フェンダー・テレキャスターの種類と選び方[記事公開日]2022年5月17日
[最終更新日]2022年5月19日

《ボディ》新旧は「削り」で決まる

テレキャスターのボディは、シルエットだけでそれとわかる大変に特徴的なものです。

1) ボディ材は、アッシュとアルダーが主流

左:アルダーボディの「Made in Japan Traditional 60s Telecaster Custom」
右:アッシュボディの「Made in Japan Traditional 70s Telecaster Ash」

テレキャスターのボディ材は、アッシュとアルダーが主流派で、比較的安価なものにはバスウッドなどが使用されます。1969年式のシンラインでは、マホガニーが使用されることもありました。

テレキャスターという分野ではアッシュ材に根強い支持があり、重くはあってもアタックの立つキャラクターがテレキャスターのイメージにマッチしている、と感じるギタリストが多くいます。
アルダーは比較的軽量で、バランスの良い音響特性もあり、テレキャスターに限らずエレキギターに理想的な木材です。
バスウッドはさらに軽量であり、またクセがないことから、高級機に採用される例もあります(ジェームス・バートンモデル)。

ギターのボディ材について

2) ボディ構造(ソリッドかシンライン)

左:ソリッドボディの「Made in Japan Traditional 50s Telecaster」
右:ボディをくりぬいた「Made in Japan Traditional 69 Telecaster Thinline」

テレキャスターのボディ構造はソリッドが基本です。内部をくり抜くものは「シンライン」で、通常Fホールが空けられます。

フェンダーは、カスタムショップ以外のグレードでは「木材のグレードでは勝負しない」ことをポリシーにしているようで、他のブランドでは一般的な「何ピースボディ」という表示を行いません。2ピースかもしれないし、3ピースかもしれませんが、全て等しく「ソリッド」とみなし、それによってサウンドに差が出るわけではない、と考えているわけです。

ソリッドギター/フルアコ/セミアコの違いについて


Merle Haggard – That’s The Way Life Goes (Live)
カントリー・ミュージックはアメリカ人の音楽的なアイデンティティですが、日本にそこまで伝わっているというわけでもありません。本国で「カントリーの巨匠」と称されるマール・ハガード氏について、日本語版ではウィキペディアの記事が存在しないくらいです(2022年5月現在)。そのためFCSのラインナップを見て初めてハガード氏の名前を知ったという人も多いことでしょう。氏こそはカントリー・ミュージックの至宝であり、38曲もの作品が全米カントリーチャートで一位を記録し、またグラミー賞などさまざまな賞を受けるなど、多くの実績を残しました。氏のサウンドはトーンを効果的に絞った甘さのある軽やかさが特徴で、テレキャスターがキャンキャン騒ぐだけのギターではないことを証明しています。

3) 裏側から見る、新旧の違い

Classic 60s Tele Custom:ボディバック バックコンター無し、ヒールカット無しのClassic 60s Tele Custom

Vintage 伝統的なテレキャスターのボディは、表も裏も真っ平らで、ネックを受け止めるヒール部はしっかり長方形です。現代の感覚では、フィット感やハイポジションの演奏性が不足気味と感じられるかもしれません。しかしテレキャスター・サウンドの武骨なイメージを体現している仕様でもあり、今なお愛されている定番仕様です。

Modern いっぽう現代的な仕様では、このボディのトガったところを削り落とし、現代的な機能と演奏性を持たせる設計が採用されます。

バックコンター

バックコンターの様子 American Professional Telecaster Deluxe ShawBucker:コンター加工

ヒールカット

ヒールカットの様子 DELUXE NASHVILLE TELE:ヒールカット

バックコンター&ヒールカット

アメリカン・エリート:コンター加工の様子 American Elite Telecaster:コンター加工&ヒールカット

これらのような裏側の加工は、ちょっと高く構えてソロを弾くようなスタイルの人に大はたいへん有利です。バックコンターで大きく削られて軽量になる、抱えやすく弾きやすい、といった「弾き手への歩み寄り」は、テレキャスターにあっても良いのです。

4) バインディングやピックガード

Classic 60s Tele Custom:ボディ・サイド ボディのサイドに白い縁取り(バインディング)が入った「Classic 60s Tele Custom」

