アリアブランドのギターについて

[記事公開日]2016/1/13 [最終更新日]2022/4/5
[編集者]神崎聡

アリアブランドのギター

「アリア(Aria)」は名古屋に本社を構える楽器商社「荒井貿易(1955年創業)」のブランドです。創業者の荒井史郎氏がクラシックギターのプレイヤーだったこともありこの分野から業績を拡大、当初はクラシックギター本体、楽譜、教則本などを取り扱っていました。現在では本場スペイン製のクラシックギターをアリア名義でリリースしているほか、エレキギター、フォークギターなど各分野で初心者向けから上級者向けまで、また王道モデルからちょっとマイナーな楽器まで、幅広いラインナップを手掛けています。


ブランド名「アリア(Aria)」は社名「荒井(Arai)」のアナグラム(言葉の並べ替え)ですが、社名のアナグラムで意味のある言葉に美しくまとまった、世界的に稀有なブランド名といえます。エレキギターは1963年頃に始まり、1966年から「Aria Diamond(アリア・ダイアモンド)」名義でリリースしていましたが、
「Ariaより一歩進んだ、完成度の高いプロ志向のギターを作る」
というコンセプトで、1975年ころにブランド名を「Aria Pro II」に変更しました。

時代もあってフェンダーギブソンリッケンバッカーなど有名ブランドのコピーモデルを多くリリースしていましたが、そんな中でも独自設計のオリジナルモデルを積極的に提案しています。オリジナルギター第一弾となったレスポールタイプ「PE-1500」、続いてリリースされたスルーネックのベース「SB-1000」は海外アーティストを中心に「他のブランドとはちょっと違うルックス」、「機能面や演奏性に優れている」、「オールドよりも良い」といった高い評価を受けて大ヒット、国内でも愛用者を増やします。

レスポールタイプ「PE」愛用者には、高校時代にバイト代で購入したという福山雅治氏をはじめ、渡辺香津美氏(YMOサポート時)、松原正樹氏(パラシュート在籍時)、大橋隆志(ジェイル大橋。聖飢魔Ⅱ)、石原慎一郎氏(EARTHSHAKER)、五十嵐美貴氏(SHOW-YA)、ニール・ショーン氏(Journey)などそうそうたる顔ぶれです。



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今ではアリアプロIIの名前でコピーモデルを出すことはなく、ブランド名を冠したオリジナルギターのみをリリースしています。「PE」や「RS」など歴史に名を残す名機が今もラインナップされていますが、当時の仕様を再現しながらも、現役で現場に立つ現代の楽器として設計されています。

アリアが展開するギターブランド

ちなみに「アリア」にはエレキギター/ベースのみならず、アコースティックでもいくつものブランドがあり、それぞれのコンセプトに従った製品展開をしています。

エレクトリック系ブランド

  • Aria Pro II:エレキギター、ベース、弦などグッズ
  • AP:アリアプロIIのカスタムショップ(高級ライン)
  • Legend(レジェンド):フェンダー系の初心者向けコピーモデル
  • Britz(ブリッツ):ギブソン系の初心者向けコピーモデル

アコースティック系ブランド

  • Aria:アコギ、クラシックギター、各種グッズ
  • Aria Elecord(エレコード):エレアコ
  • Aria Sinsonido(シンソニード):消音ギター/ベース
  • Aria Dreadnought(ドレッドノート):アコギ全般
  • PEPE:児童用の小型クラシックギター

アリア・プロIIのラインナップ

「メイドインジャパン」が世界的なブランドとして認知されているなか、アリアプロIIの上位機種は国内メーカーでOEM生産されます。そのため、プロミュージシャンの仕事現場にそのまま持っていける品質があります。また中堅機種や価格を抑えたエントエリークラスは国外のメーカーでOEM生産されますが、一様にアリアのブランドを冠するべく品質管理が行なわれます。

アリアプロIIのラインナップは、仕様が近い他ブランドのギターよりいくぶん低めの価格設定になっており、日本の明日を担う初級ギタリストの強い味方になっています。

国産レスポールタイプの名機「PE」

Aria Pro II PEシリーズ 左から:PE-2500、PE-1500RI、PE-SUPRA、PE-R80、PE-LUX SPP、PE-DC ☆sun-go☆ BK

アリアプロIIを代表する名機「PE」は、「プロトタイプ」を名称の由来としています。楽器メーカー「マツモク」の社員だった林信秋氏(のちに独立して「アトランシア」を設立)が開発に携わり、1976年に第一号「PE-1500」が発表されました。レスポール的なアプローチの楽器でありながらハイポジションの演奏性が極めて高いことから、テクニカルなプレイの多いロック系のサウンドにはうってつけのギターになっています。

