バッファー・ペダルについて

[記事公開日]2018/6/1 [最終更新日]2023/10/8
[編集者]神崎聡

バッファー・ペダル

エフェクターを繋いでいく際によく聞く「バッファー」(buffer)という用語。なんとなく聞き流して、よく分かっていない方も多いかもしれませんが、エフェクターを使う際にはぜひとも知っておきたい重要項目です。ここではそんなバッファーの定義から、バッファーとして使えるおすすめのペダルまでを一挙紹介しています。

バッファーとは?

バッファーとは非常に簡便に言うと「インピーダンスを下げるもの」ということになります。通常のピックアップを搭載したギターやベースは、ハイインピーダンスという、非常に微弱な信号の状態で出力されます。微弱であるがゆえに外部ノイズなどに弱く、シールドを伝ってアンプに行くまでに様々な外部ノイズの影響を受けます。もし、ギターからアンプに直接、数十メートルもの長さのシールドを使って接続すると仮定すると、相当の量のノイズの影響を受け、音質はかなり劣化してしまうでしょう。バッファーはそんな信号をローインピーダンスに変換し、太く強靱な信号に変えてしまう作用を持ちます。外部ノイズにも強くなり、長いシールドやいくつものエフェクターを繋いでもハイインピーダンスの時に比べ、劣化が目立ちにくくなります。

どういう時に使うの?

VZ-B1 Vitalizer Impedance Converter VZ-B1 Vitalizer Impedance Converter(多弦ギター/ベース用)
Providence独自技術によるインピーダンス・コンバーター「Vitalizer(バイタライザー)」。「VZ-B1」はサーキットとして販売されている。

アンプまでの距離が長いほど信号は劣化しやすくなります。ライブ会場が広く、シールドを長くせざるを得ない時などは是が非でも利用しておきたいところです。また、エフェクターを直列に多数繋いでいく際には、ほぼ必須とも言えるでしょう。ハイインピーダンスのままエフェクトボードを通過させると、元々の信号が微弱なため、外界の余計なノイズを拾いやすくなったり、エフェクトの乗りも不安定、高域の劣化や好ましくない音色変化が起きやすくなったり、あまり良いことはありません。エフェクトボードの最前段にはなんらかのバッファー的な役割をするものを設置するのが望ましいと言えます。

そのように聞くと、いかにも特別な機器を置かなければならない、と思ってしまいがちですが、インピーダンスの変換はエフェクターを通すだけで起こります。つまり、ディストーションなどの歪みエフェクターをオンにすると、それ自体がバッファーの役割を果たし、インピーダンスが変換されます。ディストーションを常にオンにして演奏する場合は、それをバッファー代わりにするという選択肢もありでしょう。

インピーダンスを変える要素

トゥルー・バイパス or バッファード・バイパス

通常のコンパクトエフェクターにはバッファーが内蔵されているものが少なくありません。バッファー内蔵のエフェクターはバッファード・バイパス(buffered bypass)と呼ばれ、スイッチをオフにしてエフェクトが効いていない状態でも、バッファーを通っています。そのため、オンオフに関わらず、繋いだ時点でローインピーダンスになっているのが特徴で、電池が無くなるとオフにしても音が出なくなるのは、バッファーが動かなくなるからです。例えば、BOSSのエフェクターなどは全製品がバッファード・バイパスとなっていますので、BOSSのエフェクターを最前段に使用する場合、それをバッファー代わりに使うこともできます。

それに対して、トゥルー・バイパス(True Bypass)はその言葉の通り、オフの時に信号をそのまま素通りさせます。信号はシールドのジャック部分を通るだけになるので、オフ時は原音そのままで基本的にハイインピーダンスの状態です。音色変化が起こりにくく、構造の簡便さもあって、ハンドメイドのブティック系ペダルなどはこれが主流です。オフ時にバッファーの役割を果たさないので、トゥルー・バイパスのエフェクターだけを多数並べてエフェクトボードを完結させると、否応なく信号は激しく劣化します。

アクティブ・ピックアップ

電池などを使用しない通常のピックアップを「パッシブ・ピックアップ」と呼び、それに対して、電池を使用することで信号を整えて出力できるピックアップを「アクティブ・ピックアップ」と呼びます。アクティブ・ピックアップでは、数値的に完全なローインピーダンスとまではいかないまでも、パッシブのものに比べるとずっと強力で安定した信号が得られます。

デメリットとしては、ナチュラルさが多少失われ、アクティブ臭いといわれるような独特のサウンドになりやすいこと(下記参照)、電池が無くなると音自体が出なくなってしまうので、残量を気にしておかねばならないことなどが挙げられます。パッシブに比べて低いインピーダンスで出力できるのは確かですが、電気信号的な観点からいくと、依然として微弱な信号であることに変わりありません。多数のエフェクターを並べるときなど、やはり外部のバッファーを利用する方が確実です。アクティブ・ピックアップはその求められる音質と役割から、ギターよりもベースでよく使われます。

バッファーを使うことの弊害

バッファーを通ることでローインピーダンスに変換され、信号が強靱になるという説明だけであればデメリットは無いように思えます。しかし、実際にはローインピーダンスに変わることによって、繊細さが失われるように感じることは多く、俗に「アクティブ臭い」と言われる不自然な音になりやすい傾向にあります。特に歪みエフェクターなどでバッファーを内蔵しているものの中には、オフ時の音が原音から不自然に変わってしまうものもあるため、嫌がるギタリストは少なくありません。トゥルー・バイパスがもてはやされる理由の一つがここにあります。