バインディングやピックガードはルックス上のカッコよさを決定づける大変重要なパーツです。60年代を意識したモデルではボディの表裏にバインディングがみられる例が数多くあるほか、「アメリカン・ウルトラ」ではボディの表側にのみ、バインディングが施されます。バインディングを施すとボディ鳴りがちょっと抑制され、コードプレイに特に良好な引き締まったキレの良い音になります。


ピックガードには

  • 単層(1枚)のもの:50年代に採用されていた
  • 3層のもの:60年代以降のもの

があり、形状は本体のタイプごとに決まっています。50年代モデルではネジの本数が少なく、若干スッキリとした印象になります。

《ネック》新旧の違いが最も強く表れる

Classic 60s Tele Custom:ネックジョイント Classic 60s Tele Custom:基本はボルトオンジョイント

テレキャスターのネックは、「弦長25.5インチのメイプルネック」と「ボルトオンジョイント」を基本的な共通仕様としながら、1)ナット幅、2)フレット数とサイズ、3)指板材と指板R、4)ネックシェイプと塗装、5)トラスロッドの仕様で新旧が分かれます。それぞれについてチェックしていきましょう。

ネックの材質・形状について

1) ナット幅

テレキャスターのナット

「ナット幅」は、「0フレット地点でのネックの幅」を意味します。1mmにも満たない僅かな違いのようにも思えますが、弾き心地はかなり違ってきます。細ければ良いというわけでもないので、ぜひ実際に確かめてみてください。

Vintage フェンダー・テレキャスターのナット幅は41mm近辺が標準でしたが、現在「42mm」を標準としており、大多数のモデルがこの値になっています。現在、この42mmより狭いナット幅を持つネックを「ナローネック」と呼ぶこともあります。

Modern 新しい設計では、やや拡充された「42.8mm」が採用されます。弦同士の間隔(弦間ピッチ)にゆとりが出るため、テクニカルな演奏に有利です。


Rob Zombie – Get High
「現代テレキャスターの名手」と呼び声の高いJOHN 5氏は、現代的なズムズム言うヘヴィな演奏や超絶テクニカルなスーパープレイだけでなく、ブルースやカントリーにおける伝統的な奏法までマスターしています。バンドだけでなく自身のソロプロジェクトも活発で、多くのアーティストとコラボレーションしています。テレキャスターでヘヴィなサウンドを放ち続けたことで、テレキャスターのイメージを一新させた犯人でもあります。

2) フレット数とフレットサイズ

テレキャスターのフレット 最終フレットにポジションマークが付いているから、コレは21フレット仕様

フレット数には「21」と「22」があります。ヴィンテージ・スタイルでは21と決まっていますが、モダン・スタイルでは22のものと21のものとが混在しています。

  • Vintage フレット数「21」、フレットサイズは「小さめ(ヴィンテージ・スタイル)」が伝統的な仕様です。小さめのフレットは、力いっぱい押さえてもピッチがシャープしにくいのが最大の利点ですが、チョーキングには不利と考えられています。そもそもテレキャスターが発明された当時、まだ人類は「チョーキング」を知りませんでした。
  • Modern 新しい設計では、フレット数が「22」へ拡張され、またフレットサイズは大きくなっています。大きめのフレットは、チョーキングそのほかの表現技法に有利です。しかし押弦の力が強いとピッチを狂わせてしまうので、力まないよう注意が必要です。

フレットサイズは、サウンドと演奏性を左右します。現在の標準は「ミディアム・ジャンボ(ほどほどにでかい)」や「ナロー・トール(細いけど背が高い)」です。フレットは大きくなるとアタックが立ち、サスティンが豊かに響きます。反対に小さくなると木材の個性が出やすく、倍音豊かなサウンドになります。
また、高さがあったほうがラクに押さえることができ、チョーキング、ハンマリング、プリング、ビブラートなど指技に有利です。

