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《進化を遂げたデスクトップアンプ》YAMAHA「THR-II」レビュー!

YAMAHA THR-II

YAMAHA THRシリーズは、「ステージやスタジオ以外でもいつまでも弾いていたくなるようなアンプ」という新しい発想を盛り込んでヒットし、ルックスも音も良い自宅用アンプとして永らく支持されています。初代モデルのリリースから8年を経たTHRは、抜本的なグレードアップが施された「THR-II」として生まれ変わりました。

そんなわけでこのたび、機能やサウンドがさっそく話題となっているTHR-IIシリーズを、ギター博士を中心にサイトスタッフ総出でじろじろとチェックしました。THR-IIシリーズとはどんなアンプなのか、自宅で使える良いギターアンプを探しているという人は、ぜひ参考にしてください。

YAMAHA THR-IIシリーズ:THR30II Wireless / THR10II Wireless / THR10IIレビュー

YAMAHAのデスクトップアンプ「THR」シリーズとは?

2011年に発表された「THR5」および「THR10」は、コンボアンプでもない、スタックアンプでもない第三のアンプ「デスクトップアンプ」という新しいコンセプトで開発された、家庭用小型ギターアンプです。

  • 書斎に置ける、落ち着いたデザイン
  • 自宅練習に充分な機能と、豊富なサウンドバリエーション
  • サイズと裏腹の、良質なサウンドと音量
  • エレキギターはもちろんのこと、ベースにもエレアコにも使える

こうした特徴で人気を博し、その後エレアコ用に特化させた「THR5A」、ハードロックやメタルなどで有用なサウンドにチューンナップした「THR10X」、高級ブティックアンプのサウンドをシミュレートした「THR10C」、ステージ用スタック「THR100H」「THR100HD」および専用キャビネットといったラインナップを展開していきました。

これらの出発点となったTHR5とTHR10は2013年、新技術で音質を改善した「THR5 / THR10 V.2」がアップグレード版としてリリースされました。今回のモデルチェンジでTHR10は「THR10II」に刷新されましたが、コンパクトで使い勝手の良いTHR5とTHR5Aの生産は継続しています。

新登場「THR-IIシリーズ」のおおまかな特徴

THR-IIシリーズ3モデル

今回リリースされたのは、

  • THR30II Wireless:出力30ワット、ワイヤレス対応、充電式バッテリー
  • THR10II Wireless:出力20ワット、ワイヤレス対応、充電式バッテリー
  • THR10II:出力20ワット、ワイヤレス&バッテリー非採用

の3モデルです。アンプモデリング数やエフェクター、Bluetooth対応などは全機種共通で、ワット数、ワイヤレス対応、充電式バッテリーの可否に大きな違いがあります。では、この三機種を代表して「THR30II Wireless」を、まずは浅めにチェックしていきましょう。

生活に溶け込む、落ち着いたたたずまい

YAMAHA THR-IIシリーズ:外観 派手に主張しない、生活の中に溶け込んでくれる落ち着いたデザイン。

YAMAHA THR-IIシリーズ:イルミネーション 影の映り方まで計算したとしか思えない、絶妙にかっこ良いイルミネーション。

THRシリーズは共通して、家具と馴染む落ち着いたデザインが採用されています。質感にこだわったフロントグリル、頑丈な金属製のハンドル、真空管の発光をイメージしたイルミネーションといった「ビンテージ+モダン」な雰囲気は、ギターのある生活を上質に演出してくれます。

シンプルな操作系

THR30II Wireless:コントロール THR30II Wireless

各ツマミは操作に迷いにくい印象です。従来品よりヘッドホン端子(PHONES)が小さくなったことから、「シールドを挿すところを間違える」なんていう間違いも防止されています。

長押しでON / OFF

THR30II Wireless:電源ボタン

THR-IIの電源はギターアンプとしては新しく電子スイッチが採用されており、1秒以上の長押でON / OFFができます。また、充電池が組み込まれており、充電中は電源ランプが緑色に点灯、電源ボタンを短くワンプッシュすると電池残量を確認できます。

「AMP」ツマミでサウンドが激変

アンプ(AMP)ツマミで8種類のアンプタイプ、その隣のスライドスイッチで3種類のアンプモードを選択し(THR30II Wireless以外では専用アプリ「THR Remote」で選択)、「合計24種類」という膨大なアンプモデリングを呼び出すことができます。

