《創造性を刺激する多機能ディレイ》Line 6「DL4 MkII」

[記事公開日]2022/12/23 [最終更新日]2024/6/23
[ライター]小林健悟 [撮影者]神崎聡 [編集者]神崎聡

Line 6 DL4 MkII

1999年に発表されたLine 6「DL4」は、15種類の個性的なディレイと画期的なルーパーを直感的に使用できるデバイスとして、世界中のミュージシャンを刺激しました。DL4あってこそ誕生しえた音楽も多く、生産が完了した今なお愛用者の多い、多機能ディレイの名機です。

そんなDL4が機能を大幅に増強、2022年に「DL4 MkII」となって帰ってきました。シンプルな操作感はそのままに、30種類のディレイと15種類のリバーブ、さらにルーパーを2種類も備える強力なデバイスです。マイク入力が装備されたためボーカル・マイクが使用でき、ペダルボードに組み込みやすく、小型化も達成するなど、現代的なアップデートもしっかり施されています。今回は、このLine 6「DL4 MkII」に注目していきましょう。


ノスタルジックなサウンドも、飛び道具のようなサウンドも、直感的な操作でカンタンに出せちゃう。ルーパーの起動や操作もカンタンで、演奏の衝動を損なわずにプレイできます。

名機「DL4」とは、どんなエフェクターだったのか?

Line6 DL4 多機能ディレイの名機、Line 6「DL4」。ツマミやスイッチの配置は、現在のDL4 MkIIにほぼそのまま受け継がれている。

DL4 MkIIは、先代DL4のサウンドと機能を全て使用できます。シンプルな操作感も受け継いでいるので、DL4の特徴はそのままDL4 MkIIの特徴だと言えます。そんなわけで、まずは多機能ディレイの名機「DL4」が何だったのかを見ていきましょう。

DL4 MkII発表までの、Line 6の歩み

Line6ヒストリー

1996(平成8)年に世界初のデジタル・モデリング・ギター・アンプ「AxSys 212」を発表します。1998年には、そのモデリング技術を発展させてデスクトップ・サイズに集約した「POD」を発表、世界的な支持を集めます。PODは時代ごとに進化を繰り返し、現在の「POD Go Wireless」まで続いています。

1999年には「Stompbox Modeler」シリーズの第一弾として「DL4」が誕生、クラシックなサウンドが使えて新しい表現もできるデバイスとしてヒットします。

2015(平成27)年にはプロ仕様のアンプ/エフェクト・プロセッサー「Helix」シリーズを発表、2018年にはそのコンパクト版と言える小型アンプ/エフェクト・プロセッサー「HX Stomp」をリリースし、大きな話題となります。DL4発表から23年を経た2022年、DL4の使いやすさはそのままに、HelixゆずりのアルゴリズムやLEDフットスイッチでアップデートした「DL4 MkII」が発表されます。

名機「DL4」ふたつの特徴

DL4の特徴には、「アナログ・ディレイのモデリングサウンドとデジタル・ディレイの斬新なサウンドの両方が使用でき、全てTAPテンポで制御できる」「ルーパーがライブで使用しやすく、新しい表現ができる」以上の2つが挙げられます。それぞれについて見ていきましょう。

バラエティ豊かなディレイを便利に使える


The Gloaming
レディオヘッド所属ギタリスト、エド・オブライエン氏もDL4愛用者の一人。この演目のレコーディングでは、DL4のSweep Echoが使われているとされている。ディレイを効果的に使うことで、不思議な浮遊感を得ることができる。

DL4には歴史的な名機を再現したディレイが6タイプ、シンプルなものから斬新なものまでさまざまなデジタル・ディレイが9タイプ収められていました。これらのディレイを3つのフットスイッチに割り当て、4つめのフットスイッチをTAPテンポの入力に使用します。

