“ネオ・ビザール”をコンセプトに独自のオリジナルギターを作る日本のブランド「OOPEGG」インタビュー

[記事公開日]2023/8/16 [最終更新日]2023/8/16
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

OOPEGG

「OOPEGG(オーペッグ)」は懐かしくも新しい「ネオ・ビザール」をコンセプトに、独自のオリジナルギターを製作する日本のハイエンドギターブランドです。デザインの独創性に高い演奏性と幅広いサウンドバリエーションを併せ持った斬新なギターは、日本製のクオリティも相まって欧米で先に火が付き、次いで日本国内でも支持が広がっています。今回は、三木楽器アメリカ村店のご協力のもと、OOPEGGを統括している田鍋一真さんのお話を伺いました。

田鍋一真 田鍋一真(たなべ・かずま)株式会社B ZONE  OOPEGG事業部ギターデザイナー
少年時代より音楽が大好きで、ギターの巧い先輩達がモテる姿を見て中学時代にエレキギターを始める。ロックギターに没頭しつつも大学では交換留学に参加するなど海外を意識した学問を修め、英語、中国語、韓国語が話せる。大学卒業後は総合商社や大手鉄鋼メーカーにて海外営業のキャリアを積んだが、音楽の仕事をしたくて国内大手ギターメーカーに転職し、オリジナルギター開発のほか自社ブランドの海外事業立ち上げにも携わる。退社後、次のステップとしてOOPEGGブランドを立ち上げた。休日はミュージックバーに通ったり、ギタリストやDJとしてイベントに出演したりと音楽漬けで、様々なジャンルの音楽を日々吸収し続けている。

OOPEGG:ヘッド ヘッドストックの先端に輝くロゴマークは、どことなく日本を感じさせる。欧米人の目には、クールに映るに違いない。

田鍋: OOPEGGは常識や既存の製品にとらわれない、面白いと思える新しいもの作りを目指して2019年5月に設立しました。「オーパーツ(OOPARTS : Out-Of-Place ARTifactS)」という題材をヒントに、Out-Of-Place Electric Guitars and Gears(場違いのエレキギター及び周辺機器)の造語として「オーペッグ」と名付けました。

Supreme Collection Trailbreaker Mark-I(3 Tone Sunburst)

──OOPEGGのギターコンセプト「ネオ・ビザール」とは、どんなものでしょうか?

田鍋:前職ではコピーモデルを数多く見てきましたし、いろいろなオリジナルギターの開発企画を行ってきました。これまでの経験よりOOPEGGでそれらの真似をしたところで、新しくも面白くもありません。他のブランドが林立する中から選んでもらえるような、個性や魅力のある唯一無二のギターデザインが必要と感じました。そのヒントとして、自身でコレクションしていたオールドの国産ビザールギターに着目しました。ビザールには現代のギターではほぼ見られない、何とも言い難いユニークさがあります。しかしプレイアビリティやサウンド面で満足できない箇所が多くて、何がいけないか、どうしたら改善できるかを考えることからデザインをスタートしました。

ここに現代的な技術や工法、厳選されたハイエンドパーツを投入して、ネオソウルミュージックや電子音楽など最新の音楽においてもストレスなく使用できるオリジナルギターを作りたい、こうした思いからOOPEGGのキャッチコピーとして「ネオ・ビザール」を発案しました。

いろいろな音が出せる楽しさと、プロの要求に耐える音の良さ、その両立を目指したギター「Trailbreaker Mark-I」

Trailbreaker Mark-I Supreme Collection Trailbreaker Mark-I(Surf Green)
個性的なピックアップ配列。スイッチの切り替えでさらにいろいろな音が出せる。

田鍋:既に市販されている「Trailbreaker Mark-I(トレイルブレイカー・マーク1)」は、楽器本体を楽しみつつ、新しい音楽を創造して欲しいという気持ちを込めてデザインしたギターです。愛せるルックスで弾きやすく、いろいろな音が出せていろいろな演奏ができるギターを目指していますが、そういうギターは弾いていて楽しいし、プロの仕事にも使えます。今のところMark-IIやMark-IIIのプロトタイプも何度か試行錯誤しながら製作している段階です。NAMMやサウンドメッセなどの展示会に出したことがありますがもう少し煮詰めたいところがあって、未だ最終形には至っていません。

