エレキギターの総合情報サイト
練習していくうちに、音や機能など、何かと自分のギターに不満が出てくるかもしれません。もっとシンプルに「グレードの高いギターが欲しい」、「もっと音のいいギターが欲しい」、または「理由は無いけど、もう一本欲しい」という気持ちになるかもしれません。
ライブ中に弦が切れてしまったら、中断して弦を張るか、ほかの出演者にお願いしてギターを貸してもらわなければなりません。修理や調整でリペアマンにギターを預けたら、しばらく弾けなくなってしまいます。「もう一本持っておく」ということは、ギタリストにとって重要なことなのです。そこで今回は、どんなポイントで2本目のギターを選ぶか、代表的な考え方をいくつか考えていきましょう。もちろん「フィーリングの合う気に入ったギターを買う」のが一番ですが、ちょっとどうしようかな、と考えている人は参考にしてみて下さい。
ではさっそく、2本目のギターを選ぶ3つの考え方を見ていきましょう。第一に「グレードを上げる」、第二に「違うタイプにする」第三に「同じか、近いものもまた良し」です。
「弘法筆を選ばず」と言いますが、それはプレイヤーが達人だからです。腕の立つプレイヤーは、普通は自分の腕前に見合った楽器を手にするものです。また良い楽器はプレイをしっかり受け止めてくれるので、良いプレイには良い音で、至らないプレイには悪い音で答えてくれますから、それだけプレイヤーを育ててくれます。ギタリストとしてのステップアップとしても、2本目はちょっといいギターを選びましょう。全体に漂う高級感、弾いた時に手に伝わる弦振動、アンプが発するサウンドに納得がいくことでしょう。
「初心者セット」に代表されるような格安のギターと比べ、グレードの高いギターには「音がよく弾きやすい」、「パーツが上質で、壊れにくくノイズが少ない」、「良材を使い、調整や仕上げがていねい」、「カラーバリエーションが豊富で、顔つきが良い」といったメリットがあります。また、モダンな設計のギターならコイルタップやロック式ペグなど、便利な機能が付いてきます。
日本製のギターは、正確な木工やていねいな組み込みなど技術レベルが高く、品質の高さが世界的に認められています。また「切ったら変形する」という木材の特性を前提に、ちょっと加工してから寝かせて狂いを出させ、また加工して寝かせて、を繰り返す「狂い出し」が当たり前に施されています。狂い出しをしっかり行なったギターは丈夫で、セッティングに悩まされない安定性が期待できます。日本製のギターは、仕様書には記載されない本質的な部分での品質が高いわけです。グレードの高いギターを探すとき、「日本製」というキーワードは無視することができません。
インドネシア、マレーシア、フィリピン、メキシコ、韓国、中国など諸外国で作られるギターは、低賃金と大量生産での価格圧縮を武器としたスペックの高さが持ち味です。銘木の使用や手間のかかる木工、高品位なパーツの採用など、本来なら高級品でしか実現できなかった仕様のギターが、現実的な価格で手に入ります。設計や品質管理は各ブランドが担当しているので、品質も保証されています。プロミュージシャンが一軍起用する例もあり、低価格だからと言って決して侮ることができません。
エレキギターにはさまざまなタイプのものがあり、出せるトーン、やりやすい演奏内容まで実にさまざまです。それゆえ演奏する楽曲のイメージに合わせてギターを持ち替える、というスタイルのギタリストは多いですね。1本目のグレードに不満がなければ、「トーンやフィーリングのバリエーションを増やす」という意味で、2本目には違ったタイプのギターを検討するのがいいでしょう。最初の1本と新しいギターとで違ったサウンド、違った感触のギターの特徴や使い分けをじっくり味わうことができ、これからもっと深く、また幅広くギターについて学んでいくことができます。
ハロルド作石氏のヒット作「BECK」では、主人公コユキがオレンジ色のムスタングに持ち替えるのが、名曲「DEVIL’S WAY」を演奏する象徴的な演出でした。またレコーディングの現場では、ギターを使い分けることでバリエーション豊富なサウンドをだす工夫が当たり前になっています。アドリブ演奏をするような達人になると、ギターを持ち替えることからインスパイアされ、違ったプレイを生み出すことができる、という人もいます。
ちなみに「ギターを2本使い分けるギタリスト」の中で代表的なのが、「ストラトキャスターとレスポール」のように「フェンダー系とギブソン系」を使い分けるタイプです。両者は形状から弦長からピックアップから何から何まで違うギターなので、「わざわざ持ち替える」意味がとてもはっきりしています。では、どういう所に注目したら、2本の違いがはっきり分かるのでしょうか。比較的分かりやすい「違い」のポイントを、「ピックアップ」「ブリッジ」「ボディ構造」から見ていきましょう。
左から:シングルコイル、ハムバッカー、P-90タイプ
代表的なものは上記3タイプですが、グレッチやリッケンバッカー、モズライトなど、特徴的なトーンを持った独自のピックアップを搭載しているものもあります。楽器本体が同じでも、ピックアップの種類が違うだけで明らかに違うサウンドになります。
またハムバッカーには「コイルタップ」と言って、コイルの片側だけを鳴らしてシングルコイル的な音を得る裏技があります。最初からコイルタップができるようになっているギターも、多く作られています。
左から:アームがないストラト、フロイドローズ・ギター、ビグスビー搭載ギター