DL4デビュー当時は便利なデジタル・ディレイが普及していくかたわら、アナログ・ディレイの音の良さが見直されてもいました。しかしアナログ・ディレイは接続や設定に労苦を要し、高額な上にメンテが大変で、ライブで使いにくいのが難点でした。これに対してDL4はアナログ・ディレイを何台も買い揃えるより遥かに安く手に入れることができ、当時は存在しなかったTAPテンポで制御できるという使い勝手の良さが画期的でした。

またデジタル・ディレイにはシンプルなディレイのほかに、TAPテンポを音符に変換する「リズミック・ディレイ」、ディレイ音にコーラスをかける「モジュレーション付デジタル・ディレイ」、ディレイ音のトーンを変化させる「スウィープ・エコー」など、斬新なアルゴリズムがありました。

ミュージシャンの想像力を掻き立てるルーパー


Aiming for Enrike – Las Napalmas full album live | Rohdos Sessions
DL4のループ・サンプラーを世界で一番使いこなしているんじゃないかと思われるノルウェーのデュオ、Aiming for Enrike(エイミング・フォー・エンリケ)。音を聴くだけでは、たった二人のライブ演奏だとはとても信じられない。この動画のDL4はエフェクターという枠を超えた、ひとつの楽器ですらある。

DL4デビュー当時、ルーパーはまだ新しすぎて「ルーパー」という一般名すらなく、DL4のこの機能には「ループ・サンプラー」という名前が付けられていました。DL4のループ・サンプラーはフットスイッチの操作で録音、再生、重ね録り、ワン・ショット再生ができます。ここにモジュレーション付ディレイを使用できる上、二つのおもしろい機能を有しています。

1/2 SPEED
「1/2スピード」は、ループ再生速度やループ録音速度を半分に下げる機能です。アナログテープのように、速度を半減させるとピッチは1オクターブ下がります。単音で弾いたリフをテンポ半分のベースとしてループさせたり、半分の速度で録音したリフを倍速で1オクターブ上の高速フレーズに変化させたりできます。

REVERSE
「リバース」はループを逆再生させる機能です。逆再生させたループに重ね録りすることもでき、そこから逆再生を解除すると重ね録りした内容が今度は逆再生されます。

多機能ディレイ「DL4 MkII」その性能は?

DL4 MkII 機能を大幅に追加して、DL4が帰ってきた。小さくなった本体と色の変わるLEDリングがかわいい。

二十余年の歳月を経て大幅なパワーアップを遂げたLine 6「DL4 MkII」の特徴としては、「基本操作はシンプルで直感的だが、多層的にも使える」「多くのディレイに加え、さまざまなリバーブが使用可能」「2種類のルーパーを使い分けられる」、以上の3点が挙げられます。

また前作DL4の機能と音色を全て収録しているので、DL4を愛用するアーティストのサウンドに迫ることができます。一方でDL4永年の愛用者は全く同じに使えるものが新品で手に入れられるので、故障などトラブルのリスクを軽減できます。

基本操作はカンタンでも、奥が深い

DL4 MkII:コントロール モデルを選んで、パラメータをいじるのが基本操作。新たに追加されたALT/LEGACYボタンによって様々な機能にアクセスできる。

DL4 MkIIの基本操作は、

  • ディレイ・ペダルとしては、モデル・セレクターで音を選び、4つのツマミやTAPテンポでパラメータを調節して、MIXでドライ/ディレイの配分を決めて、フットスイッチの長押しで保存、フットスイッチを押すと呼びだし。
  • 「Classic Looper」と改名したルーパーとしては、4つのフットスイッチでルーパーを操作、パラメータのツマミでモジュレーション付きディレイを操作する。

以上の二つです。ここまでは先代DL4と全く同じで大変シンプルにまとまっており、これだけでもじゅうぶん楽しく使うことができます。

ここに新しく追加された「ALT/LEGACY」ボタンを使うことで、幅広いサウンド・バリエーションにアクセスしたり、TAPテンポを音符に変換させたり、TAPフットスイッチにルーパーやバンク切り替えなどの機能を割り当てることもできます。

