《業務用定番機》Fender American Professional II Telecaster

[記事公開日]2021/8/3 [最終更新日]2021/8/4
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

Fender American Professional II Telecaster American Professional II Telecaster (Dark Night)

「テレキャスター」は、現代における「エレキギターの元祖」と呼んでもよいギターです。世に数多くのテレキャスター・タイプのギターがあれど、ずばり「テレキャスター」を名乗ることができるのは、これを開発したフェンダー、また姉妹ブランドのスクワイアのテレキャスターだけです。

フェンダー「アメリカン・プロフェッショナルIIテレキャスター」はフェンダーの本社工場で生産される上位機種で、テレキャスターとしてのルックスと音色、そして現代の音楽で活躍できるさまざまな新機能を備えています。今回は、このアメリカン・プロフェッショナルIIテレキャスターに注目していきましょう。


The Clash – Complete Control (Official Video)
ザ・クラッシュのボーカリスト、ジョー・ストラマー氏はサンバーストの上から黒く塗りつぶしたテレキャスターを愛用し、「テレキャスターは歌う人が持つもの」というイメージを一般化したと言われています。氏のハードなストロークは、ボディのエルボー部分を削ってしまうほどでした。氏の「ストラマー」という名は、「strum(かき鳴らす)」に由来しています。

「アメリカン・プロフェッショナルIIテレキャスター」とは?

「プロII」は、モダン系上位モデル

American Professional II Telecaster:ボディ (Mercury)

アメリカンプロフェッショナルIIテレキャスターは、フェンダー・テレキャスター全体では「モダンスタイルの上位モデル」という立ち位置です。このテレキャスターやストラトキャスターのように、長い歴史を持つエレキギターは、

  • 現在の音楽で使うことを意識した「モダン(現代的)スタイル」
  • 昔の設計を尊重する「ヴィンテージ(伝統的。トラッドとも、クラシカルとも)スタイル」

このような2種類のスタイルがあり、このどちらにも好きな人がいて、市場からはどちらも求められます。モダンスタイルでは特に3つのポイントで、道具としての性能を向上させています。

  • フロントピックアップ:ピックガードを付けたままで高さの調節ができる。
  • ペグ:堅牢なダイキャスト・ペグが使われ、ロック機構など追加機能もありえる。
  • ブリッジ:6連サドル、もしくはオクターブ調整の問題を解決させた改良型3連サドルが採用される。

アメリカンプロフェッショナルIIテレキャスターは、この全てに該当した完全モダン仕様です。また、新しい部品や機能が積極的に投入されることから、続くアメリカン・パフォーマー・シリーズの上位グレードという扱いです。


American Professional II Telecaster | American Professional II Series | Fender
装いも新しくなったアメプロ「II」テレキャスターは、サウンドバリエーションが増強されて守備範囲を拡大しました。

「アメリカン・プロフェッショナルII」の特徴

「アメリカンプロフェッショナルII・テレキャスター」は、

  • オーソドックスなスタイルの「American Professional II Telecaster」
  • 2ハムバッカー仕様の「American Professional II Telecaster Deluxe Shawbucker」

という両面でリリースされています。いずれも新しい設計が多く採用されていますが、テレキャスターの長い歴史をリスペクトした、ヴィンテージライクなスタイルにまとめられています。

では、2種類の「アメリカン・プロフェッショナルIIテレキャスター」に共通する仕様を見ていきましょう。「プロフェッショナル」共通仕様は、ストラトやジャガーなど他のモデルでも多く共通しています。

新開発ピックアップ

American Professional II Telecaster:ピックアップ (Sienna Sunburst)

「プロフェッショナル」に搭載されているピックアップは、フェンダー社のピックアップ部門におけるチーフエンジニア、ティム・ショウ氏が設計しています。ティム・ショウ氏はギブソンでヴィンテージ・ピックアップのリイシューに携わった経歴があり、移籍したフェンダー社にはピックアップのエンジニアとして20年以上在にわたって活躍しています。2大メーカーのピックアップ開発で中心的なポジションにいたことから、今や「ピックアップの巨匠」とまで呼ばれています。

シングルコイル・ピックアップ「V-Mod II single-coil Telecaster」は、1~3弦、4~6弦それぞれに異なるマグネットを配置した前作「V-Mod」ピックアップのダイナミクスとトーンをブラッシュアップし、全ポジションで良好なサウンドが得られます。

ハムバッカー・ピックアップ「V-Mod II Double Tap Humbucking」は、フロント/リアの完璧なマッチング、そしてコイルタップ時の美しいシングルコイル・サウンドを達成しています。

「ディープC」グリップを継承

前モデル「プロフェッショナル」で開発された「ディープC」ネックシェイプが、引き続き採用されています。「C」や「モダンC」と比べると厚みと丸みが増しており、「カマボコ」と称される「U」の中間を行くグリップとなっています。細ければ弾きやすい、薄ければ弾きやすい、という流行を見直すシェイピングになっていますが、コードを押さえたりチョーキングをしたりする際、ネックにはある程度の太さがあった方がストレスは少ない、という人間工学に基づいた設計です。ネックの体積が増すことから、剛性や音響性能も向上します。

指板エッジはていねいに処理され、新品で買ったその日から全力で演奏できます。ネック裏塗装は「スーパーナチュラル・サテンウルトラフィニッシュ」が採用され、サラサラすぎずしっとり過ぎず、自然な握り心地です。