ブリッジ形状、ピックアップやコントロールの配列などでさまざまなバリエーションがありますが、

  • 美しい曲面を描くカーブドトップ
  • スルーネック並みに弾きやすいヒールレスカッタウェイ

はこのPEのアイデンティティとして、全モデル共通スペックとなっています。

開発当初には、「フェンダー・ストラトキャスターギブソン・レスポールのイイとこ取り」のようなコンセプトがあったようです。初期型の「PE-1500RI」およびボディトップをフレイムメイプルにした「PE-2500」はフェンダー同様の弦長648mmが採用されており、操作系(ボリューム/トーンとピックアップセレクタ)が近くにまとめられていますが、これはフェンダー系のギターを意識した設計です。

現代版のPEは、レスポール的な方向付けによって圧倒的な完成度を誇ったと言われる名機「PE-R80」を基調とした仕様にまとめています。

  • 弦長628mm(ミディアムスケール)
  • ピックアップセレクタはレスポールと同じ6弦側

という設計で、つまみの数、コイルタップの有無、ネックのプライ数、ブリッジ形状、指板インレイなど、色々な仕様のモデルがリリースされています。

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ディンキータイプ「RS」&「MAC」

「RS」と「MAC」は、テクニカルなプレイを強力にバックアップするディンキー・タイプです。両モデルともストラトキャスターをシェイプアップさせた、軽量でスマートなボディシェイプを持っており、トップは滑らかなカーブを描く「カーブドトップ」になっています。

RSシリーズ

Aria Pro II RS Custom RS CUSTOM、RS CUSTOM II

オリジナルフロイドローズとセイモアダンカン・ピックアップで武装した、HM/HRにうってつけのスルーネック仕様です。ボディはレスポール同様にメイプルトップ/マホガニーバックとなっており、甘さとアタック感の両面をカバーしつつ、スルーネックのロングサスティンが得られる「ほぼ最強仕様」となっています。ピックアップ配列にはSSHと2Hの2種類があり、操作系はシンプルにまとめられています。指板には硬質なアタック感を特徴とするエボニーを採用し、22フレット仕様になっています。

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MACシリーズ

Aria Pro II MA Series 左から:MAC-LUX、MAC-LUX PUGL、MAC-50QT I、MAC-Slasher、MAC-50QT II、MAC-45DL

アタックの立つアッシュやクセのないバスウッドなどボディ材に変化を持たせた、24フレット仕様ボルトオンジョイントネックのシリーズです。トレモロにはシンクロ/ロック式が、ピックアップ配列にはSSHと2Hがあり、ボディカラーもモデルごとに異なっており、幅広いタイプが用意されています。

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プロ指向コンポーネント「FL」シリーズ

Aria Pro II FL series 左から:FL-STD I 3TS、FL-STD I SWH、FL-STD II ABK、FL-STD II BKWH

「アリアのコンポーネントギター」をコンセプトとした「FL」シリーズは、スタンダードなストラトキャスターをベースに高品位なパーツと現場指向の設計で仕上げた、プロ指向のギターです。

  • メイドインジャパンの高精度な楽器本体
  • 安定性に優れるジェスカー社製ステンレスフレット
  • コンセプトに応じた高品位ピックアップ
  • もはや世界標準となっているゴトー製ロッキングチューナー&ブリッジ

このようなスタジオミュージシャン御用達スペックでありながら、税別価格が30万円を切るという、アリプロらしいコストパフォーマンスが大きな特徴です。シールドをストラップに引っ掛けやすくなるようにジャックを配置していることからも、ありがたがって大事に弾く楽器というより現場でガンガン使い倒す楽器と言う立ち位置だということがわかります。

伝統的なスタイルを持つ「I」、現代的なスタイルを持つ「II」という、コンセプトに合わせた2タイプがあります。一見そっくりなギターですが、目指している方向が全く異なっているのがスペックからも分かりますね。

FL-STD I:ヴィンテージスタイル

  • ヴィンテージ指向の高品位ピックアップ「Klein(クライン)」製「Jazzy Cat」を採用
  • コードが押さえやすく、ブルース系のテクニックにフィットする240Rの指板
  • 伝統的な6点留めトレモロユニット
  • ハイポジションが弾きやすいヒールカット(ジョイントプレート有り)