ラメ塗装モデル 今のところ、ラメ塗装のモデルが人気とのこと。ラメ塗装は下地をメタリックでコーティングして、その上にラメを吹いて、その上にクリアコートを吹いて完成させる。赤や緑、レインボーなど、ラメ自体に色が乗っているものも使うことがある。

Galaxy Black Sparkle Supreme Collection Trailbreaker Mark-I (Galaxy Black Sparkle)
ギャラクシー・ブラック・スパークルと名付けられたカラーリングの一台。レインボーカラーのラメが、弾く者の心を楽しくさせる。

個性的なピックアップ配列

Aqua Marine Blue Sparkle Supreme Collection Trailbreaker Mark-I(Aqua Marine Blue Sparkle)
P-90型シングルコイル、ストラト型シングルコイル、PAF型ハムバッカーという個性的なSSH配列。フロントピックアップはP-90タイプでこそあるが、本体はハムバッカーと同じ寸法。ツートンカラーのセンターピックアップは、フロント/リアとのマッチングが洒落ている。

田鍋:アメリカのMagneto Design Labと共同開発したオリジナルのピックアップを採用しております。こちらの要望をかなえてくれるところがなかなか見つからない中でついに探し当てた、期待通りのピックアップを作ってくれるメーカーです。

Metallic Red Sparkle Supreme Collection Trailbreaker Mark-I(Metallic Red Sparkle)
こちらはフロントにもPAF型ハムバッカーを配置したHSH。どの配列でもクセや個性よりナチュラル感が得られるサウンドで、アコースティックなテイストも感じられる。ピックアップがアメリカ製だとはいえ、こうしたクセのなさや整った感じは日本からの注文だからこそかもしれない。

田鍋:ピックアップ配列としては、フロントがP-90タイプで、センターがシングルコイル、リアにハムバッカーというSSH配列が、国に関わらず支持されています。またHSHは、フロントで太く甘いクリーンを出したい人に受け入れられているようです。アメリカで流行しているネオソウルでは、最近のニーズとしてストラトよりES-335的な音色が喜ばれています。ノイズを抑えて芳醇かつ綺麗な音を出したい人には、フロントピックアップにハムバッカーを推奨しています。

一方、ロック系などでファズなどの歪みを使いたい人は、ハムバッカーよりP-90ピックアップの方が歪みの乗りが良いと感じていただけるようです。

Super Salesman Masters Collection Trailbreaker Mark-I(Super Salesman)
P-90型シングルコイル、ストラト型シングルコイル、フィルタートロン型ハムバッカーというSSH配列も。

趣向を凝らした特殊配線

OOPEGG公式サイトより引用。3WAYセレクタスイッチはフロント/リア用。3WAYミニスイッチはセンターのOFF/ON/ONLYの3つを選択。フェンダー・ムスタングを思わせるフェイズ・スイッチが2基。ボリュームポットはトレブルブリード回路を搭載。トーンポットのスイッチでは、フロント/リアの出力を20~30%ほどカットする。

田鍋:1本のギターでいろいろな音が出せる楽しさと、プロの要求にも満足できるサウンドの両方を兼ね備えたデザインを目指して設計しました。フェイズはフロント&リアでも、センターをからめても利用できます。トーンポットに仕込んだ「パッシブ・キャパシター・フィルター(Passive Capacitor Filter)」は、フロント/リアのみに効く20~30%のゲインカットです。コイルタップ的な感覚でありながら、シングルコイルのようなサウンドを目指しました。カットの量は、楽器としてちゃんと使える音になるところに設定しています。

スイッチ付きトーンポットは、USA Mojotone監修のCTSカスタムです。ノブを回した時の減衰のカーブが美しく、トーン調整がスムーズにできます。これ以外の電気部品は一般的なもので、故障してもリプレイスメントパーツの入手は容易なため、問題なく修理できます。

