
ストラトキャスター(略:ストラト)は、1954年にフェンダーからデビューして以来70年に渡って基本的な外観や設計をほとんど変えていない、この時点ですでに完成した楽器です。また仕様変更しやすいため時代の流行に合わせやすく、パーツ交換など改造が比較的やりやすいため、自分好みに変身させる楽しみもあるギターです。このページではストラトキャスター・タイプのギターにスポットを当て、その特徴や魅力に迫っていきましょう。
備考:「ストラトキャスター」はフェンダーの登録商標であり、フェンダーもしくはスクワイアの製品でなければ名乗ることができません。これ以外のブランドのものは全て「ストラトキャスタータイプのギター」や「ストラトのコピーモデル」などと言わなければならない訳ですが、それでは余りにも不便です。こういったことから、本家もコピーモデルもひっくるめて「ストラト」と言われています。
- ギター教室「The Guitar Road」 主宰
- 小林 健悟
名古屋大学法学部政治学科卒業、YAMAHAポピュラーミュージックスクール「PROコース」修了。平成9年からギター講師を始め、現在では7会場に展開、在籍生は百名を超える。エレキギターとアコースティックギターを赤川力(BANANA、冬野ユミ)に、クラシックギターを山口莉奈に師事。児童文学作家、浅川かよ子の孫。
- エレキギター博士
- コンテンツ制作チーム
webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、”プレイヤーにとって役立つ情報提供”を念頭に日々コンテンツを制作中。
- ストラトキャスターの特徴
- ストラトを選ぶ時のポイントは?
- 《厳選!》おすすめのストラト
ストラトキャスターの特徴
ストラトキャスターの特徴を、本体の設計とサウンドという二つの視点から見ていきましょう。現代では当たり前と思われている特徴が多いですが、ストラトキャスターの発明はまさにイノベーションであり、エレキギターの設計に革命を起こしました。
フェンダー・メイドインジャパン・ストラトキャスターを弾いてみた!
1)フェンダーから始まったボルトオンジョイント構造
ネックとボディがネジ留めされた
ボルトオン・ジョイント
ボディとネックをネジ留めする「ボルトオンジョイント」は、フェンダーから始まった、同社を代表する構造です。「デタッチャブル(取り外し可能な)ジョイント」とも言われ、メンテナンス性が優秀で、アタックの立つ独特のトーンが得られます。
2)多彩なトーンが得られるピックアップ配列
3つのシングルコイル・ピックアップ
フロント/センター/リアの3箇所にシングルコイル・ピックアップを配置するSSS配列がストラトの基本です。2基のトーンポットはフロントとミドルに効き、リアにはかからないのが本来の設計ですが、現代ではリアにも効くようにアレンジされることもあります。それぞれ単体のトーンが得られるほか、隣同士のピックアップを同時に使用する「ハーフトーン」が得られます。このハーフトーンの軽やかさと柔らかさのある音が、他のギターにはないストラト最大の個性です。
現代ではピックアップ配列が多様化しており、リアをハムバッカーに置き換えたSSHを筆頭に、さまざまな配列が採用されます。
3)ハイポジションが弾きやすいダブルカッタウェイ
ダブルカッタウェイの様子
カッタウェイ(Cut-Away)とは、高い音に手を届きやすくするためにボディをカットした部分のことで、ツノのように残された部分はそのまま「ホーン(角)」と言います。ストラトでは1弦側だけでなく6弦側にもカッタウェイを施していますが、これにより最終フレットまでラクに指が届きます。
4)弾き手にフィットするボディ形状
体にフィットするようにできている
バックコンターとエルボーカットは「楽器が身体に当たって痛い」というプレイヤーのわがままに応えた仕様です。今では割と当たり前の仕様ですが、このアイディアはストラトキャスターが世界初です。
5)大胆なアーミングが可能
ストラトのアーム
トレモロシステム自体は昔からありましたが、ストラトの「シンクロナイズド・トレモロシステム」は従来のものより音程の可変域が広く、緩やかなビブラートから急降下するアームダウンまで幅広い表現ができます。
また、「トレモロスプリング(いわゆる、裏のバネ)」がボディの振動を受けて一緒に振動するため、ストラトならではのちょっとしたリバーブ感や甘さのあるトーンが得られます。
6)ボリュームが操作しやすい
小指で調節できる
ストラトのボリュームは、いわゆる「定番機」の中で最も操作しやすい場所、1弦のすぐそばについています。これは常時ボリュームを操作しながら演奏するラップ・スティール(主にハワイアンで多用されるスライド奏法で弾くギター)の仕様を持ってきたもので、ソロ/バッキングなどでの音量操作がスムーズにできるほか、ボリューム奏法(ヴァイオリン奏法)が可能です。
はじめはボリュームポットに右手をぶつけてしまい痛い思いをしたり、知らない間に指が触れて音量が下がってしまったりするかもしれませんが、練習していくうちに問題なくなります。
7) サウンドの特徴
甘さと鋭さがバランスよく配合された、透明感を帯びた軽やかな響きがストラトの音色です。ピックアップ単体ではパンチと密度があり、ハーフトーンでは軽やかさと透明度が際立ちます。ストラトはエレキギターの王道であり、あらゆるジャンルの音楽にフィットします。リアピックアップをハムバッカーに置き換えたSSH配列は、ハードなドライブサウンドに大変有利です。
HakaSession Vol.1「Fried Chicken」
こちらの動画はフロントピックアップ単体を使用した、僅かに歪ませたクランチサウンドでの演奏。多彩な音色を持つストラトキャスターですが、好きなポジションだけを一途に使用し、これを「シグネイチャー・トーン(自分の音)」にしているプレイヤーも多くいます。
ストラトを選ぶ時のポイントは?
