《ギタリストへの扉が開く》Ibanez「AZES」シリーズ

[記事公開日]2021/9/7 [最終更新日]2021/9/7
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

Ibanez AZESシリーズ

エレキギター大手「アイバニーズ(Ibanez)」から、これからギターを始める人に向けた新しいギターがリリースされました。楽器としての音の良さや弾きやすさ、また扱いやすさまで考え抜き、かつ手に入れやすい価格を達成した新発想のギターです。そんなわけで今回は、初心者にはうってつけ、ちょっと巧い人やもっと巧い人の要求にも応えられる、Ibanez「AZES」シリーズに注目していきましょう。


NEW Ibanez AZES Essential Series Guitars – We played them
これから巧くなる人への優しさにあふれ、かつ巧い人ならここまでの音が出せるポテンシャルもある、従来の「初心者向け」という概念をひっくり返したギターです。

Ibanez「AZES」の特徴

Ibanez「AZES」は、好評を博している同社の「AZ」シリーズを、これからギターを始める人への愛情で煮込んだ感じに料理したギターです。ジャンルや現場を選ばないルックスとサウンド、あらゆる演奏にチャレンジできる演奏性、この二つが共存しています。

ちゃんとした木材で作る、ちゃんとした楽器

ある程度以上のグレードなら当たり前ですが、「AZES」は各部位に適切な木材がしっかりと設定されています。「AZES」のギター本体はネックにメイプル、指板にジャトバ、ボディにポプラがセレクトされており、中高音域が豊かに響く、本体もサウンドも重すぎない木材構成です。

新米ギタリストの未来をも見据えた、弾きやすい設計

アイバニーズは現代的な弾きやすさを大変重視しているブランドで、その理念は「AZES」でも大いに反映されています。高い演奏性は、「AZES」の重要な持ち味です。

肉体へのストレスを軽減させる設計

エルボーカット/バックコンター 「AZES31VM」。正面(左)の斜めにカットされている部分が「エルボーカット」、背面(右)の丸くえぐられている部分が「バックコンター」。

「AZES」のボディは、正面は右ひじ部分のストレスを軽減する「エルボーカット」が、背面には脇腹部分のストレスをなくす「バックコンター」が、それぞれ設けられています。こうした設計は、弾いているうちに肩が凝ったり脇腹が痛くなったりといった肉体へのダメージを大幅に軽減できます。

オールアクセス・ネックジョイント 丸く整えられたジョイント部。これぞ、アイバニーズの誇る「オールアクセス・ネックジョイント」。

また、ジョイント部は丸く整えられており、ハイポジションの奥深くにまで指が届きます。

現在の弾きやすさと未来の持ち替えを見据えたネック仕様

「AZES」のネックは、弦長25インチ、指板R250ミリ、ミディアムフレット、という仕様です。弦長については、このタイプのギターで一般的な25.5インチ(ロングスケール/フェンダースケール)よりちょっと短くて、運指がラクチンです。違うタイプのギターで一般的な24.75インチ(ミディアムスケール/ギブソンスケール)にも近い寸法なので、将来的に他のギターへ持ち替える時が来ても、移行はスムーズです。

ちょっと丸みを帯びた指板と高すぎないフレットという組み合わせは、これからさまざまな曲に出会っていく人のための、特定のジャンルや演奏スタイルに特化することのない、偏りのない仕様です。

ほぼすべてが手に入る、豊富なサウンドバリエーション

オルター・スイッチ 中央のミニスイッチが、サウンドバリエーションを倍化する「オルター・スイッチ」。

エレキギターのサウンドは、搭載するピックアップの仕様により「シングルコイルのきらびやかな鋭い音」か、「ハムバッカーの肉厚な太い音」かに大別されます。多くのギターがどちらか一方を選ばなければならない運命にある中、「AZES」では配線のマジックによってどちらも手に入れることができます。

「AZES」では5WAYセレクタースイッチとオルター・スイッチの組み合わせにより、シングルコイルのサウンドもハムバッカーのサウンドも手に入ります。さすがに厳密な意味で完全にとまではいきませんが、エレキギターで得られるオーソドックスなサウンドの、ほぼ全てを手に入れることができるのです。

本機のために開発されたシングルコイル「Essentials」とハムバッカー「Accord」は共に、どの音域もバランスよく聴こえるように設計されており、特定のジャンルに偏ることのない全方位へのサウンドメイキングが可能です。

安定性やメンテナンス性への工夫

「AZES」は、道具としての安定性や手入れのしやすさまで考えられています。初心者が苦労したり悩んだりしやすいところを、先回りして見事にフォローしてくれているわけです。

Ibanez AZES:ヘッド タテにスリットの入ったペグポスト。弦の端が飛び出さない、優しさ溢れる設計。

ペグは堅牢なダイキャスト製で、故障が起きにくい構造です。ペグポスト(軸)はタテにスリットが入っており、弦の先端をポストに差し込んで固定します。弦の着脱がスピーディーに行える上に、弦の端が外に飛び出さないため、手にもケースの内側にも優しい設計です。

