SOLAR Guitars 現役プレイヤープロデュースのメタルギア

[記事公開日]2023/3/31 [最終更新日]2023/4/1
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

SOLAR Guitars

「SOLAR Guitars(ソーラー・ギターズ)」はヘヴィ路線一本に絞った専門性の高さで、Djent(ジェント)をはじめとする現代のヘヴィミュージックシーンの注目を集めています。ラインナップには豊富なバリエーションがありながら統一感があり、また機能性と演奏性に優れ、ライブでもレコーディングでも活用できます。今回は、このSOLAR Guitarsに注目していきましょう。


FEARED – The Mare (OFFICIAL VIDEO)
スウェーデン出身のアーティストであり、80万人近いチャンネル登録者数を誇るインフルエンサーでもある、Ola Englund氏。数々のバンドを歴任し、ソロ活動も営んでいる。氏が発起人となって、SOLAR Guitarsは立ち上げられた。

SOLAR Guitarsとは、どんなブランド?

SOLAR Guitars:ヘッド 全モデル共通のヘッドストック。リバースヘッドでこのトガり方、メタルを演るためのギターだという強烈なアイデンティティを感じさせる。

SOLAR Guitarsは2017年、スウェーデン出身のギタリスト、Ola Englund(オラ・イングランド)氏が理想とする「モダンで洗練された、シンプルでエレガントなギター」を目指して立ち上げられました。メタルシーンで活躍するイングランド氏ご自身がツアーでもDTMでもソングライティングでも一軍起用できる、ヘヴィミュージックに特化したギターをプロデュースするのがコンセプトです。

ブランドの発起人が現役のプレイヤーであることも手伝い、SOLAR Guitarsは立ち上げからまだ5年ほどにも関わらずイングランド氏のビジョンは世界中で支持されました。高すぎない価格設定からさらなる価格圧縮を達成したモデルもリリースしており、比較的手に入れやすい価格で鋼鉄の精神を鍛錬できます。

SOLAR Guitarsの特徴

ステルスなルックス

A1.6ATG BARITONE MKII A1.6ATG BARITONE MKII。鋭いホーンやヘッド、そして虚飾を排した黒光りする意匠。

SOLAR Guitarsは全モデルが「ステルスなルックス(stealth looks)」であると標榜しています。直訳では「隠密行動」や「レーダーに補足されにくい」といった意味ですが、ダークな色調を中心としたカラーリングはもとより、刺さりそうなヘッドやホーン、またV型やEX型といった攻撃的なボディ形状は、メタルという音楽性では何ら違和感を覚えないわけです。また装飾と呼べるものはヘッドロゴと指板のインレイくらいで、バインディングも指板のポジションマークも非採用という虚飾を排したシンプルな意匠もステルス的です。

SOLAR Guitars代表オラ・イングランド氏は、「誰もが独自の音楽的目標と願望を持っているのだから、プレイヤーにラベルを貼りたくない(We don’t like labeling players; everyone has their own musical goals and aspirations.)」とコメントしています。ステージで輝くのはプレイヤーなのであって、ギターではない、というわけです。

メタルに特化したプレイアビリティ

A1.7:ボディバック 代表的機種「A1.7」の背面。スル―ネック並みにバッサリと切り取ったジョイント部により、ハイポジションの演奏性は極めて良好。ストラップピンがホーンの先端ではなく、背面側に設置されているのもポイント。

SOLAR Guitarsでは全モデル共通で、立体的な切削による抱え心地の良いボディ形状、クセのない弾きやすいネック、アクセス良好のハイポジション、24フレットの音域、大型のフレットが採用されています。現役のプレイヤーがプロデュースしているだけあり、メタル志向のギタリストにとって非常に受け入れやすい本体設計です。

A1.7:コントロール 同じ「A1.7」の操作系。演奏の邪魔にならないようボリュームポットは遠めだが、バイオリン奏法もできる絶妙な配置。

操作系の配置も特徴的です。全てのボディ形状に共通して、ボリュームノブはストラトより遠い感じのブリッジのすぐ近く、トーンポットは遥か彼方に設置されます。これはヘヴィ系のプレイヤーがボリュームノブを0か10かでしか使用しない、またトーンを積極的に使用することがほぼない、といった傾向を反映した設計です。ノブやトグルスイッチはボディから若干沈むようにマウントされ、演奏の邪魔になりにくくなっています。