また、ヴィンテージ系のファズやワウペダルなどはハイインピーダンスで受ける前提で作られているものがあるので、そのようなペダルにローインピーダンスで入力すると実力を発揮できません。

エフェクターボードに導入できる「バッファーペダル」

バッファーペダルはバッファーに特化したペダルのことで、インピーダンスの変換がメインの作業となります。そのため常時オンにしておくことが前提となり、スイッチ類が一切ないものが普通です。基本的には原音をそのまま変えずにインピーダンスの変換のみが出来るように設計してあり、アクティブ臭い不自然さは可能な限り排除されています。

使用する際にはギターの微弱な信号を最初の段階で強くしておくのが基本となるため、通常エフェクターボードの最初に置きます。あるいはハイインピーダンス用のファズやワウペダルを使う場合、その後に置くのが望ましいでしょう。

また、エフェクターボードの最後に置き、アンプまでの信号を安定させるという使い方をしているギタリストもいます。

バッファーペダルのオススメモデル

ここではバッファーペダルの銘機を各種紹介します。クリーンブースターのように音色を積極的に作り込めるもの、スイッチングシステムにバッファーを内蔵したものなど、バッファーとして使えるものは多数ありますが、ここではインピーダンスの変換に特化したものに絞って取り上げてみました。

Empress Effect / buffer+

Empress Effects Buffer+

高品質なエフェクトを多数送り出しているEmpress Effectのバッファー専用機。エフェクトループを兼ねており、チューナー専用のアウトプットも装備。最適な出力レベルで出力するためのブースト機能を持ち、ギターやベース、またはエフェクトチェインの信号レベルもミニスイッチにより微調整可能。ノイズフィルターも装備し、エフェクトボードの全体的なジャンクションボックスとして機能します。バッファーに特化した下位モデルも展開中。

Empress Effects Buffer+ – Supernice!エフェクター


JHS Pedals / Buffered Splitter

JHS Pedals Buffered Splitter

バッファーがメインですが、信号を二つに分ける(スプリット)目的も果たせる、JHS Pedalsのペダル。スイッチも無く、通すだけの簡単仕様で、二つの出力は主にチューナーアウトや、別にミキサーなどに送るために使用することが想定されています。

JHS Pedals Buffered Splitter – Supernice!エフェクター


One Control / Minimal Series BJF Buffer

One Control Minimal Series BJF Buffer

優等生的な使えるペダルを多数送り込むOne Controlのバッファー。こちらはスプリット機能などもなく、まさに通すだけの仕様。ゲインを正確に1の状態に持って行き、一切の歪みのないクリーンなサウンドを謳っています。位相反転スイッチを装備しているのは嬉しいポイントです。スプリット機能を装備した兄弟機も展開。

One Control Minimal Series BJF Buffer Split – Supernice!エフェクター


Providence / VZF-1 Vitalizer BF

VZF-1 Vitalizer BF

このカテゴリの製品の中では古株といって良い存在のプロビデンス「バイタライザー」。締まった低域を実現させるため、積極的な音色変化を狙っているのがポイント。アクティブ臭くない、自然な音色を保ちながらに、音質を改善できます。狭いボード内に収めるために、サイズが極小に抑えられているのも嬉しいところです。
ベースや多弦ギター用に特化した「VZF-1 Vitalizer BF」、ギター用に「VITALIZER WV VZW-1」がラインナップされています。

Providence VITALIZER WV VZW-1 – Supernice!エフェクター


Custom Audio Japan / IN and OUT

Custom Audio Japan IN and OUT

こちらもこのカテゴリの中ではロングセラーを誇るCAJの銘機。バッファー部はあくまで原音を変えないという趣旨のもとに、高品質なものを入力部、出力部ともに二箇所内蔵。IN and OUTという名の由来にもなっています。バッファーは個別にオンオフでき、入力部のみオンなどという使い方も可能。
エフェクトボード内のジャンクションボックスとして機能させるため、入出力部の端子も使いやすくレイアウトされています。

Custom Audio Japan IN and OUT – Supernice!エフェクター


Crews Maniac Sound / buffout

Crews Maniac Sound buffout

Crews Maniacのバッファー。スイッチ類は一切ありませんが、出力段階でのインピーダンス設定、出力レベルを調整可能。インピーダンスの細かな設定により、サウンドのナチュラルさを保つこともできます。また、インピーダンスをやや高めに保ちつつ、出力レベルを上げて強い歪みを得るなど、少し変わった使い方も可能となっています。

tc electronic / BonaFide Buffer

BonaFide Buffer

スタジオ製品からコンパクトエフェクターまで、幅広く送り出すtc electronicのバッファー。原音を変えないナチュラルな掛かりでありながら、その後に繋いだエフェクターの乗りの良さやオンオフ時の音質差を劇的に改善します。万一の電源落ちの際に自動でトゥルーバイパスに切り替わる機能付き。サイズが小さく、ボード内に収めやすいのも嬉しい仕様です。

TC Electronic BonaFide Buffer – Supernice!エフェクター


その他、バッファー機能を搭載したエフェクター


あまり目立たない存在である単体でのバッファーですが、電気信号の観点からいくと無くてはならないものです。自分の音色設計にもう一つ満足がいかないという場合、そこに問題があるかもしれません。ボード内を簡潔にまとめられるジャンクションボックスが一体となっているものも多いので、使い勝手を同時に改善させられることも。ぜひ一度導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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