《初心者必見!》ギターの種類と選び方

[記事公開日]2023/12/24 [最終更新日]2024/10/16
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

ギターの種類と選び方 六弦かなで©

エレキギターは、その魅力的なサウンドと無限の表現力で多くのギタリストを虜にしています。しかし、エレキギターを始めたいと思っても、初心者にとってはその種類の多さに圧倒されてしまうことも少なくありません。「どのエレキギターが自分に合っているのか?」「初めて買うエレキギターはどう選べばいいのか?」といった疑問が頭をよぎることでしょう。

この記事では、エレキギターを初めて手にする方から、買い替えを検討している経験者まで、幅広い層のギタリストに向けて、エレキギターの種類と選び方について徹底解説します。各種ギターの特徴や音色、用途に合わせた選び方のコツを紹介し、あなたの音楽の旅をスタートさせる最適な1本を見つけるお手伝いをします。

小林健悟

ライター
ギター教室「The Guitar Road」 主宰
小林 健悟

名古屋大学法学部政治学科卒業、YAMAHAポピュラーミュージックスクール「PROコース」修了。平成9年からギター講師を始め、現在では7会場に展開、在籍生は百名を超える。エレキギターとアコースティックギターを赤川力(BANANA、冬野ユミ)に、クラシックギターを山口莉奈に師事。児童文学作家、浅川かよ子の孫。

エレキギター博士

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コンテンツ制作チーム

webサイト「エレキギター博士」を2006年より運営。現役のミュージシャンやバンドマンを中心に、自社検証と専門家の声を取り入れながら、”プレイヤーにとって役立つ情報提供”を念頭に日々コンテンツを制作中。


  1. エレキギターの基本構造について知ろう
  2. エレキギターのボディタイプの種類と特徴
  3. エレキギターのブランド別種類と特徴
  4. エレキギターの選び方

エレキギターの基本構造と種類について知ろう

エレキギター各部の名称とその役割

まずはエレキギター各部の名称とその役割について覚えていきましょう。

エレキギター各部の名称

ヘッド

ネックより上の部分のこと。ペグが取り付けられている他、ブランド名が入ることが多い場所です。また、弦を響かせる働きをする部分でもあります。

ペグ
弦を巻き付けるための金具。ペグを回して(弦を緩める/締めることで)音程を合わせる作業(チューニング)に使います。ヘッドの片側に6個ついているもの、両側に3個ずつついているものなど、ギターによって並び方が異なります。

ヘッドの役割/ペグの種類と交換について

ネック

ネックはギターの種類によって太さや長さなどが異なります。ギターを選ぶ時は、まずは握り具合を調べて自分の手に一番馴染みやすい物を選ぶのが良いでしょう。手が小さくてギターがちゃんと弾けるかどうかが心配な人は、ミディアムスケールやショートスケールのギターなど、なるべくネックが太くないギターを選ぶのも選択肢の一つです。

ネックの材質・形状について

ナット

ナット

各弦が外れないように、弦を支える支柱の役割を果たす重要なパーツです。牛骨・象牙・金属などの素材が使用され、ギターのサスティーン(音の伸び)の量や開放弦の響きに影響を与えます。

ナットの材質の種類と特徴

指板(フィンガーボード)

ネック上の弦を押さえる方に貼り付けられている板。表面に丸み(アール)がつけられたもの、ほとんど平らな物などが存在し、アールのつきかたによって弾いた時の感触/弾き心地が異なります。
標準的な指板材は以下の3種類。材質によって手触りが変わり、演奏性に影響するとともにサウンドの特徴も異なります。

メイプル指板
メイプル指板:明るい色が特徴的の指板材。サウンドは硬く、音の立ち上がりが速い、クリアでアタック感が強い。

ローズウッド指板
ローズウッド指板:茶褐色の指板材。メイプル指板のものより柔らかく甘くてソフトな音が特徴で、アタック感はメイプルと比較して少しだけ弱く、温かみのあるサウンド。