DL4 MkII:リアパネル DL4 MkIIの背面。2系統の入出力に加え、EXPペダル端子は2系統に増強、さらにMIC入力と音量ツマミ、MIDIのIN/OUT、USB端子、microSDカードスロットを備え、別売のmicroSDによりルーパーの録音時間を延長できる。電源の端子が汎用(センターマイナス、500mA)なので、ペダルボードに組み込みやすい。

接続端子は大幅に追加され、拡張性が拡充されました。2系統のEXPペダル端子では、ルーパー操作やTAPテンポ入力などができます。MIDIを利用すると最大128メモリー(本体のみでは最大6)にアクセスできるほか、各種パラメータ操作やシーケンサーとの同期演奏が可能です。

大幅に拡充されたサウンドバリエーション

DL4 MkIIは、DL4収録の15種類を全てカバーした30種類のディレイに、15種類のリバーブを組み合わせて使用できます。音色の切り替えは、モデル・セレクターとALT/LEGACYボタンの組み合わせだけで操作可能です。

15種類の「MkIIディレイ」

「MkIIディレイ」は、Helix/HXファミリー・アンプ/エフェクト・プロセッサーから継承された15種類です。それぞれ短い説明ではどんな音なのか想像しにくい、面白い効果を持っています。これらはALT/LEGACYボタンが消灯した状態で選択できます。

  • Vintage Digital:80年代風のローファイなデジタル・ディレイ。
  • Crisscross:2系統のディレイをクロスフェードさせる。
  • Euclidean:ユークリッドのアルゴリズムに基づく、8ステップのシーケンスパターン。
  • Dual Delay:2系統のデジタル・ディレイ。
  • Pitch Echo:半音単位で上昇または下降する。
  • ADT:二人で同時に弾いたような太い音。
  • Ducked:弾くのをやめると聞こえてくるディレイの、アタックとリリースを調節できる。
  • Harmony:音階に従ってアルペジオする。
  • Heliosphere:ディレイにモジュレーションとリバーブがかかる。
  • Transistor:Maestro「EP-3」をベースとしており、ヘッドルーム調整で音を太くする。
  • Cosmos:Rolandテープエコー「RE-201」をベースとしたモデル。
  • Multi Pass:8種類のタップパターン。
  • Adriatic:BOSS「DM-2」にモジュレーションがかかる。
  • Elephant Man:Electro-Harmonix「Deluxe Memory Man」をベースとしており、コーラスかビブラートが使える。
  • Glitch:上下のオクターブとリバース効果にスライスを加え、さらにシャッフルできる。

15種類の「Legacyディレイ」

「Legacyディレイ」は、すでにDL4 MkIIの基本操作に組み込まれている「Rhythmic Delay(TAPテンポを音符に変換)」を除くDL4の全音色に、Binson「EchoRec」のモデリングを追加した15種類です。こちらはALT/LEGACYボタンを点灯させた状態で選択できます。

  • Digital:シンプルで頼れるデジタル・ディレイ。
  • Digital w/ Mod:デジタル・ディレイにコーラスをかける。
  • Echo Platter:Binson「EchoRec」のモデリングで、ディレイを歪ませる。
  • Stereo:左右別系統のデジタル・ディレイ。
  • Ping Pong:左右に飛び跳ねるディレイ。
  • Reverse:ディレイタイムの分だけ逆再生する。
  • Dynamic:弾くのをやめると聞こえてくるディレイで、音量の下げ具合を調節できる。
  • Auto-Vol:フェードインしてくるディレイ。
  • Tube Echo:Maestro「EP-1」をモデリングした、太い音のディレイ。
  • Tape Echo:Maestro「EP-3」をモデリング。トレブルとベースが調整できる。
  • Multi-Head:Rolandテープエコー「RE-101」を再現。
  • Sweep:ディレイのトーンを操作する。
  • Analog:BOSS「DM-2」のトレブルとベースが調整できる。
  • Analog Mod:Electro-Harmonix「Deluxe Memory Man」のモジュレーションを操作できる。
  • Lo Res Delay:低ビットのデジタル・ディレイにトーン回路を追加。

