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左:マーシャルの真空管アンプ「DSL100H」のスタック、右:Rolandのトランジスタアンプ「JC-120」
ギターアンプは主に2種類あり、電気信号を真空管で増幅する「真空管アンプ」と、トランジスタで増幅する「トランジスタアンプ」があります。
最大の違いは上述にもある「増幅方式」で、真空管アンプは真空管を使用することで「暖かくて柔らかいサウンド」になり、トランジスタアンプはトランジスタによる「冷たくて硬いサウンド」になります。
リハーサルスタジオに常設されることも多い、真空管アンプの定番モデル「Marshall JCM2000」
真空管アンプ(チューブアンプとも呼ばれます)は強力な電圧をかけ、真空管を「飽和状態(オーバードライブ)」にすることで、「キメの細かい自然な歪み」を得ることができます。なので、歪み系ペダルを使わずにアンプの歪みを使っているギタリストも多いです。音質的には上述にもあるように「暖かくて柔らかいサウンド」なので、多くのギタリストが真空管アンプを好んで使っています。トランジスタアンプに少ない「音のコシ」や「粘り」を持ち合わせているのも人気の理由です。
Marshall JCM2000 の使い方・音作りの方法
サウンドに人気がある反面、真空管アンプはダメージを与えないようにデリケートな扱いが必要です。
など、いくつかの注意点を守って扱うことで、真空管の劣化やアンプの故障を防ぐことに繋がります。
初心者向け真空管アンプ扱い講座 〜 【音の良さと、現場での強さ】ギターアンプメーカー「SHINOS」訪問インタビュー
また、真空管アンプには「ノイズ」がつきもので、待機中も「ジーッ」というノイズを耳にしますが、決して壊れている訳ではありません。どうしても気になる方はトランジスタアンプを選択肢に入れると良いでしょう。
真空管アンプには「プリ管」と「パワー管」といった2種類の真空管が使われています。これらはアンプのプリアンプ、パワーアンプにそれぞれ使われています。真空管には「寿命」があり、寿命が近づいてくると「音が小さくなる」、「歪まなくなる」といった問題が生じます。そのため、定期的な交換が必要になります。交換時期は使用頻度によって異なりますが、「音に異変」を感じたら早めに変えることをオススメします。
プリ管の交換は抜き差しだけなので簡単ですが、パワー管には「バイアス調整」という工程が必要になり(プリアンプ部については自己バイアス方式となっていることが一般的であり、自動で調節されることが多いためです)、楽器屋や専門業者に任せることになります。個人でも対応可能ですが、「感電」の危険性と「回路の知識」が必要になるので、基本的にはプロに任せるようにしましょう。
真空管の種類・仕組み
真空管にどれぐらいの電流が流れるのかを調整するものです。真空管にバイアス電圧が深くかかると流れる電流は抑えられ、音に元気がなくなります。また、電圧が浅すぎると過度の電流が流れ、音にハリが出る代わりに真空管自体の寿命も縮めてしまいます。このように、バイアス電圧を適正な値にすることはサウンドや真空管の寿命に直結するため、重要な要素です。
実際の作業
真空管にはベストの電流を流すことが必要であり、ハリのある良い音を得つつ、真空管の寿命を縮めないギリギリの量を見極めることが必要になります。そのため、電圧計を繋ぎ、真空管にどれほどの電圧が掛かっているかを測定しながらの作業となります。バイアスの調整には、調整用のポットを回すだけで良いものや、抵抗ごとを変えなければならないものなど、様々です。
バイアス電圧の値は通常は出荷時点で最適な値にセットされているため、むやみに変える必要はないのですが、真空管を種類ごとまるごと交換する場合などは、新しい真空管にあったバイアス電圧に調節してやる必要があります。また、部品の劣化が考えられるヴィンテージアンプなどは、バイアス回路ごと使い物にならなくなっている場合もあり、回路ごとの交換が必要になるケースもあります。