エボニー指板
エボニー指板:深く濃い色が特徴の指板材。高級ギターに使われることが多い。重く硬く、ローズウッドよりも引き締まったサウンドが特徴。

指板(フィンガーボード)の材質・形状について

フレット

指板の上に打ち付けられている金属の棒のこと。音程を決めるために取り付けられていて、1フレットごとに半音階ずつ上昇します。一般的に22フレットのギターが多く、ビンテージ・スタイルのギターでは21フレット、テクニカル系のギターでは24フレットが採用されるなど、ギターのタイプによってフレットの数が異なります。またフレットの材質や太さによって「音の立ち上がり」が変化します。

フレットの種類と特徴

フレットのポジション

clear

フレットのポジションを覚えよう!

これから「○弦○フレットを押さえて」という言葉が出てくるようになります。ここで各弦の呼び方、フレットの呼び方について覚えておきましょう。

六弦かなで細いほうが1弦、太いほうが6弦、って考えると覚えやすいよ!!」

ボディ

エレキギターのボディ、木材の部分です。フェンダーのギターならアルダーやアッシュ、ギブソンのギターならマホガニー+メイプルの貼り合わせなど、ブランドによって主に使用している木材が異なり、それぞれ音の特性が異なります。

ギターのボディ材について

ピックガード
ボディにキズがつかないようにする目的で取り付けられたカバー。プラスチック/ベッコウ/金属などの素材があります。ピックガードが取り付けられていないギターもあります。ルックスを気にしてか、レスポールタイプのピックガードはわざと外してしまう人もいます。

ピックアップ

ネックとボディの次に、ギターの音を決定づける重要なパーツ、それがピックアップです。フェンダー系のギターには細長い「シングルコイル」ピックアップが3基、ギブソン系のギターにはシングルコイルの2倍くらいの太さの「ハムバッカー」ピックアップが2基、取り付けられています。まずは各ピックアップ毎にどんな音の違いがあるか、次のページでチェックしてみてください。

ギターピックアップの種類と特徴

ブリッジ

弦振動を伝える台座の部分。エレキギターによってブリッジの種類は様々で、トレモロアームが使えるギターではここにトレモロブリッジが搭載されています。また弦高の調整もブリッジで行います。

ギターブリッジの種類・交換について

ジャック

ギターケーブル(シールド)を挿入する部分。ギターアンプやエフェクターに接続し音を出力します。
小さく値段も安いパーツですが、エレキギターのパーツの中ではトラブルが最も多く、接触不良で音が出なくなるなど重要な問題を引き起こす部分でもあります。

《ギター本体のパーツ》アウトプット・ジャックについて

コントロール

トーン(音のヌケ具合)やボリュームを調節するノブやピックアップセレクターなどが配置される場所。エレキギターの種類によって配置されるコントロールが違います。

エレキとアコギの違いは?

エレキギター(エレキ)とアコースティックギター(アコギ)は基本的に弦の本数とチューニングが同じです。しかし全く違うサウンドを持っており、弾き方も基礎的な内容からかなり異なります。まずそれぞれがだいたいどんな感じのものなのかを見ていきましょう。


エレキギターとアコースティックギターってどう違うの?? – ギター博士
弦の本数やチューニングこそ同じですが、音を出す原理の違いから、音が全く違いますね。それぞれの特徴を活かす弾き方というものもあり、いろいろなところに違いがあるようです。

エレキギターの特徴

エレキギター

エレキギターは弦が柔らかいので、「弦が硬くて押さえられない!」ということの起きにくい、その意味で弾きやすい楽器です。メロディが演奏しやすく、ギターソロなどではネックの根元まで手を持っていくような超高音を使うこともあります。またギターアンプで大きな音を出したり、エフェクターで様々な音を出す事もできます。バンドで弾いたり他の誰かの楽器と合奏する「アンサンブル」が前提の楽器です。

生音がたいへん小さいため、ヘッドホンを使って練習すれば騒音の問題が起きにくいのもメリットです。ただし、アンプやシールド、エフェクターといった電気製品の取り扱いが日常となること、普通はボディが一枚板なので予想以上に重量感があること、2つの注意点があります。