現代的な演奏スタイルでは、1弦22フレットからの1音チョーキングでE(高いミ)が出せることに重要な意味があります。ですから特にソロをバリバリ演奏したいという人には、22フレット仕様は必須のスペックだと言えます。21フレットでは高音に不利ですが、これを工夫してうまいことやるのが「フェンダー使い」の心意気だと考える人も多く、通好みの仕様だと言えるでしょう。
ではなぜレオ・フェンダー氏は21フレット仕様を採用したのか、これについては諸説ありますが、「ジョイント部分の強度に関する問題」のほかに、「21フレットの場合、ネックの端からフロント・ピックアップまでの距離にゆとりがあって美しい。22フレットでは窮屈に感じる」という説には、なかなかに説得力があると考えられています。

備考:ジョイント部分の強度に関する問題

ピックアップの位置は、求めるサウンドで決められます(参考:リア用ピックアップをフロントに搭載するとどうなる?)。よって、「テレキャスターのフロントピックアップの位置は、ココ!」と決まっているのです。ピックアップをマウントするためにはボディに孔(ピックアップ・キャビティ)が空けられますが、そのすぐ近くにネックを受け止める孔(ネックポケット)が空けられます。22フレット仕様向けにネックポケットを空けると、すぐ近くにピックアップキャビティがあるために強度不足となってしまいます。そこで1フレットぶんネックを短くし、ネックポケットの強度を稼いでいるわけです。22フレット仕様では、基本的に1フレットぶん指板だけ延長します。
フレットの種類と特徴

3) 指板材と指板R

テレキャスターの指板 テレキャスターのローズウッド指板

テレキャスターの指板材は、メイプルとローズウッドが主流ですが、エボニーやパーフェローなどが使用されることもあります。

  • メイプル指板:倍音豊かで澄んだキャラクター
  • ローズ指板:中/低音域が豊かで粘りがある
  • エボニー:低音から高音までまんべんなくカバーしつつ、硬くハッキリと響く
  • パーフェロー:ローズとエボニーの中間。ローズより色調は淡い

と言われますが、樹種の傾向に木材の個体差までが影響するところなので、ギターの音から指板材を察するのはかなり困難です。メイプル指板で濁った音も出せるしローズ指板で歯切れのよいシャリシャリの音も出せますから、特に深いこだわりがなければ外観上の問題と割りきっても良いでしょう。

テレキャスターの指板R 指板の丸みを測るのがR(ラディアス)という単位

「指板R」は、新旧の違いが明らかに出るポイントです。

Vintage 丸みのきつい「7.25インチ(184.1mm)R」。特にコードを押さえるのに有利で、消音にも良好なので歯切れのよいカッティングではかなり有利。しかし弦高を下げるセッティングがしにくい。

Modern 他ブランドよりはやや丸みのある「9.5インチ(241mm)R」が現在の主流。このほか12インチR、コンパウンド・ラジアスなどあるが、総じてヴィンテージ・スタイルより平たい。弦高を下げたセッティングにしやすいので、全体的に弾きやすくなりやすい。

指板(フィンガーボード)の材質・形状について

4) ネックシェイプとネック塗装

テレキャスターのネック

フェンダーのネックシェイプは、断面をイメージさせるアルファベットで表現されます。

Vintage 「カマボコ」とも呼ばれる「U」シェイプ、やや薄くした「D」シェイプなど、肉厚なシェイプ。
Modern 「D」のエッジをカットした「C」シェイプが標準。細身の「スリムC」、やや肉厚な「モダンC」などのバリエーションも。

「スリムなネックが弾きやすい」と思われがちですが、ある程度の厚みはあったほうが押弦の圧力をかけやすいという研究もあります。ネックシェイプは、新しいモデルが出るたびに開発されます。演奏性に直接影響し、また名前だけではなかなか判別しにくいところですから、気になるギターのネックは実際に触ってみるのが良いでしょう。
ネックのフィニッシュ(塗装)についても新旧が分かれます。

Vintage ツヤッツヤの「グロス」塗装。高級機ではラッカーが使われることもある。適度なグリップ感が得られる。
Modern サラッサラの「サテン」塗装。ラッカーは使われない。手との摩擦が少なく、移動がしやすい。

5) トラスロッドの仕様

Vintage ジョイント側に開口。調節するときにはいちいちネックを外す。70年代以降はヘッド側に開口した。順反りの調整のみ可能。
Modern ヘッド側に開口。ネックを外さなくても調節できる。また高級仕様では、順反り/逆反りの両方が調整できる。