FL-STD II:モダンスタイル

  • アクティブピックアップの定番「EMG」製「SA」3基にトレブルブースター「SPC」を追加
  • 現代的なプレイと相性の良い305Rの指板
  • 現代的な2点止めトレモロユニット
  • ハイポジションが弾きやすいヒールカット(ジョイントプレートなし)

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60年代の雰囲気が漂う「RETRO CLASSICS」シリーズ

アリアプロIIは、かつてベンチャーズモデルとしてモズライト的なギターをリリースしていました。「レトロクラシックス」シリーズは、そのイメージを色濃く反映した、ビザール感でいっぱいのラインナップです。

DM-01:モズライトをイメージしたボディシェイプ

Aria DM-01

RETRO-1532J:1960年代に実際に販売していたモデルの復刻

Aria RETRO-1532J

両モデルとも互いに劣らぬレトロさ加減ですが、

  • バスウッドボディ、メイプル21フレットネック
  • P-90タイプのピックアップ2基
  • ボルトオンジョイント
  • ジャガー/ジャズマスターで名高いフローティングトレモロユニット

というスペックが共通しています。

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伝統的なアーチトップ「FA」

aria-fa-bwFA-BW

荒井貿易が「ヘリテイジ(Heritage:ギブソンから独立した高級ブランド)」を取り扱っている関係で、アリアからはこちらのラインナップとは方向性の異なるアーチトップがリリースされています。

FA-BW(ブロードウェイ)

「FA」は、フルアコの分野でギブソン/エピフォンとシェアを競った「ディアンジェリコ」とその後継「ダキスト」のスタイルを踏襲した「ニューヨーカースタイル」のフルアコです。

  • 17インチ幅の大型ボディはスプルーストップ、フレイムメイプルサイド&バック
  • 648mm(ロングスケール)のメイプルネックに22フレットのエボニー指板
  • 木製ブリッジ&テールピース

という伝統を継承したフルアコの本体に、

  • 国産フローティングミニハムバッカーピックアップ
  • ヴォリューム&トーンをマウントさせた木製ピックガード
  • という電装系で、電気部品で楽器本体の鳴りを邪魔しないようになっています。

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日本人に合わせたセミアコ「TA」シリーズ

「ギブソンES-335」の流れを汲むオリジナルのセミアコです。モデル名の「T」は、セミアコの別名「シンライン(Thinline)」を由来としています。

  • ボディを日本人に合わせてサイズダウン
  • マホガニー製センターブロックに幾筋も溝を穿(うが)ち、軽量化と生鳴りを実現
  • TOM(チューン・O・マチック)のスタイルから重量を増して鳴りを安定させたブリッジ&テールピース

というコンセプト、ゴトー製ペグやスイッチクラフト製アウトプットジャックといった信頼性の高いパーツを採用、かつ国産でありながら、定価が20万円を大きく下回る驚異的なコストパフォーマンスで魅せてくれます。

「ドミノ」と「トニック」は、伝統的なセミアコにボディ材とピックアップで方向性に違いを設けたモデルで、トップラッカー仕上げによる美しさも魅力になっています。

TA-DOMINO

Aria TA-DOMINO

マホガニーネック&ボディ、エボニー指板。ネックはやや厚め。出力を抑えたクリアなトーンを持つ、オリジナルのジャズ/ブルース指向ピックアップ搭載。

TA-TONIC

Aria TA-TONIC

マホガニーネック&メイプルボディ、エボニー指板。ネックはやや薄め。ウォームな中音域を特徴とする、オリジナルのロック/ポップス指向ピックアップ搭載。

TA-JAIL “STRIPE BURST”&”DROP BURST”

Aria TA-JAIL

聖飢魔Ⅱのジェイル大橋代官氏シグネイチャーモデルとして、ネックグリップやピックアップなど細部の仕様変更を施した特別仕様のTAが限定生産されます。白黒赤で構成される本人仕様のボディカラーが特徴的です。

TA-65k

Aria TA-65k

アーチトップにビグスビーを載せるのは、こうしたギターのアレンジとして一般化しています。ここでまさかの「ケーラー」製トレモロユニットを載せるのは、ハードロック/ヘヴィメタルブームを牽引したアリアならではの発想で、ほかのブランドではなかなか見ることができません。しかしながらケーラートレモロはTOMブリッジのギターと相性がよく、取付けにはボディの加工をほとんど必要としません。こうしたアーチトップに搭載するのは決して冒険ではなく、むしろ理にかなっていると言えます。
Fホールを持つ薄型ボディにケーラートレモロの重厚なかっこよさが加わった、欲張りなギターとして仕上がっています。

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