《アンプサウンドが足元で完結!》アンプ+キャビネット一体型ペダル特集[記事公開日]2021年11月15日
[最終更新日]2021年11月15日

アンプ&キャビネットシミュレーター・ペダル NUX「Solid Studio NSS-5」

本来なら実際にギターアンプを鳴らしてマイク録りしなければ得られない、温かみと空気感のあるギターサウンド。それをコンパクトな機材でライン録りで実現させてくれるのが「アンプ&キャビネットシミュレーター」です。これを使えばアンプもキャビネットもいらなくなるし、大きな音を出す必要もなくなります。現代の製品は優れた音質を持っており、動画配信、ライブや録音などいろいろな場面で頼れる性能があります。

現在のマルチエフェクターギタープロセッサーでは標準的な機能として常識化していますが、このごろコンパクトエフェクターサイズのシミュレーターが登場し、注目と期待を集めています。今回は、こうしたアンプ&キャビネットシミュレーターに注目していきましょう。

導入すると、ギタリストの活動はどう変わるのか

「アンプ&キャビネットシミュレーター」3つのメリット

アンプ&キャビネットシミュレーターは、ライブなら直接PAに、宅録や配信なら直接オーディオインターフェイスに接続して使います。ギターアンプから解放されることで、「サウンドが安定する」「場所を取らず、運びやすい」「静かに演奏できる」という3つのメリットが得られます。それぞれについて考えてみましょう。

サウンドが安定する

アンプのスピーカーから出た音をマイクでキャッチするまでの音作りが、足元のペダルボードで完結します。ライブでは会場のアンプやマイキングなどに左右されずに狙った通りの音が使えますし、宅録や配信ではライブでいつも使っているそのままの音が使えるわけです。いろいろな場面で活動するギタリストにとって、いつでも狙い通りのサウンドが安定的に得られるのは大きなメリットです。

場所を取らず、運びやすい

ギターアンプが丸ごといらなくなるのは寂しくもある反面、多大なメリットとなります。アンプまで運ぼうと思ったらほぼ確実に自動車が必要となるところ、ギターとボードだけなら交通機関でじゅうぶん移動できます。ライブではステージを広く使うことができますし、逆にアンプを置くのにも苦労する手狭なステージでも快適に演奏できます。

静かに演奏できる

こと静粛性という点で、宅録や配信でのメリットは圧倒的です。何しろギターサウンドがスピーカーを通らず、ケーブルを通ってレコーダーやオーディオインターフェイスに送られるのです。配信では自分の声とギターの音量バランスが取りやすく、宅録ではご近所への迷惑を考えなくてもよくなります。

「アンプ&キャビネットシミュレーター」3つの注意点

ギターアンプの扱い

ギターアンプへの接続を想定していないので、ギターアンプにつないでも自然なサウンドは得られません。アンプから出た音を、もう一回アンプに通すことになるからです。よって、アンプを使う時にはシミュレーターは切る、アンプへ送る音とPAに送る音を分ける、ギターアンプの代わりにオーディオ機器やモニタースピーカーを使う、などの工夫が必要です。

PAスタッフとのやりとり

PAスタッフ

ライブ会場のPAスタッフは、ステージ上の音を聴いて、その音がそのまま客席に送られるように調整します。会場の響き方やスピーカーにも特性がありますから、PAに送られた音をそのまま出したところで、狙った通りの音になるとは限らないのです。ライブ会場で狙った通りの音を出すためには、リハーサルでしっかりコミュニケーションを取る、モニタースピーカーなどで自分の出したい音を提示する、といった工夫が必要です。

外部IR読み込みの沼

「IR (Impulse Response)」は、キャビネットとマイクのデータです。現代のキャビネットシミュレーターはこのIR(IRデータ)を読み込んで、キャビネットとマイクの特性をサウンドに反映させる方式が主流です。環境によっては自作できることから、今やさまざまなIRがネットで入手できます。

こうした外部からのIRが利用できるシミュレーターは多く、メーカーの想定しなかったサウンドまで得られる可能性があります。しかし手に入れられるIRは膨大で、沼のようなものです。満足いかなくなるまでは、手持ちのIRをしっかり使いましょう。

アンプ&キャビネットシミュレーターのおすすめモデル

BOSS「IR-200 AMP&CABINET PROCESSOR」

BOSS IR-200

BOSS「IR-200」は、コンパクトな本体の中に高い処理能力と使い勝手の良い各種の接続端子、そして幅広いサウンドバリエーションを収めたアンプ&キャビネットシミュレーターです。実際のギターアンプでできることはほぼ全て網羅する、機能性の高さが持ち味です。

圧倒的なマシンパワー

「クラス最高峰の32bit AD/DA、32bit浮動小数点処理、および 96 kHz サンプリング・レート処理」「IRデータ解像度は32bit浮動小数点/96kHzステレオ500msまで」なんて言われても、なかなか理解しにくいところですね。カンタンに言うと、現代の標準的なスペックを遥かに凌ぐ処理能力があります。