また、多くのモデルで5WAYセレクタースイッチやノブのプッシュ/プルによる特殊配線が利用できます。

セイモア・ダンカンとのコラボレーション

SOLAR Guitars:ピックアップ セイモア・ダンカン設計によるオリジナルピックアップは8弦まであり、シングルコイルサイズのハムバッカーもある。

セイモア・ダンカン社は、オラ・イングランド氏が動画配信を始めた頃に製品の大部分を箱で送ってきたといいます。それ以来イングランド氏はセイモア・ダンカンのピックアップを愛用するようになり、自身のブランドのピックアップについても同社に設計を依頼しています。

「DUNCAN SOLAR」と名づけられた専用ピックアップは、フロントがSH-1(’59)、リアがSH-14(CUSTOM5)をベースにしつつ、パワフルでありながら強すぎないあたりの出力に設定されており、中域が豊かで明瞭に響き、ダイナミクスが豊かに表現できます。

セイモアダンカン・ピックアップの種類

2段階のグレードでラインナップを展開

SOLAR Guitarsでは本体の基本設計にバリエーションを取り、それぞれに上位グレードの「1」と普及グレードの「2」を設定した中で、ラインナップを展開しています。

「A1.7」「E1.6」など上位グレードの基本仕様である、ステンレス製スーパージャンボフレットとEVERTUNEブリッジが、「E2.6」「V2.7」など普及グレードでは非採用となります。その一方で、ギター本体の設計や寸法、エボニーを基本とする指板材、「DUNCAN SOLAR」を基本とするピックアップ、ギア比18:1のペグについてはグレードの上下を問わず共通仕様です。

では、SOLAR Guitarsのラインナップをかいつまんで見ていきましょう。モデル名は「A1.6C(タイプ+グレード+弦数+カラーリングや特別仕様の表示)」というようにキッチリと形式化されています。

《定番スーパーストラト》type A/AB/S


AT THE GATES – Spectre Of Extinction (OFFICIAL VIDEO)
タイプAでは、アーティストモデルも多数リリースされている。

大きく取ったカッタウェイを更にえぐるようなスクープカットが特徴のタイプ「A」は、SOLAR Guitarsを代表するモデルです。ラインナップの中核であり、8弦までの弦数、27インチなどバリトンスケール、ファンフレットといった特殊な仕様も全てカバーしています。タイプAのボルトオンジョイント仕様がタイプ「AB」です。

SOLAR Guitars「A1.6C」

A1.6C

「A1.6C」はSOLAR Guitarsの王道と言えるモデルで、アルダーボディ、メイプルネック&エボニー指板という本体に、DUNCAN SOLARハムバッカー、EVERTUNEブリッジを搭載しています。操作系はシンプルですが、5WAYセレクタースイッチによりじゅうぶんなサウンドバリエーションが得られます。

SOLAR Guitars「A1.7BOP-FF」

A1.7BOP-FF

「A1.7BOP-FF」は木目が確認できるオープン・ポア仕上げのスワンプアッシュボディ、7弦ファンフレット仕様のモデルです。ファンフレットは7フレット地点をニュートラルとし、弦長は25.5″~27″です。SOLAR Guitarsはファンフレットには消極的で、今のところA1からのみリリースされています。

SOLAR Guitars「AB1.6HTPB」

AB1.6HTPB

ボルトオンモデル「AB1.6HTPB」は、スワンプアッシュボディ、ローステッドメイプルネック&指板という本体に、トラッドなスタイルのHipShot社製固定式ブリッジという組み合わせです。DUNCAN SOLARハムバッカーは、フロントがシングルコイルサイズになっています。ボリュームとトーンのノブにスイッチが仕込まれており、フロント/リア別個にシリーズ/パラレル(直列/並列)が切り替えられます。3WAYセレクタースイッチとの組み合わせで、ミックスポジションのサウンドバリエーションが4種類得られます。

type Aを…
Sサウンドハウスで探す

SOLAR Guitars「S1.6HLB」

S1.6HLB

カッタウェイにスクープカットを施さないスーパーストラトは、別モデルのタイプ「S」という扱いです。ボディトップに銘木をあしらった妖艶な意匠を基本とし、本体はスルーネック構造が基本です。タイプABと同様、ボルトオンジョイント仕様のタイプSBもラインナップを展開しています。

スルーネックモデル「S1.6HLB」は、マホガニーボディをマホガニー&ジャトバ5層ネックが貫通する本体に、ライムバーストマット仕上げのポプラバールをあしらったギターです。


