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Ibanezの個性派「Talman」装いも新たに限定復活

Ibanez Talman TM730-IDG

Ibanez(アイバニーズ)の「Talman(タルマン)」は、特にテクニカル/ヘヴィ志向のイメージが強い同社のエレキギターにあって「そっちっぽくなさ」が前面に出ている個性派モデルです。1994年のデビュー以来「そっちじゃない派」のプレイヤーに特に支持され、いろいろなバリエーションが生まれてプロミュージシャンの使用例もありました。しばらく沈黙していたこのタルマンでしたが、2020年に日本製のスタンダードモデルとして復活しました。今回は、復活したタルマンに注目していきましょう。


The Offspring – All I Want (Official Music Video)
パンクバンド「ジ・オフスプリング」所属のヌードルス氏は長らくタルマンを愛用、現在のシグネイチャーモデルにもその面影が感じられます。

復活したTalmanの特徴

ではさっそく、「Talman TM730」として復活した現在のタルマンの特徴を見ていきましょう。良い意味でアイバニーズらしくない、タルマンの個性が感じられます。

全身からにじみ出る親近感

TM730-IV

代表機種「Ibanez RG」や最先端機種「Ibanez AZ」のように、アイバニーズは記号化されたモデル名を使用するのが通例です。これに反して平仮名表記で「たるまん」となる可愛らしいモデル名には、近親感を呼ぶ引力があります。また全体的に尖っていない、かつ大きく傾いたボディ形状、アコースティックギターに使用されている柔和なヘッドロゴなど、本体のデザインは優しさや親しみ深さを感じさせる要素にあふれています。

オーソドックスな本体仕様

TM730-BK

タルマンの本体には、アルダーボディ、丸みのあるメイプルネック、4点留めボルトオンジョイント、牛骨ナット、鉄板を曲げて成型するベントスチールサドルを使った6点留めシンクロナイズド・トレモロユニットといった、エレキギターの伝統に基づいた仕様が採用されています。ジョイント部分は伝統的なプレートジョイントで、カットを施さない厚いヒールが、ネックからの振動をしっかりと受け止めます。この本体に対し、指板には「カタロックス」という木材が使用されています。指板Rは、やや丸みを感じさせる12インチです。

カタロックスは、メキシカン・エボニーやメキシカン・ロイヤル・エボニーとも呼ばれるマメ科の硬質な木材です。均一で重厚な色味があり、水に沈むほど重いのが特徴です。また刃物を鈍らせるほどのおそろしく硬い木材でもあります。サウンド面では、この重さと硬さによるレスポンスの速さ、乾いた明るい響きが特徴です。なお、指板材として名高いローズウッドはマメ科、エボニーはカキノキ科です。

使いやすい電気系と専用部品

アルニコ磁石を使用した3基のシングルコイル・ピックアップは素直なキャラクターを持ち、トーン回路との組み合わせでシャープにもウォームにもいける柔軟性を持っています。各弦を狙うポールピースは1950年代以来の伝統にのっとり、2弦は引っ込み、3弦は突出しています。これは3弦が巻弦だった遠い昔の名残ですが、これをそのまま使うことこそが、伝統を継承した由緒正しい3シングル仕様です。

操作系は5WAYセレクタースイッチ、ボリュームポット、トーンポット、というたいへん分かりやすい仕様です。これに対し、ジャックプレートにトーンポットを配置するのが、タルマンを象徴する設計です。トーンポットをマウントするジャックプレートは、ほかのどのギターにも使われないタルマンのためだけの部品です。ボディやヘッドの形状にとどまらず、このためにわざわざ金属部品の開発までやる。こういうところからも、タルマンが単なるバリエーション違いのギターではない、開発者が本気で取り組んだギターであることが分かります。

ブリッジ弦間ピッチ10.8mm

随所に伝統的な設計が採用されているタルマンですが、ブリッジでの弦間ピッチは「10.8ミリ」というモダン仕様です。「弦間ピッチ」は弦どうしの距離で、フェンダータイプはだいたい11.3ミリ、ギブソンタイプは10.5ミリ、そしてFRT(フロイドローズ・トレモロシステム)が10.8ミリです。ここはどの寸法が優れているということではなくプレイヤーの好みで判断されるべきところではありますが、ピッキングの精度やフィーリングにこだわるギタリストは注視すべきポイントです。

Talman「TM730」のラインナップ

Talman TM730

かつてさまざまな仕様でリリースされてきたタルマンですが、今回の復活では3シングル機に絞っています。他のギターとは違う個性があり、かつジョイント部やピックアップ設計、サドル仕様などに伝統的な仕様を採用、そこに現代的な演奏性を加えた、受け入れやすく親しみやすいギターに仕上がっています。

カラーリングには3タイプあり、ボディカラーに合わせたピックガードがあてがわれます。

Yvette Young Signature「YY10」

Talman YY10

マスロックバンド「Covet」に所属する「タッピング女子」イヴェット・ヤング女史のシグネイチャーモデルは、タルマンをベースに数々のこだわりが込められています。女性らしいビビッドなボディカラーにメイプル指板が映えますが、ご自身がデザインしたステッカーが同梱されており、楽しくデコることができます。

GOTOH社製ロック式ペグセイモア・ダンカン社製「Five Two」ピックアップ、ウィルキンソン社製6点留めヴィンテージ・スタイルブリッジ、といった各分野のこだわりの部品に加え、ジョイント部にヒールカットを施したうえにジョイントプレートを埋め込んで、ハイポジションの演奏性を向上させています。


Covet – “Nero” (official video)
マスロック:ロックの一種。キング・クリムゾンやスティーヴ・ライヒらの影響を受けた複雑で変則的なリズム、ギターを中心とした鋭角的なメロディや不協和音などが特徴(Wikipediaより)
「タッピング巧いギタリストはピアノ経験者」というギタリストあるあるの通り、ヤング女史は4歳からピアノをたしなみ、また7歳からはバイオリンにも触れていたそうです。

Seymour Duncan「Five Two」pickups

セイモア・ダンカンの「ファイヴ・ツー」ピックアップは、4~6弦にアルニコV、1~3弦にアルニコIIを使用する、異なる二つの磁石を内包させた独自構造のピックアップです。明瞭で張りのある低音域、暖かさと滑らかさのある高音域を共存させています。

Wilkinson「WV6-SB」bridge

ウィルキンソン社の「WV6-SB」ブリッジは、伝統的な6点留めシンクロナイズド・トレモロユニットの基本構造を受け継ぎながら、サドルの可調範囲を拡大させています。これにより変則チューニングや高めあるいは低めの弦高に対しても、ビシっとオクターブ・チューニングを合わせることができます。