Introducing BOSS IR-200 Amp & IR Cabinet
アンプ、キャビネット、アンビエンスそれぞれのON/OFFができ、エフェクトループもUSB端子もあり、エクスプレッションペダルも挿せる、高機能ペダルです。

幅広いサウンドバリエーション

音作りはギター用とベース用をカバーする「AMP」、IRデータを使った「CABINET」、そして空間の反響を再現する「AMBIENCE」の3つで行われます。それぞれのON/OFFが可能で、設定は最大128件まで保存できます。

「AMP」はギター用に8種、ベース用に3種を備え、ノイズゲートも付いています。フェンダーやマーシャルなど往年の名機を再現したアンプもあれば、BOSS独自のMDP技術によって生み出されたオリジナルのハイゲインアンプもあります。

「CABINET」はBOSSオリジナルのIRデータ144本、スピーカー大手「Celestion(セレッション)」社のIRデータ10本から選択でき、外部のIRデータを128本まで保存できます。

「AMBIENCE」はRoom、Studio、Hallの3タイプを備えます。

充実した接続端子

入出力端子、センド/リターン端子、AUX IN端子、ヘッドホン端子、CTL/EXP端子、MIDI端子(IN&OUT)、USB端子を備えており、接続端子の充実度は最強レベルです。複雑なサウンドメイク、バッキングを鳴らしながらヘッドホンを使って練習、外部デバイスでの操作、オーディオインターフェイスとしての使用など、さまざまな使い方が可能です。

BOSS「IR-200 AMP&CABINET PROCESSOR」 – Supernice!エフェクター

Strymon「Iridium」

Strymon Iridium

ストライモン「Iridium」は、「24bit/96kHz A/D & D/A」「IRデータ解像度96kHz24bit 500ms」というハイスペックなマシンパワーによる超高音質と超ローノイズ、独自の高度なモデリング技術を武器に、シンプルにもマニアックにも使えるアンプ&キャビネットシミュレーターです。

3つのセクションでサウンドメイキング

「Iridium」の音作りは、フェンダー/VOX/マーシャルの名機を再現した3つの「AMP」、各アンプに3つずつ、合計9台の「CAB(キャビネット)」、空間の広さに3段階ある「ROOM」で行います。

3機種のアンプと9台のキャビネットは、「マトリックス・モデリング・プロセス(Matrix Modeling Process)」の数学的な解析をもとに、全回路が再現されています。アンプは本来の音や特有の複雑な倍音変化まで再現されるうえ、本来の性能以上にゲインを持ちあげられます。キャビネットは、過大入力が続いた際の反応やスピーカーの限界域まで再現されます。ROOMは、空間で実際に鳴らしたかのようなエアー感を付加します。

これら3つの組み合わせによって「サウンドだけでなく弾き心地まで本物と区別がつかない」と評価されるリアルなギターサウンドが得られます。


Strymon Iridium – Staff Examples – Demo
定番系のサウンドゆえに、あらゆるギタリストがそれぞれにさまざまなサウンドを出すことができます。

シンプルにも、マニアックにも使える

「Iridium」の操作系はシンプルにまとまっているので、各ツマミの名前を覚えるだけでもじゅうぶん使いこなすことができます。「FAV」スイッチに設定を保存できるため、好きな設定をキープしておいて他のサウンドを物色することもできます。

FAVスイッチに保存できる設定は1件だけですが、同社の「MultiSwitch Plus」を接続することで3件に、MIDIで管理すると300件に増やすことができます。エクスプレッションペダルは多くの場合ボリュームペダルとして使われますが、複数のパラメータを一気に変化させるような設定も可能です。

また、9台のキャビネットのほかに、外部からのIRデータも利用できます。PCとUSB接続して専用ソフトを起動することで、IRデータのロードとエディットが可能です。

Strymon「Iridium」 – Supernice!エフェクター

Walrus Audio「ACS 1 + Cab Simulator」

Walrus Audio「ACS 1」は、3種類のアンプと6種類のキャビネットにタイトなルームリバーブを加えたアンプ&キャビネットシミュレーターです。フットスイッチがバイパスとブーストスイッチになっており、ドライブペダルのような感覚で使用できます。

二つの設定を同時に使用できる

3種類のアンプはフェンダー/VOX/マーシャルそれぞれの名機を再現しており、アンプによって効き方が変わる3バンドEQは、12時の位置が基準となるよう設計されています。6種類のキャビネットはWalrusオリジナルのIRデータを使用しています。本体中央の「L+R」トグルスイッチが独特で、左右のチャンネルで別々のアンプ+キャビネットを鳴らしているかのように設定できます。

いわゆる「部屋鳴り」の影響を調節する「ROOM」は、実際のアンプをマイク録りした時のルームアンビエントを再現する、タイトなルームリバーブです。こちらは「L+R」トグルスイッチの設定に関わらず、左右のチャンネル共通です。


