セカンダリー・ドミナント(二次ドミナント)とは?

[記事公開日]2013/3/26 [最終更新日]2024/10/26
[編集者]神崎聡

ダイアトニック・コードではないコードはどのように使われるのでしょう?
ダイアトニック・コードではないコード = 「ノン・ダイアトニック・コード」にはいろいろなものがありますが、中でも多用されるのがセカンダリー・ドミナント(二次ドミナント)と呼ばれるコードです。

ノン・ダイアトニック・コード

ダイアトニック・コードは「曲の中心となるメジャー・スケール(ダイアトニック・スケール)上の音だけでできるコード」でした。
コードトーンにダイアトニック・スケール(マイナー・キーではそれに加えてハーモニック・マイナー、メロディック・マイナースケール)以外の音を持つコードをノン・ダイアトニック・コードと言います。

ノン・ダイアトニック・コードには大きく分けて

  • ①借用和音:他のキーの固有和音を借りてきたコード
  • ②経過和音:2つのコードをつなぐために使われるコード
  • ③変化和音:ダイアトニック・コードのコードトーンが半音変化したコード
  • ④置換和音:あるコードと同じような働きをする別のコード

があります。

中でも多用されるのは①の借用和音です。

セカンダリー・ドミナントとは?

キーの Ⅴ7 は日本語では属和音と言います。
Ⅴ7 は Ⅰ(メジャー・キーではⅠメジャー、マイナー・キーではⅠマイナー)へ進行しようとするコードです。
Ⅰ コード以外のコードを「仮のⅠコード」と考えた場合の、仮の Ⅴ7 にあたるコードをセカンダリー・ドミナント(二次ドミナント)コードと言います。
上の分類の借用和音に当たります。

例えば次の進行をみてください。

セカンダリー・ドミナントのコード進行

Cメジャー・キーのダイアトニック・コードではないコード、ノン・ダイアトニック・コードが使われています。
2つめのE7ですね。
これはその次のコードであるAm7に進行しています。
キーはCメジャー・キーですが、一時的にAマイナー・キーの Ⅴ7 であるE7を使う事でAm7への流れをスムースにしています。
これがセカンダリー・ドミナントです。

仮トニック

日本語では副属和音と言います。

本来のドミナントである Ⅴ7 を(セカンダリー・ドミナントと比較して)一次ドミナントと言います。

セカンダリー・ドミナントに対し、「仮のⅠコード」となるコードは「仮トニック」と言います。

仮トニックのコード進行

メジャー・キで使われるセカンダリー・ドミナントは次の5つのコードです。

メジャー・キーにおける2次ドミナント

多くの場合、セカンダリー・ドミナントは仮トニックのすぐ前に現れます。

2次ドミナント→仮トニック

ドミナント・モーション

セカンダリー・ドミナントは本来 Ⅰ ではないダイアトニック・コード(もしくはキーの固有和音)を 仮のⅠ とした場合の 仮のⅤ7 ですが、ダイアトニック・コードではないコードへ進むこともあります。
ダイアトニックでないコードへ進行した場合はセカンダリー・ドミナントとは考えません。
そのまま他の調に転調するケースも出てくるからです。


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ドミナント・モーションのコード進行

上の譜例ではCメジャー・キーのダイアトニックであるEm7へ進行すればB7はセカンダリー・ドミナントですが、
ここでは落ち着き先のコードがダイアトニックではないEM7になるのでEメジャー・キーに転調と考えます。
よってB7はEメジャー・キーのⅤ7、ドミナントです。

セカンダリー・ドミナントが仮トニックであるダイアトニック・コードに進行しても、転調するわけではないのでそのまま調性を保つ事ができます。
しかし他のコードへ進行した場合はキーとの関係が曖昧になるからです。

中でも多いのはドミナント・モーションと呼ばれるセブンス・コードの連続です。

セブンス・コードの連続

セブンス・コードは完全4度上か半音下のコードへ進もうとする性質があります。
この形で Ⅰ コードへ進むのがドミナント・ケーデンスです。

セブンス・コードが進んだ完全4度上のコードがセブンスになっている場合はまた完全4度上のコードへ進もうとします。
するとどんどんキーが変わっていくような感じになります。