これから始める人は、ギターを判別する基準を持っていなくて当たり前です。だから最初の一本は色や形など、ルックスで決めてしまっても大丈夫です。とはいえ楽器のことですから、サウンド面のちょっとしたポイントは押さえておいた方が良いでしょう。
リア・ピックアップに注目してみよう

ストラトキャスターのリアピックアップはシングルコイルが基本ですが、ハムバッカーが付いていることもあります。特にロック系においてこの違いは大変大きく、運命を分かつ問題だと言っても過言はありません。見た感じで、あなたがカッコいいと思うのはどちらでしょうか。また、あなたの好きなアーティストが弾いているストラトのリアピックアップは、どちらでしょうか。
一般に、ヴィンテージ志向だったり軽快なサウンドを持ち味としたり、またファズを活用したりするプレイヤーのリアはシングルコイルが多く、ディストーションやオーバードライブを活用してパワフルに演奏するプレイヤーのリアは、ハムバッカーが多数派です。
よりヘヴィなサウンドを求めるなら、「スーパーストラト」がおすすめ!

Jackson PRO PLUS SERIES DINKY DKAQ
メタルなどヘヴィ・ミュージックにおいては、ストラトを強化させたいわゆる「スーパーストラト」がおすすめです。ボディサイズを引き締める、ハイポジションへのアクセスを向上させる、ハムバッカーを備える、フロイドローズを備えるなど、演奏性や出力の面で性能をアップさせた結果、ストラトキャスターとは違った姿になったギターはスーパーストラトと呼ばれます。
多くのブランドでスーパーストラトがリリースされていますが、ジャクソン(Jackson)社のソロイスト(Soloist)とディンキー(Dinky)は、その草分けとみなされています。
関連記事:
モダン系万能ギター「スーパーストラト」の選び方とおすすめモデル
グレード別おすすめのストラトキャスター・タイプ
ここまで「ストラト」というキーワードで色々なポイントを見てきました。ここからはある程度のグレードに分類して、おすすめのストラトを見ていきましょう。今やストラトは多様の一途をたどっており、さまざまなブランドが独自のスタイルのストラトをリリースしています。
初心者におすすめ!手に入れやすく長く使える入門機としておすすめのストラト
まずは入門機として、手に入れやすい価格帯のストラトを見ていきましょう。これからギターを始めようという人にとって何万円という金額は、かなり高額に感じるのではないでしょうか。しかし、音楽を演奏する道具には精度や安定性が要求されます。それを満たした上でのここまでの価格圧縮は、各社の企業努力の成果です。
まずは何よりスタートを切ろう!
低価格なギターに対して品質やサウンドを疑問視する意見がある、またこうしたギターでステージに立つ有名プロミュージシャンがいない、というのも事実です。しかしこれから始める方々にとっては「まずギタリストとしてのスタートを切る」ことが最優先です。限られた予算内でも、ぜひお気に入りの一本をゲットしてください。
プロの使用も可能な、中級者以上向けのストラト
このくらいのグレードになると、国内で生産されるものがモデルが目立ってきます。日本製のギターは総じて丁寧に製造され、またシビアに調整され、厳しい基準を通過して出荷されるので品質が高く、長期的な使用に耐えられます。国外生産であっても作りや/仕上げが丁寧になり、また部品や木材のスペックが高くなるので音も良くなってきます。高級ブランドではまだまだ入門機という扱いになりますが中級以上のギタリストにふさわしい性能があり、プロミュージシャンの使用に耐えることも充分可能です。
プロフェッショナル御用達、本気のストラト
普及価格帯のモデルは多くの人の手に渡ることを想定しており、特定のジャンルやスタイルに偏らないよう開発されます。これに対して高額なモデルは一定のこだわりを持つプレイヤーの手に渡ることを想定しているため、ブランドの個性や開発理念が色濃く反映されます。また材料の選定や製造だけでなく調整にもしっかり手間が掛けられるため、出荷時点ですでにプロフェッショナルの業務に耐えられる状態です。
以上、おすすめのストラトキャスター・タイプのギターをチェックしていきました。ストラトはエレキギターの代表選手であり、さまざまなジャンルやプレイスタイルをカバーできる、手元にあると何かと助かる優秀なギターです。ぜひ実際にチェックしてみてください。
※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。