ブリッジは、「アームがあるかないか」が最大のポイントです。トレモロシステム(アームのついたブリッジ一式)が無いことによる音質上の利点を重視したギターも多くリリースされていますが、「表現の幅」を考えた場合、アーム搭載のギターは1本は持っておきたいところです。
トレモロシステムには、さまざまなものがあります。それぞれを比較検討するのはなかなか大変ですから、目指すプレイスタイルや好きなアーティストが使っているものなどを参考に判断するのがいいでしょう。
一般的なユニットで今のところ最も高機能だと考えられているのはフロイドローズで、アームダウンはダルンダルンになるまで、アームアップは設計や調整によっては2音半といった危険な高さまで可能です。しかも、そこまでやってもチューニングが大きく崩れることは無いという安定性を持っていますから、特にテクニック指向のギタリストにとっては必須のアイテムになっています。
多くのトレモロシステムは、弦の張力と内部に仕込んだスプリングの張力を釣り合わせることを目指します。弦が切れてしまったり特殊なチューニングに変更しようとしたりすると弦とスプリングのバランスが崩れ、全ての弦のチューニングが大きく崩れてしまいます。それに対してアームのないブリッジは弦の張力に影響されることがありません。半音下げやドロップDなど特殊なチューニングに移行しやすく、また演奏中に弦が切れてもチューニングがだいたい保たれるので、残った弦で演奏を続行できるという大きな利点があります。
Q&A.31 ライブで半音下げ→レギュラーチューニングを素早くしたい
「常時半音下げチューニングにしておき、レギュラーチューニングではカポタストを使用する」という裏技も、あるといえばあります。
BUMP OF CHICKEN「Hello,world!」
日本のロックバンドの草分けとなっている「バンプ」ですが、ほとんどの楽曲で全弦半音下げチューニングを採用しています。バンプをコピーするには半音下げ、他のバンドをコピーする時にはレギュラーチューニングに直し、という作業が性格的に耐えられないという人には、チューニングごとにギターを持つことをお勧めします。
ソリッドボディのギブソン・レスポール、セミホロウボディのギブソン・ES-335
ボディ材やボディ形状に由来するサウンドの違いを聞き分けるには、かなりの経験と知識を必要とします。それに対し、
この二つは弦振動自体に大きな違いがあり、サウンドと感触に大きな違いがあります。
キュっと引き締まったトーン、がっつり歪ませたディストーションにはソリッドボディである必要がありますが、ジャズ/フュージョン/ソウル/ファンクにフィットする温かみや軽やかさのある音、いわゆる「エアー感」のあるトーンはホロウ/セミホロウの得意分野です。歪ませたトーンも気持ちがよいことから、ソリッドギターと合わせてES-335を代表とするセミアコを持つギタリストが多くいます。特にES-335はレスポールと比べ、乱暴に言えばボディ構造しか違わないギターですが、音はこれほどまでに違うのか、と驚かされます。
Eric Johnson – Zap
エリック・ジョンソン氏は、「ヴァイオリントーン」と呼ばれる滑らかな立ち上がりの甘いサウンドを持ち味としています。フェンダーからシグネイチャーモデルのストラトをリリースしていて現在ではストラトがメインですが、時としてセミアコやSGに持ち替えています。
など、名手はトレードマークとなる極上の業物(わざもの)を持っています。しかしほとんどのギタリストが、いつもステージで愛用するお気に入りの一本の他に、別のギターを待機させています。
ステージでは弦が切れてしまうかもしれませんし、調整のためにリペアマンに預けてしまうかもしれません。たとえメインギターが弾けなくても変わらないパフォーマンスができるように、アーティストは同じような仕様のギターを何本も準備しています。「自分の音楽には、このタイプのギターがベスト!」という確信があるのなら、なおさらメインの代打をしっかり勤めるサブギターが必要です。
また曲によりチューニングを使い分けることがあるなら、それぞれのチューニングにあわせたギターがあると便利です。持ち替えても違和感無く同じパフォーマンスができるということを重視するならば、1本目と同じギターをもう一本増やすというのは充分にアリな選択です。
[PV]Cast Your Shell/Fear, and Loathing in Las Vegas
「Fear, and Loathing in Las Vegas」は、タイプの異なる二人のボーカリストと存在感のあるシンセサイザーによるトランスのフィーリングを特徴とした、新進気鋭のポスト・ハードコアバンドです。シェクターとメイワンズ(mayones)のツインギターを軸とする重厚なバンドサウンド、これに負けないデジタル要素のミックスされた強烈なサウンドで支持を集めています。楽曲によっては「1音下げドロップC(6弦からC,G,C,F,A,D)」といった、極端なダウンチューニングも使用します。こうしたスタイルのアーティストは、ライブステージではチューニングごとにギターを持ち替え、さらに不慮のトラブルに備えそれぞれのサブギターを準備しておくのが普通です。
ではここから、2本目にお勧めのエレキギターを並べていきます。ある程度以上のグレードで、かつ現実的な価格帯の中から、「トラッド王道系」「シンプル&ストレート系」「モダン多機能系」「ヘヴィ路線系」という4つのカテゴリーで見ていきます。
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