フェンダーのトラスロッドは、50、60年代はジョイント側から、70年代はヘッド側から調整します。ロッドの調整のために毎回ネックを外さなければならないのは、上級者でもハードルの高い作業です。自分でセッティングしたい人は、ネックを外さなくてもロッド調節ができるギターがお勧めです。

ヴィンテージ・スタイルは厄介かもしれませんが、フェンダーが発明した「デタッチャブル(取り外し可能)ネック」の恩恵を受けることができます。最も強度が要求されるジョイント部の端まで、ロッドがいきわたるのが利点です。セットネックのギターでは、ジョイント部にロッドを開口できません。

《ピックアップ》フェンダーは、世界的なピックアップメーカーでもある。

ピックアップは、フェンダーがとってもこだわっているパーツです。なかなか簡単に踏み込むことのできないディープな領域なのですが、分かりやすい範囲でチェックしていきましょう。

1) シングルコイル

American Special Telecasterのピックアップ American Special Telecasterのピックアップ部分

ヴィンテージ・スタイルでは、「64年」や「50年代」のようにお手本を意味する数字が名前に添えられることもあります。モダン・スタイルではサウンドこそヴィンテージ・スタイルを前提としながら、ハムノイズを除去する「ノイズレス・ピックアップ」を開発したり、磁石の使い方を工夫したり(V-Mod)といった新しい設計が取り入れられます。また、伝統のサウンドにちょっとエッジを加える(Player)といったサウンド面でのアレンジも行われます。なお、モダン・スタイルではフロントピックアップの高さを簡単に調節できますが、ヴィンテージ・スタイルでは毎回ピックガードを外す必要があります。

2)ハムバッカー

フロントのみハム フロントのみハムのTAXMAN Telecaster

ワイドレンジ・ハムバッカー American Professional Telecaster Deluxe Shawbuckerのピックアップ

フェンダーの伝統的なハムバッカーは「ワイドレンジ・ハムバッカー」で、3つずつ互い違いに見えるポールピースで見分けられます。これはギブソンPAFから派生する一般的なハムバッカーと異なり、高音域が豊かに響くように設計されています。これに対して現代志向のハムバッカーは、PAFタイプが主流です。

《各部金属パーツ》軽量級(旧)と重量級(新)

金属パーツでは、ペグとブリッジに特徴が現れます。交換のハードルが低い分野なので、試しにやってみるのもおすすめです。それぞれについて見ていきましょう。

1) ペグ

左:クルーソンタイプ、右:ロトマチックタイプ(ロック式)

  • Vintage クルーソンタイプ(Vintage):軽量。自信の主張が控えめなので、木材の個性が出やすい。
  • Modern ロトマチックタイプ(Cast/Sealed):重くて堅牢。金属の個性が立ち、サスティンが増す。

クルーソンタイプのペグは軽量で、倍音豊かな音色となります。音の伸びはロトマチックに劣りますが、「気持ちの良い減衰」と好意的にとらえられます。ロトマチックタイプは堅牢で重量感があるため音の伸びに優れ、倍音の整理された引き締まった音になります。

モダン・スタイルでは、ストリングポストの高さを変化させて弦張力を整える機能(Staggerd)や、軸で弦をロックする機能(Locking)など、新しい世代に求められる性能が追加されることもあります。

2) ブリッジとサドル

左:ヴィンテージ・スタイル、右:モダン・スタイル

テレキャスターのブリッジは、

  • Vintage 鉄板をトレー状に曲げたもの。1弦、6弦両側に「壁」がある。サドルは3連。
  • Modern 分厚い鉄板をL字型に曲げたもの。「壁」はない。サドルは6連。

の二つを基本とし、リアがハムバッカーになっているものはストラト的なハードテイル・ブリッジが使われます。

ヴィンテージ・スタイル

ヴィンテージ・スタイルのブリッジは「3連サドル」を基本とし、サドルの材質によってサウンドキャラクターに違いが生まれます。「アメリカン・オリジナル」シリーズや「MIJ ヘリテイジ」シリーズでは、各年代で採用されていたサドルが使用されます。モダン・スタイルの楽器に対しても、ヴィンテージ風のニュアンスを加えるために3連サドルが採用される例が多くありますが、この場合はブラスサドルが使われます。