ワイヤレスシステム対応

ギターワイヤレス

ふつうのギターアンプの様にシールドを使うこともできますが、Line 6 Relay G10やG10Sユーザーの方は、トランスミッターの互換性があるので別途Relay G10Tを購入せずとも、THR-Ⅱと連携してギターワイヤレス機能が使え、ワイヤレスを利用した開放的な演奏体験を楽しむことが出来ます。

《レビュー》リハやライブに最適!ペダル型ワイヤレス「Line 6 Relay G10S」

便利な機能も簡単操作

チューナーも内蔵しており、チューナーボタン(HOLD TUNER)の長押しで起動できます。また、ユーザーメモリー(USER MEMORY)ボタンは長押しで作ったサウンドを保存、短くワンプッシュで呼び出しができます。

スマートデバイスやPCとの連携

スマートデバイス(スマホやタブレット)とはBluetooth接続、PCとはUSBケーブル接続で、専用アプリ「THR Remote」を利用できます。このアプリでは本体で行うと同様のサウンドメイクができるほか、本体の操作だけではできない追い込んだ作りこみができます。

Bluetoothスピーカーとしても利用できます。Bluetooth のペアリングには、「Bluetooth」ボタンを3秒以上長押し、3分以内にスマートデバイス側の設定を済ませるだけです(THR10II Wireless / THR10IIでは、ユーザーメモリーボタンの4と5を同時に長押し)。

《レビュー》「THR-II」は、ココが凄い!

ではいよいよ、「THR30II Wireless」を代表とする「THR-II」シリーズは実際にどんな感じだったか、というお話です。簡潔に言うと、「音」と「使い勝手」に対して、実に深く追求したアンプという印象です。ポイントごとにレポートしていきます。

さらに進化した、上質なサウンド

かつてサウンドが向上して「V.2」となったTHRですが、THR-IIではまた一段とレベルアップした印象です。オーディオ面、ギターアンプ部、エフェクター部という3つの観点から見ていきましょう。

《オーディオ面》常識外の音質、十分な音量

第一に印象的なのが、ステージ用アンプでもなかなか見られないであろう、オーディオ面での圧倒的な音の良さです。これは特にリバーブをかけて弾いてみると実感できるのではないでしょうか。反響音が上下左右から回り込んできて包み込まれるかのような、まるでライブハウスにいるかのような圧倒的な広がり感です。

  • 低音域から高音域まで幅広く、かつ美しく再生できる。
  • 小さい本体から、驚くほどワイドなステレオ感が得られる。

THRでこの二つを実現させたYAMAHAの独自技術は、THR-IIでいっそう進化しています。これはギターアンプに求められるレベルをはるかに超えたと言って良く、むしろオーディオスピーカーとして大変優秀です。この音質は同価格帯の家庭用オーディオシステムと比べても遜色なく、YAMAHAが勝負に出た、と感じられます。

また、音量も十分です。前身のTHR10が10ワット(5W+5W)だったのに対し、THR10II / THR10II Wirelessは20ワット(10W+10W)、THR30II Wirelessでは30ワット(15W+15W)にまで増強されています。

《ギターアンプ部》豊かなサウンドバリエーション

THR-IIでは、8種類のアンプタイプと3種類のアンプモードの組み合わせで、24種類のアンプモデリングが用意されています。

まずは8種類のアンプタイプから見ていきましょう。エレキギター用のアンプタイプは5種類で、歪まないか控えめに歪む「CLEAN」から順に、「CRUNCH」、「LEAD」、「HI GAIN」、最大級に歪む「SPECIAL」まで並んでいますが、それぞれに個性はあっても妙な偏りを感じさせない、YAMAHAらしいバランスを感じさせるサウンドです。「GAIN」と「MASTER」のツマミで歪みを作り、「OUTPUT(GUITAR)」ツマミでスピーカーからの音量を決めます。サウンドは非常にリッチかつリアルでコシがあり、特にCLEANのツヤっぽさは、「アナログこそ至高」と考える真空管アンプ信望者にこそ聞いてほしいクオリティです。

「BASS」はベース用で、ギター用の時とはひと味違った迫力ある低音域がドンっと出ます。「ACO」はエレアコ用、「FLAT」はサイレントバイオリンやキーボードなど、ライン出力の楽器用です。エレキギターはもちろんベースもエレアコも、それ以外でも高いレベルで使用できる家庭用小型アンプは世界広しといえどもいまのところYAMAHAのTHRシリーズしかないかもしれません。

3つの「アンプモード」が大きなポイント!