15種類の「シークレット・リバーブ」

MkIIディレイとLegacyディレイの名称はモデル・セレクターの周囲に記されていますが、リバーブについては記載されません。そのためDL4 MkIIのリバーブは「シーックレット・リバーブ」と名づけられます。こちらも定番系から斬新なモデルまであり、ALT/LEGACYボタンを長押しした状態で選択やパラメータ操作ができます。

  • Room:定番系のルーム・リバーブ。
  • Searchlights:奥行きの広いリバーブ。
  • Particle Verb:パッド的な音が出せる。
  • Double Tank:洞窟でプレート・リバーブを使用した状態。
  • Octo:天空のような広大さ。
  • Tile:タイルで囲まれた部屋の残響。
  • Ducking:弾いている間は控えめで、弾くのをやめると聞こえてくる。
  • Plateaux:リバーブにピッチシフトがかかり、アルペジオ的になる。
  • Reverb Off:リバーブを一切使用しない。
  • Cave:洞窟の残響。
  • Plate:プレート・リバーブの再現。
  • Ganymede:モジュレーションのかかるプレート・リバーブ。
  • Chamber:リバーブを生む反響室の残響。
  • Hot Springs:ギター・アンプに内蔵されているスプリング・リバーブ。スプリングの本数を変えられる。
  • Hall:コンサートホールの残響。
  • Glitz:原音を包んで盛る。残響は少ない。

使い方が選べる2種類のルーパー

新しい表現を可能にするルーパー機能は、DL4をそのまま受け継いだ「クラシック・ルーパー」に加え、フットスイッチ1基で完結する「1スイッチ・ルーパー」が備わりました。それぞれについて見ていきましょう。

ライブで多彩な表現が可能「Classic Looper」

Classic Looper

DL4のループ・サンプラーをそのまま継承した「クラシック・ルーパー」は、ライブパフォーマンスを想定したシンプルかつ的を得た設計です。多重録音に対応しますが、録音を取り消す「アンドゥ」機能はありません。なお停止状態で録音を始めると、それ以前の録音は全消去されます。

また、ワン・ショット再生、速度半減、逆再生はループ再生の途中でもスイッチを操作した瞬間に起動します。なお、クラシック・ルーパーの起動中は、MkIIディレイ、Legacyディレイ、シークレット・リバーブが使えなくなる代わりに、ルーパー専用のモジュレーション付デジタル・ディレイが使用できます。

ディレイ・サウンドと併用できる「1 Switch Looper」

1 Switch Looper

新機能「1スイッチ・ルーパー」は、スイッチ1基でルーパー機能を完結させます。他のフットスイッチでMkIIディレイ、Legacyディレイ、シークレット・リバーブのサウンドを使用できるのがメリットです。

1スイッチ・ルーパーの操作は、停止状態からのフットスイッチ1プッシュで録音/再生の開始、録音状態からの1プッシュでループ再生開始、ループ再生中の1プッシュで多重録音開始、素早く2プッシュでループ再生の停止です。

また、多重録音したループの再生中にフットスイッチ長押しで直前の録音を取り消し(アンドゥ)、停止状態での長押しで全消去します。


エクスプレッション・ペダル エクスプレッション・ペダル(ここではLine 6専用のMission EP1-L6を使用)と併用することでDL4 MkIIは最強になる

以上、Line 6の多機能ディレイ「DL4 MkII」をチェックしていきました。多機能ディレイという分野にはさまざまなブランドが参入しており、今や群雄割拠といった様相です。しかしその中でDL4 MkIIはツマミやスイッチの数を極力抑え、なおかつディスプレイもないシンプルな設計、またそれにもかかわらず本体だけでしっかり使える考え抜かれた操作性により、際立った個性を発揮していると言えるでしょう。Helix/HXファミリーゆずりのLEDフットスイッチも、操作の分かりやすさや切り替えの楽しさを演出しています。ぜひ実際にチェックしてみてください。

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