ヴィンテージ・スタイルはブリッジミュートの時に「壁」がピッキングの邪魔になりやすく、また3連サドルのせいでオクターブ調整が甘くなりやすいというデメリットがありますが、このブリッジはヴィンテージ風のサウンドにとって重要な要素であり、現在でも重宝されています。「アメリカン・プロフェッショナル・テレキャスター」は「壁」を低くし、またサドルに加工を施すことで、ヴィンテージ・スタイルの持つデメリットを改善しています。

モダン・スタイル

モダン・スタイルのブリッジは、肉厚なプレートで「壁」が無いぶんの強度を補っています。また「ブロックタイプの6連サドル」を基本とし、重みのある金属パーツによる引き締まった音色、「壁」が無くなったことによる演奏性を手に入れ、オクターブ調整がビシっと決まるようになっています。モダン・スタイルの金属パーツはペグ、ブリッジともに重く、そして堅牢になっています。これによってサウンドも明瞭に、そしてサスティンが豊かになっています。


Albert Collins – Iceman (From “Live at Montreux 1992” DVD)
アルバート・コリンズ氏のシグネイチャー・テレキャスターは、1966年式のテレキャスターをベースに、「アイスマン」のサウンドを再現するべく仕上げられています。バインディングが巻かれたスワンプ・アッシュボディ、オーソドックスな「C」シェイプのメイプル1Pネック、フレット数は伝統的な21ながら、指板Rは現代的な9.5インチ(241mm)です。ヴィンテージ・スタイルのブリッジに対して現代的な6連サドルが採用されていますが、コリンズ氏ご本人はブリッジカバーを使用していましたから、カバーをかぶせてしまえば外観上まったく問題がありません。ヴィンテージ・スタイルのテレキャスターの泣き所である「オクターブ調整の甘さ」が、この6連サドルによって解消されています。

《操作系と配線》シンプルか多機能か

Vintage 3WAYセレクタースイッチ、ボリュームポット、トーンポット(1V1T)
Modern 「S-1」スイッチ、4WAYセレクターなどの多機能化や特殊配線。
ヴィンテージ・スタイルの操作系および配線は、いたってシンプルです。これに対し、モダン・スタイルではさまざまな工夫が見られます。

  • 「S-1」スイッチ:ボリュームポットに仕込まれたPush / Push式のスイッチ。「アメリカン・ウルトラ」では、ミックス時に直列/並列を切り替えられる。
  • トレブル・ブリード回路(ボリューム)、グリースバケット回路(トーン):ツマミを絞ったときの音抜けを良好に調整する(USAモダン系)。
  • コイル・スプリット:いわゆるコイルタップ。ハムバッカーでシングルコイルの音を出す(American Performer HH、Player Telecaster HH)
  • 4WAYセレクター:シングルコイル単体、およびふたつの直列/並列のサウンドが得られる(Delux Thinline)。

「アーティストモデル」という選択

テレキャスターのさまざまな仕様について見てきましたが、いろいろなこだわりの詰まったアーティストモデルもいくつか見ていきましょう。レギュラーモデルには無い尖った仕様が採用されていることも多く、普通のテレキャスターでは満足できない人のための、ファンならずとも有力な選択肢になります。

Jim Root Telecaster

Jim Root Telecaster

ジム・ルート氏のシグネイチャー・テレキャスターは、マホガニー製ボディにEMG製ハムバッカーを2基搭載した、ヘヴィミュージックに最適のモダンギターです。平滑な指板にミディアムジャンボフレット、バックコンター&ヒールカット、22フレットなど、本記事で見てきたモダンな仕様をすべて取り入れており、フェンダーの現ラインナップ中でもっともモダンなテレキャスターと言っても過言ではありません。

JAMES BURTON TELECASTER

JAMES BURTON TELECASTER

かのエルヴィス・プレスリー氏のバンドで活躍した「ミスター・テレキャスター」、ジェームズ・バートン氏のテレキャスターは、ファイヤーパターンのボディトップとゴールドパーツが映える、見るからに特別なギターです。音のために敢えて選択したと思われるバスウッドボディに、このモデルのために開発された3基のピックアップを備えています。またボリュームポットに仕込まれている「S-1スイッチ」により、フロント+センター及びセンター+リアの並列(通常のハーフトーン)、直列(疑似ハムバッカー)を切り替えることができます。