THR-II:アンプモード・スイッチ 8種類のアンプモデルを切り替えるツマミと、アンプモード切替スイッチ

THR-IIシリーズでは各アンプモデルに対し、新たに3つのアンプモード

  • CLASSIC(クラシック)
  • BOUTIQUE(ブティック)
  • MODERN(モダン)

を設け、音作りの楽しさが3倍になりました(THR30II Wirelessでは本体のスライドスイッチで、THR10II / THR10II Wirelessでは専用アプリ「THR Remote」上で切替)。

たとえば「CLEAN」では超クリアなクリーン、チャリチャリのクリーン、プリプリのクリーンというように、同じクリーントーンでも3つのキャラクターが用意されているわけです。こうしたキャラクターは、同じフレーズを弾いてもジャンルが変わって聞こえるほどの効果を感じさせました。3つのモードはそれぞれ完成度が非常に高く、どれを選んでも「使える音」を作ることができます。

《エフェクト部》ライトにも、ディープにも使える内容

エフェクトは2系統あり、

  • モジュレーション系:コーラス、フランジャー、フェイザー、トレモロのうち1つ
  • 残響系:ディレイ、ディレイ+リバーブ、スプリングリバーブ、ホールリバーブのうち1つ

を本体のツマミで操作します。これだけの内容が二つのツマミに収められ、操作は回すだけ。何となく「だいたいこんな感じ」という気楽さで操作できます。

アプリの利用で、さらにしっかりとした音作りができる

YAMAHA THR Remote

THR-II専用アプリ「THR Remote」を利用すれば、スマホやタブレットの操作で音を作ることができます。また本体では5つまでですが、アプリではいくつでも作ったサウンド設定を保存しておくことができます。

このほか、本体のツマミでおおまかに操作していたところ、アプリではパラメーターごとに細かく設定できます。さらに、本体からは操作できない「裏メニュー」に触れることができます。アプリでのみ操作できるのは、

  • コンプレッサーの設定
  • ノイズゲートの設定
  • 16種類あるキャビネットシミュレーターの選択

この3つです。コンプレッサーは、特にクリーンやクランチのサウンドを追い込むのに有効です。ノイズゲートは、しっかり歪ませたハイゲイン設定のときに特に有効です。キャビネットシミュレーターは、スピーカーや外箱の設計などによる音の違いを再現します。この違いによって、ギターの音が広がる感じに飛ぶのか、引き締まった感じに飛ぶのか、高域がチャリチャリ言うのか、中域が太くなるのかなど、いろいろな音の出方を選ぶことができるのです(キャビネットの選択は、エレキギター用アンプモデルのみ)。

THR-IIは、本体ではカンタンに操作できる一方、アプリを利用すればかなり追い込んだ音作りができる、というわけです。

「4つのワイヤレス」による無上の解放感

THR30II Wireless / THR10II Wirelessでは、「ワイヤレス」を利用した使い勝手の良さがとことん追求されています。YAMAHAは4つのワイヤレスによる「フルワイヤレス」を提唱していますが、どういうものかを見ていきましょう。

ワイヤレスその1:ギターとアンプをワイヤレス接続

ギターとアンプをワイヤレス

Line 6 Relay G10やG10Sユーザーの方は、トランスミッターの互換性があるので別途Relay G10Tを購入せずとも、THR-Ⅱと連携してギターワイヤレス機能が使えます。設定は、G10TをTHR-ⅡのInputに挿して待つだけ。自宅練習でシールドから自由になる解放感、それは予想以上の幸せです。

ワイヤレスその2:充電式バッテリーで自由に持ち運びできる

充電式バッテリー しっかりと充電していれば、電源を抜いても大丈夫!

充電式バッテリーで、電源ケーブルからも解放されます(ワット数は半分になります)。THR-IIは一般的な小型アンプよりもずっと小さく、気軽に持ち出すことができます。キッチンに持って行って料理しながら、夏はベランダで涼みながら、冬はこたつで暖まりながらでも気軽にギターが弾ける、こんなフレンドリーな機材があったのか。

ワイヤレスその3:アンプと同時にBluetoothスピーカーとして使用できる

Bluetoothスピーカー

Bluetooth接続ならオーディオケーブルからも解放されます。THR-IIはBluetoothスピーカーとして大変優秀で、しかも同時にギターアンプとしても使用できます。音量のツマミは「AUDIO」と「GUITAR」で独立しているので、音楽とギターの音量バランスがしっかり取れます。

