Ormsby Guitars のギターについて

[記事公開日]2019/1/18 [最終更新日]2019/1/18
[ライター]小林健悟 [編集者]神崎聡

HYPE(HYPEMACHINE)CTMシリーズ

刺さったら痛そうなヘッドデザインが大変印象的な「HYPE(ハイパーマシン)」は、オームスビー最大の代表機種です。スリムなボディは厚みが38mm~39mmまで抑えられており(普通のギターなら47mm程度)、カスタムショップでは内部がくり抜かれて軽量化されることもあります。ブランド設立者ペリー・オームスビー氏は、立体的な曲面を描く「カーブドトップ」に古臭さを感じたとのことで、現行モデルではフラットなトップを採用しています。ボディトップこそ平面ですが、低音側のボディエッジが深めに削られており、演奏性とデザイン性が両立されています。

【カスタムショップ製】HYPE 7 CTM C

Ormsby HYPE 7 CTM 左から:HYPE 7 CTM SM、HYPE 7 CTM C、HYPE 6 CTM ZC、HYPE 6 CTM GW、HYPE 7 CTM ZW

腐食させた銅版をトップに使用する個性的な「カッパートップ」を持つモデルで、ボディはマット塗装で仕上げられています。ボディ本体はこのブランドで最も人気の高いタスマニア産ブラックウッドで、控え目な中域、ブライトな高域、タイトな低域を備えています。重い木材なので、ボディにはチェンバー加工が施されます。ネックは3Pのウォルナットで、指板はエボニーです。

以下、カスタムショップ製HYPEは木材構成を筆頭にいろいろな仕様で作られています。GTRシリーズのHYPEはセットネックですが、こちらでは全モデルでボルトオンジョイントが採用されています。

HYPE 7 CTM SM
(7弦)
HYPE 7 CTM C
(7弦)
HYPE 6 CTM ZC
(6弦)
HYPE 6 CTM GW
(6弦)
HYPE 7 CTM ZW
(7弦)
ボディトップ スポルテッドメイプル カッパー(銅版) ジリコテ グラフテッドウォルナット ゼブラウッド
ボディ本体 タスマニアブラックウッド タスマニアブラックウッド ブラックリンバ スワンプアッシュ タスマニアブラックウッド
ボディ塗装仕様 グロス マット グロス グロス グロス
ボディ厚 39mm 同左 同左 同左 40.5mm
ネック ハードロックメイプル(3ピース) ウォルナット(3ピース) タスマニアブラックウッド(3ピース+1mmブラックラインx2) フレイムメイプル(3ピース) ゼブラウッド(3ピース)
ネック裏 ハードオイル 同左 同左 同左 同左
ネック厚 1フレット21mm –
12フレット22.5mm
1フレット20.5mm –
12フレット22mm
1フレット20mm –
12フレット22mm
1フレット20.5mm –
12フレット22.5mm
1フレット21mm –
12フレット20.5mm
指板 ウェンジ エボニー エボニー ローズウッド エボニー
ブリッジ Hipshot社製
ハードテイル
Hipshot社製
ハードテイル
Hipshot社製
セパレート・トップロード
Hipshot社製
ハードテイル
Hipshot社製
セパレート・トップロード
リアピックアップ Hot Rock A8 Hot Rock A8 Nunchucker A8 Nunchucker A8 Hot Rock A8
フロントピックアップ De La Creme A2 同左 同左 同左 同左

表:カスタムショップ製HYPEの仕様比較

ボディトップとボディ本体の組み合わせばかりかネック材までがすべてバラバラで、同一モデルでありながらネックの厚みにも違いが確認できます。2モデルで採用されている「セパレート・トップロード」は、各弦が独立したブリッジで、ボディトップ側から弦を張ります。

ピックアップにもややバリエーションがありますが、共通してリアピックアップのマグネットはアルニコIIIVで、強烈に歪むパワフルなリア、控え目な出力で澄んだクリーンが得られるフロント、という組み合わせになっています。

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HYPE GTRシリーズ

HYPEのGTRシリーズは、

  • ヒール部のスリムなセットネック接続(カスタムショップではボルトオンジョイント)
  • ハードロックメイプル3Pネック(一部に例外あり)
  • Dシェイプネック(ネック厚:1フレット3mm、17フレット22mm)
  • ピックアップ(リア/フロント):Nunchucker A8/De La Creme A2
  • 指板はエボニーかロックメイプル