「ナロー・トール」フレットを継承

American Professional II Telecaster:ヘッド

前モデル「プロフェッショナル」で初めて採用された「ナロー・トール」フレットも、引き続き採用です。標準仕様「ミディアムジャンボ」と比べると幅が狭く(narrow)、背の高い(tall)もので、ヴィンテージライクなフィーリングを残しながらチョーキングしやすい設計です。

ヘッド側から調節するトラスロッドは「Bi-Flex(バイフレックス)」で、順ぞり/逆ぞり両方向への調整が可能です。またネックジョイント部には「マイクロティルト」が仕込まれており、ネックの仕込み角度を調節することができます。


Fender American Professional Telecaster
1分10秒辺りで、ミディアムジャンボフレットと新開発ナロートールフレットを並べた画像を見ることができます。

ハイポジ余裕のネックヒール

American Professional II Telecaster:ネック

「ニュー・スカルプト・ネックヒール(New Sculpted Neck Heel)」は、IIで初採用です。ネックヒールのカドを曲線的にカットすることで、ハイポジション演奏時のストレスを大幅に軽減します。他社の大胆なヒールカットと比べてかなり控え目な印象ですが、サウンドの「コシ」を残すため最小限の加工に留めているわけです。

トレブル・ブリード回路

ボリュームポットには、「トレブル・ブリード」回路が仕込まれています。本来ならば、ボリュームを絞っていくと高音域が削れた甘いトーンになる半面、音抜けが悪くなってしまいます。トレブル・ブリード回路はこの傾向を改善し、ボリュームを絞ったときの音色に高音域を残させることで、抜けの良いサウンドを作っています。

テレキャスターではシャキッとした音が欲しいこともあり、

  • 抵抗値の高い可変抵抗(抵抗Ωが上がると高音が引き立つ)
  • ハイパスフィルター(ボリュームを絞っても高音域は残る)

という回路になっているのが伝統でした。新開発のトレブル・ブリード回路は、これに代わる新しい方式で、耳に痛いチャリチャリとまではいかない、音楽的なトーンを得ることができます。ギター本体に搭載されるピックアップとのマッチングも十分に考慮する、という気合の入り方です。


2017 Fender American Professional Telecaster Deluxe Shawbucker
1分20秒あたりで、トレブル・ブリード回路のかかり具合を確認することができます。ボリュームを絞った音も、甘くなりすぎずスッキリとした印象です。

特徴的なペグ

American Professional II Telecaster:ペグ

ペグには堅牢な「ロトマチック・ペグ」が採用されていますが、ストリング・ポスト(軸)がポジションごとに適正な高さになっており(スタガード・ストリング・ポスト)、弦の張力が良好に整えられています。

「アメリカン・プロフェッショナルII」のラインナップ

では次に、「アメリカン・プロフェッショナルII」2機種をチェックしてみましょう。

American Professional Telecaster II

American Professional Telecaster II 3-Color Sunburst。他、全10色の豊富なカラーラインナップが用意されている

「アメリカン・プロフェッショナルIIテレキャスター」は、エレキギターの歴史を築いてきたテレキャスターを徹底して再検証し、改良できるところは改良し、改良が不要なところはそのまま残して仕上げたギターです。フェンダーならではの歯切れがよく、クリアで、なおヴィンテージ的な温かさのあるサウンドが持ち味ですが、出力も十分に確保しています。

また、トーンポットに拡張機能「シリ/パラ切替スイッチ」が採用されています。これはフロント/リアのミックスを、ノーマルな並列(パラレル)とスペシャルな直列(シリアル)から選択できます。ポットのスイッチはプッシュ/プッシュ式で、押すごとに切り替えできます。

ブラス製3連サドル

伝統的なブラス製3連サドルが採用されていますが、オクターブ・チューニングが合うようにポジションごとに加工されており、ピッチが甘くなりがちという3連サドルの弱点をしっかり克服しています。

American Professional Telecasterを…
Aアマゾンで探す R楽天で探す Sサウンドハウスで探す YYahoo!ショッピングで探す 石橋楽器で探す

American Professional II Telecaster Deluxe

American Professional II Telecaster Deluxe

「アメリカン・プロフェッショナルIIテレキャスター・デラックス」は長い名前ですが、1973年に発表された「テレキャスター・デラックス」の雰囲気をそのまま残しながら、現代的なアレンジが施されています。パワフルなHH配列に、背面にはコンター加工が施されており、ステージで暴れ回っても脇腹が痛くならない、ロックギタリストにぴったりのテレキャスターとなっています。

コンター加工 コンター加工の様子

「V-Mod II Double Tap」ハムバッカーは、ワイドレンジ・ハムバッカーに寄せたルックス通り、タイトなハムバッカーサウンドを持ち味としています。シングルコイルと比べると高出力ですが、パワーにものを言わせるほどのものではなく、「キレ」で勝負するタイプのピックアップです。フロント/リアそれぞれのトーンポットには、各ピックアップそれぞれのコイルタップ起動スイッチが仕込まれています。ポットのスイッチはプッシュ/プッシュ式で、押すごとに切り替えできます。

ブリッジは「IIテレキャスター」同様に、ブラス製3連サドルを採用しています。オクターブ・チューニングが合うようにポジションごとに加工されているため、正確なピッチが得られます。

American Professional Telecaster Deluxeを…
Aアマゾンで探す R楽天で探す Sサウンドハウスで探す YYahoo!ショッピングで探す 石橋楽器で探す

※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。