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《音の良さと、現場での強さ》ギターアンプメーカー「SHINOS」訪問インタビュー

SHINOSの取材としては以上で完了しましたが、おまけとして篠原さんに「真空管アンプの扱い方」をご解説いただきました。名づけて「初心者向け真空管アンプ扱い講座」です。高級な真空管アンプをぶっ壊してしまわない使い方について、また都市伝説化しているアンプの使い方について、篠原さんがズバズバお答えします!

初心者向け真空管アンプ扱い講座、ここに開講!

「そんな使い方、故障するぞ!」なんて脅かされたことはありませんか?
ここでは真空管アンプの取り扱いを中心に、扱ううえでのいろいろな心配事、各地でささやかれている慣例的な扱い方について、アンプのすべてを知り尽くしている篠原さんにご解説をお願いしました。

──引き続きよろしくお願いします。
真空管はどんどん劣化していく、というお話でした。これを長生きさせようと思ったら、どういう心掛けが必要でしょうか?

篠原 まず、音を出さないときには「STANBY(スタンバイ)」状態にしておくことです(STANBYが「ON」でスタンバイ状態、「OFF」でスタンバイ解除)。スタンバイ状態では、真空管に電圧がかからず、電流も流れませんから、真空管に負担がかかりません。
電源「ON」の時には、真空管内部の「ヒーター」に6.3Vの交流電圧がかかり、そこで発生した熱電子が真空管の中を飛び交います。俗に「真空管を温める」というのはその通りで、2分も温めれば作動が安定します。それが短いと故障の原因になるとまでは言い切れませんが、回路によってはパワー管に負担がかかることがありますから、やはりそれだけの時間をかけた方がいいですね。ちなみに爆音で演奏すると、真空管にそれだけ多くの電流が流れることになりますから、寿命を縮めます。
また、振動を与えるのはいけませんが、何年も使わずに置きっぱなしもよくありません。湿気もよくありません。これらは真空管の負担というより、それを受け止める「ソケット」の接触不良につながるからです。ソケットの接触不良が起きると、過大電流の逃げ場がなくなって真空管が赤熱してしまうこともあります。

──「スタンバイ」がポイントなんですね!
では逆に、真空管が劣化した、いわゆる「ヘタった」という状態は、聞く人が聞けば一発でわかるほどサウンドに影響するんでしょうか。また、どういうタイミングで真空管を交換するのがベストなんでしょうか。

篠原 真空管はプリ管もパワー管も緩やかに劣化していき、それにつれてサウンドも変化します。しかしその変化はとても緩やかなので、たとえそのアンプのオーナーさんであっても、聞いてもほとんどわからないと思いますよ。
パワー管は相当に使い込むとガラスが黒ずんでくることがあります。黒ずんでいるのは内側に熱電子が衝突した痕なんですが、こうなると確実に交換時期です。むしろ僕の基準では、ここまでくると交換時期はとっくに過ぎてしまっています。
僕たちは「測定器」を持っていますから、それでチェックして判定します。アンプから抜いて測定器にかけないと、真空管のコンディションはわかりません。もともと「何年たったから交換しなきゃ」というものではないので、真空管のコンディションが心配でしたら、測定器を持っているリペアショップに問い合わせてください。

パワー管専用測定器

篠原 これは、パワー管専用の測定器です。

プリ管専用測定器

篠原 そしてこれは、プリ管専用の測定器です。それぞれ10万円以上するなかなか高額なものなんですが、アンプを取り扱う以上は必要不可欠です。これがなければ、僕たちも真空管の状態は把握できませんから。

──音や見た目では真空管の状態はわからないものなんですね!
では、音を出している状態からいきなり電源を落としてしまうのは、故障の原因になるのでしょうか。

篠原 電源を落とすと、全ての電源が一気に切れます。ですから基本的には問題ありません。セオリーとしては、
• 真空管を起動させる高圧電源を先に切って(スタンバイ状態にする)
• そのあとヒーターの電源を切る(主電源を切る)
が正しいと言われていますが、いきなり電源を切っても故障することはありません。

──おお、これは感動です。電源を切るときには「スタンバイ→電源」の順で切るのが常識と言われていますが、真空管アンプの扱いに慣れていないと、ついいきなり電源を落としてしまうこともあります。それでもぶっ壊れることはない、という知識は大いに助かります!
では次に、「音が出る状態で、ギター側からシールドを抜いてはいけない」と言われていることについてはいかがでしょうか。

篠原 それによって機材の想定をはるかに超える「かなり大きな信号」が送られることは間違いありません。ですから回路全体に対して本当はよくありませんが、「シールドを抜いた瞬間に回路がぶっ壊れる」ということはありません。ただし、過大入力によってスピーカーが破れてしまうことはあり得ますから、やらないに越したことはありません。逆に、アンプ側から抜くのはまったく問題ありません。

──そうなんですね!スピーカーを飛ばさないためには、ギター側から抜かない習慣を付けた方がいいということですね。
では、「アンプの電源を入れるときには、必ずマスターボリュームを”0″にしてからでなければならない」という話に対してはどうでしょうか。

篠原 それを守らなくても、問題はありません。仮にボリュームが10だったとしても、それで回路がぶっ壊れるということはありません。

──そうなんですね!ではこの話はきっと、マスターボリュームが上がり切った状態で電源を入れると、いきなりでかい音が出たりハウリングしたりして心臓に悪いからなんですね!
では最後に、「電源を切るときには、すべてのつまみを”0″にしなければならない」という話についてはいかがでしょうか。ギター教室や練習スタジオのギターアンプでこれを求められることがあるんですが、これをしなかったからアンプがぶっ壊れた、という話を聞いたことはありません。

篠原 はい、それで壊れることはありません。現場で「0」にする人なんていませんよ。教室やスタジオのアンプは他の人も使うものなので、「お片付け」の延長なのではないでしょうか。

──ありがとうございました!いろいろ心配の種が解消できました。これで、安心して真空管アンプを使うことができます!

篠原 ありがとうございました。それでも調子を悪くしたら、ぜひ弊社にお持ちください。


以上、「初心者向け真空管アンプ扱い講座」でした。真空管アンプに関するいろいろな心配事が、きれいに解決できました。篠原さんが勝負している「現場」は、トラックの長距離輸送や何時間にも及ぶ演奏といった過酷な環境です。そういう現場ではいろいろなトラブルが起きるのでしょうが、お話を聞く限りでは、「普通の使い方をしていれば、簡単にぶっ壊れるものではない」という印象です。
テクノロジーがどんどん進んでいる現在であっても、前時代的な「真空管」こそがいまだに「ギターの良い音」のお手本です。決して怖くないですから、ぜひ真空管アンプを使ってみてください。