アコースティックギターの特徴

アコースティックギター

アコースティックギターはエレキギターに比べると少し硬い弦を使用しますが、練習や調整で十分カバーできます。チューナーはともかく本体では電源を必要としないオーガニックな楽器で、楽器だけ持って行ってすぐ弾ける、時にはピックすら不要、という気軽さが大きなメリットです。いわゆる「アコギ」というと金属弦を使用するギターを指すことが多いですが、ナイロン弦を使用するクラシックギター(ガットギター)もアコースティックギターに属します。

ポップスやロックでは、メロディ弾きよりコード弾きで多用されます。コードを鳴らして自分で歌えば、それで「弾き語り」という音楽が成立します。また、自分で弾くメロディに自分で伴奏する「ソロギター」も盛んに行なわれます。ボーカルなどの伴奏やバンド演奏でも使うことができますから、お一人様でもアンサンブルでも音楽ができます。

本体はなかなかの大きさですが、ボディ内が空洞なのでそれほど重くはありません。ただし生の音が大きく響くので、練習の音が近所迷惑にならないよう配慮が必要です。

ギターとベースの違いは?

ギター:弦は主に6本、ベース:弦は主に4本

ギターだよ!
ベースだよ!


ギターとベースでは弦の本数が違います。基本的には弦が6本張られているのがギター、4本張られているのがベースです。しかし6本以上弦を張った「多弦ギター」、4本以上弦を張った「多弦ベース」も存在します。では根本的に何が違うのでしょうか?

音域が違う

最も低い音から最も高い音までの範囲を「音域(おんいき)」と言います。ギターとベースの音域を比べてみましょう。

ギターとベースの音域
ギター/ベースで「よく使用する音域」を表したもの。

ギターとベースでは守備範囲にしている音域にも違いがあり、ベースの方が低い音域をカバーしています。同じフレットと同じ音を演奏するとベースはギターより1オクターブ低くなります。ギターの音域は伴奏用の和音(コード)を演奏するのに適しており、あらゆる演奏でさかんに使用されます。いっぽうベースの音域では和音が聴きとりにくく感じやすいので、一般的に和音が演奏されることはそれほど多くありません。

バンド内での役割が違う

ギターとベースはその音域の違いから、バンド内での役割、またよく行われる演奏内容にも違いが現れます。ギターではコードを活用することが多いことから、さまざまな伴奏で「響きとリズム」を伝えるための演奏が主体となります。エフェクターを活用して多彩な音色を駆使することも多く、時としてギターソロなどのリードプレイ(メロディ演奏)も必要とされます。

対するベースは「ボトムを支える」と表現されるように、バンドで出す音の最も低いところを主に狙って演奏します。ドラムと合わせて「リズム隊(たい)」と呼ばれ、バンドの「ノリ(=グルーヴ)」をつかさどります。ベースの低音はスマホのスピーカーでは聞きとりにくいこともありますが、ライブ会場では床や壁をズンズンと振動させるほどの存在感を発揮します。

本体のサイズが違う

エレキギターとエレキベース

ギターとベースでは楽器本体の大きさにも違いが現れます。出す音が低くなるにつれて、必要な弦は太く長くなっていきますから、ギターよりもベースの方が大きくなっているのが普通です。またギターの弦はかなり細く、最も細い1弦は直径約0.2mm(=0.008インチ)ほどにもなります。1弦から3弦までが裸の「プレーン弦」で、4弦以降が芯に線を巻いた「ワウンド弦(巻弦)」です。ベースの弦は太く、ほとんどのベースの弦が巻弦です。

《初心者必見》 1本目にオススメの4弦エレキベース10選 – ベース博士

エレキギターのボディタイプの種類と特徴

一般的なエレキギターは木材でできています。木を切って、曲げたり貼ったりネジ留めしたりして作った本体に、いろいろな部品を載せて完成します。そのギター本体、特にボディがどのように作られているかで、エレキギターは3つに分類されます。エレキギターの種類を見ていく導入として、まずはボディ構造で区別する3つの分類を見ていきましょう。