トランジスタアンプは別名「ソリッド・ステート」とも呼ばれ、信号の増幅にトランジスタという電子部品を使っているアンプです。真空管アンプのようなメンテナンスは必要無く、故障しない限り半永久的に使い続けることができます。調整できる周波数も幅広く、音作りの幅も真空管アンプより広いです。
真空管アンプは増幅に真空管を使用するため自然な歪みを得ることができますが、トランジスタアンプは一定のポイントを超えると「急激に歪む」のが特徴です。極端に歪ませると耳に痛いサウンドになってしまうので注意しましょう。
2000年代以降は音作りの部分をデジタル制御で完了させるモデルが増えてきました。音色をオペアンプや抵抗などで作り上げていた従来のアンプに対して、これらを特に「デジタルアンプ」と呼び、特に既存のアンプを模倣しているものを「モデリングアンプ」と呼びます。これらも増幅にトランジスタを使用することは共通しており、トランジスタアンプのいちカテゴリに含まれると言えるでしょう。
ポピュラーなトランジスタアンプ:Roland JC-120
通称して「ジャズコ」「JC」と言われる定番アンプ。日本発のトランジスタアンプとして第一に名前の挙がる銘機であり、頑丈で大出力、キャスター付きの利便性もあって、国内のリハーサルスタジオで置いていないところはないほど普及しています。
ジャズコーラスの名は冠するものの、名前のようなジャズに向いた音とは言いがたく、基本路線は「石っぽい」と形容されるバキバキと乾燥したクリーントーン。ある意味でトランジスタアンプの印象をそのまま形にしたような音となっており、しばしばトランジスタっぽい音の引き合いに出されることもあります。暖かみやマイルドさは少ないものの、個性が強くないのでエフェクターのノリは抜群に良く、いちスピーカーとして見たときに常に安定した音を出力できるという得がたい長所があることから、さまざまなジャンルのギタリストから長く重宝され愛されています。
同じくローランドのトランジスタアンプ。現場での利便性を考えたJCシリーズやチューブらしさを指向した下記のBlues Cubeシリーズとは違い、CUBEシリーズは練習用アンプの側面が強いシリーズとなります。
Roland/BOSSの看板技術COSM由来のモデリングが数種と空間系エフェクトの搭載で、幅広い音色作りが可能。練習用の外部入力端子を装備し、スマートフォンとの連動でより多いアンプモデルを切り替えることもできます。
大小様々なモデルをラインナップしますが、ストリート用の電池駆動モデルCUBE Street、MOBILE CUBEや、再生用スピーカーを兼ねられるCUBE Lite、20W~120Wまでを数種展開するベース用CUBE BASSなど、様々な用途に合った製品の幅広さは魅力。ギタリスト、ベーシストあるいはボーカリストまで、求めやすい価格帯に抑えられ、練習用アンプとしての定番の一つとなっています。
Roland MICRO CUBE GX をギター博士が弾いてみた!
Blues Cubeシリーズは、「トランジスタでありながらチューブアンプのような音」が指向されたシリーズ。90年代にすでに同名のモデルが存在しましたが、Tube Logicというローランドの新技術を用いて、さらにブラッシュアップして開発し直したものが現在の現行製品となっています。トランジスタアンプをヴィンテージ・チューブアンプの音に近づける、という部分が最大の開発理念であり、チューブアンプの内部のパーツごとの振る舞いを研究、解析し設計することで、冷たく硬いというトランジスタの負のイメージを覆すような暖かい音色を持たせることに成功しています。
ラインナップは最小でも30Wからとなり、ライブやセッションでも使える大出力モデルがメインとなっています。メンテナンスに煩わされず真空管アンプに近い音が得られるのは大変に魅力で、90年代に存在したオリジナルからすでに人気がありました。ブラッシュアップ以降さらに多くのファンを獲得しています。
真空管を搭載せずチューブサウンドを実現:Roland Blues Cubeとは?