エレキギターは木工だけではない事が、しっかり伝わってくる操作系。フロント/リアをメインにしてセンターを補助的に、あるいはどんな設定からでも一発でセンター単体にアクセスする、そんな使い方が想像できる。田鍋さん曰く「3つのピックアップをオールONにして、片側フェイズアウトにした設定でトーンノブを操作すると、ワウを途中で止めたかのようなフィルターのかかった音色が得られます」。

演奏性の極めて高いギター本体

木工の素晴らしさはさすがの日本製。精度の高さと作りの丁寧さは、持つ者を満足させるに違いない。

田鍋:ギター本体の設計では、オールドの国産ビザールギターを含むいろいろなギターに敬意を払いつつ、OOPEGGのオリジナルデザインに落とし込みしました。ネックの寸法や握り心地、ボディバランスなど、身長や体格に関わらずどなたでもストレスなく演奏できるギターを目指しました。

ブランドを主張するヘッド

OOPEGG:ヘッド 2対4のペグ配置を採用した、リバースヘッド。ロッドカバーの材質はモデルごとに変更している。

田鍋:ヘッド形状はギターのアイデンティティを決定する要因ですが、デザインにおいて個性的なことと他社のパテントを侵害しないことを両立させるためには、2対4のペグ配置しかないと考えて、そこからデザインしました。やはりビザールからヒントを得ていますが、若干のモダン感もあると思います。

GOTOHのロック・ペグ 現在では標準装備だという、GOTOHのロック式ペグ。

田鍋:ロック式ペグはHAP仕様との選択オプションでしたが、ほとんどの注文がロック式ペグだったので、現在では標準装備になっています。このヘッド形状はレトロ感の演出もあって、ブリッジからペグポストまで一部の弦がストレートに通っていません。ナット部で一部の弦上に余計にテンションがかかり、更にビブラートユニットを搭載しているため、チューニングの安定度を確保するためにもロック式ペグの需要が多いと考えます。

GOTOH SD-90 HAPペグ こちらはロック機構の無い従来型のGOTOH SD-90 HAPペグ。樹脂製ペグボタンは金属製より軽量で、ヘッド重量を抑える働きがある。自然なストライプの入ったものがセレクトされており、高級感がある。

──ペグの違いで音は変わるんでしょうか?

田鍋:私の感じ方としては、ロック式ペグよりも従来型のペグの方が、弦振動をしっかりと伝えてくれると思っています。ロック式ペグはストリングポスト自体で弦を固定しますが、これは弦を点で固定している状態です。対して従来型のペグは、ストリングポストに弦を巻きつけます、いわば面で固定しているのと同じです。ロック式ペグは部品点数が増すぶん、重量もアップしますが、それよりこっちの方が音に影響すると思っています。

ロック式でもしっかりとネックに振動を伝えるためには、弦をペグポストに巻きつければ良いのですが、それだと弦の着脱が面倒で殆どの方がそこまでやりたがらないですよね。

音響性能と演奏性を併せ持つネック

OOPEGG:ネック 握った瞬間から弾きやすさを覚える、高いプレイアビリティを持ったネック。解放弦あたりは肉厚な印象で、オープンコードをガッシリと握れる感じ。丸みのある握り心地は12フレット以上でやや平たくなる印象。フレイムメイプルのバインディングが洒落ている。

田鍋:ミディアムスケールなので、どなたでもストレスなく弾いていただけると思います。頑丈なメイプル/ウォルナットの5層構造で、グリップ部の塗装は弾きやすさにこだわった滑らかさを追求した極薄のウレタンマット仕上げです。弦振動をボディにしっかりと伝える、やや太めのオリジナルDシェイプです。Trailbreaker Mark-Iはストラトに比べてボディが小さめなので、ネックがスリムすぎるとローの出方やダイナミクスが失われてしまい、本体の鳴りを損ねてしまいます。アコギを思い出すくらいの太さがありつつも弾きやすいところを目指しています。Mark-Iを弾いてみて、コンパウンド・ラジアスや非対称ネックに感じる方もいらっしゃいますが、設計上は違います。しかし、ネックグリップは信頼を置いている熟練工に仕上げをお任せしている箇所でもあります。ですからポジションごとの微調整があったり、握った感じに若干の個体差があったりという、職人の癖は出ると思います。弾き手とギターとの関係は特別なものだし、こういうところは一期一会みたいなもので、ハンドメイドの良さでもあり、OOPEGGの面白みの一つだと思っています。