ソリッドギター

ソリッドギターFender Stratocaster

エレキギターの中で最も一般的なのが、ソリッド・ボディを持つ「ソリッドギター」です。「ソリッド(solid)」には「固体」という意味のほか、「中が詰まっている」という意味があります。ソリッドギターのボディは厚みのある一枚板で、部品を収める以外の空洞部分を持たず、名前通りのソリッドなサウンドが得られるのが特徴です。重さはありますが、おおむねスリムで抱えやすい寸法感に収まります。また色々な形のボディを作りやすく、歴史上さまざまな形状のエレキギターが考案されました。
ハウリングに強い構造なので、爆音で鳴らしたり極端な設定で音作りしたりもでき、ロックやポップスを中心に様々なジャンルで盛んに使用されます。アンプにつながない状態では小さな音しか出ないのは、夜遅くまでたっぷり練習したい人にとって大きなメリットです。

フルアコースティック・ギター(フルアコ)

フルアコースティック・ギター Gibson Byrdland

「solid(ソリッド:中が詰まっている)」の対を成す言い方が「hollow(ホロウ:音響用の空洞を持つ)」です。板を貼り合わせたり木材を彫り込んだりして作った、アコースティックギターのように中空のボディ構造を「ホロウ・ボディ」と言い、このボディ構造のギターを日本ではフルアコースティック・ギター(フルアコ)と呼びます。
ボディの音響効果による丸みのある音が最大の持ち味で、ジャズ、カントリー、ロカビリー、ソウル、ポップスといったジャンルで盛んに使用されます。ただし大音量や極端なサウンドメイクでの演奏ではハウリングが起きやすく、ロック系での使用例は限定的です。また音響効果を期待することからボディはアコギ並みに大型で抱え心地もアコギに近く、アンプにつながなくてもある程度の音量が得られます。

セミアコースティック・ギター(セミアコ)

セミアコースティック・ギターGibson ES-335

弦の通る中心部分だけソリッドになっている、部分的に中空のボディを「セミホロウ・ボディ」と言い、このボディ構造を持つギターを日本では「セミアコ(セミアコースティック・ギター)」と呼びます。ソリッドギターの硬さとフルアコの丸さを併せ持ったサウンドが持ち味で、ジャズ、フュージョン、ブルース、ファンク、ポップス、ロックなど幅広いジャンルで使用されます。
フルアコよりは遥かにハウリングしにくく、ドライブサウンドも使用できます。しかし極端なセッティングには不向きで、ハードロックやメタルで使われることはほぼありません。音響効果を期待するためにボディは幅広くなりますが、フルアコほど厚くならないのが普通です。

ソリッド フルアコ セミアコ
著名な愛用者 ジミ・ヘンドリックス、エドワード・ヴァン・ヘイレン、イングヴェイ・マルムスティーン等 ウェス・モンゴメリー、ブライアン・セッツアー、デビッド・T・ウォーカー等 チャック・ベリー、B.B.キング、ラリー・カールトン等
ディストーション △(ハウリングに泣かされる)
オーバードライヴ
クランチ
クリーントーン ◎◎
生音 小(静かな部屋でなら練習ができる) 大(マイク録りでレコーディングができる) 中(騒がしくなければ聞き取れる)

ソリッドギター/フルアコ/セミアコ比較

エレキギターのブランド別種類と特徴

「こんな形のギターがいい!」「自分の好きなギタリストが弾いてるギターと同じ形がいい!」と思っていても、それは何という名前のギターなんでしょうか。様々な種類があるエレキギター、その中でも代表的なギターの呼び方を覚えておきましょう。