Ibanez AZES:サドル コンフォート・ラウンド・スティールサドル。高さ調節ネジを2点で支えており、安定性が高い。

コンフォート・ラウンド・スティールサドルは、本機で初めて採用されています。伝統的な鉄板製を踏襲しながら安定性を高める構造になっており、チューニングの安定度や音の伸びが強化されます。

Ibanez AZES:アウトプットジャック モノユニット・アウトプットジャック。最も故障の多い箇所を強靭に仕上げた、画期的な構造。

アウトプットジャックは固定が緩んでグラグラさせているうちに断線してしまったり、差し込むプラグによって安定度が違ったり、金具が外れて内部に入り込んでしまったりと、何かとトラブルの起きやすいパーツです。これに対して「AZES」では新たにモノユニット・アウトプットジャックを採用、マウント用プレートとジャック本体を一体化させた新しい設計で緩みやグラつきが生じにくく、またプラグ種別での通電差異も軽減しています。

Ibanez「AZES」のラインナップ

では、「AZES」のラインナップを見ていきましょう。「AZES」は現在、SSSピックアップ配列&固定式ブリッジの「AZES31」、SSHピックアップ配列&トレモロユニット装備の「AZES40」の2モデルがリリースされています。

Ibanez「AZES31」

AZES31 上から、IV(アイボリー)、VM(ヴァーミリオン)

「AZES31」は、SSSピックアップ配列、固定式ブリッジという仕様です。固定式ブリッジは細かいことを気にしなくてもよいシンプルさと、バンっと弾いたらバンっと返ってくる硬質なストレートさが持ち味です。5WAYセレクタースイッチとオルター・スイッチの組み合わせで、8通りのサウンドバリエーションが得られます。

Ibanez AZES31:ピックアップ配列

オルタースイッチを「ON」にすると、二つのシングルコイルを直列につなげる「疑似ハムバッカー」が得られます。またこのタイプのギターではまことにおいしい、フロント+センター及びセンター+リアのハーフトーンについては、オルタースイッチの状態いかんにかかわらず使用できます。

Ibanez「AZES40」

AZES40 上から、MGR(ミントグリーン)、PRB(ピュアリストブルー)、BK(ブラック)

「AZES40」は、SSHピックアップ配列、トレモロユニット装備、という仕様です。トレモロユニットは何よりアーミングができますから、表現の幅がぐっと広がります。またその構造上、固定式ブリッジより若干やわらかめのサウンドになる傾向にあります。こちらは5WAYセレクタースイッチとオルター・スイッチの組み合わせで、9通りのサウンドバリエーションが得られます。

Ibaenz AZES40:ピックアップ配列

オルタースイッチを「ON」にすると、フロントの「疑似ハムバッカー」が得られます。また、オルター・スイッチの状態に関わらず、リアのハムバッカーが得られます。

これから始める人は、どっちを選べばいいのか?

「AZES31」はシングルコイルが活きるストレートな感じ、「AZES40」はハムバッカーの活きるホットな感じ、というイメージです。では、これから始める人はどっちにするべきでしょうか。

こればっかりはあまり熟考せず、ルックスの好みで決めてしまいましょう。コレを「インスピレーション」や「フィーリング」と読みかえると、かっこいい感じになります。ちょっと心配な人は、自分が好きなギタリストのギターにトレモロユニットが付いているかどうか、これを調べてみましょう。あまりこだわりのない人は、将来的にアーミングが必要になるかもしれませんから、「ASES40」にしておきましょう。


以上、アイバニーズの放つ初心者用モデル「AZES」に注目していきました。これまで初心者向けギターと言うと、企業努力で価格圧縮したモデルが大多数でした。これに対して「AZES」は、初心者がギターのどこに悩みやすいかをしっかり考え、また上達に何が必要なのかを深く考えた、まさに初心者に向けた設計になっています。しかも同社製品の中ではかなり思い切った低価格を達成しており、画期的なギターだと言えるでしょう。

この先日本だけでなく、世界中どこででも”趣味の多岐化”は一層進むと思います。他の趣味と比べ趣味としてのギター演奏の入り口には高めのハードルがあると感じていますから、常識を覆すような”超”気軽に取り組みやすいギターを生み出すことに大きな魅力を感じています。一人でも多くの人が、ギター演奏の世界に入ってきてほしいものです。
- Ibanezプロダクトマネージャー宮沢英哉(みやざわ・ひでや)氏
「魅力あるギターを生み出す使命」Ibanezメールインタビュー

このインタビューで語られた「常識を覆すような”超”気軽に取り組みやすいギター」が、ついに具現化したわけです。ショップで見かけたら、ぜひ手にとってみてください。

※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。