Walrus Audio Mako Series: ACS1 Amp + Cab Simulator
定番系サウンドをしっかり確保した上で、左右で違う音が出せる、ブーストできるなど、面白い機能が楽しめます。

フットスイッチでブーストとプリセット切替ができる

「BOOST」スイッチはボリュームとゲインの両方を設定することができ、両方のブーストはもちろん音量だけ、またはゲインだけブーストさせることもできます。

二つのフットスイッチ同時押しでLEDが赤→緑→青の順にプリセットを切り替えられます。本体のみの操作で使用できるプリセットは3件までですが、MIDIコントローラーを接続することで最大128件の保存が可能です。

公式サイトからIRデータを読み込める

PCとUSB接続することで、公式サイト「Walrusaudio.io」からファームウェア更新とオリジナルIRデータの読み込みが可能です。新機能の追加などアップデートもここからできます。なお、このサービスにはGoogle CHROMEブラウザが必要です。

Walrus Audio「ACS 1 + Cab Simulator」 – Supernice!エフェクター

Effects Bakery「An Bread DI」

Effects Bakery An Bread DI

エフェクツ・ベーカリー「An Bread DI」は、極小の本体にアンプ&キャビネットシミュレーターを搭載した、シンプルなアクティブDIペダルです。ペダルボードで完成させたサウンドをラインアウトして、そのままオーディオインターフェイスやPAにつなぐことができます。

ツマミとスイッチ1個ずつの、超絶シンプル操作

「An Bread DI」は同ブランドの他モデルと同様に、ちっこい本体とかわいいデザイン、そして驚きの低価格が持ち味です。操作系は音量調節のための「LEVEL」ツマミ、アンプ&キャビネットシミュレーターのON/OFFをおこなう「DiR/AMP SIM」スイッチの二つのみです。シミュレーターはブリティッシュ系のアンプを再現しており、高域をちょっと削った味のあるサウンドが得られます。

シミュレーターを切るとクセなく収まりの良いクリーンな音が得られ、アコギ用のプリアンプとしても使用可能です。


【試奏動画】Effects Bakery / An Bread DIを使ってミキサー直でエレキギターを弾いてみる【エフェクター】
音量のみのシンプル操作とはいえ、¥4,000でお釣りが来る製品とはとても思えない、まとまった音が得られます。アンシミュの音は1:50あたりから。3:25あたりから、定番DI(価格は3倍)の音も確認できます。

出力はフォンとキャノンの2系統

本体側面にフォン端子とキャノン端子の両方を備えており、目的に応じた使い分けが可能です。DIとして使えますが、PAからのファンタム電源を受け取る機能はなく、スタンダードなセンターマイナスDC9Vアダプターでのみ駆動します。

Effects Bakery「An Bread DI」 – Supernice!エフェクター

NUX「Solid Studio NSS-5」

NUX Solid Studio NSS-5

ニューX「Solid Studio NSS-5」は、パワーアンプ、キャビネット、マイク、そしてマイクのポジションを再現したペダルです。好きなプリアンプと組み合わせることで、理想のアンプサウンドをラインに送ることができます。また外部からIRデータを読み込めるほか、IRデータを自作することができます。

組み合わせの妙技で音を作る

3タイプの真空管(EL34/6V6/EL84)が選べるパワーアンプ、8タイプのキャビネット、8種類のマイク、スピーカーの中心、コーン紙の中間地点、スピーカーのエッジ付近という3か所のマイキング、全部で576通りの組み合わせに「DRIVE」と「PRESENCE」両ツマミの調整で音を作ります。なお、読み込んだIRデータを使用する場合、マイクとマイキングの設定は無効になります。フットスイッチはパワーアンプ、キャビ&マイクそれぞれのON/OFFです。


NUX Solid Studio Review by DutchGuitarDude
パワーアンプとキャビネット、マイクの組み合わせでここまでサウンドのニュアンスが違うのか、と感心させられますね。

充実した入出力系

ギターやエフェクターだけではなく、ヘッドアンプからの信号も受けられるよう、2つのヘッドルームレベルを切り替えられるようになっています。ギターやエフェクターからの入力は「-10dB」、アンプのセンドやスピーカーアウトからの入力は「+4dB」に合わせます。ヘッドホン端子を兼ねるアウトプット端子のほかキャノン出力端子も備え、入力した信号を素通りさせる「THRU」端子まで備えます。

「THRU」端子は、そのままギターアンプに接続できます。ギターアンプを使用する時にはTHRU、PAやオーディオインターフェイスに送りたい時にはアウトプット、という使い分けができるほか、ライブステージでTHRUからギターアンプに送って自分用のモニターとして使い、アウトプットからPAに送る、といった使い方ができます。

NUX「Solid Studio NSS-5」 – Supernice!エフェクター


以上、アンプ&キャビネットシミュレーターについてチェックしていきました。これまで足元のボードだけでサウンドメイクを完結するのは、マルチエフェクター派にしかできなかったことでした。それが今や、コンパクト派にもできるようになったわけです。この便利さ、ぜひ体験してみてください。