ギターの呼び名を覚えよう


8本のエレキギターでギター博士のテーマを弾いてみた! – ギター博士
この動画でギター博士が弾いている8本のギターの名称を覚えておこう

  • ストラトキャスター:Fender Made In Japan Hybrid 60s Stratocaster
  • テレキャスター:Fender Japan Exclusive Classic 60s Telecaster
  • ジャガー:Fender Made In Japan Traditional 60s Jaguar
  • ジャズマスター:Fender Made In Japan Traditional 60s Jazzmaster
  • レスポール:Gibson Les Paul Traditional
  • スーパーストラト:Ibanez Prestige RG2770QZA-WPB
  • セミアコ:Gibson ES-335
  • フルアコ:Gretsch Electromatic G5422T

ストラトキャスター・タイプ

ストラトキャスター・タイプ
Fender American Standard Stratocaster

ストラトキャスターは、Fender(フェンダー)社が開発した機能美あふれるギターです。弾きやすく構えやすい楽器本体、幅広いサウンドバリエーションを作る3つのピックアップ、表現の幅を広げるトレモロアームが持ち味です。1950年代に発明された楽器だとは信じがたい、現代音楽において抜群の多用途性を誇る王道のエレキギターで、子会社のSquie(スクワイア)をはじめ、様々なメーカーがこのタイプのギターをリリースしています。

テレキャスター・タイプ

テレキャスター・タイプFender American Standard Telecaster

フェンダーが開発するテレキャスターは、ストラトキャスターのルーツでもある「エレキギターの元祖」です。表裏の平らなボディとキャラクターの異なる二つのピックアップが特徴で、パンチの効いた鋭いサウンドが持ち味です。構えた時のバランス感がアコギにやや近いことから、ギター/ボーカルやリズム・ギターなど、コードの演奏が多いプレイヤーに特に好まれます。

ジャガー/ジャズマスター・タイプ

ジャガー/ジャズマスター・タイプ 上:Fender Jaguar、下:Fender Jazzmaster

フェンダーが開発するジャガー及びジャズマスターは、非対称のボディ形状が大きな特徴です。立って弾いても座って弾いても良好な抱き心地になるよう設計されています。フェンダーが開発したジャガー/ジャズマスターは専用のピックアップと個性的な回路で独特な鋭いサウンドを持っていますが、現在ではシンプルな操作系とオーソドックスなピックアップを備えたモデルも一般化しています。

レスポール・タイプ

レスポールGibson Les Paul Standard

レスポールは、Gibson(ギブソン)社が開発したエレキギターです。異なる2種類の木材を貼り合わせて作ったボディ表面に、立体的で優雅な曲面を設けています。ギブソンはもともとヴァイオリンを作っていたメーカーで、ギターの設計にも伝統的な弦楽器の影響が見られます。ハムバッカーによるパワフルなサウンドはロックとの相性は抜群です。定番カラーはこの画像のような「チェリーサンバースト」ですが、ブラックやホワイトも人気です。

ディンキー(スーパーストラト)タイプ

ディンキー(スーパーストラト)タイプ Ibanez RG8540ZD

ディンキー(スーパーストラトとも言われる)タイプは、ストラト・タイプと似てるけどちょっと違う、ストラトキャスターを出発点にサウンドや弾きやすさを強化させた高性能なギターです。テクニカルな演奏やヘヴィなジャンルとの相性が特に良好ですが、サウンドバリエーションが幅広いモデルが多く、1本でどんなジャンルでも演奏する、全てを手に入れたい欲張りなギタリストにぴったりです。「Dinky(ディンキー)」という呼び方の起源はJackson(ジャクソン)ですが、現在ではさまざまなブランドがこのタイプのギターを作っています。

PRSタイプ

PRS SE Custom24 PRS SE Custom24

PRS(ポールリードスミス)は、フェンダーやギブソンよりも後発でありながらも高い人気を誇るブランドです。ギブソンの優美さとフェンダーの機能性を取り入れて完成させた独自のスタイルは、エレキギターのもう一つの姿として認知されています。ボディの曲線美や可愛らしい「バードインレイ」など顔つきの良さに深くこだわりつつ、高い演奏性や幅広いサウンドバリエーションなど性能面も高く評価されています。