このような連続したドミナント・ケーデンスをドミナント・モーションといいます


ドミナント・モーションを使ったアレンジ例

次の進行を例に見てみましょう。

ⅠーⅥーⅡーⅤ(イチーロクーニーゴ)のコード進行 ⅠーⅥーⅡーⅤ(イチーロクーニーゴ)のコード進行

この進行は俗に ⅠーⅥーⅡーⅤ(イチーロクーニーゴ)と呼ばれます。
一昔前には黄金のコード進行とも呼ばれ、この進行を使った曲はヒットするとまでいわれた非常に多用される進行です。

これを元にしていろんなコードを使ってアレンジしてみます。
まずどこかのコードの前にセカンダリー・ドミナントを入れてみると

s2次ドミナントが使える部分

仮トニックの完全5度上のセブンスを前に入れる、と考えてください。

全部の箇所にセカンダリー・ドミナントを入れると

C - E7 - Am7 - A7 - Dm7 - D7 - G7

E7は残して3つめのコードを直接D7にすると

C - Em7 - A7 - D7 - G7

このD7はG7に進行していますが、G7はもともとダイアトニック・コードなのでD7は通常のセカンダリー・ドミナントと考えます。
ただドミナントに対するドミナントなので、他のセカンダリー・ドミナントと区別してダブル・ドミナントと呼ぶ場合もあるようです。

さらにAm7もA7にすると

C - E7 - A7 - D7 - G7

するとA7はダイアトニックではないD7に進行することになります。
すると落ち着くコードがどこなのかわからなくなるのでこのA7はセカンダリー・ドミナントとは考えません。

このようなセブンス・コードの連続がドミナント・モーションです。

循環和音

Ⅰ(あるいは Ⅰ マイナー)で始まり、4つ程度のコードを経て、またⅠ(あるいは Ⅰ マイナー)に戻る進行を循環和音と言います。

C- Em7 - FM7 - G7

循環和音・ケーデンス

循環和音の後ろ二つは Ⅰ へ戻るための進行、いわゆるケーデンスになり、その前のコードはケーデンスへの「つなぎのコード」が使われます。
「つなぎのコード」としてセカンダリー・ドミナントが使われることもあります。

C - A7 - Dm7 - G7

C - C7 - F - G7

ケーデンス部分にくるコードによって、その前のコードが変わるということです。

マイナー・キーにおけるセカンダリー・ドミナント

マイナー・キーはメジャー・キーよりも固有和音にセブンスが多いので、見かけはセカンダリー・ドミナントのように見えても、普通の固有和音同士の連結の場合はセカンダリー・ドミナントとは考えません。

dのように見えるがダイアトニック

するとマイナー・キーに現れるセカンダリー・ドミナントはメジャー・キーよりも少なくなります。

マイナー・キーにおけるセカンダリー・ドミナント

セカンダリー・ドミナントの特殊進行

セカンダリー・ドミナントがまれに仮トニックでもドミナント・モーションでもない動きをする場合があります。

C - A7 - FM7 - G7 - C

最初の例は、本来A7の仮トニックであるDm7と同じサブドミナントの機能のFM7へ進行した、と考えられます。

E7の仮トニックであるAm7と3音が共通

この例では、E7はAm7ではなく、またAm7と同じ機能の他のコードでもないFM7に進行しています。
これはいくつかの理由が考えられます。

  • FM7はAm7と3音の共通音があるので、機能は違っていてもよく似たコードに進行している
  • Cの5度音であるG音から半音づつ上がって、FM7の3度音のAになるという途中のG#音を含んでいるので、流れがスムースに聴こえる

