残している「’60S」と、最強最新鋭のアメリカンエリート・テレキャスターを比べてみましょう。両機は「価格にほとんど差の無い、同じグレードのギター」として扱われています。また、この比較は「約半世紀で、テレキャスターはどんな変身を遂げたのか」といことも類推できます。

AMERICAN ORIGINAL ’60S TELECASTER AMERICAN ELITE TELECASTER
ボディ 表裏バインディングのアルダーボディ(コンターなし)。カラバリ3色 表面にバインディング、背面にコンター加工を施したアルダーボディ。カラバリ6色
ネック Cシェイプのメイプルネック。存在感のあるヒール部。 CからDへと変化するメイプルネック。ヒールカットによってハイポジションも弾きやすい
トラスロッド ネックを外して調整 ネックを外さずとも調整できる
指板 ラウンド貼りのローズウッド指板で、平ら気味の指板R。フレットはヴィンテージトール。 フラット張りで、指板材はエボニーとメイプルから選択。高音に行くに従って平らになっていく指板R。フレットはミディアムジャンボ。
ナット幅 1.650″ (42 mm) 1.685″ (42.8 mm)
フレット数 21 22
ボディ&ネック塗装 ニトロセルロースラッカー塗装 硬質な極薄ウレタン塗装
ピックアップ 964年式を完全再現 第4世代ノイズレス。サウンドはヴィンテージ系
電気系 伝統的なシンプル設計 音質とサウンドバリエーションを増強した特殊配線
ブリッジ 3連スチールサドル ブラス製。6連サドルはオクターブ調整に有利

表:アメリカンオリジナルVSアメリカンエリートの仕様比較

こうして並べてみると、「半世紀を経たテレキャスターの進化が、いかほどのものなのか」ということが分かりますね。演奏性、音域、サウンドバリエーション、調整のしやすさ、ピッチの正確さなど、あらゆるパラメーターでアメリカンエリートが上回っているように見えます。

しかしそれでいてなお、「シンプルかつ伝統的な設計のテレキャスターには、それに劣らない厚い支持がある」ということもまた事実です。どう考えても設計が複雑でパーツ点数の多いアメリカンエリートが、比較的シンプルな設計のアメリカンオリジナルと同程度の価格に甘んじている、というところからもそれがうかがえます。

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以上、フェンダーの提案する新しいヴィンテージ・スタイル、アメリカンオリジナルのテレキャスターを見ていきました。「年代の雰囲気を再現」というと、再現度としては控え目なイメージです。しかし実際にはヴィンテージギターと全く変わらないピックアップを備え、当時の面影をしっかり再現しつつ、さらには現代のプレイヤーにとって弾きやすいギターになっているという、まさに「フェンダーだからこそ、作ることのできたギター」になっているわけです。ショップで見かけたら、ぜひ実際にチェックしてみてください。