SGタイプ

SGタイプGibson SG Standard

「SG」は改良型レスポールとして開発されたギターで、シンメトリックなボディ形状が特徴です。ボディは薄型で、一般的なソリッドギターの中では最も軽量です。ハイポジションの演奏性が極めて高く、何より太くも軽やかでもある独特のサウンドがロック系との抜群の相性を誇ります。ボディ材を貼り合わせないシンプルな構造から、レスポールに比べて低価格に設定されているのも魅力です。

SGタイプのエレキギター特集

Vシェイプ(変形ギター)

VシェイプGibson Flying V 120

「Vシェイプ」は、矢のように尖った攻撃的なボディの形が特徴的なステージ用のギターです。ギブソン社のフライングVを筆頭に、ジャクソン社のランディーV/キングVなどVにもいろいろあり、各ブランドが個性を主張しています。このVのようにボディ形状の主張が強いギターを総称して「変形ギター」と言い、特にロック系のジャンルで盛んに使用されます。ただし変形ギターはステージで立って弾く前提で設計される事が多く、座っては弾きにくいモデルもあります。

Vシェイプのエレキギター特集
変形ギター特集

7弦ギターもある

7弦ギター Jackson JS Series JS22-7 Dinky

低音側に弦を追加した「7弦ギター」は、テクニカル/ヘヴィなプレイスタイルを取り入れたバンドで盛んに使用され、今やヘヴィ・サウンドのための必須アイテムになっています。
Ibanez(アイバニーズ)を中心として様々なメーカーがリリースしていますが、現在では7弦専門のギターブランドまであるほど、確立されたジャンルとなっています。ただし歴史がまだまだ浅いこれからの楽器でもあり、初心者用の教材が十分にあるとは言えません。7弦からスタートするにはそれなりの努力や覚悟、あるいはインストラクターの協力が必要になります。

轟音のマストアイテム「7弦ギター」の選び方とおすすめモデル

エレキギターの選び方

ここまで色々なギターの種類をみてきましたが、どれを選ぼうかなかなか判断がつかないかもしれません。ここからは、ギターの選び方についていくつかの視点から考えていきましょう。

ギターの値段って、いくらくらい?

Legend LST-Z 1万円近辺で手に入れられるエレキギター、Legend「LST-Z」。恐ろしくお値打ちだが、ストラトキャスターとしての機能を全て持ち合わせている。

エレキギターは安いのだと1万円近辺から、高いものは新品で100万円を遥かに超えるものまであり、著名アーティストが実際に使ったものならば何億円というプライスが付けられることもあります。ギターは価格帯から品質や性能なども様々ですが、これから始めて巧くなっていこうという人が持つギターとしては、チューニングが合って、音がちゃんと出て、故障がなければそれで最高です。何よりスタートを切ることが第一ですから、手持ちの資金で入手できるギターを堂々と買いましょう。

未経験からの1本目におすすめのエレキギター13選

本体価格で3~4万円以上になってくると、ギターの種類やカラーバリエーションの選択肢が多くなり、かつ数年以上の使用に耐える性能や品質が期待できます。また、エレキギターは楽器本体だけで音を出すことができず、アンプやシールド、ピックなどのグッズも必要です。それぞれをしっかり吟味して揃えても良いですが、必要なものをまとめた「初心者セット」をチェックしても良いでしょう。セットで買えば、バラバラに買うよりも出費を抑えることもできます。

エレキギター初心者セットとは?購入前に知っておきたい基本情報

ギターのタイプで選ぶ:3つの分類

ギター選びのヒントとして、エレキギターで名を馳せた諸先輩方の愛機をチェックしてみましょう。ここではエレキギターを「トラディショナル王道系」「万能!モダンギター」「ヘヴィ・ミュージック専用機」という3つに分類し、アーティストの動画と共に、いろいろなギターのイメージを掴んでみましょう。

トラディショナル王道系

王道ギター6種類 左から、Fender「Stratocaster」、「Telecaster」、「Jazzmaster」、Gibson「Les Paul Standard」、「SG」、「ES-335」。

