エフェクター用語について、ちょっとマニアックな豆知識

[記事公開日]2015/1/28 [最終更新日]2024/8/22
[編集者]神崎聡

エフェクター豆知識

エフェクターについて調べていくと、「ディスクリート回路」や「ポイントトゥポイント」、「クリッピング」に「トゥルーバイパス」といった言葉を目にすることがあります。
これらはエフェクターを語る上で欠かせない専門用語ですが、全てを理解している人は「意外にも少ない」ものです。それは初心者のみならず、中上級者にも同じことが言えます。

ここでは、エフェクターにまつわる用語について解説していくと共に、ギター初心者の方でも理解できる、「エフェクターの豆知識」を紹介していきます。

ブティック系ペダルって何?

Landgraff Distortion Boxブティックペダルの代表格
LANDGRAFF の Distortion Box

エフェクターメーカー(ブランド)の中には、「ブティック系」と呼ばれるものが存在します。「ブティック(boutique)」にはフランス語で「小さな専門店」あるいは「業者」と意味があり、エフェクター業界では、職人によって1つ1つ手作りされた高級モデルのことを指します。また、製造方法に関わらず、「高額」なモデルをブティック系ペダルと呼ぶこともあります。

有名なブティック系メーカーとして、「LANDGRAFF」や「SUHR」、「SHIGEMORI」などが挙げられます。ちなみに、BOSSやMXRといった定番メーカーは、大規模な生産ラインによって製造されているため、基本的にブティック系とは呼ばれません。

ブティックペダルって何?ブティック系エフェクター特集 – Supernice!エフェクター

トゥルーバイパスって何?

「トゥルーバイパス」はエフェクターのスイッチがOFFの時に、電気信号をそのまま素通りさせる配線方式です。信号はシールドのジャック部分を通るだけ(ハイインピーダンスの状態のまま)になるので、音色変化が起こりにくく、一昔前まではハンドメイドの高級エフェクターにのみ採用されていましたが、最近では様々なメーカーからトゥルーバイパス仕様のエフェクターが登場しています。トゥルーバイパスと対比して登場するのが「バッファードバイパス」で、BOSS や Ibanes などのペダルでこの方式が採用されています。バッファーを内蔵し、信号をローインピーダンスに変換されます。

両者は一概にどちらが優れているという問題では語れません。バッファーについては以下のページで詳しく解説しています。
バッファー・ペダルについて

ポップノイズが発生してしまうが…

トゥルーバイパス仕様のエフェクターは、スイッチ切り替え時にポンという「ポップノイズ」が発生します。これは、機械式9PINスイッチが音声信号の入力と遮断を繰り返しているために起こる現象です。構造上、ポップノイズは避けられないものとなりますが、回路内に抵抗を搭載することでかなりノイズを低減させることができます(事実、市販されているトゥルーバイパスのエフェクターでも、ポップノイズが皆無なペダルは多く存在します)。

オペアンプ回路、ディスクリート回路とは?

エフェクターに用いられる回路は大きく分けて2つ、「アナログ回路」と「デジタル回路」です。
アナログ回路はオーバードライブやディストーションなどの「歪み系ペダル」に多く見られ、デジタル回路はディレイやリバーブといった「空間系ペダル」に採用されています。

中でもアナログ回路は「オペアンプ回路」と「ディスクリート回路」に分けられます。
2つの回路に優劣はないとされています。

オペアンプ回路

「オペアンプ」という1cm程度の電子部品によって信号を増幅する回路です。「オペアンプ単体」でエフェクターの音色を決定します。
BOSS の初期オーバードライブ OD-1 に搭載されていたことでも有名です。

Ibanes TS-9

Ibanes TS-9

オペアンプ回路を採用しているエフェクターの代表例がIbanesの「TS-9」です。オリジナルが高値で取引されているTS-9ですが、その理由は「JRC4558D艶有り」という貴重なオペアンプを搭載しているからです。

オペアンプはハンダごてを使って交換することができるため、現行モデルのTS-9にJRC4558D艶有りを搭載することで、オリジナルのサウンドに限りなく近づけることができます。エフェクターの「音色」を決める重要な部品と言えます。