Elvis Presley – Johnny B. Goode (Aloha From Hawaii, Live in Honolulu, 1973)
ジェームズ・バートン氏はこれまでワウンド弦であった3弦をプレーン弦に張り替え、チョーキングを簡単にしました。これが現在のライト・ゲージです。また右手を駆使するニュー・ギャロッピング奏法を開発し、バンジョー用のフィンガー・ピックで演奏するチキンピッキングを得意としています。

JIMMY PAGE MIRROR TELECASTER
JIMMY PAGE TELECASTER

JIMMY PAGE TELECASTER

ジミー・ペイジ氏が若かりし頃に愛用していたというテレキャスターが、2タイプリリースされています。「MIRROR」が昔の姿で、もう一台は「ドラゴン・ギター」と呼ばれていた最終的な姿です。いずれもアッシュボディ、全身ヴィンテージ・スタイルのネック、ご自身使用のカスタムピックアップを備え、「MIRROR」には円形の鏡が八枚同梱されます。
弦の張り方を選べるブリッジが備わっており、各弦ごとに通常の裏通しと、ブリッジで弦を固定する「トップロード」を選択できます。


Led Zeppelin – How Many More Times (Danish TV 1969)
ヤードバーズ在籍時やレッド・ツェッペリン初期では、ジェフ・ベック氏から譲り受けたという1959年製のテレキャスターがペイジ氏のトレードマークでした。その後レスポールに持ち替えこそしましたが、ネックを薄く削り落し電気回路の変更等を行い、テレキャスターを意識したサウンドに調整されていると言われています。有名な「天国への階段」のスタジオ音源のギターソロはテレキャスターによるものです。

CHRIS SHIFLETT TELECASTER DELUXE
CHRIS SHIFLETTTELECASTER (FCS)

CHRIS SHIFLETT TELECASTER DELUXE

フー・ファイターズ所属、クリス・シフレット氏のテレキャスター・デラックスは、70年代式を踏まえた本体に12″R指板とミディアムジャンボ・フレットを備えた現代的な演奏性が加えられています。PAFを踏襲したハムバッカーを備えていることもあり、フェンダーでありながらギブソン的なニュアンスを多く含んだギターです。カスタムショップ製ではソープバー・タイプのピックアップを採用しており、異なるキャラクターが設定されています。


Foo Fighters – The Sky Is A Neighborhood (Official Music Video)
「フー・ファイターズ」は「ポスト・グランジ」に類するロックバンドです。ニルヴァーナでドラムスを務めたデイヴ・グロール氏が1994年に立ち上げ、以後グラミー受賞多数、来日公演多数、2000万枚以上の売り上げを記録するなど、破竹の勢いを維持しています。

「どうやってテレキャスターは生まれたか」を想像してみよう

今でこそ定番視されていますが、テレキャスターにはそれ以前の常識では考えられない設計がたくさん採用されています。テレキャスターの構造をチェックすると、開発者のレオ・フェンダー氏がいかに聡明であったか、またアタマが柔らかかったかをうかがい知ることもできます。

テレキャスターは、それ以前にリリースされ好評を博していた「ラップスチール」の設計から多くのヒントを得ています。実際のラップスチールを観察しながら、テレキャスターがどのようにして生まれたのかを考えていきましょう。

1954年製フェンダー・ラップスチール 1954年製、フェンダー・ラップスチール。ヘッド部には「578」のシリアルナンバーが。ケースも当時のものです。

1) ボディ構造

発売当初のテレキャスターのボディには、ラップスチールで定番とされている「パイン材(建材。パイナップルではない)」が、無垢(ソリッド)で使用されました。
ボディ材はほどなくして、アッシュ材(針葉樹)に、また1959年にはアルダー材(広葉樹)に変更されました。針葉樹は成長が早いため入手しやすい半面、比重や節(フシ)の有無など個体差に悩まされることが多く、そのため比較的安定した品質の木材を仕入れやすい広葉樹へと変更されたのだと考えられます。