ワイヤレスその4:アプリでリモートコントロール

THR-II専用アプリ「THR Remote」を利用することで、THR-IIを遠隔操作できます。互換性のあるBluetooth対応のフットコントローラーを併用すれば、サウンドの切り替えやエフェクトのON/OFFもワイヤレスでできてしまいます。THR-IIはアンプ本体の操作でも十分楽しめますが、アプリを利用することで機能を最大限に使うことができるのです。

4つのワイヤレスによる使い勝手の良さ

ケーブルにつながれているストレスは、スタジオやステージよりむしろ生活の中で感じることの方が多いのではないでしょうか。THR-IIはシールドからも、電源ケーブルからも、オーディオケーブルからも私たちを解放してくれました。ギターを弾いていて、振り向いた途端にガシャン!なんていう哀しい事故はもう起きません。晴れた日に、ベランダで曲をかけながらギターを弾く、といったことへのハードル感がぐっと下がる、その取り回しのよさと使い勝手の良さは、「ギターの自宅練習」という概念をひっくり返してくれました。

DTMやライブにも使用できる

THR30-II:リアパネル USB端子は全モデル搭載、THR30II Wirelessのみラインアウト端子を装備

THR-IIには音楽制作ソフト「CubaseAI」のダウンロードアクセスコードが付属しており、PCとの連携でDAWソフトなどを使ってレコーディングすることができます。「USBクラスコンプライアント対応」なので、PCとの接続には特別な設定を必要としません。

またTHR30II Wirelessは背面にラインアウト端子を持っていますから、カフェやジャズバーなど比較的小規模なライブでPAに音を送ったり、また録音機材に直接つないでレコーディングしたりというように、本番の現場でも使用することができます。

「THR-II」各モデルの仕様や特徴

ここまで代表機種THR30II Wirelessを軸に「THR-II」シリーズの特徴を追ってきましたが、全体像を見ていきましょう。参考のため、ここに前身モデル「THR10」も加えてみます。

モデル名


THR10II


THR10II Wireless


THR30II Wireless


THR10(V.2)

定格出力

20W
(10W+10W)

20W
(10W+10W)

30W
(15W+15W)

10W
(5W+5W)

スピーカー

8cmを2基

8cmを2基

9cmを2基

8cmを2基

アンプモデリング

24種

24種

24種

8種

エフェクター

10種

10種

10種

10種

Relay G10Tの使用

×

×

バッテリー駆動

×

充電式

充電式

単三乾電池8本

Bluetooth接続

×

専用アプリ

THR Remote
PC/macOS両対応

THR Remote
PC/macOS両対応

THR Remote
PC/macOS両対応

THR Editor
PC/macOSのみ

特徴

電源ケーブルでのみ給電。乾電池は使えない。 THR10IIに「ギターワイヤレスレシーバー内蔵」と「充電式バッテリー」を追加 「ギターワイヤレスレシーバー内蔵」と「充電式バッテリー」
アンプモード切替スイッチ、背面にLINE OUT端子

表:THR-IIとTHRとの比較

THR-IIシリーズは、音質面と音色面に大幅な強化が施されたのだということが分かりますね。THR-IIの3機種はサウンドが共通しており、全機種でBluetooth接続と専用アプリに対応しています。THR10IIは、あまり持ち出す予定がなく、ギターからシールドでアンプに送るという人に特にお勧めです。THR10II WirelessとTHR30II Wirelessの違いは、そのサイズ感と出力ワット数、アンプモード切替スイッチ、LINE OUT端子です。

THRシリーズ専用キャリーバッグ

外への持ち出しに便利なキャリーバッグもリリースされています。寸法が最大のTHR30II Wirelessから最小の既存モデルのTHR5/5Aまでが収められ、ガタつき防止のクッションも付属しています。

「音楽の楽しみ方」が変わる

YAMAHA THR-II

以上、YAMAHAの新製品「THR-II」シリーズの全体像を見るとともに、代表機種THR30II Wirelessをチェックしていきました。どんなジャンルにも対応できるサウンドバリエーションがあり、音が良く、音楽鑑賞にも使え、どこにでも持ち出せるという欲張りなアンプです。ギターアンプにもベースアンプにもなり、かつそれらのアンプとオーディオを一つにまとめられるため、書斎を広く使うことができます。このメリットは、自分でギター/ベース教室を開講したいという人にも大変魅力的に見えることでしょう。またワイヤレスの解放感は快適というほかなく、音楽の楽しみ方が変わります。

アプリとの連携でしっかりと使える高機能アンプでありながら、本体のみの操作で気軽にも使える柔軟性があります。だから、ライフスタイルや音楽との向き合い方に合わせた、自由な使い方ができます。ぜひ実際に体験してみてください。