《My New Gear 001》NUX「Amp Academy」

[記事公開日]2022/7/14 [最終更新日]2022/8/4
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

NUX Amp Academy

情報サイト「エレキギター博士」ライティングスタッフKです。読者の皆様、いつもありがとうございます。日頃は偏りのないフラットな記事を心がけておりますが、個人的見解も交えた「エッジの立ったレビュー記事」を書こうじゃないかってことで、新企画「My New Gear(MNG)」が立ち上げられました。記念すべき第一回はNUX(ニュー・エックス)の多機能アンプシミュレーター「Amp Academy(アンプ・アカデミー)」です。それではどうぞ!


mng.1「NUX Amp Academy」箱から出してファーストインプレッション!アンプモデル6種類を演奏してみた!
追い込んだ音作りにはPCが必要となりますが、ピッキングに追随する高いサウンドクオリティが低価格で手に入る、注目のペダルです。「ファームウェアの更新」を行なえば、収録されるアンプの数を増やすこともできます。

まずは、取説を読まずに触ってみた。

NUX Amp Academy:外観
本体はコンパクトエフェクターくらいのサイズ感で、正面にはツマミが8つ、ミニスイッチが3つ、フットスイッチが2つ配置されています。それぞれに添えられた記載を頼りに、音を作ったり切り替えたりできる感じです。

突然ですが、取説とか読みますか?私は読んだり読まなかったりですが、世の中には「断じて読まない派」という人もいるようです。そんなわけで、まずは予備知識なしでいきなり触ってみることにしました。

2つのフットスイッチで音色を切り替える。

NUX Amp Academy:フットスイッチ

基本操作としては左フットスイッチでアンプのAB切替、右フットスイッチで「SCENE(シーン)」の1/2/3を順番に切替です。それぞれ違う色で発光するので、感覚的に切替できそうです。

AとBに3つずつのアンプモデリング

NUX Amp Academy:アンプモデル

Aには「Vintage」「Classic」「Modern」の3つ、Bには「Brown」「Red」「Iridium」の3つが割り当てられています。Aはクリーン/クランチ系、Bがクランチ~ハイゲインです。ミニスイッチであらかじめアンプを選んでおいて、左フットスイッチでABを切り替えます。灯りはA「Vintage」なら緑、B「Iridium」なら黄色というように色分けされていますが、B「Red」の発光が真紅じゃないところには深いこだわりを感じます。

「SCENE」はアンプごとに設定

NUX Amp Academy:フットスイッチ
合計6つのアンプそれぞれに3つまでシーンを保存できるため、本体だけで合計18通りのサウンドを保存できることになります。なお、AB切替時は必ずシーン1が呼びだされます。

ABそれぞれのアンプに3つの「SCENE(シーン)」を保存できます。8つのツマミを回して音を作ったら、左フットスイッチの長押しで保存です。シーン切替は右フットスイッチのほか、ミニスイッチでも可能です。3つのシーンはアンプに依存しているので、「Aのシーン1はVintageで、Aのシーン2はClassic」といったワガママは効きません。

起動時はバイパス

ちなみに電源スイッチは無く、ACアダプターを挿したら電源ON、バイパス状態で立ち上がります。左フットスイッチでバイパス解除ですが、電源を切る前の状態は忘れてしまうようで、起動時はアンプがAとなり、シーンはミニスイッチの組み合わせ次第で1になったり2になったり3になったりします。なお、両フットスイッチ同時押しで再びバイパス状態になります。

さすがに取説なしでは分かんないところも。

NUX Amp Academy:コントロール

ひとまず肉弾戦でここまでは分かったんですが、右上の二つのツマミ「BOOST」と「N.R.」の機能については取説に頼らなければならないようでした。「BOOST」はブースト量で「N.R.」はノイズリダクションとのことなんですが、アンプやシーンの切替によって使えたり使えなかったりします。ノイズリダクションはなかなか強力で、ハイゲインのジャーーっていうノイズもバッサリと切れます。

また、右フットスイッチを長押しすることで「Alt」というモードに入ります。右上の二つのツマミでリバーブを操作できるみたいなんですが、やはり効果が確認できたりできなかったりで、これも取説に頼る必要がありそうです。

「取説なしで本体の操作のみ」で分かったこと

  • アンプAに1~3のシーン、アンプBに1~3のシーンを保存し、二つのフットスイッチで切り替える。
  • ツマミの名前を読めば、基本的な音作りはだいたいどうにかなる。
  • 「シーン1をシーン2に貼り付け」みたいなワガママはできない。
  • さすがに取説なしでは理解できないツマミがある。

取説など、付属品をチェックしてみた。

NUX Amp Academy:付属品
ではいよいよ取説を広げます。付属品は取説のほか、保証書がわりのカードとエフェクトループに使用するYケーブルです。

取説は、「各部名称」と「接続例」でだいたいわかる。

そんなわけで取説を読んでみました。「A3一枚で完結させる」というハードなミッションを見事に完了させた、コンパクトにまとまった取説だと思います。しかしそれゆえに、「サードパーティーIRデータ」「エフェクトブロック」といったマルチエフェクター用語が説明なく続々と出てきて、こうしたデバイスを初めて触るという人にはなかなか難しい書き方だなと感じました。

とはいえ「各部名称と機能」と「接続例」さえ見ればだいたい使い方が分かるので、ぜんぜん怖くないよ。ココに書かれている特に重要な情報は、「接続例」に書かれている「IR OUT」ミニスイッチの設定と、A「Vintage」ではPRESENCEツマミがBRIGHTスイッチの代わりになる、というところです。あとは、エディターソフトウェア「Amp Academy Editor Software」を使うと、いろいろなことができるようです。