ボディの表面が平面のままなのがテレキャスターの大きな特徴ですが、これもラップスチールを受け継いだものです。後発のストラトキャスターでは「コンター加工」と言って右肘とわき腹にあたる部分が滑らかにカットされましたが、この手法が発明されてからも、テレキャスターのボディは平面(フラットトップ、フラットバック)のままでした。

2) ネック構造

1954 Fender Lap Steel ラップスチールとしては当然と言えば当然の、まっ平らの楽器本体。ツイードケースのダメージ加減が、半世紀の時の流れを感じさせますね。

普通のギターはどれも「ネックの仕込み角」といって、ボディにたいしてわずかに傾けてネックを挿します。これに対してラップスチールは一枚の板からボディ、ネック、ヘッドまで削り出され、全ての面がほぼ平行です。これをヒントに開発されたというテレキャスターのネックがヘッドの先まで一本の木材から削り出され、またヘッドとネックが平行であるのも、充分に納得ができます。

フェンダーの「ワンピース・ネック」は、メイプル材を削り出したネックに指板を貼らず、フレットを直接打ちこんだものです。このネックがボディにネジ留め(ボルトオン・ジョイント)されました。ワンピース・ネック、ボルトオン・ジョイント共に、弦楽器の常識に真っ向から挑戦する斬新な設計、というより当時の感覚ではムチャクチャな設計でした。しかしながら新しさばかりでなく丈夫で、また生産効率に優れることから価格が抑えられ、市場に多いに受け入れられました。

好評を博したワンピース・ネックでしたが、長年使用すると指板の塗装が剥がれて汚くなってしまうのが難点でした。そこで1959年から一旦はローズウッド指板に切り替わり、現在では選択できるようになっています。

3) 金属パーツと電気回路

パーツ類についても、道具としての信頼性と音質だけでなく、生産効率まで深く考え抜かれています。

フェンダー・ラップスティール:ブリッジ部分 鉄板にブリッジとピックアップを配置し、カバーで覆っています。操作系もプレート上に配置し、ユニット化しています。

フェンダー・ラップスティール:コントロール部分 非常に見覚えのあるアウトプットジャックとコントロールノブ。これらはそのままテレキャスターに使用されました。

ラップスチールでは一枚の金属プレートにブリッジとピックアップが、またもう一枚のプレートに操作系がまとめられ、それぞれユニットを成していました。このコンセプトが、そのままテレキャスターに採用されました。操作系をプレートにまとめるという設計は多くのギターが取り入れていますが、ブリッジプレートにピックアップをマウントするという設計については、他のどのギターも後に続くことがなかった、テレキャスターだけの特徴になっています。

フェンダー・ラップスティール:テイルピース この個体の場合、斜め下から弦を通しています。ブリッジプレートがテールピースまで兼ねるという、合理性の結晶のような設計です。

弦をボディ裏から通す(裏通し)のも、ラップスチールから受け継いだ仕様です。弦振動を効率よくボディに伝達するアイディアですが、弦を固定するパーツ(テールピース)を必要としない、合理的な設計でもあります。


以上、さまざまな観点からフェンダー・テレキャスターを見ていきました。たくさんのことがありましたが、本格的に見ていこうと思ったら、それこそ本が一冊書けるくらいです。
実際に、

  • テレキャスター・オーソリティ/YOUNG GUITAR special hardware issue
  • 前略、テレキャスター様―エレクトリック・ソリッド・ボディ・ギターの原点、テレキャスターに感謝を込めて
  • フェンダー・テレキャスター・プレイヤーズ・ブック テレキャスターを持ったら読む本
  • フェンダー・テレキャスター・コレクション
  • Fender Guitars vol.1 (1) 丸ごと一冊テレキャスター
  • キング・オブ・テレキャスター
  • フェンダーテレキャスターブック
  • フェンダー ストラトキャスター&テレキャスター ヴィンテージ・クロニクル

テレキャスターに関する書籍は、このように数多く出版されています。興味を持った人は、こうした本を読んでみても良いでしょう。現在はネット社会でこそあれ、本を買わないと手に入らない情報にはまだまだ高い価値があります。