という仕様でほぼまとまっていますが、やはり木材構成にはなかなかのバリエーションが設けられています。ネックのジョイント部は大胆なカットが施されており、ハイポジションでの演奏がとてもラクです。ネック厚の数値を見る限り、GTRシリーズの方がカスタムショップ製より若干薄い、スリムなネックになっています。ピックアップ構成は、ギッシャギシャに歪む高出力のリア、クリーンでの使用も見越した低出力のフロント、という組み合わせです。

HYPE GTR MS EXOTIC BLB(ブルーバースト、8弦)
HYPE GTR MS EXOTIC CB(チェリーバースト、7弦)
HYPE GTR MS NT(ナチュラルアッシュ、6弦~8弦)

Ormsby HYPE GTR MS EXOTIC BLB HYPE GTR8 MS EXOTIC BLB

Ormsby HYPE GTR6 MS NT HYPE GTR6 MS NT

こちらは、スワンプアッシュをボディに採用しているモデルです。8弦と7弦でカラーリングを分けたHYPE GTRの「EXOTIC」は、ボディトップとヘッドにキルテッドメイプルをあしらっています。「NT」はトップの化粧板をなくしたことで、アッシュの大胆なストライプが楽しめるようになっていますが、GTRシリーズ全モデルの中で唯一、6弦/7弦/8弦という3つのバリエーションがあります。

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HYPE GTR MSMP DB(ドラゴンバースト)
HYPE GTR MSMP NT(マッカーサーエボニー)

Ormsby HYPE GTR MSMP DB / NT 左から:HYPE GTR6 MSMP DB、HYPE GTR7 MSMP DB、HYPE GTR6 MSMP NT、HYPE GTR7 MSMP NT

両モデルとも6弦/7弦がリリースされています。マホガニーボディに「ドラゴンバースト」はキルテッドメイプルを、「NT」ではマッカーサーエボニーをトップにあしらっていますが、この2モデルはGTRのHYPEで唯一、ハードロックメイプル&ウェンジの5Pネックが採用されてネック強度が上げられています。

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HYPE GTR MSMP MG/VC/TX/BC
HYPE GTR MSMP CC (カメレオン・カラー)

Ormsby HYPE GTR6 MSMP MG/VC/TX/BC/CC HYPE GTR6 MSMP MG/VC/TX/BC/CC

こちらはトップ材を使用しないマホガニーボディのモデルで、両モデルとも6弦/7弦がリリースされています。塗りつぶしカラーの4機種MG/VC/TX/BCは、明るいボディ&ヘッドの色調に加え、指板にメイプルが選択されています。全体的に明るいイメージを帯びており、価格が若干抑え気味になっています。CCの「カメレオン・カラー」は、見る角度によって色調が変化する特殊な塗装です。

HYPE GTR FMMS SB/DHB/PP/NT/BB

Ormsby HYPE GTR FMMS SB HYPE GTR FMMS SB

HYPR GTRの「FMMS」は、チェンバー加工を施して軽量化したスワンプアッシュのボディにフレイムメイプルをあしらったモデルです。ネックはハードロックメイプルの3Pですが、内部にカーボンロッドが仕込まれ、剛性が飛躍的に向上しています。ネックはかなりスリムで1フレット地点の厚みが19mm(Ibanezでいう「ウィザードIII」と大体同じ)となっています。

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Futura

「Futura(フーチュラ)」はオームスビー最新モデルで、ボディトップの独特なデザイン「スプリット・トップ」により、中央を占めるトップ材、両脇にのぞくバック材という対比を楽しめるようになっています。中央部分のボディ厚はトップ材の分だけ厚くなっていますがそれでも45.5mmと一般的なエレキギターに若干及ばないくらいに抑えられています。トップ材が及んでいないボディ両サイドの厚みは薄くなるため、両手タッピングなどでギターを抱え込むように構える人にとってかなり有利です。また、ほとんどのモデルで指板R16インチを採用しているオームスビーにおいて、このFuturaはギブソンなどと同様の「12インチ(約305mm)」の指板Rを採用しています。

FUTURA 6 CTM PB

FUTURA 6 CTM PB

カスタムショップで作られるフーチュラは、ポプラバール製トップのツブツブ模様とスワンプアッシュ製バックのストライプ模様との対比を楽しめます。メイプルネックにはオイルフィニッシュが施され、指板はボコーテで、エキゾチックな風合いです。

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GENESIS

「GENESIS(ジェネシス)」はオームスビーでは珍しいトレモロ搭載機であり、また珍しいことにニュートラル・ポイントがブリッジ部分に設定されています。この設計によってマルチスケール機でありながら一般的なトレモロユニットを搭載することができ、好きなだけアーミングを行うことのできる未来が開けた感じです。しかしその反面、フレットはナットに行くに従って大幅に傾きますから、それなりの慣れを要します。