背面のミニスイッチを確認しよう。

NUX Amp Academy:ミニスイッチ

ココは取説の「接続例」で確認する必要がある内容です。アンプやミキサーにつなぐときに重要なのが、本体背面の「IR OUT」スイッチ。ミキサーなどにつなぐ時と、ギターアンプのRETURN端子につなぐ時で、切り替える必要があります。それぞれ試してみましたが、やはりこのスイッチの設定が適切な状態で初めて、納得のいくリアルなアンプサウンドが得られます。「この価格でこの音はスゴイ!」なんてレビューを散見しますが、嘘じゃありません。音量を上げて鳴らすと、ちゃんと幸せになれます。

個人的にはオーディオのモニタースピーカーから音を出すより、ギターアンプのスピーカーから音を出した時の方が、深い感動が得られました。真空管アンプ独特の粘り感やツヤ感とか、ドンって弾いた時の音圧感とか、そういったものがしっかり体感できました。

「出荷時に戻す」機能なし

驚いたのはコレです。デジタル機器ならば必ず実装しているはずの「工場出荷時の状態に戻す」という機能の記述がありませんでした。いろいろいじりすぎて訳がわかんなくなっちゃった時なんか、救済措置として必要な機能だと思うんですけど。これについては、アプリで状態の確認ができることが後で分かりました。

付属「Yケーブル」での拡張性

エフェクトループにYケーブルを採用するのは、斬新な発想です。本体にはステレオ端子いっこで済むので、本体を小型化できるメリットがあります。万が一コレが断線しても、ハンダ付けができる人ならカンタンに復旧できるので、安心して使えます。

取説を読んで分かったこと

  • 「各部名称と機能」と「接続例」さえ読めば、だいたい使い方が分かる。
  • 「IR OUT」スイッチの設定が適切なら、良い音が出せる。
  • 付属Yケーブルでシステムを拡張できる。

アプリを操作してみた。

NUX Amp Academy:アプリ
エディターソフトウェア「Amp Academy Editor Software」操作盤の全容。対応はMacとWindowsのみで、タブレットは非対応。本体との接続もUSBのみで、Bluetooth接続は非対応。開発費が本体価格に反映されることを考えたら、適切な判断だったと思います。

ではいよいよ、エディターソフトウェア「Amp Academy Editor Software」をダウンロードして、本体とUSB接続してみます。追い込んだサウンドメイクができるほか、ドラムマシンやオーディオインターフェイスなど、いろいろ機能があります。このソフト自体の取説は発行されていないようすが、画面を見ればだいたいわかるような作りになっているので、肉弾戦でじゅうぶん操作できる印象です。

EFXブロック
「EFX」ブロックに配置するエフェクターは、いろいろ選べる。
本体の「BOOST」ツマミは主にエフェクターの音量操作ですが、エディターソフトではエフェクターごとに他のいろいろなツマミが表示されます。リバーブについても同様で、リバーブ自体の選択の他、いくつものツマミが表示されるので、シーンごとに追い込んだ設定ができそう。

ノイズリダクションについても、エディターソフト上ではゲートの閉じ方を設定できます。特に「ドライブサウンドの減衰の仕方が気に入らん」という人は、ココを操作すれば解決できそう。

NUX Amp Academy:IR
操作盤下部に表示されている「IR」は、実際のスピーカーを鳴らしたっぽくする機能。コレを変更することでアンプのサウンドがびっくりするほど様変わりする。シーンごとに個別のIRを設定できるのは、かなりおいしい。

3.5インチフロッピーディスクのアイコンが「本体に保存」なんですが、現代の若い人はフロッピーディスクなんて知ってるんでしょうか。このほか設定をPCに保存できるので、バンドやプロジェクトごとにデータを管理すれば、いろいろな場面でこの「Amp Academy」を活用できます。なお、横向き矢印がPCへの保存(エクスポート)、下向き矢印が保存データの読み込み(インポート)です。


リズムマシンとルーパーも備わっていて、練習に使えそう。リズムパターンはジャンルごとに整理されていて種類が多い印象。しかし、マウスクリックでルーパーの録音をするのには、ちょっと工夫と修練が必要っぽい。

エディターソフトウェア「Amp Academy Editor Software」では、かなり追い込んだサウンドメイクができるようです。サウンドメイクの幅広さ、音質の良さ共に、もうちょっと高い価格帯のギタープロセッサーと比べても、じゅうぶんにいい勝負ができる、むしろ勝てるんじゃないだろうかとさえ感じました。取説を読む前に意味の分からなかったツマミの謎も、ココで初めて解けました。それに加えて本体のこのコンパクトなサイズは、デスクに置くにも持ち出すにしても大きなアドバンテージです。

アプリを使ってみて分かったこと

  • パソコンが絶対必要。
  • 操作は身体で覚えられる。
  • 本格的なギタープロセッサーと遜色ないサウンドメイクが可能。
  • ライブも録音もできるし、ドラムマシンがあるので練習にも使える。

特別企画「My New Gear(MNG)」の第一回、NUX「Amp Academy」レビュー、いかがでしたか?「サウンドメイキングにはPCが必須」という縛りこそあれ、コンパクトな本体にじゅうぶんな音質と音作りを追い込める機能を備え、かつ魅力的な低価格に収めるという製品開発を見事に成し遂げたデバイスだと思います。

なお、PC接続に使うUSBケーブル、及び電源のACアダプターは別売です。快適な操作の為にはUSBケーブルは長めのものを、ACアダプターは電力にゆとりのあるものを選ぶと良いでしょう。

以上、ライティングスタッフKがお送りしました。ありがとうございました。

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