ストラトキャスターやレスポールなど、おおむね1960年代までに発明されて今なお作られているギターが、トラッドな王道系と見られています。これらのギターは長きにわたって音楽の歴史を支えてきた実績があり、存在自体に説得力があります。
遠い昔の設計であり現代の感覚では万能ではないかもしれませんが、逆に「キャラが立っている」と好意的に解釈され、最新のポップスでも圧倒的な人気を誇ります。半世紀前の設計をそのまま現代に伝えるモデルも、現代のシーンに合わせたアレンジが施されるモデルもあります。


主にコードを弾く演奏スタイル
羊文学 – more than words (Official Music Video) [TVアニメ『呪術廻戦』「渋谷事変」エンディングテーマ]
アルペジオやコードストローク、カッティングなど、ギターが主にコード弾きを担当するバンドの場合、トラッドなギターは特に絵になります。この動画で使用されているフェンダー「ジャガー」はショートスケールなので、手の小さい人でも比較的ラクチンにコードを押さえることができます。


ロックンロールなど、トラッドな曲調
The Birthday – LOVE ROCKETS【MV】(映画『THE FIRST SLAM DUNK』オープニング主題歌)
ロックンロールやアメリカン・ポップスなど古き良きスタイルのバンドには、トラッドなギターが最適です。ギターは弾いてナンボではありますが、そのルックスでもバンドや音楽性を演出することができるわけです。


バンド内の役割が明確
sumika / ふっかつのじゅもん【Music Video】
このバンドにはギタリストが二人いますが、目が慣れてくるとこうした場合、どちらがギターボーカルでどちらがリードギターなのか、構えているギターを見るだけでだいたいの判別が付きます。トラッドなギターはそれぞれに明確な個性があるため、ギタリストのキャラクターを演出する効果があります。

万能!モダンギター

モダンギター6種類 左から、YAMAHA「Pacifica」、Bacchus「BSH」、Fujigen「EOS」、Fender「Stratocaster HSS」、Ibanez「AZS」、EDWARDS「E-Snapper」。

1970年代以降に考案された、トラッドなギターを改造したり性能を向上させたりしたギターが、いわゆるモダンギターです。PRSやリアにハムバッカー・ピックアップを載せたHSSストラト、スーパーストラトがその代表例で、鋭い音から図太い音まで出せる万能性や、プレイヤーのストレスを軽減させる弾きやすさが持ち味です。ギター本体に新しい時代の到来を感じさせる雰囲気もあり、ロック系のアーティストに多く愛用されます。


大胆な場面転換を駆使する現代的なロックサウンド
ONE OK ROCK: Wasted Nights [OFFICIAL VIDEO]
モダンギターの多くで、ハムバッカー・ピックアップの太い音と、これをコイルタップしたシングルコイル・ピックアップの鋭い音の両方が使えます。使えるサウンドの幅が広いので、繊細なアルペジオからヘヴィなグルーヴまでの大胆な場面転換を演出できます。


あえて、欲しい機能に絞る
Hump Back – 「拝啓、少年よ」Music Video
HSSストラトはストラトキャスターのルックスや演奏性をそのままに、ハムバッカーの図太いサウンドが利用できます。ギターボーカルの林萌々子(はやしももこ)さんはこのギターのリアピックアップのみ使用、コントロールノブも取り外しています。好きな機能しか使わない、というのも音楽のためには正しい使い方です。

ヘヴィ・ミュージック専用機

左から、Ibanez「RG」、Killer「Exploder」、Schecter「Hellraiser」、Jackson「Dinky」、Charvel「So-Cal」、Epiphone「Flying V Prophecy」。

ヘヴィ・メタルに端を発するヘヴィ・ミュージックにおいて、エレキギターは独特の進化を遂げています。速弾きや高速リフなど運動量の多いプレイに有利な設計が採用されるほか、弾きやすさやストレートなサウンドのため、あえて機能やサウンドバリエーションを絞る設計も多く採用されます。キリっと尖ったルックスも特徴的です。