ジョイントヒール部の大胆なカットによってハイポジションでの演奏性は非常に高いですが、「ここまで削ったからこそのラウド感が得られる」というコンセプトがあるようで、このヒール形状もサウンドに貢献しているようです。

GENESIS 6 CTM BL

GENESIS 6 CTM BL

珍しい「ブラックリンバ」をボディに使用、ネックには希少なインド産ローズウッドをぜいたくに使用、指板にはうねる模様の美しいジリコテが使われています。バインディングなど飾り気のないシンプルな作りですが、最大の特徴は「ブラス製フレット」が採用されているところです。ブラス(真鍮)は音響特性に優れることが知られている合金で、サックスやトランペットなど楽器にも使用されます。しかしこのブラスはかなり柔らかめの金属で、一般的なフレットで使用されるニッケルシルバーやオームスビーでメインに使用されるステンレスと比べて半分以下の硬度しかない圧倒的な柔らかさです。弦を押さえる圧力が強いギタリストなら、すぐにフレットを摩耗させてしまうでしょう。長期的に使用することを考えると、このギターは脱力した運指でスイスイ演奏する「ウマい人専用ギター」だと言えます。

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SX/TX

ストラトキャスタータイプを出発点とした「SX」、テレキャスタータイプを出発点とした「TX」は、フロントピックアップを逆の斜めに傾かせることで、「1弦29フレット」という驚異の超高音域を手に入れたモデルです。フェンダースタイルのギターをオームスビーがこってりと料理した、という両機は共通点も多いですが、GTR版ではデザイン以外にも仕様に違いが設けられており、それぞれにれっきとしたキャラクターが設定されています。

SX GTR MS EXOTIC TB(6弦)/CH(7弦)
SX GTR MS VC(6弦)

SX GTR MS EXOTIC TB/CH SX GTR MS EXOTIC TB/CH

SX GTR6 MS VC SX GTR6 MS VC

スーパーストラトタイプの「SX」は、マホガニーボディに3Pのハードロックメイプル製ネックをセットインする「セットネック構造」です。モデル名に「EXOTIC」と付けられるものは、ボディトップにフレイムメイプルなどの銘木があしらわれます。ボディ厚は47mmで一般的なエレキギターと同じになっている所がHYPEとの最も大きな違いになっています。ピックアップはリアにNunchucker (アルニコIIIV)、フロントにOld School (アルニコII)が搭載されており、パワフルなリアと出力を抑えたフロントというバランスになっています。

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TX GTR CAR PGMS GM/AB/HA/TX/AZ(6弦、7弦)

TX GTR6 CAR PGMS TX GTR6 CAR PGMS

TX GTR7 CAR PGMS TX GTR7 CAR PGMS

テレキャスターの面影がかすかに残る「TX」は、マホガニーボディに3Pのハードロックメイプル製ネックをボルトオンジョイントしているところが、上記SXとの最も大きな違いとなっています。ボディ厚は42mmで、一般的なエレキギターよりも若干薄めです。ピックアップはリアにPVH (アルニコV)、フロントにOld School(アルニコV)というバランス型の組み合わせになっています。ピックガードがカーボンファイバーでできているあたり、これまでのエレキギターの常識的な雰囲気を超えた新しさを感じさせます。

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GORIATH

ヘッドレスギター「ゴリアテ(ゴライアスとも)」は今のところ海外のみの流通ですが、日本での流通に期待が高まっています。ボディ形状はシンプルながらデザイン性と人間工学を高いレベルで両立させており、演奏のストレスを感じにくくなっています。ヘッドレスはネックの先にヘッドもペグも無いため、多弦モデルでもヘッドが重くなってしまうことがなく、ボディバランスがうまくとりやすいという重要なメリットがあります。
《ヘッドがない!》ヘッドレスギター特集


Ormsby Guitars NAMM 2017 – Goliath Headless Mulitscale Guitar Jazz Clean Demo with Line 6 Helix
ヘッドレスギター「ゴリアテ」は、2017年冬のNAMMにてデビュー。動画のギターはカスタムショップ製で、低音側ホーンにサウンドホールらしき孔があけられているほか、銅板の腐食を利用したインパクトの大きなルックスになっています。
名前の由来である「ゴリアテ」は旧約聖書に登場する身の丈3mにも達する巨漢の兵士でしたが、羊飼いのダビデ少年に敗れ、首をはねられます。ヘッドレスギターのモデル名に採用されたのも、じゅうぶん納得できる逸話ですね。

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