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ストラトキャスターのネック:メイプルネックにローズウッド指板のモデル
ストラトキャスターのネックは、根元からヘッドの先までを一本のメイプルから削り出します。「1ピースメイプルネック」は指板を含めたネック全体を1本の木材から削り出しますが、「ローズ指板」はネック部のみ成形し、指板を貼り合わせます。「貼りメイプル指板」を採用しているものもありますが、モデルごとのネックの違いは(グレードを無視すれば)
というように、いろいろなポイントがあります。
備考:他ブランドではローズ指板に対して「1ピースネック」を称することがありますが、この場合は「ネックが多層構造を成さず、ネックエンドからヘッドの先まで一本の木でできている」という意味です。
ストラトのネックグリップ6種類
モダン・スタイルの上位機種では「コンパウンド・ラジアス」ネックシェイプが採用されていることがあります。親指を出して演奏することが多いローポジションでは丸く、ハイポジションに行くにしたがって徐々に平たくなって、あらゆるポジションで理想的な演奏性が得られます。
サテン・フィニッシュのネック
ネック裏は、素手で触れるところです。ココにどんな塗装が施されるかは、気になる人にとってはたいへん重要なポイントです。塗料にもいろいろあるんですが、最も分かりやすいのは以下の二つです。
グロス・フィニッシュは、適度な摩擦がグリップ感となって手に伝わります。サテン・フィニッシュは摩擦が抑えられ、ポジション移動に有利です。
ネックの横幅を決める「ナット幅」については42mmが大多数ですが、42.8mmから40mmまでの振り幅があります。欧米人に体格で劣る日本人には細いネックが有利なようにも思えますが、細いネックは弦と弦の間隔(弦間ピッチ)が狭く、コードを押さえる際に隣の弦に触れやすくなります。また、ナット幅が広いネックはそのぶんだけネック本体の体積が大きくなることから音響性能が良くなり、良い音になりやすい傾向があります。
上:ローズウッド指板、下:メイプル指板
ストラトキャスターの王道スタイル
ストラトキャスターで使用される指板はメイプルとローズウッドの二種類を基本とし、現在ではワシントン条約の都合によりパーフェローやエボニーなども使用されるようになりました。
と言われます。しかしメイプル指板やエボニー指板のギターで甘い音を出すこともローズ指板のギターで鋭い音を出すこともできます。木材の個体差によっても印象に違いが現れますから、深いこだわりがなければ、ある程度見た目上の違いだと割り切っておきましょう。モデルによっては、ボディカラーと指板材を対応させているものもあります。
Made In Japan Traditional 60s Stratocaster GOLD HARDWAREの指板Rの様子
指板曲線の曲がり具合を、Rの値で示している。
この指板は250R。
フェンダーの指板は丸みがあるのが標準でしたが、現代ではやや平たいものが標準で、新しい設計も採用されています。指板の丸みをあらわす「指板R」は演奏性に直接かかわるところなので、しっかりチェックしておきましょう。現在のラインナップで見られる指板Rは、主に以下の4種類です。
オーソドックスな弾き心地が必要なら9.5″(241mm)が、
古典的なフェンダーのスタイルを体験したいなら7.25″ (184.1 mm)が、
お勧めです。
ミディアム・ジャンボ・フレット
指板Rとフレットの組み合わせで、指板が完成します。かつては小さめのフレットが標準的に使われていましたが、現代では大きめが弾きやすいと考えられています。小さめだと木材の個性が活かされ、大くなるにつれて金属の個性が強くなり、アタックとサスティンが増すと考えられています。
21フレットのストラト
Vintage ストラトキャスターは21フレット仕様でデビューしました。
現代の音楽では22フレットまで欲しくなることもありますが、チョーキングで対応するなどで21フレットを工夫して使う、という面白みもあります。ルックス的には21フレット仕様は指板の端とフロントピックアップとの間に若干の開きがあり、デザイン的に収まりの良さを感じさせます。