小ぶりで抱えやすいボディ

田鍋さんが抱えているのを見ても、あまり大ぶりなギターには見えない。初めて触れるボディ形状なのに、抱えた時に収まりの良さを感じさせる。

田鍋:Trailbreaker Mark-Iは、ボディをやや小振りでコンターカットを入れた形状にしており、どのような姿勢で演奏してもヘッド落ちしないボディバランスになっております。

バックコンターは、座奏や高く構えるスタイルに合わせています。音的にボディの鳴りとして一番良いのは初期のテレキャスターのようにコンターを削らないことですが、削らないと抱えて弾く際にストレスになりますよね。しかし逆にボディを削れば削るほど、ローがどんどんなくなっていく傾向があります。ちょうど良いところを探し当てたので、現在のコンター位置がベストだと考えています。

性能にこだわったプレートジョイント

ジョイントプレート ステンレスプレートによる3点留めに1点だけブッシュジョイント。

──前例のない全く新しいネックジョイントです。ここまでして、なぜプレートジョイントにこだわったのでしょうか。

田鍋:前職では、営業やギター開発でさまざまなジョイントデザインを見てきました。それらとは一線を画すデザインで、かつハイポジションのプレイアビリティを向上させるにはどうすれば良いか、という検討を重ねて到達したのがこのジョイント方式です。

Trailbreaker Mark-Iは雰囲気こそトラッドですが、ハイポジションを弾きやすくしたく大胆にヒールをカットしています。テクニカル系のギターではもっとバッサリ切ると思いますが、ボディからネックジョイントに弦振動を伝達させるためにも切りすぎたくないし、これくらいがベストだという判断です。1弦側のカッタウェイをやや深めに設けているので、トラッド系のギターより断然弾きやすいですよ。

その上でネックからの弦振動をできる限りボディ全体に伝達させたくて、3点留めのオリジナルプレートを採用しています。ステンレス製なのでプレートはボルトを締め込んでも変形しにくく、ボディとネックを面で圧着させることができます。

全てのパーツがボディの表側からマウントされるため、ボディ背面はこのようにツルンとしている。だがそれだけに、この斬新なジョイント部が異彩を放っている。

厳選された個性的な金属パーツ

ブリッジはギリシアの「Halon(ハロン)」、トレモロはアメリカ・ニューヨーク州のSwope Guitarsが開発した「Descendant(ディセンダント)」。どちらもこのギターで初めて見るギターパーツブランドである。

田鍋:今のところペグはGOTOH(日本)、ブリッジはHalon(ギリシア)、トレモロはDescendant(アメリカ)を採用しています。フェンダー、ギブソン、PRS、ミュージックマン、アイバニーズなどの大手ブランドはピックアップもブリッジも自社で開発しています。試行錯誤の長い歴史もあり、オリジナリティの重要な要素になっていますよね。OOPEGGもそうありたいと思い、大手パーツメーカーの製品をそのまま使うのではなく、ブリッジとトレモロはTrailbreakerのためにカスタマイズしてもらっています。

Halon Bridge Halon #1060 Steel Bridge
このタイプのブリッジとしては珍しい3点サドル方式。イントネーションを調整する溝が刻まれており、より正確なオクターブ調整が可能。

田鍋:いかにクオリティが高いとはいえ、メーカーの製品はいろいろなギターに搭載されることを想定したものです。こちらが欲しい数量でカスタムメイドしてくれる、そしてパテント侵害の心配がないメーカーはなかなかなくて、血眼の検索で遂に探し当てたのがギリシャのHalon Guitar Partsです。

Halonのオフセット・ブリッジは弦落ちのしにくさと音の良さが持ち味です。重量があるため、他社製品よりも共振が少なくてサスティンが得られます。この会社は色々な金属が選べますが、ローミッド寄りのサウンドが出る1060アルミニウム合金を選択しました。