Solar Guitars S1.7 AHLB
特別仕様機では、FISHMAN社製「FLUENCE」ピックアップを採用することも。

type Sを…
Sサウンドハウスで探す

《シングルカッタウェイ》type G/T


Darkthrone Nocturno Culto PlayThrough
1988年からほぼ毎年のようにアルバムをリリースし続けているノルウェーのブラック メタルバンド「Darkthrone」。ボーカリスト兼リード ギタリストのNocturno Culto(ノクターノ・カルト)氏は日頃、学校の教師として働いているのだとか。

トラッドな雰囲気を感じさせるシングルカッタウェイモデルは、レスポール風のタイプ「G」、テレキャスター風のタイプ「T」がリリースされています。シングルカッタウェイはボディから延びるネックが物理的に短くなることがネック強度を上げ、音響性能に反映します。

両機はネックジョイントやボディ形状などギターとしての主要部分において、完全にSOLAR Guitarsのギターへと再構築されています。しかしGなら16フレット地点、Tなら17フレット地点でボディに接続されるという点において、トラッドな設計を引き継いでいます。

type Gを…
Sサウンドハウスで探す

SOLAR Guitars「GC1.6ROP+」

GC1.6ROP+

「GC1.6ROP+」はスワンプアッシュボディ、メイプルネック、エボニー指板という本体に、アルニコ VIII マグネットを搭載した新設計のDuncan Solar+ (Plus)ハイゲインピックアップを搭載したモデルです。コントロールノブは2V1Tという構成で、2基のボリュームノブに仕込まれたスイッチでフロント/リア別個にシリーズ/パラレル(直列/並列)が切り替えられます。

SOLAR Guitars「T1.6D」

T1.6D

「T1.6BOP-27+」はアルダーボディ、メイプルネック、エボニー指板という本体に、DUNCAN SOLARハムバッカー、EVERTUNEブリッジを搭載させたモデルです。ピックガード採用はSOLAR Guitarsでは稀有な仕様ですが、ピックガードの厚みの分だけボディからの弦高が短縮され、ボディに指を置くスタイルのピッキングのフィーリングに影響します。5WAYセレクタースイッチにより、サウンドバリエーションは充分です。

type Tを…
Sサウンドハウスで探す

《王道の変形》type E/V


Solar Guitars E1.6 Priestess – Marzi Montazeri of Exhorder signature model
1985年にニューオーリンズ(USA)で結成されたヘヴィメタルバンド「Exhorder」。休止期間こそ長いが、パンテラやマシーンヘッドらグルーヴ指向の元祖とみなされている。

V型やEX型といったボディ形状は「攻撃的」と表現されますが、メタルという音楽性では何ら違和感を覚えない、むしろ王道と言って良い存在です。SOLAR Guitarsでもそこはしっかり押さえていて、EX型のタイプ「E」、V型のタイプ「V」両面で豊かなラインナップを構成しています。

SOLAR Guitars「E1.6BOP-27」

「E1.6BOP-27」は木目が確認できるオープン・ポア仕上げのスワンプアッシュボディ、弦長27インチのメイプルネック、エボニー指板という本体に、DUNCAN SOLARハムバッカー、EVERTUNEブリッジを搭載させたモデルです。SOLAR Guitarsのラインナップでは珍しい22フレット仕様で、トーンポットのスイッチでコイルタップが利用できます。

type Eを…
Sサウンドハウスで探す

SOLAR Guitars「V1.8C」

「V1.8C」は、黒光りするマホガニーボディ、弦長27インチのメイプルネック、エボニー指板という本体に、DUNCAN SOLARハムバッカー、EVERTUNEブリッジを搭載させた8弦ギターです。SOLAR GuitarsのVはボディエッジが斜めに削られた左右対称型で、非対称のヒール部によりハイポジションへのアクセスが強化されています。


Dismember – Casket Garden (Robert Sennebäck Guitar Playthrough)
1988 年に結成されたスウェーデンのデスメタルバンド「Dismember」。創設メンバーのRobert Sennebäck(ロベルト・センネバック)氏はこのバンドではリズムギターを担当しつつ、別プロジェクトでボーカルやベースを担当するなど、幅広く活動している。

type Vを…
Sサウンドハウスで探す


以上、現役アーティストOla Englund氏がプロデュースするメタル専門ブランド「SOLAR Guitars」をチェックしていきました。弾きやすさに主眼を置いた本体設計に加え、ステンレスフレットとEVERTUNEブリッジが当たり前のように採用される、重量級のラインナップを展開しています。高すぎない価格設定も魅力です。今のところ店舗販売はされていない状況ですが、ぜひ実際に手に取ってみてください。

※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。