Modern 一方、22フレットは便利ですが、指板の端がフロントピックアップにかなり接近するため、外観的には窮屈さを感じる人もいるでしょう。ストラトキャスターの生みの親であるレオ・フェンダー氏も、その一人だったといいます。
トラスロッドがエンド側にある60年代スタイル・ストラトキャスター
モダンスタイルのストラトでは、トラスロッドはヘッド側にある
フェンダーのギターでは、トラスロッドをネックのどちら側から操作するかがモデルごとに違います。はじめはエンド側についていましたが、やがてヘッド側へと移行していった歴史があるからです。ヘッド側から操作する形式だと、自分でも比較的気軽に調整することができそうです。しかし、ネックエンド側から操作する形式では一旦ネックを外してしまわなければならず、調整にはある程度の技術を必要とします。
「ネックエンド側からのトラスロッド調整」は面倒臭いイメージがあるかもしれませんが、この方式こそフェンダーが世に知らしめたデタッチャブル(着脱可能)ネックの大きなメリットでした。ジョイント部の奥までロッドが行きわたることで、最も高い剛性が求められるジョイント部近辺の強度を上げることができ、またヘッドの付け根部分を貫通させないことから、この部分の強度を保つことができるわけです。
フェンダーのストラトには普通のヘッドと「ラージヘッド」の2種類があります。ラージヘッドは70年代に開発された設計で、記載されるロゴやモデル名もこの時代に準じます。
弦をナットから外れないようにする「ストリングガイド」は、機能は当然ですがルックス上でも細かなポイントで、円形のもの、板状のもの、棒状のものなどがあります。ボディとヘッドが同じ色になっているものは「マッチングヘッド」仕様といいます。
左:アルダー材、右:アッシュ材:アッシュ材の方が木目がしっかり出ている
ストラトキャスターのボディ材はアルダーとアッシュの2種類がメインです。
「アタックのアッシュ、粘りのアルダー」と言われ、ピックアップなど他の仕様が同じでもボディ材の違いによってトーンのニュアンスが変わってきます。アッシュ材は木目がはっきり出るため、その美しさもポイントになります。USAとMEXでは使用される木材に差はないと言われますが、FCSでは厳選された最上級のボディ材が使用されます。
バスウッドやポプラなど、ほかの木材が使用されることもあります。これらは安価で加工しやすい木材ですが、素直な音響特性を持っているため、他のブランドでは高級モデルで採用されることもしばしばあります。
ギターのボディ材について
上位機種ではボディ中央で2枚をつなげた「2P」のボディ、安価な機種では3枚をつなげた「3P」のボディとなります。2Pか3Pかで価格は大きく異なりますが、木材のグレードが等しい場合には音を聞き分けるのはほぼ不可能と言われます。音が同じで3Pだと安くなるわけですから、むしろラッキーと感じる人も多いようです。
ネックを受け止めるヒール部分は、長方形が基本です。これに対してモダン・スタイルでは、ハイポジションの演奏性を高めるため「ヒールカット」が施される場合があります。
他社製の最新モデルなどでは、ヒール部分をゴッソリ削り落としたものも見られます。しかしフェンダーはこうした路線に消極的です。ヒール部分はネックからの弦振動をボディへ伝達する重要な箇所で、ココの体積を削ってしまうのは音響上あまりよろしくないとの考えがあるからです。「ヒールがしっかり出ているのがフェンダーだ」という保守的な考えも無視できませんでしたが、最新鋭「アメリカンウルトラ」で初めてヒールの厚みまで落とし、新たな歴史を歩み始めました。
白/ミントグリーン/黒/べっ甲/パール、ピックガードのカラーも様々
ストラトのルックスは、ピックガードで決まると断言してもいいでしょう。基本は白ですが、ヴィンテージ感のある黄色がかったものや薄い緑が入ったもの、黒やパール、べっ甲柄などいろいろなものがあります。またピックガードを重ねる枚数によって
という仕様があり、重ねて行くにつれて厚く丈夫になっていきます。1Pのものはボディとの間にピックを挟めるほどの柔軟性がありますが、経年変化で歪んでしまうことがあります。3Pは 白+黒+白 など色調の異なる板を重ねるのが普通で、斜めにカットした外周によりその色の違いが確認できます。金属製のものやミラー(鏡)になっているものなど、変わった素材が使われることもあります。