RolandがBOSSブランドで提供するモデリングアンプ。長年にわたるエフェクターの製造やフラッグシップモデルのWAZAアンプで培ったBOSSのアンプモデリング技術を継承しています。アンプモデルはアコースティックを含む5種類、58種類のエフェクトを使い分けられます。メモリーも可能で、専用のフットスイッチを使うと、そのままライブに持ち込めます。スピーカーは専用モデルで、パワーコントロールを搭載し、出力も変更可能。
コンボアンプの50W、100W、それ以上の大出力モデルのヘッド、キャビネット、小型のKATANA MINIなど、多彩なラインナップを誇ります。最大出力を誇るKATANA Headに関しては、キャビネットに繋ぐほか、ミニスピーカーを中に仕込んでおり、練習用アンプとしても使えるというハイブリッドな利用が可能です。2018年ワイヤレスシステムを融合したKATANA AIRを発表。新しい発想を次々つぎ込み、自宅練習からライブまで幅広く対応します。
《KATANA-100レビュー》ギターアンプ「BOSS KATANA」シリーズ考察
イギリスのアンプメーカーとして名高いBlackstarのデジタルアンプシリーズ。Blackstar社は長らく真空管を使った本格派のアンプや、真空管を搭載した大型のエフェクターなどをメインとしていましたが、IDシリーズを筆頭に、現在ではデジタルの分野まで幅広くラインナップするに至っています。
IDシリーズはヘッドからコンボまで多数のラインナップを誇りますが、出力以外のスペックは概ね共通しています。アンプモデルは6種類。Blackstar社が独自に開発するオリジナルモデルをメインとし、エフェクトも空間系をメインに12種を搭載します。パネルを見ただけで即座にセッティングできる分かりやすさはギタリストに訴求しやすい要素であり、True Valve Powerというパワー管のモデリングや、アメリカ的な音からブリティッシュ的な音を連続的に可変できるISFコントロールは、同社のアンプならではの魅力的な機能です。PC用エディタには多機能なオーディオプレイヤーが付属し、再生速度の変更なども可能です。
また下位モデルとも言えるFLY3は電池駆動の小型アンプ。3Wの低出力ながらBlackstarらしい良質な歪みが得られ、ディレイエフェクトとISFコントロールを搭載。フラットな音像を持つスピーカーを活かし、外部出力からのオーディオ使用にも使える万能のミニアンプとなっています。
BLACKSTAR IDシリーズ – Supernice!ギターアンプ
BLACKSTAR FLY 3 – Supernice!ギターアンプ
Fender Mustang GTシリーズ
フェンダー社が扱う練習用モデリングアンプの代表格。ヴィンテージフェンダーの音から、近代的なハイゲインまで幅広いアンプモデルに加え、代表的空間エフェクトを網羅。
現在このシリーズのメインを張っているのは、通常のMustangの後に発売されたMustang GT。21のアンプモデルと47のエフェクトを搭載し、発売当初は世界で初めてBluetoothとWi-Fiによるワイヤレスでの操作を可能とし、次世代のアンプの触れ込みで話題となりました。40Wから200Wまでを網羅し、専用フットスイッチが存在するところからも、練習用のみならずライブ使用を前提としたラインナップとなっていることがわかります。
FENDER Mustang GT – Supernice!ギターアンプ
ロックアンプの雄、マーシャルが発売したモデリングアンプ。オーディオソフトのSoftube社とタッグで開発された古今のマーシャルが全てモデリングされています。便利機能としてBluetoothによるスマートフォンからの遠隔操作がフィーチュアされ、複雑になりやすいモデリングアンプの操作を簡便にしています。
モデリングは初代のJTM45からJCM2000 DSLまでほぼ全ての代表モデルに及び、さすがに純正だけあって再現性は非常に高いです。パワーアンプの真空管やキャビネットの種類まで自在に入れ替えられ、アンプ部の作り込みの幅広さはギタープロセッサー並み。プリエフェクト、センドエフェクトなども数は少ないながらもしっかりと網羅されています。上位の「CODE 50」や「CODE 100」などでは十分にライブで使用できる出力が得られます。
MARSHALL CODE – Supernice!ギターアンプ
ヤマハが誇る練習用アンプのロングセラーモデル。通常ラインのTHR5、10に加え、歪みに特化したTHR10X、ヴィンテージアンプサウンドに特化したTHR10C、アコースティック用のTHR5Aの派生ラインナップを展開。ラインナップは多彩ですが、いずれもアンプサウンドにこだわったモデリングが搭載されているところは共通。ノーマルのTHRはオーソドックスなアンプタイプを5種類モデリングし、THR10Xはブラウンサウンドなどのハードロック仕様のサウンド、THR10CにはクラスAアンプやヴィンテージフェンダー系などのサウンドをそれぞれ含んでいます。
音色面もさることながら、このアンプのロングセラーたる所以はその使い勝手の良さにあります。AUX端子を使ってのオーディオ機能、今では当たり前となったUSBオーディオIF機能を他社に先んじていち早く搭載しました。アンプらしからぬデザインで、卓上に置くことを前提に小型軽量にまとまっており、5~10Wという出力で家で弾くのにベストな音量が得やすいのもポイント。発売後10年も練習用アンプとして定番の座に君臨し続けています。