Ibanes TS-9 – Supernice!エフェクター

ディスクリート回路

オペアンプを使わず、個々の部品で信号を増幅させる回路です。「回路全体」で音色を作り挙げる仕組みになっていて、より「音質を追求しやすい」と言われています。
ディスクリート回路を採用していることで知られているのが、BOSS OD-3、技-Craft シリーズの「BD-2W」「SD-1W」です。

ポイントトゥポイント配線について

ポイントトゥポイント配線は、各部品を「直接接続」することにより、「音声信号の劣化を限りなく防ぐ」ことができる手法で、エフェクターだけでなく「ギターアンプ」にも採用されている配線です。

楽器用シールドを例に挙げると、シールドは長ければ長いほど音質が劣化していきます。

それはエフェクターも同じであり、回路の入り口から出口までの距離が長くなるほど音質が劣化します。限りなく小さな世界の話ですが、積み重なった信号のロスは、生み出されるサウンドに確実に影響を与えます。

そこで考えられたのがポイントトゥポイント配線で、部品同士を直接接続することで、「最短ルート」で音声信号をアンプに伝達することができる訳です。

ハンドワイヤードと呼ばれることも

VOX V846-HW VOX V846-HW

ポイントトゥポイント配線によって作られた機材は「ハンドワイヤリング」あるいは「ハンドワイヤードモデル」と呼ばれます。エフェクターではIbanesの「TS808HW」、VOXのワウ「V846-HW」が有名です。

通常モデルのエフェクターが「プリント基板」を用いているのに対し、ハンドワイヤードモデルは部品同士を直接繋げているのが特徴です。プリント基板内の回路を音声信号が経由しないため、音質の劣化を防ぐことに成功しています。

また、ハンドワイヤードモデルは、各メーカーの「職人が手作業」でハンダ付けしています。そのため、通常モデルよりも「高価」であり、流通も多くないのが特徴です。

VOX V846-HW – Supernice!エフェクター

クリッピング回路の仕組みと種類

オーバードライブやディストーションといった歪み系エフェクターは、「クリッピング回路」を通ることで音を歪ませています。クリッピング回路に用いられる電子部品は「ダイオード」であり、ダイオードの種類や組み合わせによって生み出されるドライブサウンドは異なります。

そんなクリッピング回路には種類があり、「同じ種類」のダイオードを逆向きにして組んだものを「対象クリッピング」、「種類」または「個数」の異なるダイオードで組んだものを「非対象クリッピング」と呼びます。
前者は Ibanes TS-9 のような「滑らかなドライブサウンド」、後者は BOSS OD-1 のような「倍音豊かなドライブサウンド」になります。

シリコン、ゲルマニウム、LED

また、ダイオードの種類もサウンドに大きな影響を与えます。その種類は大きく分けて3つ、「シリコン」と「ゲルマニウム」、そして「LED」です。

シリコンは主にオーバードライブのクリッピング回路に用いられます。ゲルマニウムは「ファズ」に用いられることが多く、攻撃的な荒々しい歪みを作り出します。LEDはマーシャルのエフェクターである「GUVNOR」に用いられており、マーシャルアンプの歪みに近いリッチなドライブサウンドを得ることができます。

パコパコ系コンプとROSS系コンプの違い

コンプレッサーを語る上で欠かせないのが「パコパコ系」、「ROSS系」という言葉です。
パコパコ系はMXRの「DYNA COMP」を筆頭に、音にフィルターがかかったような、コンプ感の出やすいエフェクターのことを指します。強めに音を圧縮することで、80年代のフュージョンに登場するパコパコとしたサウンドを作ることができます。
MXR は上位ラインナップを揃えるカスタムショップからも、CSP202 というパコパコ系と言われるコンプレッサーがリリースされています。

Keeley Compressor ROSSクローンの傑作と呼ばれる
Keeley Compressor

それに対してROSS系とは、アメリカのブランドである ROSS から1978年に登場したギター用コンプレッサーの名機「Ross Compressor」をベースに開発され、ナチュラルに音を圧縮するエフェクターを指します。コンプ感が出にくいため、常時踏みっぱなしにして音の粒を揃えるという使い方が多く見られます。
ROSS系コンプレッサーは Keeley、Analog.Man といったブランドからリリースされています。

Keeley Compressor – Supernice!エフェクター

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