以上いくつかの理由でこのような進行が成立している、と考えられます。

セカンダリー・ドミナントのⅡーⅤ型

仮のⅤ7であるセカンダリー・ドミナントは ⅡーⅤ進行 で使われることもあります。

sec_dominant_13

Ⅱ−Ⅴ進行 の Ⅱ になるコードはm7とm7(b5)がありますが、基本的には Ⅰ コードがメジャー型コード(メジャー、メジャーセブンス、セブンス)ならm7、マイナー型コード(マイナー、マイナーセブン、マイナーシックスなど)ならm7(b5)を使いますが、セカンダリー・ドミナントが ⅡーⅤ型進行 になる場合はその区別なく使われるようです。

sec_dominant_14

セカンダリー・ドミナントが Ⅱ−Ⅴ型進行 として使われた場合の Ⅱ にあたるコードは、元のキーのダイアトニック・コードである場合とそうでない場合があります。
※ドミナント・モーションとなるセブンスがそれぞれⅡ-Ⅴ進行になったりするケースもあります。

sec_dominant_15-1

このコード進行を元にセブンス・コードを Ⅱ-Ⅴ 形にしてみましょう。

sec_dominant_15_2

上の例では元は C-E7-Am7-D7-G7-C という進行だったものをE7とG7を Ⅱ-Ⅴ 形にした結果、D7はすぐ後ろでなく
一つ飛んだG7が仮トニックになっていることに注意してください。

次も同じような例です。

sec_dominant_16

これら「セブンスおよびⅡ-Ⅴ形のすべて」を含めてドミナント・モーションと呼びます。

セカンダリー・ドミナントにおけるテンション・ノートとスケール

セカンダリー・ドミナントは一時的なドミナントですから、仮トニックになるコードが何か?によってスケールとテンションが決まります。
基本的には

  • 仮トニック・メジャー形コード:ナチュラル・テンション(9thと13th) と オルタード・テンション(b9th、#9th、#11th、b13th)
  • マイナー形コード:オルタード・テンション

と考えます。

オルタード・テンション

通常のメジャー・キーの Ⅴ7 は9thと13thをテンションに持ちます。

これらは Ⅱ-Ⅴ−Ⅰ では次のようにつなげられます。

natural_tension

これらのセブンス・コードに対する9thと13thはナチュラル・テンションと呼ばれます。

Ⅴ7 が Ⅰ(あるいはⅠマイナー)に解決する時に”より”半音の流れが多くできるように、本来のコードスケール上にできない音をテンションとすることがあります。

altered_tension_1

さらに半音の流れを作るために次のような音もテンションとして使われます。

altered_tension_2

これらのセブンス・コードにおけるb9th、#9th、#11th、b13thの4つをオルタード・テンションと言います。

基本のスケールと拡張スケール

メジャー、マイナー各キーの Ⅴ7 ではポップスのように歌い易さが重要な音楽では基本となる音階を使いますが、ジャズやフュージョンのような音楽では”より”セブンス・コードでの不協和度が増すように、いろいろなスケールが使われます。
最近ではロックでもこのようなスケールを使う場合も多くなりました。

メジャー、マイナー各キーでのⅤ7の基本となるスケールは
メジャー・キーのⅤ7 → ミクソリディアン
マイナー・キーのⅤ7 → フリージアン・メジャー

その他のスケールは基本となるスケールを拡張したスケールです。

メジャー・キーにおけるセカンダリー・ドミナントに対するスケールとテンション・ノート

pict_5

それぞれのスケールの音と形は次のようになります。


  • ミクソリディアンスケール
  • フリジアンメジャー
  • オルタード
  • リディアンフラットセブンス
  • コンビネーションオブディミニッシュ
  • ホールトーン

ミクソリディアン・スケール

mixo_1
G_mixolydian

フリジアン・メジャー・スケール

phry_major_1

G_phrygian_major

オルタード・スケール

altered_1

G_altered

リディアン・フラットセブンス・スケール

lyd_b7_1

G_lydian_b7th

コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール

com_dim_1

G_comdim

ホールトーン・スケール

wholetone_1

G_wholetone

マイナー・キーにおけるセカンダリー・ドミナントに対するスケールとテンション・ノート

pict_6

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