YAMAHA THRシリーズ – Supernice!ギターアンプ
YAMAHA THR100H
練習用小型アンプTHRの遺伝子を移植した100Wアンプヘッド。THR 100Hと2チャンネル仕様のTHR 100H Dualの二種をラインナップし、専用キャビネットも発売されています。持ち運びやすい横長のフォルムと、THR100Hに至っては3.6kgという驚きの軽量で、電車移動でも運べるほどの大出力アンプヘッドを実現しています。
アンプのモデリングはModern、Lead、Crunch、Cleanの4種であり、通常ラインのTHRにあったような多様なモデリングは姿を消していますが、4種でありながら、実際にライブやリハーサルで使うために十二分な音色が得られるようにチューニングされています。増幅はトランジスタですがパワー管のシミュレータを搭載し、タイプを入れ替えることで擬似的な真空管の交換が可能です。その音色は相当にチューブアンプに迫っており、音色作りでのコンセプトはライバル社RolandのBlues Cubeに近いと言えるかもしれません。THR 100H Dualではデュアルチャンネルであることを活かし、別のモデリングをミックスして出力することが可能。クリーンとクランチを混ぜて、太い歪みサウンドを作り出すなど、幅広い運用もできます。
Yamaha THR100H – Supernice!ギターアンプ
昨今、続々とラインナップされているVOXの練習向けアンプですが、その中でも実戦を意識したアンプがこのVXシリーズです。出力違いでVX I(15W)とVX II(30W)の二種がラインナップされています。アンプモデルはクリーンからハイゲインまで11種内蔵され、エフェクトも種類はわずかながら実用に十分な量を網羅。
中でもこのモデルの最大の特徴はその軽量設計。VX IIの30Wという出力はちょっとしたホールでも演奏できるほどの音量が得られますが、それでいて3.8kgの軽量は他社のモデルにもあまり見られません。回路設計そのものをモデリングするVETという技術が使われ、スピーカーはそれを最適に再生するためにチューンされていますが、その独自設計が生きており、音色は軽量を全く感じさせない真に迫ったもので、低音の出方や音圧などは大型アンプにも引けを取りません。
ノイズゲートがデフォルトで掛かりっぱなしになっていたり、アンプモデルを切り替えると勝手にメモリーされた音量に戻ってしまうなど、実用面でやや使いにくいと感じる箇所はあるものの、軽量ゆえに運搬が容易で、単なるエレクトリックギター用にとどまらず様々な局面で使えるアンプです。
VOX VXシリーズ – Supernice!ギターアンプ
Randall(ランドール)はアメリカ発のアンプメーカーですが、メタリカのカーク・ハメットやパンテラに在籍した故ダイムバッグ・ダレルが使用していたことでも有名です。ギターアンプは真空管という神話がついて回る中、ソリッドステートの良質なアンプを多数製造し、特にメタルファンから人気を博しています。
Randallのラインナップのうち、トランジスタアンプの代表的モデルはRGシリーズ。RG1503HとRG3000Hの二種が展開され、それぞれ150W、300Wの大出力。いずれも3チャンネル仕様であり、RG3000Hのほうはノイズゲートを装備します。ダイムバッグ・ダレルの生前の言葉通り、トランジスタならではの速い立ち上がりを持ち、強烈でメタリックな歪みはハードロック・ヘヴィメタル系のプレイヤーにはこの上なく魅力的なサウンドでしょう。
アナログの大出力アンプヘッドには珍しくスピーカーエミュレイテッドアウトを搭載し、簡単にラインレコーディングが可能。家で弾くにはオーバースペック気味ではありますが、チューブアンプのような繊細なメンテナンスが不要というのもあり、ライブでがんがん使うギタリストにこそおすすめできます。
Kemper:POWER HEAD
Kemper Profiling Ampはアンプという枠で語るのが若干場違いではありますが、パワーアンプ付属のモデルについては、実質アンプヘッドとも呼べる立ち位置にあります。既存のアンプを特殊な技術で完全コピーして自分の中に蓄える「プロファイリング」という機能を持ち、実際に自分の手持ちのアンプや、スタジオでよく使うアンプをKemperの中に取り込んで、同じ音を出すコピーを作り出すことも可能です。世界中のミュージシャンが様々なアンプを取り込んだものがデータとして出回っており、その可能性はほぼ無限とも言えます。
モデリングに限りなく近いものの、厳密にはハードウェアの動きで再現を試みているという点で少し違い、上記に列挙したモデリングアンプの類とはまた違う原理の動作をしています。今はもう手に入らないヴィンテージのアンプなどを簡単に自分のものとできるのもKemperならではの魅力でしょう。
Kemperはたくさんのアンプを持ち運ばねばならないツアーミュージシャンや、簡便に様々なアンプを利用したいレコーディングの現場などから最初に支持されました。600Wの専用パワーアンプを内蔵したモデルはそのままキャビネットに繋ぎ、あらゆるアンプヘッドの代わりを果たします。
未来のギターアンプを手に入れよう!プロファイリングアンプKEMPERについて – Supernice!ギターアンプ
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