強力なディストーションサウンド
[MV]Dive in Your Faith / Fear, and Loathing in Las Vegas
ヘヴィ・ミュージックにおけるエレキギターは、第一に強力なディストーションサウンドが求められます。そのためパワフルなハムバッカー・ピックアップの搭載が基本で、キレの良い高速の演奏に向けて固定式ブリッジを採用する、トーン回路を非採用など、ポイントを絞ったギターが多く用いられます。


音楽のための特別な設計
[Official MV] Unlucky Morpheus「Black Pentagram」
こうしたヘヴィな演目には、やはり7弦ギターが必要になります。また、過激なアーミングのためフロイドローズ・トレモロシステム(FRT)など高性能な部品を搭載する例が多く見られます。またさまざまなジャンルに細分化されるメタルですが、黒ずくめのファッションと黒いギターは、全メタルに通底する美学のひとつになっています。

メタル・ミュージック志向のギター特集

楽器屋さんに行ってみよう!

楽器店で試奏する女の子

楽器屋さんで実際にギターを見るのも、良い体験になります。お近くに楽器屋さんがあったら、何度か足を運んでみてください。これからギターを弾いていくうえで、弦やピックなど消耗品を調達したり状態のチェックや調整、また修理を依頼したりするなど、楽器屋さんのお世話になることが増えてきます。馴染みのお店を持っておくのは、ギタリストにとって非常に重要なことなのです。
お店では好きな形や色、予算などを店員さんに相談することもできますし、店頭の楽器を試奏させてもらうこともできます。たとえまだ何も弾けなくても、店員さんに代わりに弾いてもらってサウンドを確かめることもできます。

実際に弾かせてもらう

気になったギターがあったら遠慮せず店員さんに言って、弾かせてもらいましょう。ちょっとしか弾けなくても、全く弾けなくても、実際に触ってみるという体験には非常に大きな意味があります。今まで一度もエレキギターに触ったことがないならなおさら、触らせてもらいましょう。ズシっと来る重さや予想以上の弦の細さ、ネックのさわり心地など、画面越しに見るだけでは知ることのできないいろいろなことがわかります。

六弦かなで

六弦かなで「ギターに触ったこともないのに店員さんに声をかけたり弾かせてもらうのって勇気がいると思う。そんな時は眺めているだけでもいいと思う☆実際にお店に来ないとわからなかった発見があるかもしれないよ🥰」

ネットショップで買うのはアリ?

お近くに楽器店がない、あるいは欲しい楽器が遠くのお店にしか置いていない、そういうこともありますよね。「楽器は実物を確認して買うのが良い」という考えには十分な正当性があります。しかし近年では、ネット通販でギターを買うのも、初めてギターを買うのも通販で、という買い方も当たり前になっています。実物を実際にチェックできないかわりに、選択の幅が大きく広がります。買うだけでなく、修理や調整を遠方のショップに依頼するのも今では普通です。
お店では発送前に状態のチェックをしますし、弦を新品に交換してくれるお店も少なくありません。運送中に何かがあって故障したり調整が崩れたりしても、無償で修理や交換に応じてくれるお店がほとんどです。とはいえ念のため、万が一の場合にお店がどのように対応してくれるのかについては確認しておくといいでしょう。

ギター選びの心がけ

いろいろチェックしてみた結果、気になっているギターが、自分のスタイルや出したい音とは違う方向性を持っていたかもしれません。しかしだからといって、その気になっている一本を候補から除外しなければならないということにはなりません。むしろ「でも、好き!」という恋に似たピュアな感情って、何にも代えがたい尊さがありますよね。

確かにギターは音楽を演奏する「道具」であり、プロミュージシャンにとっては「商売道具」ですが、いっしょに音楽を楽しむための「相棒」でもあります。これから長く付き合う相手ですから、機能やグレードばかりでなく「自分がいかにそのギターを気に入っているか」も非常に重要です。

フィーリングで気に入って、納得して手に入れたギターには、深い愛着が沸くはずです。愛せる1本を選んで、最高のスタートを切ってくださいね。

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