ギブソン・レスポール・カスタム徹底分析!

[記事公開日]2022/7/30 [最終更新日]2024/8/22
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

ギブソン・レスポール・カスタム

「ギブソン・レスポール・カスタム(Les Paul Custom)」は、「タキシードに似合うギター」をコンセプトに

  • 精悍なグロス(つやのある)ブラックのカラーリング(現在ではホワイト、サンバーストなども)
  • 高級感を演出する多層バインディング、ゴールドパーツ、白蝶貝(マザー・オブ・パール)のポジションマーク、ヘッドインレイ
  • 銘木であるエボニー(黒檀)を指板に採用

というドレスアップを施した特別仕様モデルです。
フォーマルな高級感と裏腹に派手な、また硬派なイメージもあり、ロック系のギタリストに特に愛用されています。今回は、このレスポール・カスタムに注目していきましょう。

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1: レスポール・カスタムの特徴 1.1: 「ブラック・ビューティー」 1.2: 「ブラック」へのこだわり 1.3: 高級感を演出する意匠 1.4: マホガニー1Pボディ、エボニー指板という木材構成 2: レスポール・カスタムのラインナップ 2.1: Les Paul Custom W/ Ebony Fingerboard Gloss 2.2: Les Paul Axcess Custom 2.3: 1957 Les Paul Custom Reissue 2.4: 1968 Les Paul Custom Reissue 3: 《資料編》レスポール・カスタムの歩み 3.1: 1954年モデル 3.2: 1957年モデル 3.3: 1968年/1969年モデル 3.4: 1970年代 3.5: 1980年代以降

レスポール・カスタムの特徴

「ブラック・ビューティー」

gibson-lespaul-custom

黒いレスポール・カスタムには「ブラック・ビューティー」という愛称が付けられています。これは本来、トーン回路に搭載されていたコンデンサ(キャパシター)であるスプラグ社製「160P 0.47μF/400v」、通称「ブラック・ビューティー」が由来です。しかし1954年に発表された当時のカラーリングは艶のあるブラックのみであり、漆黒のエボニー指板、深く滑らかなアーチを描くボディ・トップの美しさのもあいまって、今ではこの楽器自体に相応しいニックネームだとして定着しています。

コンデンサ「ブラック・ビューティー」のサウンド

このコンデンサ「ブラックビューティー」には中低域がブーミーにアウトプットされる特性があり、現代でも高価ながら新品が手に入ります。またこれを忠実に再現したコピーモデルも生産されています。カスタムに限らずギブソンギターのトーン回路はポット(可変抵抗)の前段にコンデンサが配置されていますが、ポットの後段にコンデンサが配置されているフェンダーよりも、コンデンサの影響がサウンドに反映されます。コンデンサに何をセレクトし、どう配置するのかは、エレキギターの開発/改造においてマニアックながら重要なポイントになっています。


「ブラック」へのこだわり

レスポール・カスタム・レフティ

ピックガードが外されたレスポール・カスタムのレフティ。漆黒のエボニー指板材だ。
  • レスポール・カスタム・レフティ
  • レスポール・カスタム・ヘッド
  • レスポール・カスタム・ブリッジ部分
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エレキギターにおけるボディトップの高級感というと「メイプルやアッシュなどの模様の美しい木目」や「スプルースなどの真っすぐで均一な木目」を連想するのが現代の感覚です。しかしながらピアノに代表される、全面「艶のあるブラック」もスタイリッシュな高級感を醸し出す要素であり、それゆえ当初のレスポール・カスタムは黒一色でした。もちろんマホガニーの木目に高級感を感じないというのも理由の一つではありますが、後から開発されたメイプルトップの仕様であっても、美しいフレイムメイプルを塗りつぶしてしまうことがありました。

1968年以降のモデルではブラックに対するホワイト、メイプルトップを活かしたサンバーストなどカラーリングが多様化します。ランディ・ローズ氏がトレードマークにしたホワイトなど人気がありますが、今なおレスポール・カスタムといえばブラックという印象が強いようです。


X Japan – I.V. (official music video) HD
X Japan所属の名手PATA氏はデビュー以来、一貫してレスポールにこだわり続けており、ヴィンテージをステージで使用したこともあります。この楽曲「I.V.」はホラー映画「ソウ4」の主題歌として採用されていますが、亡きHIDE氏の未発表音源をサンプリングして使用することで、5人での演奏を実現させています。この映画「ソウ」シリーズは「痛い表現の限界に挑む」というコンセプトで制作されていると伝えられており、苦手な人には絶対にお勧めできない内容となっています。

高級感を演出する意匠

高級感を演出するためにゴールドトップが採用されたレスポールでしたが、レスポール・カスタムはまた違った高級感を演出するべく開発されました。ボディとヘッドには何層ものバインディングが巻かれ、ピックガードまでも多層構造を成しており、ステージ上での存在感が強調されます。金属パーツはゴールドが基本で、ヘッドには「スプリット・ダイアモンド・インレイ」が輝きます。レスポールの「台形」から「長方形」に変更された指板インレイは1フレットから取り付けられ、カラーリングやパーツ交換などでレスポール・スタンダードと見分けが付きにくくなった場合の決め手となっています。これらはギブソンにおけるアーチトップ(フルアコ)最上位機種「スーパー400」の意匠を受け継いだものですが、レスポールの上位機種にこのイメージを投影することで、歴史あるギブソンの高級な雰囲気が演出されています。


20世紀少年 ―第1章― 終わりの始まり
この映画が公開されたことで、T-REXの代表曲「20 Century Boy」が改めて広く知られることとなりました(動画では8秒から)。パワーコード「E」を基調とした印象的なイントロは、初心者が生まれて初めて演奏するロックのフレーズとして最適です。「Get It On」、「20 Century Boy」など数々のヒットで知られるグラムロックの代表「T-REX」のマーク・ボラン氏(1947-1977)のレスポールは厳密にはカスタムではなく、スタンダードのボディにカスタムのネックを差した改造レスポールでした。しかしながら指板のインレイを見ればどう見たってレスポール・カスタムに見えることもあってか、シグネイチャーモデルが「レスポール・カスタム」として生産されたことがあります。

マホガニー1Pボディ、エボニー指板という木材構成

ドレスアップモデルというコンセプトではありましたが、レスポール・カスタムは本体の設計もレスポール・スタンダードとは異なっています。デビュー当時はメイプルを貼らない1Pマホガニー製ボディに1Pマホガニーネックをセットインし、エボニー指板を貼りつけるという木材構成で、レスポール・スタンダードとはちょっと違った音響特性がありました。とはいえ年代によりメイプルトップに変更されたりネック材が3Pになったりと、時代ごとの仕様変更を経ています。現在では「レスポール・スタンダードとの違いはエボニー製の指板のみ」という理解が一般的です。

指板はエボニーからリッチライトへ、そしてまたエボニーへ

エボニーは「濃淡のはっきりした、鋭く澄んだ音色」と言われ、バイオリン属の指板として必須、またフルアコなどでも重宝する指板材です。しかしながら入手がとても困難であり、十分な量を安定的に確保できなくなった時期には「リッチライト」という人工木材が採用されたこともありました。メンテ不要で演奏性、サウンドともにエボニーと区別が全くつかないと言われる材料ではありましたが、現在ではエボニーに回帰しています。現行のレスポール・カスタムは「リッチライト指板じゃないよ!」と主張するかのように、「Ebony」がモデル名に添えられます。


次のページからはいよいよレスポール・カスタムのラインナップについて見ていきましょう。

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