Descendant Vibrato Descendant Vibrato
フェンダーの設計理念を継承し、現代の要求にこたえるソリューションを提供する。まさに「子孫(descendant)」。

田鍋:Descendant Vibratoは2020年のNAMMショーで知り合いの海外ミュージシャンに紹介されました。Trailbreakerはミディアムスケールなので、普通のジャズマスター用トレモロでは弦張力が不足がちになります。その点Descendantは十分な弦角度が得られるので、テンション感が得られて弦落ちもしません。表側のネジを回すことでトレモロのテンション感を調節できますし、アームのトルクも調節できます。

とても優秀ですが単価も高いので、ギターメーカーの大量生産モデルには採用しにくいと思います。更にこのトレモロを採用している国産のハイエンドギターブランドは、現時点ではOOPEGGだけです。しかし日本中のジャガー/ジャズマスターユーザーにこの優秀なパーツを試してほしいという思いもあり、パーツ単体での販売も予定しています。

Mastery Bridge Halonのオフセットブリッジを採用する前には、この分野で支持の厚いMastery Bridge(マスタリー・ブリッジ)を採用していた。この時のトレモロは通常の製品版らしく、Descendantのロゴが確認できる。

田鍋:海外には既製品に満足せず、イノベーションを起こそうと日々チャレンジする先進的なギターパーツやピックアップメーカーが多く存在し、パーツのカスタマイズや共同開発を快く引き受けてくれるところも多い印象です。日本ではまだイノベーティブなパーツメーカーさんには出会っていませんし、パーツのカスタマイズを現実的な単価に収めようと思ったら、ある程度のロット数が要求されます。弊社のような小ロットの注文は、なかなか歓迎されない印象です。「コレがあるといいのに」という思いを具現化してくれる国内のパーツメーカーにも出会いたいところですが、探しても簡単には見つからない状況です。

とはいえ現状では、いま必要なパーツは海外生産で完成しています。パテントの関係もありますから、国内で同じものを作るメリットはありません。未来のニューモデルで「全部品メイドイン・ジャパン」が達成できればとも思っていますが、今の時代はボーダレスなので、もはやオール国産に拘り続ける必要はないかもしれませんね。

「ネオ・ビザール」のギターコンセプトに沿うエフェクター

OOPEGG:エフェクター エフェクターはツマミ少なめのシンプルで扱いやすい設計。スイッチにはカラーマッチさせたトップハットが出荷時に装着されている。

──OOPEGGではエフェクターもリリースしています。エフェクターについてお話をお聞かせください。

田鍋:「ネオ・ビザール」のギターコンセプトに沿うように、「スーパー・レトロシリーズ」と名付けてヴィンテージ・エフェクターの回路を参考にレトロ感のあるエフェクターをリリースしています。こちらはシンプルながらレコーディングやライブなどのプロの現場でも扱いやすいデザインを目指した設計です。

Super Retro Reverb(ORV-1)

田鍋:リバーブ(ORV-1)は、Dryにはアナログ回路、Wetにはデジタルコンバーターをミックスすることで、ヴィンテージのTwin ReverbやBlackfaceアンプに代表される、ふくよかさにリッチなブライト感を足したリバーブサウンドを目指しています。設定をどこまであげても原音が潰れない設計になっており、ブルース、ネオソウルからシューゲイザーまで幅広い音楽ジャンルに活用いただけると思います。

筐体上のコントロールはMIXのみで、誰もが扱いやすい設計です。また筐体の内部には、

  • Kill Dryスイッチ:Dry(原音)を必要としないレコーディング環境などでの使用を想定し、Wet(エフェクト)のみを出力させる
  • Decayトリム:リバーブのかかる長さを調整できる
  • Output Volumeトリム: ON時のアウトプットボリュームを調整

できる回路設計となっており、かなり深くこだわった使い方ができます。

Super Retro Fuzz(OZZ-1)