白+黒+白の3Pピックガード
ネジにこだわる人もいる
かなりマニアックなポイントですが、50年代風のストラトキャスターのピックガードは8本のネジで、60年代以降のストラトキャスターやほとんどのストラトタイプのギターは11本のネジでボディに固定されています。ネジの個数でも印象に違いが出ますよ。
ストラトキャスターを極める!(ネジ編) – ギターニュース.com
同じアメリカン・スタンダード・ストラトの中でHSS配列のモデルも存在する
ストラトキャスターのピックアップは3シングル(3S、SSS)を基本としていますが、現代的なモデルではリアをハムバッカーに置き換える「HSS」配列が多く採用され、このほか「HH」配列も見られます。ハムバッカーは高出力で出音が太く、ロックにおいては特にディストーション・エフェクターとの相性が抜群です。HSS配列ではシングルコイルとの音量差が懸念されますが、フェンダーのハムバッカーは出力がうまく抑えられているので心配ありません。
キレの良いコード演奏などで澄んだ音が欲しい場合は、オーソドックスなSSS配列が最も理想的です。このSSS配列で歪ませた軽やかで鋭いトーンも活用されますが、ハムバッカー並みに太くのびやかなソロ用のトーンを得ようと思ったら、ファズで飽和させるのが一般的です。
フェンダーはギター本体のメーカーでありながら、世界的なピックアップのメーカーでもあります。
このようにモデル名に年代が入っているピックアップは、ヴィンテージ・スタイルです。材料から作り方まで当時と全く同一のレシピで作られるものもあれば、年代の特徴を大まかに再現したものもあります。
モダン・スタイルではヴィンテージ風のサウンドを残しつつ、ハムノイズを除去した「ノイズレスピックアップ」、ヴィンテージPAFを再現した「ショウバッカー」など、新しい設計であってもサウンド的にはヴィンテージ系を目指す傾向にあります。その中で「ダブルタップ・ハムバッカー」は、ハムバッカー時とコイルタップ時の音量差をうまく整える、使いがっての良さを重視した設計になっています。
アーティストモデルではディマジオやセイモアダンカンなどの社外品が特別に搭載されることも多く、カスタムショップ製のピックアップを搭載してアップグレードしたモデルも多くリリースされています。
ストラトキャスターの操作系は、マスターボリューム1基&トーン2基の「1V2T」に、5WAYセレクタースイッチ、という構成です。新旧の違いは特に、トーン回路で見られます。
Vintage ヴィンテージ・スタイルでは、トーンがそれぞれフロントピックアップ、ミドルピックアップに効き、リアはトーンなし、という配線です。リア単体ではキャリッキャリな音ですが、ミドルとのハーフトーン時にトーンを使用できます。
Modern 現代の感覚では、リアにトーンが効いたほうが便利だと考えられています。そこでモダン・スタイルのストラトでは、トーン1でフロント&ミドル、トーン2でリア、という配線が標準的です。また、サウンドバリエーションを拡充させる「S-1スイッチ」、ツマミを絞ったときの音を良好に響かせる「トレブル・ブリード回路(ボリューム)」、「グリースバケット回路(トーン)」といった特殊配線が採用されるモデルもあります。
ギターの性能にかかわる重要な金属パーツは「ペグ」と「ブリッジ」、そして「サドル」です。
Vintage ヴィンテージ・スタイルでは、ペグに軽量な「クルーソンタイプ」、ブリッジは「6点留め」、サドルは鉄板を曲げて作った「ベントサドル」という組み合わせが普通で、上位機種になると時代ごとの刻印の入り方や微妙な寸法などまで再現されます。これらのパーツは現代の音楽シーンにおいても充分に通用する大変優秀なものですが、モダン・スタイルのモデルを中心に、安定性や音響特性といった性能を増強させたパーツが搭載されます。
Modern 金属パーツは、よりスムーズな作動、より高い精度、より高い剛性、そしてよりクリアなサウンドを目指して進化していきました。さまざまな仕様を見ていきましょう。カッコ内はカタログでの表示です。こうしたパーツは後から交換することも比較的容易ですから、好奇心で試してみるのもお勧めです。
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