田鍋:ファズ(OZZ-1)は、重要な回路であるトランジスタにシリコンを使い、初めての人でも扱いやすいシンプルな2ノブのデザインにしました。ギターのボリュームつまみを絞ることでクリーンサウンドが得られ、つまみをあげていくとクランチサウンドから徐々にブーミーかつ荒々しい歪みまで楽しめるサウンド変化の追従性を目指しつつ、モダンで芳醇なFUZZサウンドが得られる設計です。轟音のソロ、クランチやクリーンのバッキング、リバーブと合わせた芳醇なリードなど、さまざまな使い方ができます。

Super Retro Compressor(OCP-1)

田鍋:コンプレッサー(OCP-1)は往年の名器を基に、特有のコンプ感やアタック感は保ちつつ、様々なジャンルや用途で使える設計にしています。TONEの調整つまみを搭載しており、つまみを下げるとハイカット、上げるとローカットです。TONEを絞ってギターソロに、上げてカッティングやアルペジオなどに使用されることをお勧めします。また後ろにChorusなどの空間系エフェクターを足すと、空間系のサウンドに綺麗な艶が出ます。

新しい面白さとオリジナリティで勝負したい

──田鍋さんは「ギターデザイナー」という役職ですが、どのようにギターを作り上げていますでしょうか?

田鍋:「こういうギターがあったら面白いな」という自分の考えと、世界中の知り合いのミュージシャンの要望、市場のニーズなどを取り込みつつ、新しいギターの基本的なスペックとラフデザインを考えています。具体的なシステム設計と生産への落とし込みはビルダーに依頼しますが、自分が好き勝手にデザインしたものをただ丸投げして完成させている訳ではありません。デザインをビルダーに見せて議論を行い、代案をもらったり、生産効率を考えた仕様設計のやり取りを重ねることで、最終デザインに落ち着かせます。ギターデザイナーは、こうした試行錯誤を繰り返して製品企画を行い、完成形に落とし込む業務です。個人ではなくチームで動くので、自分のやりたいことがすべて実現するわけではありません。しかしどうすれば理想のギターを具現化できるかを模索してアイディアを絞ってくことで、それ以上に良いものができるのだと感じています。実際にMark-IはNAMMに出展してからも、パーツや設計を変更するなど様々なアップデートを重ねてきました。

この強烈な個性がスタンダードになる日も、そう遠くはないにちがいない。

田鍋:今のところ、英米のミュージシャンからの反響が大きい印象です。海外のミュージシャンは、明らかに使い方が多様です。アメリカ人は面白さ優先しており、更にエレキギターをファッションの一つとして選んでくれている印象があります。イギリスでは電子音楽が流行していて、一本でいろいろできる万能なエレキギターとして支持されるようです。その他の国でも、トラッドなギターでもいいんだけど、もっと先進的なデザインのハイエンドギターが使いたいというニーズがあります。日本でも、面白さで選んでくれるお客様がじわじわ増えている印象です。世界中のエレキギター愛好者がOOPEGGを知っている、そんなブランドにしていきたいです。

前例のないギターなだけに、自由な発想で演奏できる。

田鍋:OOPEGGは誰も見たことのない新しいギターデザインで始まりましたから、ゼロからスタートしたようなものです。比べる相手がいない難しさの反面、使い方は千差万別で、これがギターの個性であり、面白さと言えるでしょう。オリジナルデザインで勝負するって、そういうことだと思います。

OOPEGGが次のステップに上がるためには、もう少しシンプルな仕様のギターやベースなら5弦など、現代の音楽市場のニーズに応じた商品も開発する必要があると思っています。しかし新しい面白さも併せて提案できないと、他所のコピーモデルと変わらなくなってしまいます。次々と面白いものをリリースすることで、世界中のギター市場を益々盛り上げていきたいです。


以上、OOPEGGギターデザイナー、田鍋一真さんにお話を伺いました。「ネオ・ビザール」を標榜したTrailbreaker Mark-Iは、新しくも懐かしいオリジナルデザインに、いろいろなことのできる操作系と初来日のパーツ類を搭載させた斬新なギターでした。そして非常に弾きやすく、ギター自体の面白さがストレートに伝わってきます。ぜひ実際にチェックしてみてください。

三木楽器アメリカ村店

ハイエンドなギターやアンプに囲まれながら、落ち着いた取材ができました。三木楽器アメリカ村店さん、ありがとうございました。

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